滞在中の都内のホテルから真夜中に脱走したヴァルクルンド王国のアストリッド王女は、SPに追われていたところをデート中だった皆上遼馬と綾瀬早弥香に助けられる。アストリッドのお忍びに付き合わされることになった遼馬と早弥香だったが、3人で訪れた神社で弥御影一族に襲われたところを加藤段十郎、リネア=フリーデン=ヴァイサー、三刀谷真玲に助けられる。その頃、阿佐光花はアストリッドと間違われてSPに身柄確保されてしまっていた。アストリッドと光花、顔がそっくり瓜二つな二人の少女はついに対面を果たす。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
段十郎の忠告
扉が静かに閉まり、ロイヤルスイートの喧騒は廊下の外へと遮断された。
残されたのは、無機質な静けさと、二人分の足音だけ。
加藤段十郎は数歩先を歩き、やがて立ち止まると、振り返りもせずに口を開いた。
「どういう経緯でアストリッド王女と関わることになったのかは知らんし、あえて聞く気もない」
低く、抑えた声だった。
「だが忠告しておく。お前はこの件からは手を引け」
遼馬は一瞬だけ言葉に詰まり、それから肩をすくめてみせる。
「手を引くも何も……俺はただの一介の大学生ですし。光花先輩さえ返してもらえれば、何の文句もありませんよ」
軽く笑ってみせたその態度は、あまりにも“それらしい”ものだった。
だが――
段十郎はゆっくりと振り向く。
その目は、完全に見透かしていた。
「下手な芝居はやめておけ」
一言で、空気が凍る。
「俺たちライトシーカーの存在については、久我美輝からも聞いているはずだ」
「………」
遼馬は何も言えなかった。
否、言う意味がないと悟ったのだ。
すでに――全部知られている。

段十郎はポケットに手を突っ込んだまま、淡々と言葉を続ける。
「再度忠告しておく。子供のヒーローごっこの延長なら、さっさと足を洗うことだ」
“ヒーローごっこ”
その一言が、遼馬の胸の奥に火をつけた。
「ごっこなんかじゃない!」
思わず声が荒くなる。
「俺は本気でヒーローを目指して――!」
だが、その言葉は最後まで言わせてもらえなかった。
「その本気で目指した結果が――」
段十郎の声が、刃のように鋭く落ちる。
「さっきの手も足も出ずにビビってた醜態か?」
「――っ……!」
言葉が詰まる。
脳裏に蘇るのは、あの瞬間。
風祭兵庫介の放った、圧倒的な殺気。
身体が動かず、ただ“恐怖”に支配された自分。
何も言い返せなかった。
段十郎は、そんな遼馬を見下ろすでもなく、ただ現実を突きつけるように続ける。
「いいか?」
段十郎が続ける。
「俺たちの生きる世界にはな、あの侍の男――風祭兵庫介のような奴が他にもゴマンといるんだ」
その言葉には、誇張も脅しもなかった。
ただの事実だった。
「中途半端な覚悟だと、いずれお前――命を落とすぞ」
沈黙。
それ以上、何も言わず、段十郎は踵を返す。
「……」
ドアが開き、閉まる音が、やけに大きく響いた。
廊下には再び静寂が戻る。
遼馬は、その場から一歩も動けなかった。
拳を握りしめる。
だが、その力はどこか空回りしている。
(……くそっ)
言い返したい言葉はいくらでもあった。
だが、それ以上に――
否定できない現実が、そこにあった。
あの時、自分は何もできなかった。
ヒーローを名乗るには、あまりにも無力だった。
「……っ」
歯を食いしばりながら、遼馬はただ立ち尽くす。
静まり返った廊下に、彼の影だけが長く伸びていた。
早弥香の励まし
夜の住宅街は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
街灯の淡い光がアスファルトを照らし、三人の影を長く引き延ばしている。
その中を並んで歩く遼馬、早弥香、そして光花。
「それにしても驚いたなぁ」
光花はいつもののんびりした口調で、どこか楽しげに笑った。
「まるで鏡を見ているみたいだったよぉ。でも今考えてみたら、もう少し本物のお姫様と入れ替わってみるのもよかったかなぁ?」
「またまたそんな冗談を……」
早弥香は苦笑しながら肩をすくめる。
「こっちはヒヤヒヤものでしたよ?」
「ふふっ、ごめんねぇ」
やがて光花は足を止め、振り返った。
「ここでいいよ。送ってくれてありがとう」
「いや、もう夜ですし――」
「きちんと家の前まで送っていく」と遼馬が言いかけるが、光花は軽く手を振る。
「ううん、もうここまでくれば家まで5分もかからないし、そんな気を使わなくてもいいよぉ」
「じゃあ私たちはここで」
「うん。また明日学校でね~♪」
柔らかく手を振りながら、光花は街灯の先へと消えていった。
――静寂。
残された二人の間に、少しだけ重い空気が落ちる。
「………」
遼馬は何も言わず、ただ前を見て歩き続けていた。
「遼馬、どうしたの?」
早弥香が心配そうに顔を覗き込む。
「さっきから様子が変だよ……?」
「そんなこと……何もないよ」
短い返事。だが、その声には明らかな違和感があった。
早弥香は一歩踏み込み、じっと彼を見つめる。
「もしかして……あの加藤って人に何か言われたの?」
その言葉に、遼馬の足が止まった。
沈黙。
やがて――ぽつりと、言葉がこぼれる。
「……俺さ」
振り返らないまま、続ける。
「何もできなかったんだ」
声は低く、震えていた。
「怖くて……少しも動けなかった」
竹林での出来事。
あの侍――風祭兵庫介の前で、完全に身体が止まった自分。
「そんなんで何がヒーローだよ……!」
遼馬は拳を握りしめる。
「何が人々の平和を守る正義の味方だ……!」
次の瞬間、感情が爆発した。

