北関東某県にある蛇ノ谷村の公営キャンプ場へと合宿にやって来た、鷺島国際大学のテニスサークル「Seabreeze Aces」のメンバーたちだったが、2年の白川澪が大庭竜二と田淵毅の二人組に拉致されてしまうが、柏葉美佳と黒瀬律によって無事に保護される。しかし先日の集中豪雨の土砂崩れによって道路は寸断され、蛇ノ谷村は完全に孤立してしまった。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
村の名家を訪ねて
蛇ノ谷村公営キャンプ場に隣接するテニスコートで、Seabreeze Acesのメンバーたちが練習に励んでいた、その頃…。
テニスコート裏手の森では今、大変なことが起ころうとしていることなど露知らず、村の中心部から少し離れた田舎道を、二人の大学生が歩いていた。

二人は三神玲央から許可を得たうえで、蛇ノ谷村に古くから伝わる蛇神信仰について調べるため、村の名家である天宮家の屋敷を目指していた。
「すまへんな、凛。わざわざ付き合わせて」
歩きながら、黎徒が申し訳なさそうに声をかける。
凛は隣を歩きながら、軽く首を横に振った。
「ううん、全然構わないよ。それにしても意外だな」
「ん? 何がや?」
「霧島くんが、オカルトや民俗伝承に興味があったなんて」
「……ん?」
黎徒は一瞬、足を止めかけた。
「ああ、まあな……」
そして、ぎこちない笑みを浮かべる。
「そ、そういうのも、たまには面白いやろ? 昔から伝わる伝承には、その土地の歴史や文化が反映されてることもあるしな」
「へえ~。なんだか意外と真面目な理由だね」
「意外とは余計やろ……」
黎徒は苦笑した。
もっとも、彼が今回の調査に乗り気になった理由は、単なる知的好奇心だけではなかった。
昨日から、この村では不可解な出来事が相次いでいる。
白川澪の拉致監禁事件。
昨夜の豪雨による土砂崩れ。
そして、村人たちが口にする蛇神様の祟り。
それらが本当に無関係なのか、黎徒にはどうしても気になっていた。
しかし、キャンプ場の管理人や村の住民から話を聞こうとしても、蛇神に関する話題になると、どこか歯切れが悪くなる。
中には、露骨に話を避ける者さえいた。
黎徒は道の先を見つめながら、心の中で呟いた。
(……村の連中が、素直に蛇神様のことを教えてくれるわけないやろな)
彼は昨夜の出来事を思い返す。
村人たちが村外の人間の蛇神神社への立ち入りを嫌がっていること。
そして、天宮千代という老婆が、蛇神様の祟りについて何かと口にしていたこと。
(あの婆さんは、村でも名の知れた旧家のご隠居やったな。長年この土地で暮らしてきた人間なら、何か知っとるかもしれへん)
黎徒は隣を歩く凛に視線を向けた。
「せやから、まずはあの”祟りじゃ~!”って騒いどった婆さんに話を聞いてみようと思ったんや」
「なるほどね。確かに、昔から村に住んでいる人なら、いろいろ知っていそうだもんね」
凛は納得したように頷いた。
二人はそのまま、のどかな田舎道を進んでいった。
道沿いには小さな商店や古い民家が点在し、庭先では洗濯物が風に揺れている。
一見すれば、どこにでもある穏やかな山村の風景だった。
しかし――。
「……」
すれ違う村人たちの視線は、どこか冷たかった。
買い物袋を提げた中年女性が、二人を見るなり隣の老人と小声で何かを話し始める。
道端で農作業をしていた男性も、こちらを一瞥すると、あからさまに顔を背けた。
「……何や、あれ」
黎徒が小声で呟く。
「え?」
「いや……なんでもあらへん」
凛も、村人たちの様子には気づいていた。
「なんだか、私たちのことを警戒しているみたいだね……」
「せやな」
黎徒は周囲を見回す。
「まあ、よそ者をあんまり歓迎せえへん土地なんかもしれへんな」
そう言いながらも、彼の表情から警戒心が消えることはなかった。
この村には、何かがある。
まだ確証はない。
だが、少なくとも、表面上ののどかな風景だけを見て判断してはいけない場所だということは、十分に感じ取れた。
やがて二人は、立派な瓦屋根の門が見えてきたところで足を止めた。
「……ここかな?」
凛が門を見上げる。
「たぶんな」
門柱には、古風な書体で『天宮』と記された表札が掲げられていた。
蛇ノ谷村に代々続く名家、天宮家の屋敷である。
敷地の奥には、歴史を感じさせる大きな日本家屋が見えた。
「うわあ……。すごいお屋敷だね」
凛が感嘆の声を漏らす。
「ほんまやな。時代劇に出てきそうや」
黎徒も思わず見入った。
二人は門の脇に設置された呼び鈴の前に立つ。
「ほな、呼んでみよか」
