アクションスター密着取材　第8話

今期待の新星である若手アクションスター・左文字賢龍の密着取材に臨んでいる小寺洸介、桜庭陽平、鳳凰院優、漆崎亜沙美ら、いつもの鷺島国際大学報道部取材班の4人だったが、賢龍の妹・美藤美虎の話から、賢龍が何者かに脅迫されていることを知る。そして洸介、陽平、優、亜沙美の4人も巻き込む形で賢龍自身も犯罪組織ベラドンナに誘拐されるが、密かに尾行して監禁場所に潜入していた美虎によって助け出された。賢龍は美虎と手分けして、残りの人質たちの居場所を探す。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

囚われの玲奈

都内某所。
人目のつかぬ雑居ビルの地下深く――壁一面にスプレーアートが描かれ、むき出しの蛍光灯が不気味な白光を放っていた。そこが、犯罪組織《ベラドンナ》の「猟犬（ハウンド）」部隊、兄弟コンビ〈ブラザーズ〉のアジトだった。

金属臭と煙草の匂いが充満する空間で、兄の**毬雄（まりお）**はソファに腰を下ろし、スマートフォンを片手にしていた。
赤髪に金のメッシュを入れ、右耳の牙型ピアスが鈍く光る。
軽薄な笑みを浮かべているが、その瞳の奥には、躊躇なく人を撃てる冷たい光が潜んでいる。

「――あぁ、累児か？　……ああ……よし、わかった。こっちもすぐ動く」

通話を切ると、毬雄は退屈そうに息を吐いた。
だがそのまま視線を横に流す。
そこには――革張りの椅子に座らされた琴川玲奈の姿があった。

はて、彼女は急病が理由で、今日の撮影を休んでいたはずだが…？

両手には銀の手錠をかけられ、そこからさらに鎖が巻かれている。
華奢な体がかすかに震えていた。
ステージでは煌びやかに輝く人気アイドル、その姿は今や、怯えに顔をこわばらせたひとりの少女にすぎなかった。

「私を……これからどうするつもりなんですか……？」
玲奈の声は震えていた。

毬雄は片眉を上げ、面倒くさそうに肩をすくめる。
「さあな。俺は“お前を連れてこい”って指令を受けてるだけだ。詳しいことはクライアントに聞けよ。――向こうで、左文字賢龍も待ってるぜ」

「えっ……賢龍さんも！？　それってどういうことなの？」

毬雄はニヤリと口の端を歪め、煙草を取り出す。
「だから詳しい話は着いてからだっつの。俺たちはただの下請け――“現場の犬”なんだよ。……ま、ひとつだけ言えるとしたら――」

火を点け、煙をくゆらせながら彼は冷たく言い放った。
「――たぶんアンタ、二度と日本には帰れねぇぜ」

玲奈の目が見開かれた。
「に、日本に帰れない……!?　それって……海外に連れて行かれるってこと!?　いやっ、イヤぁッ！　助けて！　助けてください！！」

突然暴れ出した玲奈を、毬雄が慌てて押さえつける。
「おいおい、やめろって！　あんまり女の子に手荒なマネはしたくねぇんだからよ！」

椅子がガタガタと揺れ、両手を拘束している鎖が鳴る。
毬雄の手が玲奈の肩を力ずくで押さえた、その瞬間――

「……そこまでだ」

低く落ち着いた声が、地下室の奥から響いた。

「――ッ！？」
毬雄が振り向く。

薄暗い廊下の入口に、二つの影が立っていた。
一人は、スーツをラフに着崩した黒髪の男。
片手には銀色のSIG PROが光っている。
もう一人は、白いロングシャツにショートパンツ姿の少女――長い銀髪が、蛍光灯の光を受けて淡く輝いていた。

「……誰だ、てめぇらは！？」

毬雄が声を荒げる。

黒髪の男――加藤段十郎は、気だるげにため息をついた。
「おいガキ、その娘を放しな。俺は“ライトシーカー”の加藤段十郎。で、こっちは――」

「リネア=フリーデン=ヴァイサーです。琴川玲奈さん、怖い思いをされましたね。でも、もう大丈夫です」
少女――リネアが穏やかに微笑む。その青い瞳には、不思議な静けさと温かさが宿っていた。

