北関東某県にある蛇ノ谷村の公営キャンプ場へと合宿にやって来た、鷺島国際大学のテニスサークル「Seabreeze Aces」のメンバーたちだったが、楽しい夕食の準備中に2年の白川澪の悲鳴が……。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
消えた澪――夕暮れ前の捜索
「キャアアアッ!!」
コテージの方角から響いた悲鳴は、共同炊事場にまで届いた。
その瞬間まで、和気あいあいと夕食の準備をしていた「Seabreeze Aces」のメンバーたちの動きが、一斉に止まる。
炭焼き台の前にいた羽柴蒼真は、手にしていたトングを置いた。
「……今の、澪の声じゃないか!?」
「えっ……!?」
九条玲沙もカレー鍋から顔を上げる。
桐谷茜は包丁をまな板の上に置き、新海美羽も麦茶のボトルをテーブルに置いた。
「と、とにかく行う!」
三神玲央の声を合図に、全員が一斉に駆け出した。
まだ日は高い。
夏の夕暮れが近づきつつあるとはいえ、森に囲まれたキャンプ場の空は十分に明るく、足元が見えないような時間ではない。
それでも――。
先ほどまで聞こえていた笑い声や、肉の焼ける音、包丁がまな板を叩く音は、もう誰の耳にも入らなかった。
全員の頭にあるのは、ただ一つ。
白川澪の身に何があったのか。
「澪!」
コテージへ飛び込んだ蒼真が叫ぶ。
しかし、返事はない。
「澪! どこ!?」
玲沙も続いて室内へ入る。
そして――全員が言葉を失った。
「……何、これ……」
茜が呆然と呟く。
室内は、出発したときとは明らかに様子が違っていた。

