連続誘拐 閉ざされた村の夏 第17話

Seabreeze Aces

北関東某県にある蛇ノ谷村の公営キャンプ場へと合宿にやって来た、鷺島国際大学のテニスサークル「Seabreeze Acesシーブリーズ エーシズ」のメンバーたちだったが、2年の白川澪が大庭竜二と田淵毅の二人組に拉致されてしまうが、柏葉美佳と黒瀬律によって無事に保護される。しかし先日の集中豪雨の土砂崩れによって道路は寸断され、蛇ノ谷村は完全に孤立してしまう。さらに今度は2年の南條陽菜と1年の高槻紗季が大庭たちによって拉致され、早乙女陽飛や佐伯瑛人もそれぞれ捕らえられてしまった。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

行く手を阻む黒き竜巻

 蛇ノ谷村の山間部。

 鬱蒼とした木々の間を縫うようにして、二つの影が急いでいた。

 一つは、地上を駆ける妖精(ブラックカーバンクル)クロエル。

 そしてもう一つは、彼の少し上空を飛翔する魔法少女、星彩のルミナである。

「クロエル、蛇神神社まではあとどれくらい!?」

 空中を飛びながら、ルミナが下方へ声をかける。

(もう遠くはない! この山道を抜ければ、神社の境内に出られるはずだ!)

 クロエルは走る速度を緩めることなく答えた。

 佐伯瑛人が、正体不明の蛇武者に捕らえられている。

 それが分かっている以上、一刻も早く助け出さなければならない。さらに、早乙女陽飛、南條陽菜、高槻紗季の三人も行方不明になっているのだ。

 彼らの身に何が起きているのか、そして蛇武者とほかの事件との間に関係があるのか。

 まだ分からないことばかりだった。

 だが、だからこそ、まずは目の前の危機に対処する必要がある。

「瑛人さん……! どうか無事でいて……!」

 ルミナは胸の前で魔法の杖を握りしめ、飛翔する速度をさらに上げた。

 その瞬間だった。

 ――ゴオオオオオオッ!!

「なっ……!?」

 突然、進行方向の森の中から、黒い竜巻が巻き起こった。

 地面の落ち葉が舞い上がり、枝葉が激しく揺さぶられる。黒い旋風は山道を塞ぐようにそびえ立ち、まるで二人の行く手を拒む巨大な壁のようだった。

(、止まれ!)

「分かってる!」

 ルミナは急制動をかけて空中で停止し、クロエルも数メートル手前で足を止める。

 黒い竜巻は、しばらくの間、轟音を立てながら渦巻いていた。

 やがて、その勢いが徐々に弱まっていく。

 舞い上がっていた落ち葉が地面に落ち、木々の揺れも収まっていく。

 そして――。

 竜巻の中心に、二つの影が現れた。

 先頭に立つのは、黒を基調とした衣装に身を包んだ少女。

 その下方の地面には、一匹の黒猫。

 少女はまるで舞台の中央に立つ役者のように、ゆっくりと顔を上げた。

「フフフッ……」

 その口元に、楽しげな笑みが浮かぶ。

 美佳の表情が凍りついた。

「レギーナ=ノクタ!?」

 忘れるはずもない。

 常闇のレギーナ=ノクタ。

 圧倒的な闇の魔力を操り、星彩のルミナを一度は完膚なきまでに打ち破った、恐るべき敵である。

対峙している星彩のルミナと常闇のレギーナ=ノクタの画像生成AIイラストは、旅鴉様提供の画像@cryravens.bsky.socialによる投稿 — BlueskyをAI画像・動画・チャット・ツールを無料で楽しめるAI創作コミュニティ | SeaArt AIのクイックツール AI画像編集で加工しました。

 ノクタは両腕を広げ、芝居がかった仕草で笑った。

「フフフッ……久しぶりだなぁ! ルミナぁ!?」

 その声を聞いた瞬間、ルミナの身体が強張った。

 脳裏に、忘れたくても忘れられない記憶が蘇る。

 全身を襲った激痛。

 思うように動かなくなった身体。

 そして、どれほど抵抗しても届かなかった、敵の圧倒的な力。

 ルミナは思わず杖を握る手に力を込めた。

 その一方で、クロエルもまた、目の前にいる黒猫を見つめていた。

(……ルナフィリスッ!!)

