今期待の新星である若手アクションスター・左文字賢龍の密着取材に臨んでいる小寺洸介、桜庭陽平、鳳凰院優、漆崎亜沙美ら、いつもの鷺島国際大学報道部取材班の4人だったが、賢龍の妹・美藤美虎の話から、賢龍が何者かに脅迫されていることを知る。そして洸介、陽平、優、亜沙美の4人も巻き込む形で賢龍自身も犯罪組織ベラドンナに誘拐されるが、密かに尾行して監禁場所に潜入していた美虎によって助け出された。賢龍と美虎の兄妹は手分けして、残りの人質たちの居場所を探す。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
「虎」対決!
廃工場の薄暗い空間に、金属がぶつかり合うような激しい音が響き渡った。
紅い長髪を翻しながら、紅虎が鋭い蹴りを繰り出す。しかし、その攻撃は寸前で空を切った。
美藤美虎は紅虎の懐をすり抜けるように低く滑り込み、床を蹴って間合いを取る。
紅虎の体格は圧倒的――190センチを超える長身に、しなやかで力強い筋肉が纏わりついている。
対する美虎は、小柄な140センチ台の少女。だがその小さな身体は、猫のように俊敏だった。
「すばしっこい奴ねぇッ!!」
紅虎が苛立ちを露わに叫ぶ。
「――こっちだよ!」
美虎は返す声と同時に壁を蹴り、紅虎の背後に回り込む。
その小さな拳が、鋭く紅虎の脇腹を突いた。だが、紅虎は痛みをものともせず、美虎の足首を掴もうと振り向く。
「危なっ!」
美虎は体をひねってかわすが、紅虎の蹴りが風圧を伴って頬をかすめる。
(強い……でも、負けない!)
額に汗が滲む。
彼女はスピードと機転でなんとか互角を保っていたが、相手はやはり格が違う。
紅虎の一撃一撃が重く、かわすたびに腕と脚に鈍い痛みが残る。
次第に、美虎の呼吸が荒くなってきた。
――そのときだった。
チクリ。
首筋に何か細いものが刺さるような感触。
「……っ?」
美虎の体がびくりと震え、膝から崩れ落ちる。
視界が歪み、全身が痺れて力が入らない。
「な、何を……したの……ッ?」
震える声で問いかけた瞬間、背後から低い笑い声が響いた。
「フフフッ……どうだ? ターゲット捕獲用の痺れ毒の吹き矢の威力は?」
現れたのは、チャラついた赤髪の青年――
ベラドンナの猟犬《ブラザーズ》の弟、累児だった。
手には黒い筒状の吹き矢が握られている。
「……くっ、ひ、卑怯よ……!!」
美虎が歯を食いしばりながら睨みつける。
紅虎はその様子を見て、あからさまに不快そうに眉をひそめた。
「ちょっとぉ~、なに余計な真似をしてくれちゃってんのよ! そんな小細工をしなくても、こんな小娘、アタシ一人で片付けられたのに!」
「そうッスかぁ? 紅虎さん、結構手こずっていたように見えましたよ? ハハッ!」
累児がニヤニヤと挑発的に笑う。
「フンッ!」
紅虎はそっぽを向き、鼻を鳴らす。
倒れ込んだ美虎の元へ、物陰から亜沙美が駆け寄ってきた。
「美虎ちゃん!」
「……亜沙美さん……ダメ……逃げて……」
美虎がか細い声で制止する。
しかし亜沙美はきっぱりと首を振った。
「見損なわないで! 大事な友達を放って行けるわけないでしょッ!!」
紅虎はわざとらしく手を叩きながら笑い出す。
「オーホッホッホ! 麗しい友情ねぇ。――さあ、二人とも縛り上げておしまい!」
その号令と共に、暗がりから黒服の男たちがぞろぞろと現れる。
次の瞬間、美虎と亜沙美の腕は荒々しく後ろ手に縛られた。
紅虎は二人を見下ろしながら、紅い髪を指先で弄ぶ。
「さあ、かわいこちゃんたち。おとなしくしていれば、そんなに痛い思いはしないで済むわよ……たぶん、ね?」
金属の鎖が冷たく鳴り響く中、二人の少女は再び囚われの身となった――。
陽平発見
廃工場の奥――
陽の光がほとんど届かない、湿った空気の漂う通路を、左文字賢龍と鳳凰院優は慎重に進んでいた。
