風祭兵庫介に敗れ、初めてヒーローとしての挫折を味わった皆上遼馬だったが、綾瀬早弥香の叱咤激励のおかげで立ち直る。一方その頃、ヴァルクルンド王国のアストリッド王女と間違われて誘拐されてしまった阿佐光花の運命は…!?
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
Aパート
海防大学テニス部の部室――その奥にある物置部屋は、ひんやりとした空気に包まれていた。
その床に座らされているのは、テニス部三年の男子部員・舘小路悠雅だった。

両手両足を縄でぐるぐる巻きに縛られ、口には猿轡。普段の気取った余裕は見る影もなく、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、恐怖に震えている。
悠雅「んっ……んんっ!! んぐぐーっ!!💦」
情けない声が、布に遮られてくぐもって響く。
そのすぐ傍で、もう一人の“舘小路悠雅”が、腕を組んで立っていた。
同じ顔、同じ髪型、同じテニスウェア――だが、その口元には冷たい笑みが浮かんでいる。
偽悠雅「フフフッ……命が惜しかったら、そこで大人しくしていることだな」
本物の悠雅は必死に首を振るが、縄はびくともしない。
偽者――その正体は、弥御影一族の中忍・黒夜叉丸。
彼は一度だけ、縛られた本物を見下ろすと、興味を失ったように背を向けた。
そして次の瞬間には部屋の照明を消すと、何事もなかったかのように物置を出ていく。
――
テニスコート入口。
朝の練習が始まる少し前、爽やかな空気の中に、不穏な気配が紛れ込んでいた。
そこに立つ“舘小路悠雅”は、静かに誰かを待っている。
やがて、綾瀬早弥香が姿を現した。
偽悠雅「やあ、綾瀬さん♪」
早弥香は足を止める。
その表情には、はっきりとした違和感と警戒が浮かんでいた。
早弥香「舘小路……先輩?」
その瞬間、横から一歩前に出たのはルナ=ハートウェルだった。
ルナはきっぱりとした目つきで偽悠雅を睨みつけ、早弥香をかばうように前に立つ。
ルナ「先輩、まだサヤカに何か用なんですか? リョウマに試合で負けて、もう近寄らないって約束しましたよね!」
偽悠雅は一瞬、わざとらしく肩をすくめて見せた。

偽悠雅「いやいや、そうじゃないんだ。今日は別件でね。……阿佐のことで、ちょっと聞きたいことがあって」
早弥香「光花先輩のこと……??」
ルナも首をかしげる。
ルナ「そういえばミツハ先輩、今日はまだ来てないね……。昨日いろいろあったし、もしかして休みかな?」
早弥香は答えなかった。
――昨日の別れ際。
「また明日学校でね~♪」
あの穏やかな笑顔が脳裏によみがえる。
(休むなんて……そんなはず……)
沈黙の中、偽悠雅が静かに言葉を続ける。
偽悠雅「ニュースは見ただろう? 来日中のヴァルクルンドの王女……顔が阿佐によく似ていると思わないかい?」
早弥香「――!?」
ほんの一瞬。
ほんのわずかに、彼女の瞳が揺れた。
それだけで十分だった。
偽悠雅「………(やはりこの娘、何か知っている)」
黒夜叉丸の内心が、冷たく確信する。
――その時だった。
部室の方角から、慌ただしい叫び声が響いてきた。
「大変だぁー!! 舘小路先輩が部室の物置で縛られてるぞー!!」
「誰か来てくれー!!」
空気が一変する。
偽悠雅「チッ……」
小さく舌打ち。
ルナ「えっ!? でも舘小路先輩なら今ここに……」
早弥香「あっ!?」
二人が同時に振り返る。
――その一瞬。
風が吹き抜けたかのように、そこにいたはずの“舘小路悠雅”の姿が消えていた。
ルナ「うそ……💦」
早弥香「今のって、いったい……??」
不安と困惑が、じわじわと広がる。
その時。
早弥香のポケットの中で、スマートフォンが震えた。
早弥香「……お父さんからだ。何だろう?」
胸騒ぎを覚えながら、通話ボタンを押す。
早弥香「もしもしお父さん? ……えっ!? 何ですって!!」
彼女の表情が、一瞬で強張った。
Bパート
山深い静寂の中に、轟音だけが支配していた。
白い飛沫を巻き上げて落ちる滝――その直下に、皆上遼馬は座していた。

白い道着はすでに水を吸って肌に張り付き、容赦なく叩きつける水流が肩や背を打ち据える。常人ならば立っていることすら難しいその場所で、遼馬は歯を食いしばりながら座禅を組み、目を閉じていた。
(……怖れるな……落ち着け……)
心を静めようとする。
だが――
脳裏に浮かぶのは、あの男。
風祭兵庫介。
鋭い眼光。
冷たい殺気。
そして、迷いなく人を斬る“覚悟”。
(違う……消えろ……!)