 その声には、普段の落ち着きとは異なる、鋭い怒りが込められていた。

 黒猫ルナフィリスは、黄色い瞳を細める。

(フフ……久方ぶりですわ、お師匠様)

 まるで旧知の相手と再会したかのような、軽やかな口調。

対峙するルナフィリスとクロエルの画像生成AIイラスト@cryravens.bsky.socialによる投稿 — Blueskyは、旅鴉様提供。

 しかし、その言葉とは裏腹に、二匹――いや、二人の間には、決して穏やかとは言えない空気が流れていた。

 かつての師と、その教えを離れた者。

 そして、光の魔法少女と闇の魔法少女。

 森の中で、二組の因縁が再び交差した。

一か月前の悪夢

 ノクタの姿を前に、ルミナは魔法の杖を構えた。

 だが、その足はわずかに震えていた。

 敵の実力を、彼女は身をもって知っている。

 その事実を、心のどこかでまだ受け入れきれていなかった。

 そんなルミナの様子を見て、ノクタはニヤリと笑う。

「おっと、忘れたのかよ?」

 闇の魔法少女は一歩、前へ出た。

「お前はついこの間、アタシにフルボッコにされたばかりなんだぜ?」

「くっ……!」

 ルミナの表情が歪む。

 その言葉が、封じ込めていた記憶を容赦なく引きずり出した。

 ――あれは、一か月ほど前のことだった。

 ◇ ◇ ◇

 夜の街。

 高層ビルが立ち並ぶ都市の一角、その屋上には、冷たい夜風が吹き抜けていた。

 眼下には、宝石を散りばめたような街の明かり。

 遠くを走る車のライトが線となって流れ、ビルの窓には無数の光が映り込んでいる。

 そんな夜景を背景に、星彩のルミナは一人の敵と対峙していた。

 それが、常闇のレギーナ=ノクタとの最初の戦いだった。

「あなたが……最近、街で騒ぎを起こしている魔法使いね!」

 ルミナは魔法の杖を構え、正面の少女を睨みつけた。

「そういうお前が、噂の星彩のルミナか」

 ノクタは、さして興味もなさそうに答えた。

「なるほどね。ずいぶんと立派な正義の味方じゃないか」

「人々を苦しめるあなたを、これ以上好きにはさせない!」

「へえ……言うじゃん」

 ノクタの口元が、愉快そうに歪む。

「だったら、その正義とやらがどこまで通用するか、試してみようか!」

 次の瞬間、戦いが始まった。

 ルミナは光の魔力を杖に集中させ、次々と攻撃を放つ。

 星の輝きを思わせる光弾が夜空を切り裂き、屋上の床を照らし出す。

 しかし、ノクタはそれらを軽々とかわし、あるいは闇の障壁で受け止めた。

「そんなものかよ、ルミナ!」

「まだまだぁっ!」

 ルミナは空中へ跳び上がり、杖を振るった。

 強烈な光が迸る。

 だが、ノクタはその攻撃を真正面から受け止めると、口元に笑みを浮かべた。

「残念。私には届かないね」

 黒い魔力が渦巻いた。

 次の瞬間、ルミナの身体が吹き飛ばされた。

「きゃあああっ!」

 屋上の床を転がり、かろうじて立ち上がるルミナ。

 それでも、彼女は戦うことをやめなかった。

 傷ついても、押し返されても、再び杖を構えて立ち向かう。

 人々を守るために。

 目の前の悪を止めるために。

 しかし、どれほど勇敢に戦おうとも、力の差はあまりにも大きかった。

 ノクタの闇は、ルミナの光を次々と押し潰していく。

 攻撃を放つたびに、その隙を突かれる。

 防御を固めれば、さらに強力な魔法で突破される。

 反撃を試みても、ノクタにはまるで通用しない。

 そして――。

「これで終わりだよ、ルミナ!」

「しまっ……!」

 黒い魔力が爆発した。

 凄まじい衝撃が屋上を駆け抜け、ルミナの身体を飲み込んだ。

「きゃあああああっ!!」

 悲鳴とともに、彼女は床へと叩きつけられた。

 手にしていた杖が転がり、身体を起こそうとしても、力が入らない。

 全身が痛み、視界が揺れる。

 それでも、ルミナは必死に手を伸ばそうとした。

「ま、まだ……私は……!」

「はいはい、もうおしまい」

 ノクタは、倒れたルミナを見下ろした。

「これ以上やっても、つまんないからさ」

 彼女が指を鳴らす。