「ちくしょー!!」
バンッ――!!
拳が、住宅街の塀に叩きつけられる。
鈍い音が夜に響いた。
遼馬の目には涙が滲んでいた。
悔しさと、情けなさと、どうしようもない無力感。
早弥香は、その姿をただ見つめることしかできなかった。
だが――
「……らしくないよ!」
強い声が、静寂を裂いた。
遼馬がはっと顔を上げる。
「……早弥香?」
彼女は、真っ直ぐに遼馬を見据えていた。
その目には、怒りと、そして確かな想いが宿っている。
「そんな遼馬の姿なんか、私見たくない!」
一歩、踏み出す。
「私は特撮やアニメには詳しくないけど……」
言葉を選ぶように、けれど力強く続ける。
「こんな時、遼馬の尊敬するヒーローたちはどうしてたの!?」
遼馬の胸が、どくりと鳴る。
「今の遼馬みたいに、みっともなくメソメソしてた!?」
――その言葉が、突き刺さった。
脳裏に浮かぶ、特撮ヒーロードラマやロボットアニメで描かれた数々の光景。
倒れ、打ちのめされ、それでも立ち上がるヒーローたち。
仲間に支えられ、限界を越え、再び強敵へ挑む姿。
逃げなかった。
諦めなかった。
「……っ」
遼馬の拳の力が、ゆっくりと抜けていく。
そして――小さく、笑った。
「……ありがとう、早弥香」
振り返ったその顔は、さっきまでとは違っていた。
「恥ずかしいところを見せちまったな」
涙を拭い、まっすぐ前を向く。
「お前の言葉のおかげで、吹っ切れたぜ♪」
その言葉に、早弥香の表情がぱっと明るくなる。
「遼馬!」
夜の静かな街に、二人の距離が少しだけ近づく。
街灯の下――
新たな決意を胸に、遼馬は再び歩き出した。
光花の危機
住宅街の夜は静かだった。
遠くで犬の鳴き声が聞こえるくらいで、人通りもほとんどない。
阿佐光花は、のんびりとした足取りで帰路を歩いていた。
(今日は本当にびっくりすることばっかりだったなぁ……)
自分と瓜二つの王女。
慌ただしい騒動。
そして、どこか非日常めいた一日。
そんなことをぼんやり考えながら、ふと顔を上げる。
――交差点が見えた。
あそこを曲がれば、もう家だ。
「ふぅ……」
小さく息をついた、その時だった。
違和感。
何かが――おかしい。
視線を巡らせると、いつの間にか周囲に人影があった。
黒い服装、黒いサングラス。無言で立つ男たち。
光花の足が止まる。
(あれぇ……?)
一瞬、昼間の出来事が脳裏をよぎる。
(また、あの人たち……?)
「……あのぅ?」
光花は首を傾げながら、控えめに声をかけた。
「まだ私に何か用なんですかぁ?」
だが――返事はない。
男たちは一歩、また一歩と距離を詰めてくるだけだった。
その空気は、昼間の“SP”とは明らかに違っていた。
冷たい。
無機質で、そして――危険な気配。
(……あれぇ? なんか、違う……?)
胸の奥がざわつく。
遅れて、本能が警鐘を鳴らした。
「……っ」
光花はくるりと踵を返し、走り出そうとする。
だが――
「――ッ!」
その瞬間、背後から伸びた腕が彼女の身体を捉えた。
「い、イヤァァァッ!!」
口を開いた瞬間、強引に手で塞がれる。
「んむぐぐっ……!!」
両腕を後ろから押さえつけられ、逃げることもできない。
じたばたともがくが、力の差は歴然だった。
視界の端に、黒いバンが止まっているのが見える。
嫌な予感が、現実になる。
「――っ!!」
次の瞬間、身体が宙に浮き、そのまま車内へと放り込まれた。

ドンッ、と鈍い音。
すぐさま数人の手が伸び、光花の腕を後ろ手に縛り上げる。
「んぐっ……!」
口には無造作にガムテープが貼られた。
声は、もう出せない。
(……っ、誰か……!)
心の中で叫ぶ。
だが、その願いが届くことはない。
バタン、とドアが閉まり、外界との繋がりが断たれる。
エンジン音。
車体が揺れ、ゆっくりと走り出す。
窓の外の街灯が、流れていく。
光花は必死に身体をよじりながら、目を見開いた。
(誰か……助けて……!)
だが――
その声は、夜の闇の中へと、静かに飲み込まれていった。
(つづく)
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