黎徒がボタンを押した。
「すいませーん!」
続いて凛も声を張り上げる。
「どなたかいませんかー!?」
しばらくすると、屋敷の中から足音が聞こえてきた。
やがて門の向こう側から、一人の若い女性が姿を現した。
天宮家の行儀見習い
「はい。どなたですか?」
現れた女性は、落ち着いた雰囲気の美しい女性だった。
黒髪を肩のあたりまで伸ばし、整った顔立ちに穏やかな表情を浮かべている。
身にまとっているのは、マゼンタ色の半袖シャツに白いショートパンツという、動きやすそうな服装だった。
その姿を目にした瞬間――。
「――!?」
黎徒の表情が変わった。
ほんの一瞬。
驚きを隠しきれず、目を見開いてしまったのである。

「……?」
女性は不思議そうに黎徒を見つめた。
「あの……私の顔に、何かついていますか?」
「……えっ!?」
黎徒はハッと我に返った。
「あ、いや、その……!」
思わず視線を泳がせる。
隣にいた凛も、そんな黎徒の様子を不思議そうに見つめていた。
普段の黎徒は、初対面の相手にも比較的落ち着いて接する。
それが今は、明らかに調子がおかしい。
黎徒はどうにか取り繕うように、慌てて口を開いた。
「す、すいません! あまりにお美しい方やったもんで、つい見惚れてもうて……」
「まあ……」
女性は目を丸くしたあと、頬をほんのり赤く染めた。
「そんな……お上手なんですね」
「い、いやいや! ほんまのことですから!」
黎徒は妙に力を込めて答える。
「……」
凛は隣で、じっと黎徒の顔を見つめていた。
(……霧島くん、こんなこと言うタイプだったっけ?)
普段は冷静で、時折関西弁交じりの軽妙なツッコミを入れる黎徒だが、初対面の女性にいきなり褒め言葉を口にするところなど、凛は見たことがなかった。
女性は小さく微笑むと、改めて二人に尋ねた。
「それで、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「あっ、はい!」
凛が一歩前に出た。
「実は私たち、こちらにお住まいの天宮千代さんに、この村に伝わる蛇神様の伝承についてお聞きしたくて……」
「蛇神様の伝承、ですか?」
「はい。私たちは、先ほどキャンプ場でお会いした学生たちの仲間なんです。そう話していただければ、天宮千代さんにも、たぶん分かっていただけると思うんですけど……」
女性は少し考えたあと、柔らかく頷いた。
「分かりました。大奥様にお取り次ぎいたします」
そして、門を開ける。
「どうぞ、こちらへ」
「あ、ありがとうございます!」
凛が頭を下げる。
「お邪魔します」
黎徒も続いて一礼し、屋敷の敷地内へと足を踏み入れた。
その際、黎徒はもう一度だけ、先を歩く女性の横顔を見つめた。
先ほど感じた驚き。
それは、単に相手が美しかったからというだけではなかった。
しかし、今はその理由を口にすることなく、彼は黙って彼女の後を追った。
「そういえば……」
庭を歩きながら、凛が女性に尋ねる。
「もしかして、天宮千代さんのお孫さんですか?」
「いえ、違いますよ」
女性は振り返り、微笑んだ。
「私は寺瀬聖佳といいます。このお屋敷に住み込みで、行儀見習いをしている者です」
「へえ~、そうなんですかぁ……」
凛は感心したように声を上げた。
「行儀見習いって、今でもあるんですね」
「ええ。こちらでは、いろいろと勉強させていただいています」
聖佳は穏やかな口調で答えた。
「まだまだ至らないところも多いのですが……」
「そんなことないですよ。私、こういう立派なお屋敷に入るのも初めてですし、ちょっと緊張しちゃいます」
「ふふっ。どうぞ、そんなに緊張なさらないでください」
聖佳は優しく微笑んだ。
「大奥様も、若い方が訪ねてこられるのを楽しみにされると思いますよ」
「そうなんですか?」
「はい」
二人がそんな会話を交わしている間も、黎徒は黙って歩いていた。
その表情は、先ほどまでとは打って変わって険しい。
聖佳の後ろ姿を、じっと見つめている。
凛はそんな黎徒の様子に気づき、そっと彼の袖を引いた。
「……ねえ、霧島くん」
「ん?」
「さっきからどうしたの?」
「……何がや?」
「聖佳さんのこと、ずっと見てるじゃない」
そして、ニヤリと笑う。
「あ、もしかして……一目惚れしちゃった?」
「ハァ!?」
黎徒は思わず声を上げかけ、慌てて口を押さえた。
「ちゃうちゃう! そんなんやない!」
「え~? 隠すな隠すな(笑)」
「だから、そんなんやないって……!」
黎徒は小声で抗議する。
「ええか、凛。これはそんなんとはちゃうんや。もっとこう……」
「もっとこう?」
