おかめマン追跡編ノ巻 その二

＜前回までのあらすじ＞誘拐事件を専門に解決する謎のスーパーヒーロー『おかめマン』の正体を探るべく動き出した、我らが鷺島国際大学報道部の小寺洸介、桜庭陽平、鳳凰院優の3人。しかしおかめマンによく似た悪の帝王『おかめの御前』率いる悪の組織『おかめ党』によって洸介を人質に取られてしまった。困り果てた陽平と優は、優の親友である羽鳥瑠璃華に助けを求めるのであった。

囮捜査

「んんぐぅっ‼」
「んんむぅぅっっ‼」

瑠璃華が知り合いから借りたガレージの中で、綾塚音祢と鳳凰院優が口に猿轡をされて両手両足を縛られている。そして2人のすぐ傍には何と時限爆弾が！？
一方、瑠璃華と陽平、そして瑠璃華や音祢と同じサバゲ―チームのメンバーである逢沢彩人と柏葉章介の4人がガレージの外へ出て物陰に隠れながら様子を伺っている。

「瑠璃華さん、あの時限爆弾まさか…」
「勿論おもちゃに決まってんじゃない！」
「そもそも何でこんな手の込んだことを？」
「桜井君に調べてもらったデータによると、おかめマンは人質が生命の危機に陥った時に颯爽と現れるそうよ。だとすれば、あの偽時限爆弾の起爆時刻直前に必ず現れるはずだわ！」
「桜井じゃありません。桜庭です」

しかしそうこうしているうちにおもちゃの時限爆弾のタイマーをセットした時刻に到達したのだが、おかめマンは一向に現れなかった。

「あれれ～おかしいなぁ…？ これほどのレベルの高い囚われの美少女が2人も揃ってんのにスルーな訳？」
「もう二人の縄は解いてもいいですね？ 綾塚さん、長い時間お疲れ様。大丈夫？」
「…んんっ……うん、ありがとう逢沢くん」
「よしっ、今度は彩人と章介、それに桜田君の3人で改めて試してみるか！」
「えっ、マジですか！？」
「だーかーらー！桜田じゃなくって桜庭だってば！！」

美少女がダメなら今度は美少年で！ということで、次はガールズに代わってボーイズが捕らわれ役を演じる段取りになりそうだったのだが……。

「いい加減アホな真似はやめるッス！ 狂言誘拐とは視聴者が一番ガッカリするケースっすよ」
「あ、あなたは！？」
「視聴者…？？（何のことだ…？）」

突然声がした方向に皆がびっくりしながら振り返ると、何とそこには退屈そうに鼻をほじりながらゴロっと地面に寝そべるように横になっていたおかめマンの姿があった！

「う、うわっ！？　ホントに出た！！」
「おかめマンさんですね！？ 鷺島国際大学報道部のキャスター鳳凰院優です！ 是非インタビューさせてください！！」
「ねぇーねぇーおかめマンさん！ 音祢と優の縛られた姿はどうだった！？ アレ、私が縛ったの！ 綺麗に縛られてたでしょ？」

自らの捕縛術を自慢げに語る瑠璃華に対して、おかめマンはその言葉を遮るように警告を告げた。

「こんなところで遊んでていいんッスか？ そこにいる柏葉章介くんの妹の美佳ちゃんに危機が迫ってるッスよ」
「な、何だって！？」

美佳の危機、シブルリックオーダー見参！

「あーあ、もうサバゲ―出来ないのかなぁ…」

工事看板を前にして溜息をついている柏葉美佳。これまでサバイバルゲームフィールドとして使用していた森林地帯一帯にゴルフ場が建設されることになり、所属しているチーム『DRYADES（ドリュアデス）』の活動は当面休止になってしまった。
美佳が改めてガッカリしていると、関係者以外立ち入り禁止になっている筈の森林の中に、怪しげな黒服の男たちが数人、張られたロープを跨いで入り込んでいくのを目撃してしまう。おかしいと思った美佳がこっそり後をつけてみると、何と黒服の男たちの正体は妖魔結社ザイザムの蜥蜴妖魔獣人と配下の戦闘員たちだった！
ゴルフ場建設を請け負った建設業者はザイザムのダミー企業であり、彼らの目的はこの場所の地下に秘密前線基地を建設することだったのだ！

「う、うそ!! ば、化け物！？」
「誰だ！そこにいるのは！？」
「しまった！見つかっちゃった！」

慌てて走って逃げる美佳だったが、途中で足を躓いて転んでしまう。

「さあ、もう逃げられんぞ！」
「い、いやっ、誰か助けて！！ お兄ちゃん！！音祢さぁぁん！！！」

美佳、危うし！
しかし美佳に手を伸ばそうとした蜥蜴妖魔獣人に長距離ビームライフルの光線が直撃！
さらにバスタードソードとランスが蜥蜴妖魔獣人の鱗を交差するように十字に切り裂く！
思わぬダメージを受け、蜥蜴妖魔獣人はたじろいだ。

「な、何者だァァッッ!!」
「あ、あなたがたは!?」

「やいザイザムの妖魔獣人ッ！ 最近琉那市で事件が起きないと思ってたら、俺たちの目を盗んで今度は本土で何してやがるッ！？ 」
「か弱い女の子を追い回すなんて、いかにも悪党のすることだな！　でも俺たちの監視網から逃れられると思ったら大間違いだぜ！」
「例え地球上のどこに隠れていても、あなたたちの陰謀は私たちが必ず打ち砕いて見せるんだから♪」

颯爽と現れたのは、それぞれ紫色、黄金色、翡翠色に彩られたハイテクオリハルコンスーツに身を包んだ3人の正真正銘正義の戦士だった！

「「「我ら、特務騎士団!! シブルリックオーダー見参!!」」」

その頃、おかめ城では

「んんぐむぅんんぐぅっ…!!」

訳あって鷺島国際大学報道部のメンバーで唯一囚われの身となっていた小寺洸介。おかめ城の一室で拘束台に仰向けに寝かされた状態で監禁されていたが、時間をかけて一生懸命もがき続けた甲斐があったのか、両手両足を拘束しているベルトが少しずつ緩くなり始めた。

「んんぐぅんんむぐ!! んんんーっ!!（もう少しだッ!! 頑張れッ…俺!!）」

カチャッ!!

ようやく拘束具のベルトが外れ、洸介は手足の自由を取り戻した。すぐに口に貼られていたガムテープをベリッと剥がす洸介。

「ふぅーっ、大分てこずっちまったな。早くここから脱出してみんなと合流しないと！」

果たして洸介は、このまま首尾よく広大なおかめ城から脱出することができるのか！？