女刑事編　第2話

喫茶店Lily（リリー）、ここは学園通りに面していることもあり主な客層はティーンエージャーであり、こじんまりとしつつも割と洒落たカフェである。最近開店したらしい。
河川敷の道端ですれ違ったポニーテールの若い女性・笹南侑衣梨との奇妙な縁でUSBメモリを預かった大学生・桜庭陽平は、ここLilyを訪れていた。

「いらっしゃいませ！　お好きな席へどうぞ♪」

元気な営業スマイルの挨拶で陽平を出迎えたのは、三つ編みヘアの若い女性スタッフだった。他に従業員や客の姿はなく、どうやら彼女がこの店の店長らしい。陽平はカウンターへと近寄り、事情を放して女性店長にUSBメモリを渡す。すると女性店長の顔はみるみるうちに険しくなった。

「あなた、これをどこで手に入れたの！？」
「どこでって……そこの河川敷でポニーテールの女の人からこれを預かったんですけど」

陽平からUSBメモリを受け取った女性店長は、すぐに電話で誰かと話し始めた。どうやら目上の人間にお伺いを立てて指示を仰いでいるようだが、陽平にはそのやり取りがまるで警察官みたいに聞こえた。

「私はしばらく出かけるけど、あなたはここにいて！　危険だから決して外へ出てはだめよ！！」

すると女性店長は陽平一人を店の中に置き去りにして急いで外出してしまった。
呆気に取られていた陽平は、しばらくは女性店長の言う通りにして店の中でじっと待っていたが、いつまで経っても女性店長は戻ってこない。よくよく考えてみれば、いきなり初対面の客を店の中に置き去りにして自分はどこかへ出掛けてしまう店員など非常識にも程がある。なんだか腹が立ってきた陽平は、女性店長からの忠告を無視して店の外へと出てしまった。それが運の尽き。店から出て数メートル歩いた地点で、陽平はさっきのポニーテールの女性を追っかけていたヤクザ風の男たちにワゴン車で拉致されてしまったのである！

「ンンムゥンングゥムムムーツ！（一体何なんだよぉォッ！？　どうして僕だけがいつもこんな目に遭うんだ！？）」
「兄ちゃん、さっきはよくもワテらを謀ってくれたのォ？　この礼はしっかりしちゃるけん！　覚悟しいや！！」

果たしてこれから侑衣梨のところへ連れて行かれる陽平の運命は如何に！？

第3話へ続く。