棚の中身は引っ張り出され、テーブルの上に置いてあった荷物は床に散乱している。バッグは開けられ、衣類や小物があちこちに散らばっていた。
まるで、誰かが部屋の中を手当たり次第に物色したかのようだった。
「泥棒……?」
南條陽菜が不安そうに呟く。
だが、誰も答えられない。
蒼真は部屋の奥まで駆け込む。
「澪!」
返事はない。
「トイレにもいない!」
「こっちもいないよ!」
美羽と高槻紗季も別の部屋を確認する。
「澪さーん!」
紗季が声を張り上げる。
しかし、やはり返事はない。
蒼真の顔から血の気が引いていく。
「……いない」
「まさか……」
瑛人が言葉を詰まらせる。
玲沙は呆然と立ち尽くしていた。
「澪……どこに……?」
蒼真が拳を握る。
「急いで澪を探すんだ!」
その一言で、全員が我に返った。
それから数分後。
キャンプ場周辺は、一気に慌ただしくなった。
「澪ー!」
「白川さーん!」
「澪ちゃん、いるなら返事して!」
コテージの周辺。
炊事場。
テニスコート。
駐車場。
そして、コテージから続く遊歩道。
サークルメンバーたちは手分けして、白川澪の姿を探した。
しかし――。
どこにもいない。
「こっちにはいません!」
「テニスコートも誰もいない!」
「フィールドアスレチックの方も駄目だ!」
報告が次々と返ってくる。
やがて、全員が再びコテージ前へ集まった。
見つからない。
その事実が、少しずつ全員の胸に重くのしかかっていく。
紗季が不安そうな顔で口を開いた。
「澪さん……もしかして、何かの事件に巻き込まれたってこと……!?」
「まだそうと決まった訳じゃない!」
蒼真がすぐに否定する。
声こそ強かったが、その表情には明らかな焦りが浮かんでいた。
「もしかしたら、どこか別の場所に移動してるだけかもしれない。だから、まず落ち着こう」
そう言った蒼真自身が、必死に落ち着こうとしているようにも見えた。
一方、玲沙は俯いていた。
「……私のせいだ」
「玲沙?」
「私が澪に『冷蔵庫から飲み物を持ってきて』なんて言ったから……」
玲沙の声が震える。
「私が頼まなければ、澪は一人でコテージに戻らなかった。こんなことには……」
「玲沙のせいじゃない」
玲央が静かに言った。
玲沙が顔を上げる。
「でも……!」
「そう自分を責めるな」
玲央はまっすぐ玲沙を見つめる。
「今は誰が悪いかを考えるより、白川さんを見つけることが先だ」
「……玲央……」
玲央は周囲を見渡した。
そして早乙女陽飛に声をかける。
「陽飛、警察に連絡してくれ」
「それが……」
陽飛はスマートフォンの画面を見せた。
「ダメだ……さっきからやってるけど、スマホは圏外で電波が繋がらない」
「くそっ……」
伏見湊が眉をひそめる。
陽菜が思い出したように言った。
「元々ここのキャンプ場、電波接続もネット環境も悪いから比較的空いてて、料金も格安って触れ込みでしたもんね……」
「こんな時に、それが裏目に出るなんて……」
茜が唇を噛む。
水瀬凛も不安げに周囲を見る。
「どうしよう……。もう管理棟も閉まってる時間ですよね。管理人さんも帰っちゃってるだろうし……」
そのときだった。
「俺が行ってきます」
海老名碧斗が手を挙げた。
「村の交番まで、ちょっくらひとっ走り行ってきますよ」
「碧斗くん……」
「ここで全員が立ち尽くしてても仕方ないですから」
碧斗は努めて明るく言った。
すると茜もすぐに続く。
「私も一緒に行きます!」
「茜?」
「二人で行った方がいいですよ。村までの道も、二人一緒の方が安心です」
「……分かった」
玲央は少し考えた後、頷いた。
そしてメンバー全員を見回す。
「頼む! それでは俺と湊、陽飛、蒼真、悠磨の5人は引き続き白川さんを捜索する!」
「了解!」
蒼真が答える。
「佐伯と霧島は、女の子たちと一緒にコテージで待機!」
瑛人と黎徒の1年男子コンビは、コテージで留守番をする女子たちを守る役目だ。
「了解です!」
瑛人が元気よく返事をする。
隣では黎徒も頷いた。
「任せといてください」
「それと――」
玲央は一瞬だけ言葉を切った。
「無理はするな。何かあったら、すぐ戻ってこい」
碧斗と茜が頷く。
「はい!」
「分かりました!」
こうして役割が決まった。
海老名碧斗と桐谷茜は、村の交番へ向かう。
三神玲央、伏見湊、早乙女陽飛、羽柴蒼真、風間悠磨の男子5人は、引き続きキャンプ場周辺を捜索する。
そして残った女子メンバーは、佐伯瑛人と霧島黎徒とともにコテージで待機することになった。
「……澪」
出発する碧斗と茜を見送りながら、蒼真が小さく呟いた。
さっきまでの彼らは、ただ夏休みを楽しむ大学生だった。
テニスをして。
アスレチックで遊んで。
夕食の準備をして。
皆で笑いながら夜を過ごす――。
そんな、ごく普通の夏合宿になるはずだった。
だが今は違う。
楽しい夕食も、バーベキューも、カレーも、すべて後回しだ。
白川澪が戻ってくるまで、誰も心から笑うことなどできない。
「……行こう」
玲央が静かに言った。
「澪を見つけるぞ」
「はい」
蒼真が頷く。
湊、陽飛、悠磨もそれに続く。
まだ夏の明るさが残るキャンプ場。
しかし、森の向こうから伸びてくる長い影が、少しずつ地面を覆い始めていた。
そして彼らはまだ知らない。
白川澪の失踪が、単なるキャンプ場での盗難事件などではないことを――。
蛇ノ谷村で蠢き始めた、もう一つの異変が彼女たちの日常へ迫っていることを。
降り出した雨――途絶えた捜索
蛇ノ谷村の中心部。
山あいを縫うように伸びた細い道路の脇に、小さな交番が建っていた。
古びた看板には「蛇ノ谷駐在所」とある。
海老名碧斗と桐谷茜は、息を切らしながらその交番へ駆け込んだ。
「すみません!」
「誰かいますか!?」
二人の声に、奥からのんびりとした足音が聞こえてくる。
「はいはい……どうしました?」
姿を現したのは、年配の巡査だった。
長年この村の駐在所に勤務している老巡査で、白髪の混じった髪に、どこか眠そうな穏やかな表情を浮かべている。

