ブレイバーズとアスカロン財団の定期会合のため、財団本部オメガ・タワーズを訪れた錦織佳代、クリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィス3世(クリス)、寺瀬詩郎の3人と、それを出迎えるアルマ=ブラックバーン。
一方その頃、竜門会のスパイであるアーノルド=フックス副本部長の手引きで、地下監獄から黒百合が脱獄しようとしていた。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
脱獄
 ――オメガ・タワーズ地下最深部。
 地上から数百メートル下、鉄とコンクリートの棺のような空間。
 ここは世界最悪の犯罪者たちが収監される特別監獄ブロック。
 外界との通信は完全に遮断され、逃げ出すことは絶対に不可能――
 ……のはずだった。
 その中のひとつ、S級隔離房。
 冷たく青白い蛍光灯の下で、鎖と鉄枷に何重にも拘束された女が、無表情に座っていた。
 漆黒の髪が肩にかかり、唇には余裕の笑み。
 黒百合(ダークリリィ)――。
 かつて都市を恐怖に陥れた狂気のヴィラン。
 だが今、その瞳には奇妙な光が宿っていた。
 静かに壁時計を見上げ、囁く。
「――そろそろ時間ね」
次の瞬間。
 ジャラリ、と金属の鎖がひとりでに動き出す。
 鉄枷が外れ、錠前が音もなく弾け飛ぶ。
 独房の扉が、重い唸りを上げて自動的に開いた。
 「……やっぱり来たわね」
 唇の端を吊り上げる黒百合。
 誰が仕掛けたか、彼女にはもう察しがついていた。
 無言のまま廊下へと踏み出す。
 湿った空気の中、ブーツの踵がコツコツと響く。
 その音に気づいたひとりの看守が角を曲がって現れた。
「おいお前! そこで何をしている!?」
咄嗟に銃を構える看守。だが、黒百合の体はすでに視界から消えていた。
「――遅い」
 低く囁いたかと思うと、次の瞬間には看守の背後にいた。
 首筋に軽く手刀を当てただけで、男の体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
 「く……くそっ……!」
 倒れかけながらも、看守は壁際の非常ボタンを押し込んだ。
――ウゥウゥゥゥゥン!!
 赤色灯が点滅し、地下全体にけたたましい警報が響き渡る。
 遠くのスピーカーから怒号と指示が飛び交い、重い防弾扉が次々に閉鎖され始めた。
 黒百合は舌打ちを一つ。
 「チッ、面倒ね……」
 だが、焦る様子は微塵もない。
 警備兵の足音を軽やかに避け、監視カメラの死角を縫うように歩む。
 まるでこの監獄の構造をすべて知っているかのように――。
 やがて、ある独房の前で足を止めた。
 中にいたのは、黒髪ではなく栗毛のボブをした若い女。
 小柄だが引き締まった体、黒いシャツとショートパンツ姿の、俊敏さを感じさせるシルエット。

 女は黒百合を見るなり、深く頭を下げた。
 「――お待ちしておりました、黒百合様」
その声音には、長い沈黙の末に再び主を迎える喜びが滲んでいた。
 黒百合は軽く微笑む。
 「お行儀がいいわね、百合鴉。……すぐにここからおさらばするわよ」
 鍵はもう開いていた。
 どうやら彼女の檻も、同じ“手”によって解かれていたらしい。
 百合鴉は拘束具を外し、黒百合の後ろに並ぶ。
 「了解です。脱出経路は?」
 「地上まで一直線よ。途中で誰に会っても、構わず倒しなさい」
「承知しました」
 二人の女が並んで歩き出す。
 背後では警報が鳴り響き、銃声と怒号が反響していた。
 だが、黒百合の笑みは崩れない。
「ふふっ……退屈な日々も、ようやく終わりね」
その声が地下に響き、やがて闇の中に消えていった――。
アルマと詩郎
オメガ・タワーズ――地上階。
冷たいガラスと金属に覆われた研究ブロックの一室。そこは、アスカロン財団所属の天才科学者アルマ=ブラックバーンの研究室だった。
無機質な照明が白々と輝く中、寺瀬詩郎は診察台の上に仰向けになっていた。
上半身は裸。無数のセンサーが胸や腹、腕に貼られ、薄青いホログラムが身体の断面をスキャンしている。
アルマは操作卓の前に立ち、眼鏡越しにデータを眺めていた。
金属的な音を立てて、機械が最後のスキャンラインを走査する。
「――よし、終わりだ。もう起きていいぞ」
アルマの声で詩郎はゆっくり上体を起こした。
傍らに置いていたシャツを手に取り、手早く袖を通す。

