連続誘拐事件解決のため、自ら囮捜査に志願した笹南侑衣梨婦警。私服に着替え、夜の街をうろついていると案の定男たちに拉致される。ほとんどのテナントが閉店した廃ビル同然の雑居ビルの高層階に監禁された侑衣梨婦警。偶然見つけた非常警報装置に近寄り、ベルを鳴らして外部に異変を知らせようとする。
「んっ、んむむッ…!!」
だが残念、このビルの警報システムはすでに死んでおり、ボタンを押しても何も鳴らない。当てが外れて落胆しているところへ、犯人たちが戻って来た。それに対して侑衣梨婦警はついビクッとしてしまった拍子に、ポケットから警察手帳を落としてしまった。
「アニキ、この女サツだぜ!」
「何だとォォッッ!!」
激高する男たちが迫る。正体がバレた侑衣梨婦警大ピンチ!!
「んぐぐ…うううむぐぐゥッ!!」
囮捜査官侑衣梨の危機 作:旅鴉様
囮捜査官であることがバレてしまった笹南侑衣梨。
(どうしよう…私…殺されてしまうの…)
そう思い構えるような目で男を見つめる侑衣梨。
「どうするアニキ!?まずいよ…バラしちまうか!?」
慌てる舎弟に男は、溜息を1つついた後で口を開いた。
「バラすにしてもここではまずい、それに…」
男は侑衣梨の身体を舐め回すよう見る、そして厭らしい笑みを浮かべながら言った。
「バラすにはちと惜しい素材だぜ、まあ失踪して貰えばいいんだ、ちと取引相手を変える必要が出てきたが、このまま商品として使わせて貰うぜ」
「んぐぅっ⁉んんむぅぐぅっ‼」
男の言葉に、自分がどうされるのかを理解した侑衣梨、必死に声を上げるも粘着テープで塞がれた口から洩れるのは意味をなさない呻き声だけだった。
「間抜けな婦警さんで助かったぜ、悪いがもう少しドライブに付き合って貰うぜ」
『最近世間を騒がしている女性の失踪事件について…』
車のラジオから連続失踪事件のニュースが流れる、だがその車の後部座席で手足を縛られ口を粘着テープで塞がれた若い女性が呻き声を上げながらもがいていた。
「んーっ‼うむぅぐぐぅぅっ‼」
捕らわれの婦警、笹南侑衣梨は自分を縛める縄と懸命に戦っていた、しかし相手は誘拐のプロの拘束、縄は軋む音を立てるだけでびくともしない。
身体検査され見つけられたGPS発信機もスマートフォンも徹底的に破壊され、仲間とコンタクトを取る手段も失われ、警察手帳も奪われ権威すら剥ぎ取られ、もはやただの誘拐被害者の1人となっ侑衣梨。
(どうしよう…このままじゃ…)
侑衣梨が絶望で心を圧し潰されそうになったその時、車が赤信号に引っ掛かり停車する。
助けを求めようとふと外を見た侑衣梨、その時歩道を歩くある人物を見て侑衣梨は驚き思わず目を見開く。
(せ…先輩‼)
そこにいたのは先輩の刑事、鷹松優姫だった。
「んんぐぅっ‼んんむぅぅっっ‼」
「先輩!先輩!」と車の中から必死に呼びかける侑衣梨、だが助けを求めるその声は外へと伝わることはなく、フルスモークのガラスに遮られ窓は外からの視線を完全に遮断していた。
「どうしたんだ急に騒ぎだして、外になんか知り合いでもいたか?」
後部座席の侑衣梨様子に気づき、窓の外に目を向ける男。
「おや、あの姉ちゃん知り合いか?もしかして同僚か…」
男の言葉に思わず身を震わせる侑衣梨、その反応を答えと受け取った男は、
「今は他に人気がないしな…ついでにあの女も拉致っとくか…」
男の言葉に息をのみ小さく首を振る侑衣梨、その時信号が赤から青へと変わる。
「冗談だよ、これ以上リスクをおかせるかよ、婦警の商品はお前だけで十分だ、挨拶はできないが心の中でお別れを言っとくんだな」
その言葉と同時に車は勢いよく走りだす、その時ふと歩道を歩く優姫がこちらを振り向いたような気がした。
「急発進とか危ない車ねえ、それにスモークも濃過ぎよ、何か悪いことしてそうな奴らよね…」
そう言いながら優姫は溜息をつき、そして再び歩き出した。
車はゆっくりと高速道路へと入っていく。
「こっからは殆どノンストップだぜ、監禁場所にはお嬢ちゃん達が捜してた出荷前の商品もいるぜ、助けてくれるはずの警察官が縛られて現れたらどんな顔で出迎えてくれるだろうな」
「んぐぐぅ…」
目の前でゲラゲラと笑う男達を前にして、侑衣梨は小さく呻きながら悔し涙を流し縄を軋ませることしか出来なかった。