 すると、妖しく光る魔法の糸が何本も現れ、ルミナの身体へと伸びていった。

「なっ……!?」

 糸は瞬く間に彼女の手足へ絡みつき、抵抗する間もなく、その身体を縛り上げてしまう。

「うっ、ううっ……!!」

 ルミナは必死に身をよじったが、魔法の糸はびくともしなかった。

 さらにノクタは、どこからともなく取り出した魔法の口枷を、戯れにルミナの口元へと装着させた。

常闇のレギーナ=ノクタに敗北した星彩のルミナの画像生成AIイラスト@cryravens.bsky.socialによる投稿 — Blueskyは、旅鴉様提供。

 声を封じられたルミナは、悔しげに息を漏らすことしかできない。

「んんっ……! んーっ!!」

 夜風が吹き抜ける屋上。

 つい先ほどまで勇敢に戦っていた魔法少女は、もはや立ち上がることもできず、芋虫のように地面に転がされていた。

 ノクタはその姿を見下ろし、勝ち誇ったように笑う。

「ねえ、アタシの完璧な闇に完膚なきまでに叩き潰されて、声も出せずに縛り上げられてる今、一体どんな気分よォ!?」

 ルミナは悔しさに目を見開き、必死に身体を動かそうとする。

 しかし、拘束は解けない。

「その可哀想な格好で、涙目になりながら悔しそうに耐えてるテメエの国宝級の絶望顔……!」

 ノクタは両手を広げ、まるで舞台の上で喝采を浴びる役者のように声を張り上げた。

「おい、もっとお上品に泣き叫んでみせろよ、ルミナァッ!!」

 その瞳は、ただ勝利を喜んでいるだけではなかった。

 ルミナの抵抗が砕かれ、誇りが揺らぎ、それでもなお光を失うまいとする姿を、彼女は異様なほど熱心に見つめていた。

「その気高い光をズタズタに曇らせ、恐怖と屈辱に歪むそのツラが最高に尊すぎて、脳の血管ハジけ飛ぶわクソがァッ!!」

「んんんっ……!!」

 ルミナは、声にならない叫びを上げた。

 悔しかった。

 何もできない自分が。

 守るべきものがあるのに、目の前の敵に手も足も出なかった自分が。

 そして何より、敵の思惑どおりに打ち負かされたという事実が。

 それでも、ノクタはとどめを刺さなかった。

 彼女はしばらくルミナの様子を眺めたあと、興味を失ったかのように背を向けた。

「ま、今日はこのくらいにしておいてあげる」

 黒い魔力が再び渦巻く。

「せいぜい、その悔しさを忘れないことだね。次に会うときは、もっと楽しませてくれよ?」

 そう言い残すと、ノクタは闇の中へと姿を消した。

 屋上には、拘束されたままのルミナだけが取り残された。

「んっ……んんっ……!」

 彼女は必死に身をよじった。

 だが、魔法の糸は簡単には解けない。

 夜風が、傷ついた身体を冷たく撫でていく。

 やがて、異変を察知したアスカロン財団の特務部隊B.A.Dが屋上へ駆けつけ、ルミナの救出に成功した。

 しかし、彼女の心に刻まれた傷は、身体の傷よりも深かった。

 ◇ ◇ ◇

 その夜。

 自宅に帰り着いた柏葉美佳は、自室の扉を閉めると、部屋の灯りもつけないまま、その片隅に座り込んだ。

自室に引き籠っている柏葉美佳とクロエルの画像生成AIイラスト@cryravens.bsky.socialによる投稿 — Blueskyは、旅鴉様提供。

 膝を抱え、顔を埋める。

 いつもなら、クロエルに今日の出来事を話したり、次の戦いに向けて作戦を練ったりしている時間だった。

 だが、今の美佳には、そんな気力すら残っていなかった。

「負けちゃった……」

 かすれた声が、暗い部屋に響く。

「負けちゃったよ、クロエル……」

 クロエルは何も言わず、彼女の傍らに歩み寄った。

「完膚なきまで叩きのめされて……私……」

 そこまで言うと、美佳は再び顔を伏せた。

「私、星彩のルミナなのに……! みんなを守るために戦ってるのに……!」

 声が震える。

「なのに、あんなに何もできないなんて……!」

 クロエルは、彼女の言葉を黙って聞いていた。

 長い時を生きてきた彼には、いくつもの戦いがあった。敗北も、喪失も、そして、立ち上がることの難しさも知っている。

 だが、今の美佳にどんな言葉をかければよいのか、すぐには答えが見つからなかった。

(美佳……)

