おかめマン追跡編ノ巻 その四

＜前回までのあらすじ＞おかめマンの余計な横槍で蜥蜴妖魔獣人に誘拐されてしまった柏葉美佳を救出すべく、シブルリックオーダー、DRYADES、鷺島国際大学報道部の合同3チームは滝郷村の洞窟へと向かう。一方、小寺洸介はおかめ城内で不思議な研究実験施設を発見するが…？

滝郷村の洞窟にて

「おい、娘！ お前を餌にして、あの目障りなシブルリックオーダーをここにおびき寄せてやるっ！」
「んんむぅぅっっ!!」
「だが奴らがここに到着する前に、お前は今ここで始末してやる。どのみち秘密基地の建設現場を見られた以上口は封じなければいかんし、何より奴らが来た時の絶望した表情が目に浮かぶぜ！」
「んーっ!!うむぅぐぐぅぅっ!?」
「お嬢さん、念仏唱えて往生しな！」(￣ー￣)ﾆﾔﾘ

蜥蜴妖魔獣人の猛毒を含んだ鋭い爪が美佳の喉元に迫ろうとしたその時—！！

「おかめエルボー・スマッシュッッっ!!!!!!」
「ぐわああッッ!! な、何だァァ！？」

美佳に迫る蜥蜴妖魔獣人の頭にめがけて、肘を突き出すように折り曲げた片腕を振りかぶって、下から上へ突き上げるように強烈な肘打ちをお見舞いしたのは、誰あろうおかめマンであった！

「フッ、どうやら間に合ったようッスね…」
「お、お前はさっきの変態タイツ男！ 貴様ァァッッ!!いったいどっちの味方だ！？」
「チッちっち…正義のヒーローが駆けつける前に人質に手をかけちゃダメっすよ。どうやらチミにも清く正しい誘拐道をみっちり伝授する必要がありそうッスねぇ」
「また訳の分からない御託を並べやがって。お望みならてめえから先に始末してやるぜ！」
「やれやれ、言葉で言って分からないなら肉体に直に教えてやるッス。食らえ、おかめパーンチッッ！！」

ところがである。

「どうした？ 大して痛くも痒くもねえなぁ…」((´∀｀*))ヶﾗヶﾗ
「…し、しまったッス！ 血液交換がまだ完ぺきではなかったッスか！ 本調子が出ないッス…」
「今度はこちらから行くぜぇ！ うぉりゃぁぁッッ！！！」
「ウギャアアッ！！」

おかめマン、ここに来て蜥蜴妖魔獣人から一方的に攻め立てられ、まさかの大ピンチに！？

「くくくっ…さあ覚悟しな、おかめマンさんよぉ！」
「くっ、このままでは！💦 何か…何かいい方法はないッスか！？」

焦りながら一発逆転のヒントを探して周囲を懸命に見渡すおかめマン。すると近くの壁に何やらボタンを見つけた。

「あれっ、これはいったい何ッスか？ ダメで元々。とりあえず押してみるッス。ポチッとな！」
「わぁ！？バ…バカッ、やめろ！💦 それはこの洞窟に仕掛けた自爆スイッチ！！💦」
「えっ…？」
「んんむぅっ！！」

おかめマン、死す！？

「そんな…ッッ!! 美佳ァァ～ッッ!!」
「しまった！ 間に合わなかったのか…！？」
「嘘でしょ…誰か嘘だと言ってよ！！」

滝郷村の洞窟近くまで来たものの、突然起きた爆発の光景を見て愕然とするシブルリックオーダーやDRYADESの面々。美佳の兄・章介の妹の名を呼ぶ悲しき絶叫が辺り一面に木霊する。
皆が美佳が死んでしまったものと思い込み泣き崩れていると、やがて爆発の噴煙の中から一組の影が。それは美佳をお姫様抱っこしたおかめマンであった！