「……」
言葉に詰まる黎徒。
凛はますます面白そうに笑った。
「ほら、やっぱり気になってるんじゃない」
「ちゃう言うとるやろ……!」
「お二人とも?」
その時、先を歩いていた聖佳が振り返った。
「どうかされましたか?」
「「いえ、何でもないです!」」
黎徒と凛は、見事なほど息の合った返事をした。
聖佳は一瞬きょとんとしたものの、すぐに柔らかな笑顔に戻った。
「そうですか。それでは、こちらです」
そして再び歩き始める。
凛は黎徒の隣で、声を押し殺して笑っていた。
「……後で覚えとけよ、凛」
「ふふっ、ごめんごめん」
黎徒は小さくため息をついた。
だが、その視線は再び、先を歩く聖佳の後ろ姿へと向けられていた。
彼女の存在が、彼の中で何かを引っかからせている。
それだけは、間違いなかった。
天宮千代の昔語り
やがて聖佳は、屋敷の奥にある縁側へと二人を案内した。
そこは美しく手入れされた日本庭園に面しており、庭石の間には苔が生え、奥には古い石灯籠が置かれている。
縁側には座布団が敷かれ、その上に一人の老婆が正座していた。
長い白髪。
深く刻まれた皺。
そして、どこか人を食ったような笑み。
天宮千代である。
昨日、キャンプ場で学生たちを驚かせた、あの老婆だった。
「大奥様、お客様をお連れしました」
聖佳が声をかけると、千代はゆっくりと顔を上げた。
「おお、来たか」
そして、黎徒と凛を交互に眺める。
「そなたらが、蛇神様のことについて聞きたいという若いもんか?」
「はい。突然お邪魔して申し訳ありません」
凛が丁寧に頭を下げた。
「私たち、鷺島国際大学のテニスサークルの者です。この村に伝わる蛇神様の伝承について、ぜひお話を伺いたくて……」
「ふむ……」
千代は顎に手を当て、しばらく二人を眺めていた。
やがて、口元に笑みを浮かべる。
「今時の若いもんにしては、殊勝な心がけじゃ。よしよし、聞かせて進ぜよう」
「本当ですか!?」
凛の表情が明るくなる。
「ありがとうございます!」
黎徒も頭を下げた。

千代は満足そうに頷いた。
「うむ。遠慮せず、何でも聞くがよい。儂が知っておることなら、何でも話してやろう」
聖佳は、縁側の脇に置かれていた盆を手に取った。
そこには三人分の湯飲みが用意されている。
「粗茶ですが、どうぞ」
聖佳は千代の前に湯飲みを置き、続いて黎徒と凛にもお茶を差し出した。
「あっ、どうかお構いなく!」
凛は慌てて両手を振った。
「いえいえ。せっかくお越しいただいたのですから」
聖佳は微笑みながら、二人の前にも湯飲みを置いた。
「ありがとうございます」
黎徒が礼を言う。
湯飲みからは、ほのかな湯気が立ち上っていた。
千代はお茶を一口すすり、それから聖佳へ目を向けた。
「聖佳や」
「はい、大奥様」
「お前は、これから買い物に行くのであったな?」
「はい。そろそろお夕飯の買い出しに出かけようと思っております」
聖佳は軽く頭を下げた。
「うむ、気を付けていくんじゃぞ」
「ありがとうございます」
聖佳は黎徒と凛にも向き直った。
「では皆さんも、どうかごゆっくり」
「はい。ありがとうございます」
凛が笑顔で答える。
黎徒も小さく頷いた。
「お邪魔してます」
聖佳は二人に一礼すると、屋敷の奥へと戻っていった。
その後、玄関の方から、外出の支度を整える気配が聞こえてくる。
やがて、門の開閉する音が遠くに響いた。
聖佳が買い物へ出かけたのだろう。
庭には再び、穏やかな静けさが戻ってきた。
縁側では、天宮千代が湯飲みを手に、二人の若者をじっと見つめていた。
「さて……」
千代は、意味ありげに笑った。
「どこから話してやろうかのう」
黎徒と凛は顔を見合わせ、それから改めて千代へ向き直った。
蛇ノ谷村に古くから伝わる蛇神様の伝承。
村人たちが語りたがらない、土地の秘密。
そして、昨夜の豪雨と土砂崩れの背後に潜んでいるかもしれない、何か。
二人が知りたいことは、いくつもあった。
黎徒は湯飲みをそっと置き、真剣な表情で口を開いた。
「天宮さん。まずは、この村に伝わる蛇神様について、教えてもらえますか?」
千代はしばらく黎徒の顔を見つめていた。
やがて、ゆっくりと頷く。
「……よかろう」
その声は、先ほどまでの軽妙な調子とは少し違っていた。
「ならば、蛇ノ谷村に伝わる、古い古い話から始めるとしようかのう……」
庭を吹き抜ける風が、木々の葉を静かに揺らした。
蛇ノ谷村に隠された秘密が、今まさに語られようとしていた。
(つづく)
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