 彼は静かに彼女の傍に寄り添った。

 安易な慰めを口にすることはできない。

 悔しさを否定することも、無理に忘れさせることもできない。

 ただ、彼女が一人きりで苦しむことのないように、そこにいることしかできなかった。

 美佳はその夜、一晩中泣き続けた。

 大好きな人々を守りたい。

 誰かを傷つける悪を止めたい。

 その思いが強いからこそ、敗北は彼女の心を深く打ち砕いたのだった。

 ◇ ◇ ◇

再会、そして不吉な予告

「フハハハハッ!!」

 ノクタの高笑いが、村の上空の静寂を破った。

「まあ、そうビビんなよ!」

 その声に、ははっと我に返った。

 目の前にいるのは、あの夜、自分を打ち負かした宿敵。

 常闇のレギーナ=ノクタ。

 ルミナは震えそうになる手を抑え、魔法の杖を構え直した。

「……だ、誰がビビってるですって!?」

 強気な言葉を返す。

 しかし、自分でも分かっていた。

 恐怖が完全に消えたわけではない。

 あの敗北の記憶は、今も心の奥底に残っている。

 それでも、今は立ち止まっている場合ではなかった。

 蛇神神社には瑛人が捕らえられている。

 そして、残る三人の行方も分からない。

 ここでノクタに足止めされるわけにはいかないのだ。

 ノクタは、そんなルミナの内心を見透かしたように笑った。

「安心しな。今日はただの挨拶代わりで、戦うつもりはないから」

「えっ……?」

 思いがけない言葉に、ルミナは一瞬、拍子抜けした。

 わざわざ黒い竜巻を起こし、行く手を塞いだというのに、戦うつもりはないというのか。

「どういうつもり……?」

「どういうつもりも何も、言葉どおりさ」

 ノクタは肩をすくめた。

「ほらほら、こんなところで立ち止まってていいのかな?」

 彼女は、山道の先を指さした。

「神社に捕まってる学生を助けに行くんだろ?」

「……!」

 ルミナの表情が一変した。

「やっぱりSeabreeze Acesの人たちがいなくなったのは、あなたの仕業ね!?」

 ノクタは答えず、わざとらしく首を傾げてみせた。

「さあ、そいつはご想像に任せるぜ」

「とぼけないで!」

「おやおや、ずいぶんと威勢がいいねぇ」

 ノクタは楽しそうに笑った。

「でも、グズグズしてると学生が蛇神様の生贄に捧げられちゃうかもなぁ……?」

「なっ……!?」

 ルミナの背筋に、冷たいものが走った。

 生贄。

 蛇神様。

 そして、蛇神神社に潜む正体不明の蛇武者。

 それらがどうつながっているのかは分からない。

 だが、ノクタがわざわざその言葉を口にした以上、何かを知っている可能性は高い。

「あなた……いったい何をどこまで知ってるの!?」

「さあねぇ?」

 ノクタは人差し指を唇に当て、わざとらしく微笑んだ。

「それを知りたきゃ、まずは目の前の問題を片づけることだね。正義の魔法少女さん?」

「……っ!」

 ルミナは唇を噛みしめた。

 今ここでノクタに問い詰めても、まともな答えが返ってくるとは思えない。

 それどころか、相手の思惑に乗せられて時間を浪費することになりかねない。

 彼女は一度だけ深呼吸すると、地上にいるクロエルへ視線を向けた。

「……行くよ、クロエル!」

(……うむ!)

 クロエルは短くうなずいた。

 彼もまた、ルナフィリスから目を離さないまま、警戒を解いてはいなかった。

 ルミナは杖を握り直し、再び上空へと舞い上がる。

 クロエルも地面を蹴り、神社へ続く道を駆け出した。

 二人はノクタとルナフィリスを警戒しながら、その場を離れていく。

 やがて、木々の向こうへと二つの姿が消えた。

 ノクタは追いかけようとはしなかった。

 ただ、満足そうにその背中を見送っていた。

「……いいの?」

 足元下のルナフィリスが、黒い尻尾を揺らしながら尋ねる。

「見逃しちゃって?」

「いいんだよ」

 ノクタは、くすくすと笑った。

「メインディッシュっていうものは、最後までお楽しみに取っとくもんだからさぁ……」

 彼女の瞳が、森の奥を見据える。

 ルミナが向かう先には、蛇神神社がある。

 そして、そこでは今も、正体不明の蛇武者が何かを企んでいる。

 その先に何が待っているのか。

 ルミナはまだ知らない。

 ノクタがどこまで事情を把握しているのかも、例の指名手配犯2人組との関係も、すべては謎に包まれていた。

 ただ一つ確かなのは、ノクタがこの村での出来事を、心から楽しんでいるということだった。

「さあ……活躍を見せてくれ、ルミナちゃん!」

 常闇のレギーナ=ノクタは、誰にも聞こえない声でそうつぶやいた。

 黒猫ルナフィリスは、その横顔を見上げる。

 そして、二人の姿もまた、木々の影へと静かに溶け込んでいった。

 蛇神神社へ急ぐルミナとクロエル。

 その行く手に待ち受ける蛇武者。

 そして、すべてを愉しむかのように暗躍するノクタ。

 それぞれの思惑が交錯するなか、蛇ノ谷村の森は、再び不穏な静けさに包まれた。

――次回へ続く。

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