都内のホテルに滞在中のアストリッド王女を狙って襲撃して来た刺客を撃退した、加藤段十郎とリネア=フリーデン=ヴァイサーは、ヴァレンタイン綾子から亜斗夢重工の三枝万蔵を紹介される。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
Aパート
朝の光が、来島邸の広い玄関先をやわらかく照らしていた。

白い半袖セーラー服に身を包んだ来島陽依は、鞄を肩にかけ、振り返る。
「じゃあパパ、行ってくるね」
「うん、気を付けていっておいで」
衆議院議員・来島士門は、穏やかな笑みを浮かべて娘を見送った。
その声は優しく、どこにでもいる父親のそれだった。
陽依は小さく手を振り、門を出ていく。
やがてその姿が見えなくなるまで、士門はじっと見送っていた。
――そして。
ふっと表情から温かみが消える。
そのまま踵を返し、邸内へと戻っていった。
書斎。
重厚な扉を開けた瞬間、空気が変わる。
そこにはすでに、二つの影があった。
一人は、長い髪を背に流した侍――風祭兵庫介。
もう一人は、壁際に静かに佇む女。黒装束に身を包み、気配すら希薄な――弥御影一族の上忍、白夜叉の伽羅。
士門はゆっくりと部屋の中央へ進み――
「……散々な結果だったようだな!!」
机に手をつき、吐き捨てるように言った。
怒気が、空気を震わせる。
だが。
「いや、誠に面目ない」
兵庫介は、まるで風に揺れる葦のように軽く頭を下げただけだった。
その表情に、焦りは微塵もない。
「とはいえ――」
ゆっくりと顔を上げ、口元に薄い笑みを浮かべる。
「どこかの誰かが、“王女を生かしたまま拉致し、日本国外へ移送したのちに始末する”などという回りくどい注文をなさらなければ、もう少し円滑に事を運べたのですがな」
明らかな嫌味。
士門のこめかみに、ぴくりと血管が浮かぶ。
「……しくじったのは私のせいだと言いたいのか?」
低い声。
だが兵庫介は、にやりと笑った。
「ハハハ、滅相もない」
その軽さが、余計に神経を逆撫でする。
士門は一歩踏み出し、言い放つ。
「いいか?」
その目には、清廉潔白な政治家の顔とは別の、冷たい野心が宿っていた。
「もしアストリッド王女が明確に日本国内で死んだとなれば――」
一語一語、噛み締めるように続ける。
「誰が交渉責任者になっても角が立ち、ルミナイト・オルガニウムの権益を巡るヴァルクルンドとの交渉に支障が出る」
拳を強く握る。
「それでは私の手柄にならん!」
書斎の空気が、ぴんと張り詰める。
「だから王女は――あくまで国内で”失踪”した後、日本国外で息の根を止める必要があるのだ」
その言葉には、ためらいが一切なかった。
人の命も、国の未来も、すべてが“駒”として並べられている。
その背後にあるのは、さらに大きな陰謀だった。
実はヴァルクルンド王国本国では今、第一王位継承者アストリッドの暗殺を目論む宮廷革命の企みが、水面下で進行していた。
その首魁たる公爵と内通した士門は、日本という舞台を利用し、すべてを自らの功績へと変える算段を描いていた。
もし王女が来日中に“遭難”すれば――
これまで対ヴァルクルンド外交を主導してきた政敵・ヴァレンタイン綾子は、責任を取らされる形で失脚。
その後釜として交渉を引き継ぐのは、自分。
そして王女を失ったヴァルクルンドでは公爵派が実権を握り、新たな政権との間で有利な貿易協定を締結する。
そのすべてを、“自らの手柄”として。
「……今朝のしくじりで、王女の警護は一段と厳しくなるだろう」
士門は鼻で笑う。
「このままでは、吉野のご老人へもあまりよい報告は出来そうにないな?」
吐き捨てるように言い、踵を返す。
「ではな」
それだけ言い残し、書斎を出ていった。
再び、政治家としての顔に戻り、国会へ向かうために。
――静寂。
部屋に残されたのは、兵庫介と伽羅。
数秒の沈黙の後。
「……おのれ、言わせておけば……!」
伽羅の声が低く響く。
その瞳には、鋭い怒りが宿っていた。
「兵庫介様。いくら吉野の御前様の言いつけとはいえ……いつまで我らは、あのような小物の下で働かねばならぬのですか!?」
その言葉は、明確な侮蔑を含んでいた。
兵庫介は、くつくつと喉を鳴らして笑う。
「まあそう怒るな」
ゆっくりと歩き、窓の外に目を向ける。
「王女が日本国内にいる限り――」
その目が、妖しく細められる。
「まだ、いくらでもやりようはある」
フフフッ……と低い笑い。
その背後には、さらに古い影が横たわっていた。
南北朝の動乱。
滅びたはずの南朝の残党。
そして、いまなお吉野の山奥に潜み、現代に影響を及ぼす“吉野の老人”。