「どうなんだ、俺の身体は?」
いつまた、自分の内の中に眠る人格「黒詩郎」が目覚めて、身体を乗っ取られるか分からない。それが今の詩郎にとって唯一の不安要素であった。
「一回検査したくらいでは何も分からん」
アルマは淡々と答えながら、指先でデータを送信する。
「今後もお前には定期的に検査を受けに来てもらう」
「出来ればここにはあまり来たくないんだけどな……」
詩郎は苦い顔をしながらシャツの前を留めた。
アルマは口元にわずかな笑みを浮かべた。
「ブレイバーズもお前自身もアスカロン財団からの信用を得たいんだろう? なら、お前に拒否権はない」
「マジかよ……」
溜息混じりに呟く詩郎を見て、アルマはわざとマッドサイエンティストのような笑みを浮かべる。
白衣の裾を翻しながら、彼は詩郎の肩越しに興味深そうな目を向けた。
「それに――お前のサイボーグとしてのボディに“レギウス因子”が融合した肉体には、研究者としても興味がある。そう簡単に逃がさないからな」
「……はぁ」
詩郎は完全に諦めたように息を吐き、額を軽く押さえた。
その時――。
《ウウウウウウ――――!》
低く不吉な警報音が、静寂を切り裂いた。
天井の赤色灯が回転し、部屋の照明が警戒色に切り替わる。
「何だ、この音は?」
詩郎が身構える。
アルマの表情が険しくなった。
「この警報音は……地下監獄ブロックからか……まさか!?」
彼の言葉が終わるより早く――
ドォン!!
爆音と共に、研究室の壁が内側へ吹き飛んだ。
轟音、爆風、砕け散るコンクリートの破片。
煙と粉塵の中から、二つの黒い影が現れる。
一人は、艶やかな黒髪に妖しい光を宿した瞳を持つ女――黒百合。
もう一人は、栗毛のボブカットに短い黒装束の少女――百合鴉。
詩郎は即座に構えを取った。
「お、お前らは……!?」
煙の中で黒百合がゆっくりと微笑む。
「――あら、誰かと思ったら、あの時の紫髪の坊やじゃないの?」
艶やかに笑うその声に、室内の緊張が一気に張り詰めた。
詩郎の目が細まり、アルマが背後のコンソールへと手を伸ばす。
対峙する二組の視線が、火花を散らす。
研究室の空気が、戦闘の前触れのように震えていた。
襲撃
研究室に立ちこめる粉塵の中、
崩れ落ちた壁の向こうから差し込む陽光が、戦場のような赤い照明に溶け込んでいた。
黒百合はゆったりと足を踏み出し、煙を背に妖艶な笑みを浮かべた。
その瞳には、冷ややかな知性と底知れぬ自信が宿っている。
アルマが険しい顔で叫んだ。
「どうやって――あの厳重な地下監獄から脱獄を!?」
黒百合は肩をすくめ、くすりと笑う。
「さあ、私にもよく分からないわ。気がついたら、拘束具も扉も勝手に外れていたの」
そして、ゆっくりとアルマを指差した。
「それに――投獄されていた間、そこのおチビちゃんには“尋問装置”とやらでずいぶんと世話になったの。だから、お暇する前にきっちりお礼参りをしてからと思ったんだけど……」
黒百合の視線が詩郎をとらえる。
「まさか紫髪の坊や、アンタまでここにいたとはね」
その声に、詩郎の背筋がぞくりと震えた。
あのとき戦った女――黒百合。その冷徹な殺気は、以前よりもさらに鋭くなっている。
百合鴉が一歩前へ出た。
栗毛のボブが揺れ、若い顔に似つかわしくない敵意が滲む。
「以前に黒百合様に働いた無礼――ここで落とし前を付けさせてもらうぞ!」
詩郎は咄嗟に叫ぶ。
「アルマ、下がってろ!」
その声と同時に、黒百合が疾風のように詩郎へ飛びかかった。
金属の床を蹴る音、風を裂く気配。詩郎も素早く応じ、拳と脚がぶつかり合う。

