異世界編 第3話

こちら学生報道部
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※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
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地球とは異なる剣と魔法の異世界ヘイファロレアへと迷い込んだ日本の大学生、小寺洸介と鳳凰院優の2人は、森で山賊に捕まっていたところをシェヴューツァンド王国の王太子シャインと彼に率いられる山賊討伐隊に助けられた。洸介と優がの2人が異世界人である事情を聴いたシャイン王子は、2人を丁重に保護して王都にある王城の中に受け入れてくれたのだった。

「この度は危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございました」
「それにしても本当に桜庭にそっくりだな…」
「ハハハ、僕はそんなに貴方たちの御友人に似ていますか?」

洸介と優の報道部仲間である桜庭陽平に瓜二つなシャイン王子は、大変気さくな性格であり、また王国臣民の期待を一身に背負って文武両道にも優れた人物であった。そんなシャインの親しみやすく頼りがいもある人柄にホッと安堵する洸介と優。
そして洸介と優が王国から受けた事情聴取で、どうやら2人は導きの洞窟と呼ばれるトンネルを通ってこの世界に来てしまったらしい。

「じゃあその洞窟を通れば俺たちは元いた世界に帰れるんですか?」
「まあそう慌てないでください。導きの洞窟はいつでも時空の壁を越えて異世界と通じているわけではありません。王国お抱えの時空魔法士に計算させたところ、おそらく次に貴方方の世界と洞窟が繋がるのは10日後、次の満月の夜…」
「でも帰れる方法が分かっただけでも朗報ね♪」

一時は地球にいる家族や親友たちと生き別れて一生異世界で暮らすことになるのか?と心配していた洸介と優だったが、それも杞憂だった分かり、2人ともお互いに安堵の笑みを浮かべて見つめ合う。シャインの説明によると、どうやらこれまでもヘイファロレア世界に迷い込んだ地球人が何人かいたらしく、その都度王国が保護して地球に送り返していたのだそうだ。だがここでシャインがやや気まずそうに話を切り出した。

「お二人が無事に元の世界へ帰れることは我が王国を代表して約束します。ただしその代わり、この世界=ヘイファロレアにいた間の記憶を魔法の力で消去させていただきたい」

シャインは語った。現在の地球とヘイファロレアの間の文明レベルには大きな格差があり過ぎる。まだ互いの異世界同士の交流を始めるべき時ではなく、しかるべき時が来るまでは互いに住む世界の平穏を守るためにも、ヘイファロレアと呼ばれる異世界の存在を地球側に知られるべきではないというのが記憶消去の理由だった。

「今までこの世界=ヘイファロレアから無事に地球に戻ってきた人たちも、その期間だけの記憶が抜け落ちていたせいで、異世界トンネルと神隠しの都市伝説が生まれていたのね」
「分かりました。”記憶を消される”って聞くとちょっと怖いけど、あくまでこの世界に滞在していた期間だけの記憶がなくなるだけなら別にいいぜ。俺たちだって平和に暮らしているヘイファロレアの人たちに迷惑はかけたくないもんな」
「ありがとう。ご理解感謝します」

こうしてシャインからの頼みを快諾した洸介と優は、10日後の満月の夜まで王城に滞在することになった。

「ねえ、せっかく異世界に来たんだから、もっと異世界ライフを楽しみましょうよ! 私は城下の街に出てみたいわ♪」
「やれやれ、あれだけ大変な目に遭ったって言うのに、優は気持ちの切り替えが早いな」

異世界ヘイファロレア滞在日3日目のこと、シャインの許可を得て、洸介と優は2人で王都の城下町へと散策に繰り出した。

「素敵な街並みね。王国の人たちもみんな親切だし、本当にサイコー♪ もっとよくこの国のことを知りたいし見てみたいわ!」
「見たところで、どうせ7日後には俺たち全部忘れちまうんだぞ」┐(´д`)┌ヤレヤレ
「もうッ! だからこそ未知の異世界を体験できる今の貴重な時間を大切にしたいんじゃない!」
「分かった分かった、ごめんごめん」

しかしそれからしばらくして異変が起こった! 洸介が少し目を離した隙に、優の姿が街から跡形もなく消えてしまったのである!