その正体も目的も、誰も知らない。
ただ一つ確かなのは――
この国の裏側で、歴史の亡霊たちが、今なお蠢いているということだった。
Bパート
横浜市郊外。
住宅街の一角に建つ「久我鍼灸整骨院」。その奥に続く母屋の玄関先に、一人の少女が静かに立っていた。
黒髪を団子にまとめ、無機質なほど整った顔立ち。緑のカンフー服に黒のショートパンツという、どこか場違いな服装。
周翠琳。
その瞳は、何かを見ているようで――何も見ていないようでもあった。
「あっ、翠琳さん! いらっしゃい!」
勢いよく玄関の戸を開けたのは、久我美輝。高校二年生の少年だ。
「久しぶりじゃのう」
奥から顔を出したのは祖父の久我明徳。
翠琳は、ゆっくりと二人に視線を向ける。
「……明徳先生、ご無沙汰しております。美輝も、元気そうで何より」
抑揚のない声。表情もほとんど動かない。
だが、それがかえって不思議な存在感を放っていた。
「そんなところに突っ立っておらんで、まずは上がりなさい」
「……いえ。たまたま近くを通りかかって、挨拶にと立ち寄っただけなので、どうかお構いなく」
淡々とした拒否。
しかし明徳は気にした様子もなく、にやりと笑う。
「遠慮はいらん。茶でも出そう」
「……では、遠慮なく」
あっさり折れる。
その温度差に、美輝は思わず苦笑した。
やがて三人は居間へ。
明徳は「少し待っとれ」と言い残して台所へ向かい、場には翠琳と美輝の二人だけが残った。
静寂。
時計の針の音だけが、やけに大きく響く。
翠琳は、ぼんやりと部屋の一角を見つめている。
何を考えているのか――まったく読めない。
その沈黙に耐えかねて、美輝が口を開こうとした瞬間。
「……美輝」
先に、翠琳が言った。
「実は、今日は君に用があって来た」
「えっ、僕に……?」
意外そうに目を丸くする美輝。
翠琳は、ゆっくりと視線をこちらに向けた。
「……重機装士ヴァルダーのことについて、話を聞きたい」
「えっ!?」
その一言で、美輝の顔色が一瞬で変わる。

血の気が引き、明らかに動揺した様子で視線を泳がせる。
「な、な、何のことかなぁ~? 僕、ヴァルダーなんて知らないよ💦」
わかりやすい。
あまりにもわかりやすい動揺。
翠琳は無表情のまま、淡々と続ける。
「……とぼけないで。隠しても無駄」
間を置かずに、次の言葉を落とす。
「皆上遼馬がヴァルダーの正体だということは、とっくに財団の方でも調べはついてる」
「そ、そうなの……?」
一瞬ぽかんとした後――
「な、なんだ……分かってたのか……」
ふぅ……と、心底安心したように胸を撫で下ろす美輝。
完全に油断した、その瞬間。
「……ごめん」
翠琳が、ぽつりと言った。
「実は、カマをかけた」
「えっ!?」
美輝の動きが止まる。
「それってどういうこと!?」
翠琳は相変わらずの無表情で、淡々と説明する。
「あの事件に関わった関係者の中で、一番それっぽい人間の名前を適当に挙げて、一芝居打った」
”あの事件”とは、暗黒大博士が企てた陰謀に耀斗仁威と瑪愛莉の兄妹が巻き込まれた、例のデモンスブルー事件のことだ。美輝や遼馬も、図らずもそれに関わった当事者の一人だった。
ほんのわずかに、目が細くなる。
「……そう。やはり皆上遼馬が……」
「ひ、ひどいよ翠琳さぁん!!」
美輝、絶叫。
顔を真っ赤にして頭を抱える。
「完全に引っかかったじゃん僕! 遼馬さんになんて言い訳しよう…!?」
だが翠琳は、まるで反省した様子もなく、悪びれもない。
むしろ“何が問題?”と言わんばかりの無感情さだった。
その時。
「ははは」
笑い声とともに、明徳が湯のみを盆に乗せて戻ってきた。
「翠琳、あまり美輝をいじめんでくれんか?」
どうやら一部始終を聞いていたらしい。
しかし、その表情に驚きはない。
むしろ楽しんでいるようですらある。
「じいちゃん!?」
美輝が振り向く。
「もしかして……遼馬さんがヴァルダーだって、前々から知ってたの?」
明徳は湯のみを置きながら、ふっと笑った。
「本人から直接聞いたわけではないがな」
ゆっくりと腰を下ろす。
「まあ、薄々とな……」
その声音には、長年の経験からくる確信のようなものがあった。
美輝はがっくりと肩を落とす。
「……なんだよもう、みんなして……」
完全に一人だけ出し抜かれた形だ。
一方、翠琳は湯のみを手に取り――
「……いただきます」
相変わらずの無表情で一口すする。
その様子は、先ほどの一件などまるでなかったかのようだった。
静かな居間に、湯気だけがゆっくりと立ち上っていた。
Cパート
都内――ヴァルクルンド王国代表団が滞在する高級ホテルの一室。