打ち消そうとすればするほど、その存在は輪郭を増していく。
やがて幻影は、遼馬だけでなく――
基樹が倒れる。
ルナが斬られる。
陽莉が泣き叫ぶ。
そして最後に――
早弥香が、血を散らして崩れ落ちた。
遼馬「うわぁァァッッ!!」
絶叫が、滝の轟音をも貫いた。
はっと目を見開く。
現実に引き戻された遼馬は、荒い呼吸を繰り返した。
遼馬「ハァ……ハァ……」
冷たい水の感触が、ようやく現実を思い出させる。
だが胸の奥に残る恐怖は、消えない。
遼馬「……くそっ、このままじゃ……! いったいどうすれば……!?」
その時。
明徳「苦戦しとるようじゃのう?」
穏やかな声が、滝音の向こうから届いた。
遼馬「明徳先生!? それに美輝まで!?」
視線を上げると、滝壺の先――小高い丘の上に、久我明徳とその孫の久我美輝の姿があった。
美輝は手を振りながら、にこやかに笑っている。
美輝「遼馬さん、差し入れに来たよ!」
明徳「腹も減っとるじゃろ? そろそろ昼にせんか?」
そのあまりにも日常的な言葉に、遼馬は思わず力が抜けた。
――
滝行を切り上げ、濡れたまま陸に上がった遼馬は、簡単に体を拭き、二人の元へ向かう。
岩場に腰を下ろし、差し出されたおにぎりを受け取る。
湯気こそないが、温もりの残るそれは、不思議と心を落ち着かせた。
遼馬「……いただきます」
一口かじる。
塩の味が、やけに染みた。
しばらく無言で食べていたが、やがて遼馬はぽつりと口を開く。
遼馬「……明徳先生」
明徳「うむ?」
遼馬「考えれば考えるほど……怖くなるんです。あの男のことを思い出すと……体が動かなくなる。頭では分かってるのに、どうしても……」
拳を握りしめる。
遼馬「このままじゃ……また同じことになる。誰も守れない……!」
その言葉に、明徳はしばし黙っていた。
そして、ふっと小さく笑う。
明徳「ならば簡単じゃ」
遼馬「……え?」
明徳「そんな時はな――考えんことじゃよ」
あまりにもあっさりとした答えに、遼馬は目を瞬かせた。
遼馬「考えない……?」
明徳はゆっくりと頷く。
明徳「恐怖というものはな、頭でこねくり回すほど大きくなる。理屈で押さえ込もうとするから、逆に飲み込まれるのじゃ」
美輝も隣でうんうんと頷く。
明徳「大事なのは“心を静める”こと。余計なものを映さぬよう、水面のように――澄みきった状態にするのじゃ」
遼馬「水面……」
明徳「明鏡止水。聞いたことはあるじゃろ?」
遼馬は小さく頷く。
明徳「鏡のように曇りなく、水のように揺らがぬ心。恐怖も、不安も、怒りも……ただそこに“ある”と認めて、流してしまえばよい」
遼馬は手の中のおにぎりを見つめた。
(……流す……か)
さっきまで胸を締め付けていた恐怖が、ほんのわずかに形を変えた気がした。
明徳「無理に消そうとするな。受け入れて、それでもなお動ける心を作るのじゃ」
遼馬は深く息を吐いた。
遼馬「……やってみます」
その目には、先ほどまでの混乱とは違う、静かな決意が宿り始めていた。
滝の音は、変わらず轟いている。
だが今、その音は――
恐怖ではなく、心を研ぎ澄ますための響きに変わりつつあった。
Cパート
山奥に響く滝の轟音の中――
ひとときの静寂を取り戻しかけていた遼馬たちの空気が、不意に揺らいだ。
「……ん?」
