都内のホテルに滞在中のアストリッド王女を狙って襲撃して来た刺客を撃退した、加藤段十郎とリネア=フリーデン=ヴァイサーは、ヴァレンタイン綾子から亜斗夢重工の三枝万蔵を紹介される。綾子を介して三枝から調査を依頼された段十郎とリネアは、重機装士ヴァルダーの正体をあっさり突き止めるが…。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
Aパート
その日の深夜――。
都内の高級ホテルは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。外壁を撫でる風の音と、遠くの車の走行音だけが、かすかに夜を満たしている。
最上階、ロイヤルスイート。
アストリッドはベッドの上に腰掛け、窓の外を見ていた。
「……はぁ」
小さくため息。
昼間のぎっしり詰め込まれた予定。形式ばかりの会話。息苦しいほどの“王女”という役割。
そのすべてが、彼女の肩にのしかかっていた。
「……少しだけでいいのよ」
ぽつりと呟く。
「ほんの少し、自由に外の空気を吸うだけ」
その瞳に、いたずらっぽい光が宿る。
次の瞬間、彼女はすっと立ち上がった。
――その行動が、どれほど無謀であるかを承知の上で。
まず、扉。
当然ながら、外にはSPが控えている。
だが、アストリッドは迷わなかった。
静かにクローゼットを開けると、昼間とは違うシンプルなクリーム色のブラウスと緑のフレアースカートに着替える。髪もまとめ直し、王女としての華やかさを極力消す。
そして――
机の上に、小さな細工を施した。
枕とクッションを組み合わせ、ベッドの中に“人影”を作る。さらにカーテンをわずかに揺らすことで、寝返りを打っているかのような影を壁に映す。
遠目には、確かに“誰かが寝ている”ように見える。
簡易的ではあるが、時間稼ぎには十分だ。
――だが。
問題は、そんな単純なトリックで騙される相手ではないことだった。
廊下。
加藤段十郎は、壁にもたれるようにして立っていた。
目は閉じられているが、眠っているわけではない。
わずかな気配の揺らぎすら見逃さない、研ぎ澄まされた感覚。
そのすぐ近くでは、リネアが小さなルーン石を指先で転がしていた。
淡い光が、一定のリズムで明滅している。
「……異常なし」
彼女が小さく呟く。
ルーンによる結界は、扉の内側の魔力変動すら監視している。
通常なら、脱出など不可能。
――通常ならば。
その時。
ほんの一瞬。
ルーン石の光が、わずかに“鈍った”。
「……?」
リネアが眉をひそめる。
だがそれは、瞬きほどの時間。
次の瞬間には、何事もなかったかのように元に戻る。
「……気のせい?」
首を傾げるリネア。
段十郎は目を閉じたまま、低く言う。
「何かあったか」
「いえ……ほんの一瞬だけ反応が……でも、誤差の範囲かと」
「……そうか」
段十郎は、それ以上追及しなかった。
だがその直感は、わずかに警鐘を鳴らしていた。
――その“瞬間”の裏で。
アストリッドはすでに動いていた。
彼女はバルコニーに出ると、外壁に設置された非常用のメンテナンスラダーに手をかける。
風が強い。
ドレスの裾がはためく。
だが、その表情に迷いはない。
「……大丈夫」
誰に言うでもなく、呟く。
そして、一歩。
足を踏み出す。
王女として守られる立場の少女が、自ら危険の中へ降りていく。
その動きは、意外なほど軽やかだった。
幼い頃からの乗馬や登山訓練が、無意識に身体に染みついている。
手をかけ、足を下ろし、一段ずつ確実に降りる。
夜の闇が、彼女の姿を飲み込んでいく。
数分後。
ホテル裏手のサービス通路。
人目の少ないその場所に、アストリッドは静かに降り立った。
息を整え、周囲を見渡す。
「……成功、かしら」
小さく笑う。
その笑顔は、昼間の王女のものではない。
一人の少女の、自由を手にした瞬間の顔だった。
そして――
夜の街へと、一歩踏み出す。
一方、その頃。
ロイヤルスイート前。
段十郎は、ゆっくりと目を開いた。
「……妙だな」
ぽつりと呟く。
何かが引っかかる。
説明できない違和感。
リネアもまた、無意識にワンドへと手を伸ばしていた。
「……確認します」
ドアへと歩み寄る。
ノック。
「王女殿下?」
返事はない。
もう一度。
「失礼します」
静かに扉を開ける。
室内は――静かだった。
ベッドには、人影。
だが。
リネアの目が、すっと細まる。
ゆっくりと近づき――
布団をめくる。
「……!」
そこにあったのは、枕とクッションで作られた“偽物”。
その瞬間。
「やられたか」
背後で、段十郎の声。
低く、しかしどこか楽しげですらある。
「王女殿下が、か?」
「……はい」
段十郎は軽く肩をすくめる。
「まさか“自分から逃げる”とはな」
リネアはすぐに無線へ手を伸ばす。
「全警備に通達――」
「待て」
段十郎がそれを制した。
「……加藤さん?」
段十郎は、わずかに笑う。
「少し泳がせる」
その目が、鋭く光る。
「どう動くか、見てみたい」
本当にヴァレンタイン綾子の勘の通り、ヴァルダーが王女に接触して来るか確かめたいらしい。
リネアは一瞬ためらい――
やがて、小さく頷いた。
「……了解」
こうして。
王女の“ささやかな脱走”は――
誰にも気づかれぬまま、そして同時に、完全には見逃されぬまま。
静かに、夜の街へと広がっていった。
Bパート
翌朝――。
都内の街は、いつもと変わらぬ喧騒に包まれていた。
だが、その裏側では。
「姫様はいたか!」
「ダメだ! こっちにはいない!」
「向こうを捜せー!!」
黒スーツに黒ネクタイ、黒サングラスという統一された出で立ちの男たち――ヴァルクルンド王国のSPチームが、街中を駆け回っていた。
ただならぬ緊張感。
通行人たちは何事かと振り返るが、彼らは構わず捜索を続ける。
その視線の先。
ビルの陰、路地の隅。
一人の少女が、息を潜めていた。

