いざ、追跡開始!
平瀬倫生と藤永沙織が廃ビルから麻薬の売人である二人組の男によって連れ出され、車に乗せられてどこかへと連れて行かれる様子を遠くから密かに確認していた勢川理人と岸本愛実は、すぐに通りすがりのタクシーを捕まえて追跡を開始した。もっと遠くへ連れて行かれるのかと思いきや、車は意外にすぐ近くの解体工事中の建物の前で停まった(タクシー代を考えると、かえってそれでよかったのだが…)。犯人たちに気づかれないようタクシーから降りた理人と愛実は、崩れかかった建物の前に立つ。どうやら何らかの理由で、解体途中で工事が中断され放置されてしまっている建築物のようだ。
「ここが麻薬の売人たちの本当のアジトか…」
「理人、これからどうするの?」
「勿論、中に入って倫生と藤永さんを助け出す! 愛実、危険だからお前は外で待っているんだ」
「いいえ、私も行くわ! 沙織と平瀬くんのことが心配なのは私も一緒よ!」
「……分かった。だけど絶対に俺の側を離れるなよ!」
その頃、倫生と沙織は!?
一方その頃、倫生と沙織は、地上とも地下とも分からぬ窓のないレンガ造りの部屋で、縛られたままソファに座らされていた。
「んぅー、んむぐぐぅぅむむーッッ!!」
「んむむぅぅ…んんっ!!」
「もしこのままブツの在処を素直に吐かないようだったら、2人とも海外に売り飛ばしてやるぜ。ブツを紛失した損害は、少しでも穴埋めしなきゃならねーからな!」
「お嬢ちゃんの方は、その前に俺がたっぷりと味見して可愛がってやるからなww」
高笑いを上げながら、倫生と沙織を残して部屋を出て行く売人二人組。二人っきりになった倫生と沙織は背中合わせに近づき、お互いの両手首を拘束している縄を何とか解こうとする。
「んっ、んんっ…!!」
「んむむっ、んんーっ!!」
お互いにもじもじと体を寄せ合って、何とか手首に巻き付いている縄を何とかしようとするが、しっかりきつく縛られており、解ける様子は一向に見えない。そんな時だった。売人たちに見つかり捕まった理人と愛実がこの部屋へと連れて来られたのは……。
「ちきしょー!放しやがれ!」
「ちょっと痛いじゃない! 乱暴しないでよ!」
驚いたのは倫生と沙織である。
「んむむっ!?(理人!?)」
「んむむぅぅ!? んむむぐぅぅ!?(愛実!? どうしてここへ!?)」
「すまない…。俺としたことが、ドジを踏んだ」
「2人を助けようとして、私達も捕まってしまったの…」
とんだ醜態を晒してしまった理人と愛実に対して、売人たちはせせら笑う。
「けけけ…バカな学生どもだww」
「探偵ごっこも程々にしときなww」
時限爆弾
「んっ、んむぐぐぅぅ!!」
「んんーっ!んんーっ!」
「んっ、んんーっ!!」
「んむぐぐ、むぐぐぅぅ…!!」
さらに最深部の部屋へと移された4人は、時限爆弾を仕掛けられてまとめて吹き飛ばされることに!?
どうやら麻薬密売組織のボスからの指示で、海外に人身売買する予定を急遽変更したらしい。
「もともとここは解体されるはずの建物だったんだ」
「お前たちの死体も粉みじんになって、廃材に混ざったまま永遠に発見されないっていう寸法よ!」
麻薬の売人の男たちは時限爆弾のタイマーを30分後にセットすると、ゲラゲラ笑いながら出て行った。4人は逃げようと必死にもがくが、爆弾のタイマーは非常にも刻々と時計の針を進めていくのだった。
エピローグ
結論から言うと、4人は無事に助かった。
倫生が事前にすり替えておいた本物のラケットバッグを理人と愛実が受け取り、すぐに警察に届け出ていたのだ。あらかじめ警察が動いていたことで、理人たちは時限爆弾の爆発前に救出され、麻薬の売人たちも見事逮捕されたのである。警察の話では、理人たちの協力のおかげで長年追っていた麻薬密売組織の中枢をいよいよ追い詰めることが出来そうだとのことだった。
「ごめんね。今回は私のドジのせいでみんなを危険に巻き込んで」
「藤永さんのせいじゃないよ。君は全然悪くない。なぁ倫生? 愛実?」
「そうだとも! 沙織のことを悪く言う奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやる」
「いつまでも自分を責めないで。ね、沙織」
「うん、ありがとうみんな」(^^)
仲間たちみんなの励ましで立ち直る沙織。ちなみに沙織のラケットバッグだが、しばらくは事件に関連する証拠物件として警察が預かることになるらしく、当分は沙織の手元に戻ってこないらしい。テニスラケットやウェアも全部あの中にしまったままなので、代わりの物を今度デートがてら一緒に買いに行こうと倫生から誘われ、沙織は上機嫌になった。
「代わりのテニス用品ならここで買えばいいじゃないか? ここなら店員割引だってあるし」
「いいの! とも君とデートに行くのが目的なんだから!」
理人から「朝比奈テニスショップで買えばいい」とツッコミを入れられても、こんなことを臆面もなく堂々と言える沙織はやはり天然なのか。横ではどことなく倫生が少し恥ずかしそうだ。その様子を愛実は優しく見守るように微笑ましく笑っている。