ふと、美輝が振り返る。
誰かが――こちらに向かってくる。
しかもただ歩いているのではない。
必死に、息を切らしながら駆けてくる足音だ。
やがて木々の間から飛び出してきたのは、遼馬にとって見慣れた二つの姿だった。

基樹「お~い! 遼馬ァァ~ッッ!!」
陽莉「お兄ぃ!こんなところにいたの!?」
美輝「……あれっ? あの人たちは……」
丘を駆け登ってくる二人の様子は、ただ事ではない。
顔色は悪く、息も荒い。
遼馬「基樹、陽莉、どうしたんだよお前たち?」
だが、問いかけた遼馬に返ってきたのは、少し苛立ちを含んだ声だった。
基樹「随分とご挨拶だな」
陽莉「もうっ、散々あちこち探し回ったんだからね! お兄ちゃんったら全然電話に出ないんだもん!!💢」
遼馬「えっ……?💦」
言われて初めて、遼馬は自分のスマホの存在を思い出す。
慌てて荷物の中から取り出し、画面を確認した。
――着信履歴が、ずらりと並んでいる。
基樹、陽莉はもちろん、早弥香、ルナ、さらには綾瀬秀太郎、志穂乃の名前まで。
遼馬「あちゃ~……💦」
いくら防水加工とはいえスマホを滝の中にまで持って行くわけにはいかず、滝行に集中するあまり、完全に置き去りにしていた結果だった。
美輝はそんなやり取りを見ながら、ふと陽莉の方に視線を向ける。
(……この声、どこかで……)
記憶の奥に引っかかる。
あの時――巨大な白いトレーラーの中、スピーカー越しに聞こえてきた声。
美輝「遼馬さん、この人たちは?」
遼馬「ああ、そういえば美輝は初めてだっけ? 紹介するよ」
遼馬は軽く手を上げながら、順に紹介する。
遼馬「こっちは大学のダチで西沢基樹。で、こっちは……親の事情で苗字は違うけど俺の妹、惣司陽莉だ」
基樹はにっと笑って手を差し出した。
基樹「久我美輝くんだっけ? 君の話は遼馬や綾瀬さんから聞いてるぜ。西沢基樹だ、よろしくな♪」
陽莉も元気よくぺこりと頭を下げる。
陽莉「惣司陽莉でーす! 遼馬お兄ちゃんの実妹で~す♪」
美輝は少し目を細め、確信に近いものを感じながら言った。
美輝「陽莉さんとは初対面ですけど……本当は今日が初めてじゃないですよね? 数日前のあの時、あのでっかいトレーラーの中に乗ってませんでしたか?」
陽莉は一瞬きょとんとした後、ぱっと笑顔になる。
陽莉「アハハ、バレた? 実はね、亜斗夢重工 スーパーヒーロー事業部のサブオペレーターもやってま~す♪」
遼馬「おい、軽くバラすなよ……💦」
軽口が飛び交い、ほんの一瞬だけ空気が和らぐ。
だが――
遼馬「それで、二人とも慌ててどうしたんだよ?」
その一言で、陽莉の表情が一変した。
陽莉「あっ……そうだった!」
基樹も顔を引き締める。
基樹「こんな自己紹介してる場合じゃねえんだ!」
一拍の間。
そして――
基樹「光花先輩が誘拐されたんだよ!」
遼馬「ああ、それなら昨日俺と早弥香がホテルまで迎えに行って――」
陽莉「違う違う!!」
遮るように、陽莉が叫ぶ。
陽莉「そうじゃないの! 今度は本当に、ガチで誘拐されたの!!」
その言葉は、空気を凍りつかせた。
遼馬「……何だって!?」
滝の轟音が、再び重く響いた。
(つづく)
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