「……どうしましょう」
アストリッドは壁に身を寄せ、小さく呟く。
「このままでは、すぐに捕まってしまいますわ……」
昨夜の脱走は成功した。
だが、さすがに王国直属のSPたちの動きは速い。
包囲網は、確実に狭まっている。
アストリッドはそっと顔を出し、周囲を確認する。
――いない。
その隙を突き、静かにその場を離れた。
***
一方その頃。
街の一角にあるカフェのテラス席。
心地よい朝の風の中、二人の若者が向かい合って座っていた。
綾瀬早弥香と皆上遼馬。
久しぶりの、二人きりの時間。
早弥香はストローをくわえ、メロンソーダを楽しそうに飲んでいる。
その表情は明るく、どこか弾んでいた。
――だが。

「……」
対する遼馬は、どこか上の空だった。
視線は宙を泳ぎ、目の前の会話に意識が向いていない。
店内から流れてくるラジオの音声が、二人の間に割り込む。
『来日中のアストリッド王女は、体調不良のため本日の全ての予定をキャンセルし、ホテルにて静養されるとのことです――』
「アストリッドさま、どうされたのかしら? パーティーでお会いした時はあんなにお元気だったのに…」
アストリッドの身を心配する早弥香をよそに、遼馬はそのニュースを完全に聞き流している様子。
――昨夜。
アパートの部屋。
鳴り響くスマホ。
『……ごめん遼馬さん、実は』
久我美輝の、どこか申し訳なさそうな声。
そして語られた事実。
ヴァルダーの正体が知られたこと。
『僕がうっかりしたばっかりに……本当にごめん』
「……そっか」
遼馬は、静かに答えた。
「まあ過ぎたことはしょうがないさ」
努めて明るく。
「わざわざ教えてくれてありがとう。そんな気にすんな♪」
――そう言ったものの。
胸の奥に残る、引っかかり。
ブレイバーズとアスカロン財団。
ヒーローの“自由”と“管理”。
相容れない思想。
その狭間に、自分が立っているという現実。
***
「……遼馬?」
早弥香の声で、現実に引き戻される。
「………」
「ねえ遼馬?」
「………」
「ねえ遼馬ったら! 聞いてるの!?」
「……えっ!? あ、ご……ごめん!」
慌てて顔を上げる。
「何だ?」
早弥香は頬を膨らませる。
「もうっ! 何考え事してたのよ?」
「いや……大したことじゃないんだ……」
曖昧に笑って誤魔化す。
だが、その奥にあるものを、彼女はなんとなく感じ取っていた。
それ以上は追及せず、ふっと息を吐く。
「……もういいわ。せっかくのデートなんだから、ちゃんと楽しみなさいよね?」
「……ああ」
遼馬は小さく頷いた。
会計を済ませ、二人は店を出る。
次の目的地へ向かって、並んで歩き出した。
その時――

「きゃっ……!」
「うわぁァァッッ!!」
突然、横から飛び込んできた影。
避けきれず、遼馬は派手に転倒する。
そして。
気がつけば――
「……え?」
自分の上に、柔らかい感触。
見下ろせば、長い茶髪の女性が、自分に覆いかぶさるように倒れていた。
ほぼ、馬乗り状態。
数秒の沈黙。
そして。

ぎし、と背後で何かが軋む気配。
「遼馬ッ!!💢」
振り向けば、そこには鬼の形相の早弥香。
「ま、待て早弥香! 誤解だ!💦」
慌てて弁解する遼馬。
だが。
「助けてください!」
上に乗っていた女性が、必死な声を上げた。
「追われているんです!」
「……え?」
遼馬は改めてその顔を見る。
そして――凍りついた。
「み、光花先輩!?💦」
瓜二つ。
大学の先輩、阿佐光花と、まったく同じ顔。
同じく驚いていた早弥香だったが、彼女の顔をじーっと注意深く観察してしばらくしてから首を振る。
「…もしかして貴女は!? 違うわ遼馬。この方はね――」
言いかけた、その時。
「いたぞー!!」
遠くから怒号。
黒服の男たちが、こちらへ向かって走ってくる。
アストリッドの顔が強張る。
遼馬はすぐに理解した。
「……追われているのか?」
彼女は黙って頷く。
一瞬の判断。
「行こう! こっちだ!」
遼馬は立ち上がり、彼女の手を掴む。
「えっ――」
引かれるままに走り出すアストリッド。
「ちょ、ちょっと遼馬! 待ってよ!!💦」
早弥香も慌てて追いかける。
三人は人混みの中へと飛び込む。
背後から迫る足音。
そしてその様子を、いつの間にか、少し離れた位置から観察していた加藤段十郎とリネア=フリーデン=ヴァイサー。
「俺たちも行くぞ」
「はい」
逃走劇が、突然幕を開けたのだった。
(つづく)

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