鋭い衝撃音が響き、二人の身体が宙で弾ける。
詩郎のサイボーグボディが受け止める衝撃の一つ一つに、火花が散った。
「チッ……速いな!」
「アンタこそ、ちょっとは成長したみたいじゃない」
黒百合の蹴りが詩郎の顔をかすめ、床に亀裂が走る。
彼はすぐに姿勢を立て直すが――
「詩郎、後ろ!」
アルマの声が響くより早く、百合鴉の影が背後に滑り込んでいた。
鋭い音と共に、金属のワイヤーがアルマの身体を絡め取る。
「うわぁぁッッ!!」
アルマが叫び、機材の上に倒れ込む。
詩郎は振り向くが、黒百合の蹴りがそれを阻む。
「しまった! アルマ!!」
黒百合はゆっくりと立ち上がり、優雅に指を鳴らす。
「このおチビちゃんは――もらって行くわね」
百合鴉は気絶したアルマを軽々と肩に担ぎ上げた。
詩郎が怒声を上げる。
「ま、待ちやがれ!!」
だが、黒百合は振り返りざまに妖しい微笑を浮かべただけだった。
「追いかけたら、今度は坊やの命がなくなるかもよ?」
その言葉を残し、二人は壁際の大窓へと駆ける。
次の瞬間――
ガシャァンッ!!
強化ガラスが砕け散り、風が研究室に吹き込んだ。
黒百合と百合鴉の黒いシルエットは、光の中へと吸い込まれるように飛び降りていった。
詩郎は割れた窓辺まで駆け寄り、吹き荒れる風の中で歯噛みした。
「……くそっ、あいつら……!!」
瓦礫と煙の中、ただ一人残された詩郎の拳が、静かに震えていた。
冤罪
オメガ・タワーズ地上階、アルマの研究区画を繋ぐ白い廊下。
その静寂を破るように、突然、爆音と激しい振動が轟いた。
「な、何なの!? 今の爆音は!?」
錦織佳代が反射的に身構える。
隣にいたクリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィス3世――通称クリスも眉をひそめ、警戒の眼差しを研究室の扉へと向けた。
「この警報音といい、ただ事じゃありません。佳代さん、中に入ってみましょう!」
だが、分厚い防弾扉は赤いロックランプを点滅させたまま、びくともしない。
佳代は焦燥を隠せず、拳でドアを何度も叩きつけた。
「詩郎! アルマさん! 何があったの!? 返事をして!!」
だが中から返ってくるのは、煙の混じった沈黙だけだった。
そのとき――
「この騒ぎは何事かね!?」
背後から鋭い声が響いた。
現れたのは、白衣に身を包んだアーノルド=フックス副本部長。
彼の後ろには、アスカロン財団直属の保安要員たちが整然と並んでいる。
クリスが素早く報告する。
「中の様子が変なんです。爆発音のあと、応答がありません!」
フックスは険しい表情で扉を睨みつけた。
「……開けろ」
「はっ!」
保安要員たちが非常用のセキュリティ解除キーを差し込み、ロックを強制的に解除する。
重々しい音を立てて、扉がゆっくりと開いた。
中に広がる光景に、誰もが息を呑む。
研究室は半壊していた。
壁の一面が吹き飛び、床には機材とガラスの破片が散乱。
天井から垂れ下がるケーブルが火花を散らし、焦げた薬品の匂いが鼻を突く。
その中心に――
詩郎が、呆然と立ち尽くしていた。
衣服は煤で汚れ、拳を固く握りしめている。
目の焦点は合わず、まるで信じられないものを見た直後のようだった。
「詩郎、何があったの!?」
佳代が駆け寄る。
詩郎はハッと我に返り、うつろな瞳で彼女を見た。
「姐さん……実は、アルマが――」
しかし言葉を言い終える前に、フックスが一歩踏み込んだ。
「これは……お前がやったのか?」
「……えっ?」
詩郎の顔に困惑が広がる。
「な、何を言ってんだ! 俺は何も……!」
「問答無用だ!」
フックスが低く命じる。
「保安要員、この男を直ちに拘束しろ!」

「なっ、待てよ! 違う! 俺じゃない!! 俺じゃないんだ!!」
詩郎は両腕を押さえ込まれ、床に叩きつけられた。
金属の手錠がはめられる音が、冷たく響く。
「ちょっと待ってください!」
クリスが声を上げた。
「詩郎さんがそんな真似をするはずがない! 現場を調べもせずに断定するなんて――!」
佳代も叫ぶ。
「詩郎はそんなことをする人間じゃありません! これは何かの間違いです!!」
だが、フックスの目は氷のように冷たい。
「余計な口出しをすると、君たちの身柄も拘束させてもらうぞ?」
佳代は唇を噛み締め、拳を震わせた。
彼女の瞳には怒りと焦りが渦巻いている。
だが――詩郎を守る手段が、今はなかった。
「……くっ……!」
保安要員たちは詩郎を引き立て、廊下の奥へと連行していく。
その途中、詩郎が振り向き、必死に叫んだ。
「姐さん! クリス! 俺は何もしちゃいない!! 信じてくれ!!!」
その声は、廊下に反響しながら遠ざかっていく。
佳代は唇を噛み、声を絞り出す。
「詩郎……絶対に、私たちが真実を突き止めるから……」
「佳代さん、レイチェル本部長に会いに行きましょう! あの人ならきっと僕たちの話を聞いてくれるはずです!」
「そうね…」
だがその祈りも虚しく、
残された研究室には、焦げた薬品の匂いと、重い沈黙だけが残っていた。
(つづく)
  
  
  
  
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