足元には割れたガラス片や錆びついたボルトが散らばっており、一歩踏み出すごとに微かな金属音が響く。
「この奥かもしれないな……」
賢龍が低く呟くと、優は小さく頷いた。
やがて二人は、古びた鉄扉の前にたどり着く。扉の隙間から、わずかに光が漏れていた。
優は胸の前で手を組み、不安げに賢龍の袖を掴む。
「……小寺くんと桜庭くん、ここにいるのかな」
賢龍は扉に耳を当て、慎重に中の気配を探った。
――微かに、人の息遣い。しかも一人きりのようだ。
「……いるな」
そう言って扉を静かに押し開けると、軋む音が小さく響いた。
中は薄暗く、壁際には無造作に積まれた段ボールと錆びた工具箱が並ぶ。
そして、その中央――椅子に縛り付けられた桜庭陽平の姿があった。
口にはガムテープ、手足は鎖で固定されている。

「桜庭くん!?」
優が思わず声を上げかけた瞬間、賢龍が手で制した。
「待つんだ、優さん。罠かもしれない。ここは俺が慎重に彼に近づいてみる」
優は息を呑み、頷いてその場にとどまる。
賢龍は猫のように身を低くし、段ボールの陰を伝いながら静かに移動した。
床を踏む足音すら殺し、視線を鋭く巡らせながら――。
だが、どうやら部屋には陽平以外の気配はない。
見張りはいない。
「陽平くん……」
囁くように声を掛けると、陽平がびくりと顔を上げた。
「……んんっ!? んんーっ!! んぐぐむーっ!!」
必死に声を上げようとするが、口のガムテープがそれを妨げる。
「しーっ! 静かに。今、鎖を解く」
賢龍は先程ここまで来る途中で拾った腰のツールナイフを取り出し、慎重に鎖のロックをこじ開けた。
金属の擦れる音が響き、やがて拘束が解かれる。
自由になった陽平は椅子から立ち上がり、自分の手でガムテープを口から剥がした。
「……賢龍さん、助かりました。ありがとうございます」
「桜庭くん! よかった……無事で」
優も部屋の中に入ってくる。
「優ちゃん!? 本当に優ちゃんだ! 君も無事だったのか!?」
安堵の笑みを浮かべ、陽平は思わず優の手を取った。
優も微笑み返す。再会の瞬間、二人の間に一瞬の温もりが生まれた。
「ところで陽平くん。」
賢龍が表情を引き締める。
「ここで一味の動向について、何か聞いてはいないかな?」
「……そうだった!」
陽平ははっとしたように思い出し、顔を上げる。
「ここで捕まっている間、黒服の連中が立ち話をしていたのを聞いたんです! 美虎ちゃんが……捕まったって!」
「な、何だって!?」
賢龍の表情が凍りつく。
妹――美藤美虎が、漆崎亜沙美を助けようとして逆に捕らえられたという事実。
その言葉が胸の奥を突き刺した。
「……俺は妹を助けに行く」
決意を滲ませた声で言い放ち、賢龍は扉の方を向く。
「陽平くん、優さんを頼む!」
「ちょ、ちょっと待ってください! 一人で行くんですか!? 僕たちも一緒に――」
「ダメだ。足手まといになる」
短く、しかし強い調子で遮る。
「でも……!」
陽平が食い下がる。
「賢龍さんがいない間に、僕たちが敵に見つかって襲われたらどうするんですか? 僕には戦う力なんてないし……」
その言葉に、賢龍の目が鋭く光った。
「情けないことを言うな! 君だって男だろ! ――優さんは君が守るんだ」
叱咤するような一喝。
その気迫に、陽平ははっとして口をつぐんだ。
数秒の沈黙の後、陽平は小さくうなずいた。
「……分かりました」
賢龍は満足げに頷くと、廊下の奥を見据えた。
「必ず美虎を取り戻す。二人はここで待っていてくれ」
そう言い残して、左文字賢龍は再び暗闇の中へと消えていった。
その背中を、優と陽平はただ黙って見送るしかなかった――。
(つづく)

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