小規模テニスサークル『TEAM FRIENDS』は、今日も平和である。めでたしめでたし。
コメント
昨年末に伯父が亡くなりまして喪中の身ですので明けましておめでとうございますとは申せませんが、旧年中は色々とお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
私の危惧も外れて(笑)理人君と愛実ちゃんも捕まってしまいましたね。最もこのブログ的にはその方が面白いとも言えますが…。
人身売買の予定を爆破に切り替えてしまうとは麻薬密売組織のボスも相当な鬼畜ですね。〇〇の余罪も結構出てきそうです。
災難に巻き込まれてしまった沙織ちゃん、テニス用具一式を新調する機会を得ましてここは塞翁が馬といったところでしょうか…。
bakubond様、こちらこそ本年もよろしくお願い申し上げます。
> 人身売買の予定を爆破に切り替えてしまうとは麻薬密売組織のボスも相当な鬼畜ですね。〇〇の余罪も結構出てきそうです。
まさしく急ぎ働きに手慣れた連中と言えるでしょう。血の匂いを嫌う我がおかめ党とは相容れぬ集団のようですが、ストーリー上に一種の緊迫感を出すためにもこういった鬼畜犯罪者は今後も度々出番はあるものと思います。
あけましておめでとうございます。
昨年はなろう小説の投稿に挑戦してみるなど個人的に多忙で、ほとんどこちらへ顔を出せず申し訳ありませんでした。
改めまして、今年もよろしくお願い致します。
助けに来た側も捕まって一緒に連縛は王道ですね~。
テニス道具まで当面失って沙織ちゃんには災難でしたが、本人(倫生くん)の前で堂々とデートに行く名目になるからいいのと公言してしまうのは流石で素敵なキャラしてます。
私のサイトでもブレイブサクセッションのヒロイン・稲垣千秋の新年初縛りのイラスト付きで新エピソードを公開しました。
https://bravesuccession.jimdofree.com/episode2-20/
SSの文章はbakubond様。執筆参加して下さったことに改めてこの場をお借りして御礼申し上げます。
鳳様、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。
実は別サイトの『翁の御前の隠し部屋』のブレイブサクセッション関連ページなのですが、ブレイブサクセッションの本サイトが昨年8月以来更新されておらず音沙汰がなかったことと、『翁の御前の隠し部屋』のサーバー容量が残り少なくなっていたこと、そして当方がブレイブサクセッションで風呂敷を広げ過ぎてストーリーの収拾がつかなくなっていたため仕切り直しをしたかった等からの理由で、一旦全て削除いたしました。ページの再開時期は未定です。鳳様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承ください。
> 私のサイトでもブレイブサクセッションのヒロイン・稲垣千秋の新年初縛りのイラスト付きで新エピソードを公開しました。
これは可愛い!
さすがはKazuHanabi様の美少女イラストですね。
ただ少しだけ残念なのは、口にガムテープが貼られていた間の千秋ちゃんの姿も見たかったですね。
皆様あけましておめでとう御座います!
管理人様、新年初更新お疲れ様です!
新年早々見事に4人とも捕まっちゃいましたね、今回の相手は捕らえた2人を売り飛ばそうとしたり、それが面倒だと思ったらまとめて爆破始末と、色々と外道な奴らでしたね、
でもまあ…最初にブツの事知られた時点でもう警察に仲間が駆け込んでることぐらい想像出来ていないとは…結構呑気に獲物の前に舌なめずりしてる時点で三流ですねこいつら…だからこそDIDストーリーが出来上がるのですけどね、善児タイプだとストーリーにもならないですから(笑
>「代わりのテニス用品ならここで買えばいいじゃないか? ここなら店員割引だってあるし」
「いいの! とも君とデートに行くのが目的なんだから!」
新年早々見せつけちゃってくれますね~、全国のぼっち血を吐いてますぜ…
これは今年も色々巻き込まれて縛られちまえばいいんですよ(酷い言いようだな
旅鴉様、新年あけましておめでとうございます。どうか今年もよろしくお願い申し上げます。
> 善児タイプだとストーリーにもならないですから(笑
確かにその通りですね。日本全国のDIDマニアに求められる誘拐犯人像とは、鎌倉のゴルゴ13と恐れられた必殺仕事人の善児ではなく、いつも肝心なところで仕事をしくじるトウちゃんのようなタイプなのです。( ̄ー ̄)ニヤリ
> 新年早々見せつけちゃってくれますね~、全国のぼっち血を吐いてますぜ…
> これは今年も色々巻き込まれて縛られちまえばいいんですよ(酷い言いようだな
はい、その通りであります!(`・ω・́)ゝ
日本全国に潜む犯罪者や悪の組織は、今年も我々DIDマニアの期待に応えるべく沙織ちゃんや愛実ちゃんを付け狙い続けるのです!( ̄ー ̄)ニヤリ