誘拐サービス体験　第2話

　海外で評判になっていた「誘拐ごっこサービス」事業がついに日本にも進出！？　鷺島国際大学報道部の看板娘キャスター・漆崎亜沙美が自ら体験取材に乗り出す！

只今監禁中！？

　事前に打ち合わせた段取り通り車で拉致された漆崎亜沙美は、市の郊外にあるいかにも廃墟にしか見えない無人のおんぼろアパートの一室へと連れ込まれていた。一旦口から猿轡を外された亜沙美は、いかにも人質のそれっぽく台詞を言って芝居をしてみる。

「わたしをどうするつもりですかっ！？」
「いいから静かに大人しくして居ろ。お前の質問に答える義務はこちらにない」
「うちは身代金を払えるようなお金持ちじゃありません！ お願いです！ このことは他の誰にも言いませんから、家に帰してください！」

「いくら騒いでも無駄だ。ここの周囲に人家はないし、叫んでも誰にも聞こえはしないぞ。しかしこれ以上喚かれでも面倒だ。どうやらもう一度猿轡を噛まされたいらしいな？」

　男は再び白い布を懐から取り出し、亜沙美の口に無理やり押し込もうとする。

「…い、いやっ！…何をするの？ もう騒がないからやめてくださいっ！」

「んんんーっ！！んむぐぐーぅっっ！！」

　亜沙美は猿轡を噛まされ、再び言葉の自由を奪われてしまった。そして「そして大人しくいい子にしているんだぞ」と言い残して男は部屋から出て行った。ここからしばらくは監禁部屋の中に一人でいる時間だ。

「………（なんか暇だなぁ～）」

　亜沙美は縛られたままベットの上に横になった。自分を縛っている縄が思ったよりも少しキツいように感じたが、それ以外に特に思うところはない。そういえばこの部屋の様子はビデオカメラで一部始終が録画されている筈なのだが、どこにもカメラらしき物が見当たらない。きっと誘拐サービス業者が雰囲気を損なわないように、人質役の目の届かないところに隠して設置してくれているのだろう。なかなか気の利いた業者さんだと亜沙美は内心感心しているのだった。

救出失敗シーン

　一方、亜沙美のいるアパートから少し離れたところでは、路駐している報道部のミニバンの中で小寺洸介、桜庭陽平、鳳凰院優の3人がスタンバイしていた。亜沙美につけておいた隠しマイクから音声を傍受し、監禁部屋の中の様子は逐一把握している。

「そろそろ時間だな。優ちゃん、出番だよ」
「捕まっていた亜沙美を偶然見つけて助け出そうとしたところを、戻って来た犯人に見つかって自分も捕まってしまう役ね？ オッケー♪　任せといて！」

　車から降りた優は、意気揚々とアパートの中へと入って行った。

「亜沙美！？ こんなところで何をしているの！？ どうしてこんなことに！？ 待ってて、今解いてあげるからッ！！💦」

　部屋の中に入って来るや、いかにも「監禁されていた亜沙美を偶然発見しました！」と言わんばかりの名演技を披露する優。しかも丁度いい?タイミングで犯人の男が戻って来て、無言で優の背後にじわじわと近づいていく。

「んむぐぐーっっ！！んんっ！！んんむむーっ！！（優！ ダメよ！ すぐ後ろに犯人が来ているわ！ お願い気づいて！💦………なんちゃってヾテヘ(´ε｀*)ゝ ｴﾍﾍ）」

つづく。