探偵の災難if

TEAM FRIENDSの事件簿
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※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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※ここから先は、『探偵の災難』にて無事に脱出を果たした藤永沙織が「もしも脱出に失敗していたら?」という続きのifストーリーです。尚、原文から一部を改変しております。

作:旅鴉様

ストーカー男に監禁されていた空き家から逃げ出すことに成功した沙織。
しかしこの一帯は開発がおこなわれる予定ではあるものの中々決まらず、買収されたものの放置された状態の空き家がばかりであった。
ここでいくら声を上げても助けは来ない、むしろあのストーカー男に気づかれるだけだった。

(何とか人気のある所まで行かないと・・・)

そう思い、沙織は空き家の路地を抜け、道路まで出た所でこちらへと走ってくる一台の黒いワンボックスカーを目にする。

「すいませ~ん!」

その車に向かって大声で呼びかけながら、力いっぱい手を振る沙織。
その呼びかけに応じ沙織の目の前で止まる車、パワーウィンドが下り中から若い男が顔を出す。

「どうしたのお嬢ちゃん?」

「助けてください!私、悪い男に監禁されてて逃げ出して来たんです、早く警察に!」

「何だって!?それは大変だ、早く後ろに乗って!」

そう言って車の運転手は沙織にワンボックスカーの後部座席の乗るように促す、沙織は素直にそれに従う。

「本当に助かりました、携帯電話は奪われてしまって…この辺りは空き家だらけだし、車も人もあまり通らないし…」

「本当に災難だったね、直ぐに警察に連絡して君を保護して欲しいところなんだけど、実はこのすぐ近くに友達を待たせていてね、途中でそいつ拾ってからで良いかな?さっきから急かされててさ…」

「良いですよ、こっちも急にすいません…」

ストーカー男から逃げ切れたことで沙織はすっかり安心しきっていた。

「ごめん、ちょっとそいつに連絡するから」

そう言って運転手は待ち合わせの友人に連絡すると、運転を続けながらハンズフリーのマイクで話はじめる。

「あのさ、もう近くなんだけど…何を慌ててんだよ、解ってるよお前の言いたいことは…なんで解ってるかって、お前の言ってるそれを俺が拾ったからだよ、本当に相変わらずドジだな、せっかく場所用意してやったのに…まあ結果オーライだ、もう少ししたら着くから今度はドジんなよ」

(いったい何の話をしているんだろ?)

沙織は運転手の怪しげな会話に興味を抱くも、助けてくれた恩人を相手に変な詮索をするのは失礼だと思い、意識を外の景色へと向けた。

(あれ…?)

その時、沙織はあることに気づいた、この路地は先程ストーカー男を尾行し、逆に待ち伏せされ捕まった場所と同じだった。

「えっと…あの…」

沙織が男に質問するよりも先に、車はある空き家の前に停車する。

(嘘…ここって…!!)

ガラッ!!

ワンボックスカーのスライドドアが音を立てて開く。

「また会ったねお嬢ちゃん、まさか縄抜けして逃げるなんて油断してたよ~」

「そんな…何であなたが!?」

現れたのは沙織を監禁したストーカーの男だった、沙織は運転手の方に目をやる。

「君も運が悪かったね、待ち合わせしてたのって、そいつのことなんだよ、大体電話でお嬢ちゃんの特徴は聞いてたからね、まさかあんな所でその本人から助けを求められるなんて、正直びびったよ」

「さっき言ってた野暮用ってのはそいつに連絡してたの、お嬢ちゃんを捕まえたって報告、お嬢ちゃんはあんな汚い空き家よりもっと良い所に連れていってあげようと思ってね、それにお楽しみは分け合わないとね」

(嘘・・・こんなことって、こんな不幸って酷すぎる・・・)

慌てて車外に逃げようとドアノブに手を掛ける沙織、だがそれよりも速くストーカー男が沙織に飛び掛り、強引に手を後ろに捩じ上げる。

「イヤイヤッ、やめて、助けて、誰か助けてーーーーッ!!」

沙織の必死の叫びは、他の誰かに届くことはなかった。

藤永沙織イラストは、KazuHanabi様。車内背景は、きむやん様。

交差点で信号待ちをする1台の黒いワンボックス、後部座席側の窓は濃いスモークが貼られ、その中をうかがい知ることが出来ない、そこに誰がどんな状況でいたとしても、外からは解らない。

「んんーっ、んんぐーっ、んむぅーっ!」

後部座席に座らされた沙織は、車の横を通りすぎる人に助けを求め必死に声を上げる、だがその叫びは口にピッタリと貼り付けられた粘着テープに阻まれ呻き声にしかならず、誰1人気づく者はいなかった。
沙織の出来ることといえば身を捩り縄を軋ますぐらいだ。

「残念誰も気づいてくれないね~、そろそろ信号変わるよ~」

助手席からストーカー男がさも楽しげに、後部座席の沙織に声をかける。

「……」

涙で濡れた瞳でストーカー男を睨みつける沙織、彼女に今出来る唯一の抵抗だった、だがそれすら男を喜ばすことにしかならなかった。

「そんなに怖い顔しないでよ、せっかく君の友達も誘って一緒に楽しいところに連れて行ってやろっていうのにさ」

(え、それってどうゆうこと…?)

驚いた表情を浮かべる沙織に答えるように、男は話だす。

「君のスマホ使って、君の大切なお友達に、君に成りすましてメッセージ送っといたから、今から迎えに行くって、友達待ってるってさ」

(そんな…)

自分が守ろうとした友達が今まさにストーカー男の毒牙にかかろうとしている、そして自分はその男に捕らわれている身、どうすることも出来ない。
信号が変わり、無情にも車は動き出す車、向かう先は自分が迎えにくると信じている友達の所…

(このままじゃ私だけじゃなく…この状況をなんとか、なんとかしないと…私の大好きな探偵達はこんな時に…)

こんな絶望的な状況でありながらも、沙織の心はまだ折れてはいなかった。

つづく。

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TEAM FRIENDSの事件簿旧ブログからの転載
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コメント

  1. 旅鴉 より:

    挿絵に合わせてきましたね~、見事な改変ぶりです。

    挿絵に使われた沙織ちゃんの表情が、ストーカー野郎を睨んでるように見えてゾクゾクしますね~(変態か!

    これまたあの続きをするとしたら、今度の改変部分は「ワンボックスカーのラゲッジスペースの床に2人の若い娘が転がされていた」を後部座席に座らされてにするのでしょうね、
    他は、愛実ちゃんと沙織ちゃんの互いの呼び方を呼び捨てにすることですかね。

  2. 旅鴉 より:

    後もう1つは、「そして男達は車のバックドアをゆっくりと下ろしてゆく」を「スライドドアを閉めていく」の方が表現として良いかもですね…これ修正出来ないので余分に文が増えていっちゃいますね…

    • 『続 探偵の災難if』転載完了しました。これで三部作は完結です!
      修正部分に関して旅鴉様のご意見も参考にさせていただきました。

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