(なんとかしないと…でも…)
窓の外を眺めても高速で流れる景色しか見えない、彼女の助けを求める声、それを聞き届ける人間はもはやどこにもいなかった。
捕らわれし者、祈る者 作:bakubond様
「そういえば・・・」
鷹松優姫はふと立ち止まって考えた。
「このところ若い女性が失踪する事件が相次いでいたわね。まさかあの車…」
優姫は胸騒ぎがしてさっき見た車の車種とナンバーを連絡、緊急手配を要請した。
その頃笹南侑衣梨を乗せた車はまだ高速道路を走り続けていた。侑衣梨は疲れ果てもはやもがくことも呻くことも出来なくなり後部座席でぐったりとうなだれていた。
「観念したようだな。ここを下りりゃもうじき終点だぜ。お前のような上玉ならうんと買い手がついてくれるだろうよ。」
車はゆっくりとインターを降りて行った。
インターを降りて30分ほど走った後、車は倉庫らしい建物の前に着いた。
「さあ、着いたぜ」
侑衣梨は弟分の男に乱暴に下ろされた後、倉庫の中へと引き立てられていった。
地下に下ろされ、地下室の扉が開けられた時、侑衣梨は信じられない光景に目を見張った。今の自分と同じように10人くらいの若い女性が縛られ猿轡を
された状態で集められていた。中には女子高生の制服やテニスウェアを身にまとっている者もいた。
「こいつはな、お前たちを助けようとして逆に捕まったドジな婦警さんだ。3日後には迎えが来るからせいぜい仲良くしてやるこったな」
笑いながらそう言うと男は侑衣梨を突き飛ばし、地下室の扉を閉めた。
突き飛ばされた侑衣梨は床に倒れ込んだものの、すぐに起き上がり既に捕らわれている女性たちの顔を見回した。
(ごめんなさい・・。助けてあげるつもりがこんなことになってしまって・・・。)
侑衣梨の眼から涙が込み上げてきた。侑衣梨はそれを見られまいと顔を彼女たちから背けた。希望を立たれたと悟った彼女たちからも同じように涙がこぼれ、泣き声が聞こえてきた。
その頃鷹松優姫は誘拐事件の捜査チームが乗った覆面パトカーに便乗して高速を走っていた。日ごろから自分を尊敬し、自身も目をかけていた後輩の笹南侑衣梨が囮捜査に志願していたことを聞かされた優姫は侑衣梨と他の女性たちを助けたいという思いから捜査チームへの合流を認められ、こうして行動を共にしているのであった。人質に危害が加えられる危険性から表立った追跡や検問は自粛され、発見次第位置報告をするという形でここまでたどりついたのであった。
(侑衣梨、無事でいて…。)
今の優姫にはそうやって祈り続けることしか出来なかった。
この先の続きは、皆様のご想像にお任せします。
コメント
着々と前サイトからの移動が進んでますね、
この衣装の侑衣梨ちゃんの衣装は密かに好きだったりします、
bakubond様とSSリレーが出来たのは嬉しかったですね。
春には旧ブログを閉鎖するつもりです。
もしまだ転載の済んでいないSS、残してほしい旧ブログのコンテンツなどございましたら、コメント欄にお知らせください。
懐かしい旧ブログからのお話ですね。
廃墟のフリー素材などは、当方でも重宝していきたいものです。
niur様のサイトの廃墟画像のフリー素材はかなり重宝していたのですが、現在では残念ながらサイトは閉鎖されてしまったことは本当に残念です。( ノД`)シクシク…
>bakubond様とSSリレーが出来たのは嬉しかったですね。
旅鴉様にそう言っていただけるのは私も嬉しい限りです。管理人様、旅鴉様が流れを作ってくださったおかげで拙いながらもこうして作品を作ることができました。改めて感謝いたします。
前回に続いての侑衣梨ちゃんの受難劇となりましたが、生き埋め、蛇責めと更に受難は続きそうですね。
> 前回に続いての侑衣梨ちゃんの受難劇となりましたが、生き埋め、蛇責めと更に受難は続きそうですね。
侑衣梨ちゃんに比べて鷹松優姫さんのピンチが少なめなので、予算が確保でき次第、優姫さん(刑事スタイルと私服スタイル両方)や黒ショーパンバージョンの侑衣梨ちゃんのいろんなパターン(格闘・アクション含む)のイラストストックを増やしたいです。
1月は諸事情で予算がほぼ確保できなかったため、今月こそは是非にと思っております。