「ライトシーカーだと……！？　なんでアスカロン財団の飼い犬が、ここに……！」

毬雄の手が腰のホルスターに伸びる。
だが、段十郎の動きのほうが速かった。
一瞬で間合いを詰めると、毬雄の手首をつかみ上げ、壁に叩きつける。

「“なんで”って？　――お前らがアイドルをさらったからに決まってんだろ」

段十郎の口元には、皮肉めいた笑み。
けれど、その瞳には一片の情もない冷たさがあった。

リネアは玲奈の側へ駆け寄り、優しく鎖を解こうとする。
「大丈夫です。私たちはあなたを助けに来ました」

玲奈は涙を浮かべながら小さく頷く。

地下アジトの空気が、一瞬にして張り詰めた。
毬雄がにやりと笑う――その表情から、戦闘の火蓋が切って落とされるのは時間の問題だった。

次の瞬間、静寂を切り裂くように金属音が響き――
《ライトシーカー》と《ベラドンナ・ブラザーズ》の戦いが始まった。

尋問

廃ビルの地下アジトに、戦いの余韻が静まり返っていた。
蛍光灯がチカチカと点滅し、焦げた匂いと硝煙が漂う。

戦いの決着はあっけなく着いた。

コンクリートの床の上には、毬雄が無様に転がっていた。
顔は腫れ、口の端から血を垂らし、片目を半分しか開けられない。
彼の上に片膝を立てているのは――加藤段十郎。
スーツの上着を脱ぎ、シャツの袖を肘までまくり上げ、SIG PROを毬雄の額に突きつけていた。

「……“猟犬”のくせに、この程度かよ」
段十郎が冷ややかに吐き捨てる。
毬雄は歯を食いしばり、かすれ声で唸った。
「……く、クソッ……てめぇ……何者だ……」

「言ったろ。“ライトシーカー”の加藤段十郎。
あいにく、拷問には少しばかり慣れてるんでな」

毬雄の顔が引きつる。
だがその瞬間――
柔らかな声が、場の空気を一変させた。

「加藤さん、もう少し優しくお願いします」

リネア=フリーデン=ヴァイサーが歩み寄ってくる。
白いロングシャツの裾が静かに揺れ、銀髪が光を受けて淡く輝いた。
その表情は、戦いの緊張などまるでなかったかのように穏やかで――けれどその瞳の奥には、確かな魔力が宿っていた。

「……ねぇ、あなた」
リネアがしゃがみ込み、毬雄の目線に合わせて優しく微笑む。

「もう、戦うのはやめましょう。
あなた、痛いでしょう？　疲れたでしょう？
――少しだけ、私に教えてください。
あなたたちの仲間は、今どこにいるのですか？」

その声音はまるで春の日差しのようだった。
慈愛に満ち、穏やかで、どこか母のような温もりすら感じさせる。

毬雄の荒い呼吸が、次第に落ち着いていく。
強張っていた表情が緩み、焦点の合わない目がリネアを見つめる。
やがて、その目に――奇妙な安らぎの色が宿った。

「……あんた、なんか……いい匂いが……するな……」
「ふふ、ありがとう。だからね、もう隠さなくていいの。
左文字賢龍さんたち――どこにいるの？」

一拍置いて、毬雄がぽつりと呟いた。
「……山梨の、廃工場跡地……第二セクション……紅虎さんの監視下だ……」

「そう。ありがとう、教えてくれて嬉しいわ」
リネアは優しく微笑み、彼の頬にそっと手を添える。
毬雄の瞼がゆっくりと閉じ、意識を手放した。

段十郎はその様子を見ながら、ポケットから煙草を取り出した。
「まったく……お前の“チャーム”は相変わらずだな」
「ふふ、加藤さんみたいに殴るより、こちらの方が痛くありませんから」
「俺は情報が取れりゃ手段は問わねぇよ」

そう言いつつも、段十郎の口元にはわずかに笑みが浮かぶ。
リネアのやり方に反発しながらも、彼はいつだって彼女の優しさに救われていた。

玲奈は少し離れた場所で、まだ怯えたように二人のやり取りを見つめている。
「……あの、私、どうすれば……」

「玲奈さんは大丈夫ですよ」
リネアが微笑みながら立ち上がり、彼女の肩に手を置いた。
「ここから先は、私があなたを安全な場所へお連れします。
加藤さんは――」

「俺はこっからが本番だ」
段十郎はしゃがみこみ、気絶した毬雄の頬を指先でなぞる。

その瞬間、空気が揺れた。
淡い紫煙のような忍術の霧が段十郎の全身を包み込み、やがて霧が晴れたとき――
そこに立っていたのは、毬雄その人であった。
赤髪に牙のピアス、チャラついた笑みまでも完璧に再現されている。

「……ふん。これで“猟犬の兄”ってわけだ」
「すごいです、加藤さん。まるで本物みたい」

段十郎――いや、今や“毬雄”の姿となった男は、コートの襟を直しながら出口へ向かう。
背後でリネアが声をかけた。
「気をつけてくださいね、加藤さん」
「お前こそ玲奈を頼む。……あの子にもう怖い思いはさせんなよ」

そう言い残し、段十郎は煙のように姿を消した。

静寂の残る地下室に、リネアは小さく祈るように呟いた。
「――どうか、みんなを……助けてください、加藤さん」

（つづく）

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