「ちょっとみんな、あれを見て！！」
「美佳ちゃん！？ 美佳ちゃーん！！」

一斉におかめマンと美佳の傍へと駆け寄る一同。一時的に気を失っていた美佳も気がついたらしく、おかめマンに降ろしてもらい、兄の章介の元に駆け寄り抱き合う。

「うわああんっ！！お兄ちゃん、怖かったよ～！！」(´；ω；`)ｳｩｩ
「よく頑張ったな！ 偉いぞ美佳！！ どこにも怪我はないか？」(´；ω；`)ｳｩｩ
「大丈夫！ どこにも大した怪我はないはずッス♪」
「おかめマン、不本意だけど今回はお礼を言うべきだろうな。正直アンタのことを誤解してたよ。妹を助けてくれてありがとう…」
「礼を言われるようなことはしてないッスよ」

ここで突然思い出したように鳳凰院優が一言。

「そういえばすっかり忘れてた！ 小寺くんがまだおかめ党に捕まったままだわ！」
「それなら心配無用！ 彼ならここに連れて来てるッスよ」

おかめマンが指差すと、そちらの方向から「お～い！」という大きな声とともに小寺洸介が元気そうに手を振って走って来た。驚く優と桜庭陽平。

「小寺、お前無事だったのか！？」
「いったいどうやって逃げ出してきたの？」
「それが俺にも捕まっていた間の出来事をよく覚えて無くてさ。気がついたらおかめマンにここまで連れて来てもらっていたんだ！」

どうやら洸介は、捕まっていた間の記憶を消されているらしかった。

「さて、余はそろそろ行くッスよ」
「おかめマン、今日は俺たちシブルリックオーダーも完敗だ。また会った時に改めて勝負しようぜ！」
「望むところッス♪」

固い友情の握手を交わすおかめマンと紫城心翔。

「では皆の衆、また会う日までごきげんよう！ トォォッ!!」
「おかめマ～ン！ ありがとう～！」
「これからも頑張ってくださぁ～い！！」

高く上空へと飛び去って行くおかめマンに対してエールを送る一同だったが、ただ一人、羽鳥瑠璃華だけが怪訝そうな顔をしていた。

「う～ん…いいのかなぁ？ みんないい感じで感動的に締めくくろうとしてるけど、そもそもおかめマンが現状を引っ掻き回さなければ何のトラブルも問題も初めから起きなかったような…💦」

エピローグ

女子高生・琴川玲奈は、ある日の下校中に地元でも札付きのワルである不良グループに拉致されてしまい、グループが溜まり場として使っている廃ビルの中へと連れ込まれた。

「わりぃな、ねえちゃんよぉ…ちょっと俺たちと動画撮影に付き合ってよ」
「なぁに、心配しなくたっていいって。世の中のセレブなおじさまたちに需要があるマニアックな動画を撮るだけだからさぁ！」
「んむぅぐぐっっ！！」

縛られている玲奈の制服を無理やり脱がせようと、不良の一人が手を伸ばしたその時—！！

「おかめ怒りの頭突きアタァァーッック!!!!!」
「…ぶぐうぉぉぉッッ！？」

玲奈に手を伸ばそうとしていた不届きな不良が窓ガラスを突き破って遥か彼方へと吹っ飛ばされると、玲奈と他の残った不良どもの間を遮るかのように立ちはだかったのは、オレンジの全身タイツに黄色い手袋とブーツを身に着けた変態…もとい変人…でもなくて正義のスーパーヒーロー、おかめマンであった！

「だ、誰だ！てめえは！？」
「我が名はおかめマン！ お前ら、”犯さず、殺さず、弱い者からは盗まず”という健全な誘拐紳士道を知らないッスか？ 幼気な女子に汚らわしい手で触れようとする外道め！ 余が直々に成敗してくれるッス！！」

創作物の誘拐事件のシナリオが悲惨な展開へ進むのを未然に阻止するスーパーヒーロー、その名は、おかめマン！
あぁ、愛と正義の人おかめマンよ今日も行く。

完