碧斗は矢継ぎ早に事情を説明した。
「実は、一緒にキャンプに来ていた友達が一人、行方不明になったんです!」
「白川澪っていう女子大生です。コテージの中が荒らされていて、本人だけがいなくなってるんです!」
茜も必死に訴える。
しかし――。
井出巡査長は、二人の顔を交互に眺めた。
そして、困ったように笑う。
「まあまあ、そんなに慌てなさんな」
「でも、本当に大変なんです!」
「分かっとりますよ」
そう言いながらも、井出の様子には緊迫感がまるでない。
「しかしねえ……」
井出は椅子に腰を下ろし、机の上に置かれた湯飲みを手に取った。
「こんなのどかなで平和な村で、そんな物騒な事件が起きる訳ないだろう」
「……え?」
碧斗の表情が固まる。
「どうせその女子大生とやらも、どこか近くをふらふらと歩いてるんじゃないのかね?」
「いや、でも……!」
「若い人は元気だからねえ。ちょっと散歩に出たとか、そういうこともあるでしょう」
「そんな……」
茜は言葉を失った。
コテージの中が荒らされていた。
悲鳴を聞いた。
そして、澪だけが消えた。
どう考えても普通ではない。
それなのに、この巡査長は――。
まるで「大学生が一人、散歩に出ただけ」とでも言わんばかりだった。
碧斗は唇を噛んだ。
「……分かりました」
「え?」
「もういいです」
碧斗はそれ以上何も言わなかった。
怒りというより、呆れだった。
ここでいくら説明しても、この人には取り合ってもらえない。
「行こう、茜」
「う、うん……」
二人は交番を出た。
「いやあ、気をつけて帰りなさいよ」
背後から井出ののんびりした声が飛んでくる。
二人は振り返らなかった。
交番を出た、その直後だった。
ぽつり。
碧斗の頬に冷たい雫が落ちた。
「……ん?」
続いて――。
ぽつり。
ぽつり。
空から雨粒が落ち始める。
茜が空を見上げた。
「……あれっ……雨?」
灰色の雲が、いつの間にか村の空を覆っていた。
「さっきまで晴れてたのに……」
碧斗も空を見上げる。
「天気予報じゃ、しばらく晴れのはずだったんだけどな」
やがて雨粒は少しずつ数を増していった。
「……嫌な雨だな」
碧斗が呟く。
二人の脳裏に、行方不明になった澪の姿が浮かんだ。

2階の窓から、急に雨が降り出した外の様子を眺めている。
「律、雨だよ…」
「………」
一方、その頃。
キャンプ場のコテージでは――。
窓ガラスを激しく叩く雨音が響き始めていた。
「……雨、強くなってきましたね」
水瀬凛が窓の外を見つめる。
先ほどまで明るかったキャンプ場は、急速に薄暗くなっていた。
雨に煙る木々。
濡れたテニスコート。
水たまりが広がっていく遊歩道。

凛は不安そうに呟いた。
「週間天気予報だと、今週一週間は快晴のはずなのに……」
「……」
九条玲沙は何も答えなかった。
ただ、窓の外をじっと見つめている。
その横顔には、心配と後悔が入り混じっていた。
「澪……」
玲沙が小さく名前を呟く。
隣にいた高槻紗季も、不安そうに手を握りしめた。
「蒼真先輩たち……大丈夫でしょうか……」
三人の誰も、答えを返せなかった。
そして――。
キャンプ場から少し離れた森の中。
「澪ーっ!」
雨音を切り裂くように、羽柴蒼真の声が響いた。
「どこにいるんだぁー!」
蒼真はレインコートを羽織り、雨に濡れながら森の中を歩き続けていた。
「いたら返事をしてくれー!!」
しかし、返ってくるのは雨音だけ。
ザーッ……。
ザーッ……。
木々の葉を叩く雨。
足元には泥水が流れ始めている。
蒼真はそれでも歩みを止めなかった。
「澪……!」

その時。
「羽柴!」
後方から声がした。
振り返ると、同じくレインコート姿の伏見湊が立っていた。
「湊先輩……!」
「羽柴、残念だがここまでだ」
「え……?」
湊は険しい顔で周囲を見渡した。
「見ての通り豪雨になってきた」
雨はすでに、傘などでは到底防げないほどの勢いになっていた。
「それに、まもなく日が暮れて暗くなる。このままじゃ俺たちまで遭難だ」
「でも……!」
蒼真は食い下がった。
「澪がまだ……!」
「分かってる」
湊は蒼真の肩を掴む。
「俺だって白川を置いて帰りたいわけじゃない」
「だったら――!」
「だからこそだ!」
湊の声が、珍しく強く響いた。
「今の俺たちがここで遭難したら、白川を捜す人間がさらに減るんだ!」
「……!」
蒼真は言葉を失った。
湊は少しだけ声を落とす。
「明日、夜が明けたらまた捜索を再開しよう」
「……」
「ひとまずコテージへ戻るんだ」
蒼真はしばらく動かなかった。
やがて、拳を強く握りしめる。
「……くそっ……!!」
悔しさに震える声。
「どうして……」
雨に濡れた顔を俯ける。
「どうしてこんなことに……!」
湊は何も言わなかった。
ただ、蒼真の肩を静かに叩いた。
「帰ろう、羽柴」
「……はい……」
二人は来た道を引き返し始めた。
その背中に、容赦なく雨が降り注ぐ。
森の奥は、すでに夕暮れを先取りしたような暗闇に包まれていた。
そして――。

「フフフッ…まずは作戦の第一段階完了っと♪」
蛇ノ谷村を襲った急な豪雨は、やはり常闇のレギーナ=ノクタの仕業だった!
この豪雨によって、蛇ノ谷村で起きている異変は、誰にも知られないままさらに深い闇の中へと沈んでいくのだった。
(つづく)
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