控室として用意されたその部屋は、落ち着いた照明と重厚な調度で統一されているが、今はどこか張り詰めた空気に包まれていた。
「……そうか、分かった」
ソファに腰掛けた加藤段十郎が、携帯電話を耳から離す。
「よくやってくれたな、翠琳。じゃあ、また連絡する」
通話を切ると、短く息を吐いた。
その様子を見ていたリネアが、一歩近づく。
「加藤さん、翠琳からは何と?」
段十郎は携帯をポケットにしまいながら、口の端をわずかに吊り上げた。
「ビンゴだそうだ」
「……!」
リネアの目が、わずかに見開かれる。
周翠琳の“カマかけ”は見事に成功した。
重機装士ヴァルダーの正体――それが、皆上遼馬という一人の大学生であることが、ついに確定したのだ。
だが。
「……どうします?」
リネアは冷静さを取り戻し、静かに問いかける。
「三枝さんに、この事を教えましょうか?」
段十郎は、すぐには答えなかった。
軽く首を回し、天井を見上げる。
「さぁて……」
その口調には、あからさまな迷いと――そして微かな面倒くささが滲んでいた。
「そいつはどうしたもんかな……」
脳裏に浮かぶのは、つい数時間前の出来事。
***(回想)***
同じホテル内の一室。
ヴァレンタイン綾子の紹介で引き合わされた男――三枝万蔵。
青い背広にオレンジのネクタイ、どこか軽薄な笑みを浮かべたその姿は、この場の空気から微妙に浮いていた。
「……つまり」
段十郎は腕を組み、半ば呆れたように言った。
「そもそもヴァルダーってのは、お宅の会社の社長のヒーローオタク趣味の延長線上の産物だって言いたいのか?」
「そうですねん」
三枝はにこにこと営業スマイルを崩さない。彼の話によると、ヴァルダーの装備のメカニックには、明らかに亜斗夢重工の持つ最先端の特許技術の数々が使われている形跡があるというのだ。
「経営者が会社を私物化して、自分のヒーロー趣味に公金を湯水の如く注ぎ込んどる。いくら創業家の人間とはいえ、許されることやおまへんやろ?」
身振り手振りを交えて、やけに熱弁する。
「せやから、うちのボスである氷室が社長の不正を暴くために立ち上がった、っちゅう訳ですわ」
――なるほどな。
段十郎は内心で呟く。
(結局は、よくある社内の権力闘争だろ……)
どこにでもある話だ。
規模がデカいだけで、中身は変わらない。
三枝はさらに続ける。
「スーパーヒーロー事業部の詳細はトップシークレット。社長、会長、副社長の三人しかアクセスでけへんのですわ。氷室も専務の立場では手ぇ出せんで、正直困っとるんです」
肩をすくめる仕草も、どこか芝居がかっている。
「それで?」
段十郎は興味なさげに視線を向ける。
「俺たちに何をしろと?」
その問いに答えたのは、三枝ではなく綾子だった。
「亜斗夢重工のような我が国を代表する企業が、日本政府を飛び越えてブレイバーズのような国際機関と結託して好き勝手に動くのは好ましくありません」
紅茶を手に、静かに言う。
「王女護衛のついでの片手間で構いません。そちらでもそれとなくヴァルダーの正体を探ってください」
「……俺たちライトシーカーは何でも屋じゃないんだがな?」
段十郎の声音には、わずかな苛立ち。
「そもそも王女護衛とヴァルダーの正体に、何の関係がある?」
綾子は微笑む。
「おそらく、向こうの方から関わって来ると思いますよ」
「根拠は?」
リネアの問いに。
「ありません」
即答。
「強いて言うなら、長年の政治経験で培われた“勘”です」
その言葉に、段十郎は無言になった。
三枝は横でにこにこ笑いながら、軽く頭を下げる。
「なんとかお願いしまっせ」
――軽い。
あまりにも軽い。
段十郎は、内心でため息をついた。
***(回想終わり)***
現実に引き戻される。
段十郎は小さく肩をすくめた。
「……まずはレイチェルお嬢の指示を仰いでからだな」
決定は保留。
「あの“ザ・俗物”って感じのサラリーマン親父に教えてやるかどうかは、その後だ」
遠慮のない評価。
リネアも、わずかに頷く。
「そうですね……」
そして、ほんの少しだけ表情を曇らせた。
「私も、あの三枝さんという人はあまり好きにはなれませんでした……」
言葉を選びながら続ける。
「悪い人ではないとは思うんですが……」
段十郎は苦笑する。
「まあ、ああいうのはどこにでもいる」
そう言いながらも、その目はどこか鋭い。
静かな部屋の中で。
二人は、次に動くべき局面を見据えていた。
(つづく)

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