「おい優! どこ行ったんだ!? 冗談は無しだぜ…ッ!! 返事をしろ!! 優ゥゥぅッッ!!!!!!」

慌てて優の姿を探し回り、街中をあちこち駆け回る洸介。しかしまだこの国に来たばかりで街の地理に明るくない洸介には、いなくなった彼女の姿を探し当てることは不可能に近いことだったのである。

鳳凰院優と黒い人影イラストは、国道16号様。
背景は、ササブネ屋sasabuneya.starfree.jp様のフリー素材より拝借しました。

「んんむっ…むぐぅっ!!」
「大人しく静かにするんだ。さもないと……分かっているな?」
「んむむぅ…」
「フフフ、いい子だ。抵抗しなければこちらも何もしない」

一瞬の隙を突かれ、何者かによって人の全くいない裏手の路地へ連れ込まれてしまい、手際よく縄で両手を縛られた挙句、口に白い布の猿轡を嵌められている最中の鳳凰院優の姿がそこにはあった。

鳳凰院優と黒い人影イラストは、国道16号様。
背景は、ササブネ屋sasabuneya.starfree.jp様のフリー素材より拝借しました。

「ぅぅぅんッ……(この人は誰なの? 私はいったいこれからどうなるの? 怖い…ッッ!! 小寺くん、助けて!!)」

猿轡を口にしっかりと結び付けられ、助けを呼びたくても声を出せない状態の優。この異世界に来て最初に遭遇したチンピラ同然の山賊一味とは違い、今自分を捕まえているこの謎の人物からは、まるでプロの殺し屋のような尋常ならぬ鋭い殺気を漂わせているのを感じ、優はただただ悪寒がして恐怖するのみであった。


一方その頃、シェヴューツァンドの王城では……。

「何だと!? サファガ帝国の工作員が我が王国に潜入した節があるというのかッ?」

配下からの報告を受けるシャイン王子。サファガ帝国とはシェヴューツァンド王国と長年敵対関係にある隣国であり、禍々しき邪神アルドーを信仰する宗政一致の軍事独裁体制国家である。その工作員が複数人、王都に侵入して各所に潜伏しながら暗躍しているらしい。

「イヤな予感がする。すぐに城下にいるコウスケさんとユウさんを城へ呼び戻してくれ」
「畏まりました。直ちに」
「2人とも無事にいてくれればいいが…」

事態はいよいよ風雲急を告げるのであった。

第4話へ続く。

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コメント

  1. 旅鴉 より:

    どうやらシャイン王子は同じ顔の陽平くんと同じく良い人だったようですね、名前の通りに明るい人だ、

    >どうやらこれまでもヘイファロレア世界に迷い込んだ地球人が何人かいたらしく、その都度王国が保護して地球に送り返していたのだそうだ。

    他にどんな方々が迷い込んだのか気になるところですね~、異世界へ通じる洞窟はちょっと危険ですね~、時がくるまで何か対策を考えないと…

    >この世界=ヘイファロレアにいた間の記憶を魔法の力で消去させていただきたい
    これみたいなもんでしょうか?(笑)https://livedoor.blogimg.jp/jin115/imgs/2/5/25e6a90b.jpg

    記憶が消され、元の世界へ戻るまでのひと時間、異世界ライフを楽しむ洸介くんと優ちゃん、だがその身に更なる危険が迫る…
    洸介くんが目を離した隙に、怪しげな男に襲われ捕らわれの身となってしまう優ちゃん、一難去ってまた一難、今度は一筋縄ではいかないようなプロフェッショナルの工作員、
    どうやらシェヴューツァンド王国と因縁のある邪神国家の人間のようで、多分…いや間違いなく優ちゃんが異世界人で王子の関係者と解っての誘拐でしょうね~、いったい何が目的なのか色々と考察してしまいますね~、ただの人質だったら態々優ちゃんじゃなくてもいいわけですからね、異世界人…女性…邪神国家…まあ思い当たるのは生贄の儀式といったところでしょうか?

    • > 異世界人…女性…邪神国家…まあ思い当たるのは生贄の儀式といったところでしょうか?

      お察しの通り、このままだと優はいずれは邪神アルドーに捧げる生贄にされてしまうでしょう。ただそれ以外にもサファガ帝国にとって異世界人である優はいろいろと利用価値がありまして、まずは生贄にする前にシェヴューツァンド王国にとって不利な嘘の証言を強要して「シェヴューツァンド王国は異世界人と組んで周辺諸国を侵略しようとしている」というフェイクニュースをでっち上げ、逆にサファガ帝国がシェヴューツァンド王国に対して正義の名の下に宣戦布告する大義名分として利用するでしょう。

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