BRAVERS EDITION　episode.102

新装備品の実用テスト中にトラブルが発生。製造元の安城重工に抗議した稲垣千秋は独自に原因を調べ始めるが、飲んだコーヒーの中に睡眠薬を盛られていて、資料室の中で眠ってしまう。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

束縛の鎖、決意の炎

――どこか遠くで、風のうなる音が聞こえていた。

視界がゆっくりと戻ってくる。だが、見慣れた天井ではない。コンクリートむき出しの、薄汚れた天井。その照明は弱く、ちらついている。埃っぽい空気が鼻を刺した。

「……っ……どこ……？」

稲垣千秋は目を覚ますと、まず腕を動かそうとして——動かないことに気づいた。

「……な、なによこれっ！？💦」

彼女は、背もたれ付きの古い椅子に腰かけた状態で、胸元から腹部、そして両腕にかけて、太い鉄鎖でぐるぐる巻きにされていた。背中の後ろで錠をかけられ、体は完全に固定されている。脚も両足首をまとめて縛られ、逃げ場はない。

もがく。揺れる。だが鎖は軋むだけで、解ける気配はない。

そしてその視界の中に、不快な笑みを浮かべた男の顔が現れた。

「お目覚めかな、稲垣さん」

「谷茂岡……さん……これはいったい、どういうつもりですか……！？」

千秋の瞳が怒りに燃える。だが谷茂岡は、まるで猫が獲物を前にじゃれているかのように、余裕の笑みを崩さない。

「まったく、お嬢さんというのはどうしてこうも、好奇心が過ぎるんだろうね。政府の金の流れを調べるだの、倉庫の在庫と照合するだの……いろいろと余計なことをしてくれたじゃないか」

「あなたが……やっぱり、あの装備テストも……わざと……！」

「お察しの通り。だがまあ、粗悪品を納品して、余った金を懐に入れる程度のこと、民間企業ではよくある話だろう？ とはいえ……今回の件はちょっとだけ、規模が大きかったかもしれんがね」

谷茂岡はポケットから葉巻を取り出し、火を点けた。ゆっくりと煙を吐きながら、口元だけで笑う。

「正直に言えば……今回の不正は私の独断というわけでもない。私に”やれ”と命じた人間がいる。“あの御方”だよ」

「あの御方……？」

「ふふ、今の君には教えてやれんよ。知ってもどうせ、ここで誰にも言えずに終わる。――まあ、しばらくはそこで大人しくしていることだ」

それだけ言い残すと、谷茂岡はくるりと背を向けて、重々しい扉を閉めて出ていった。

静寂。

闇が、戻ってきた。

千秋は、深く息を吐く。怒りと屈辱で、こめかみが脈打っている。だが、彼女の瞳に諦めの色はなかった。

「……こんなこともあろうかと――」

彼女は、手首を微かに動かした。そして、右手首に常備していた装備、ブレイバーズ製のブレスレット型レーザー発生装置の微細なスイッチを、親指で押し込む。

「作戦行動中の非常時用とはいえ……まさかこんな形で使うことになるとはね……！」

チリチリチリ……！

鎖の一部が、赤熱する細いレーザービームでゆっくりと焼き切られていく。火花を散らし、わずかに黒煙が立ちのぼった。

「もうちょい……もうちょいで……！💦」

――ガチャン！

鉄鎖がひとつ、切れた音が鳴る。

「……よしっ！」

千秋は一気に身体をよじり、残る拘束も強引にほどいていく。数分後、彼女はついに完全に椅子から解放された。

「これで……終わらせない。必ず、証拠を掴んで……”あの御方”とやらの正体も、暴いてやるわ！」

口元を引き締めた彼女は、壁の配線ボックスを外し、換気ダクトを抜けるルートを探し出す。そして、センター内の監視カメラの死角を縫いながら、影のように行動を開始した。

闇の中で、スワローレギウスの紅き意志が再び羽ばたく。
ただ一人、正義のために。真実を暴くその瞬間まで――。

暴かれた影の盟約

天舟島・装備実用化試験センター。その最奥にある所長室。

だがその中で、今まさに国家の根幹を揺るがしかねない闇の会話が交わされていた。

机上に置かれたモニターの画面に映し出されているのは、スーツを着た精悍な中年男。強い目元と整った顔立ち。その鋭さの裏に、凍てついた野心の気配を湛えている――政権与党・民自党の代議士、来島士門。

「しかし……ブレイバーズの小娘に不正を見咎められたとはな。谷茂岡、これは不覚だったぞ」

画面越しに放たれたその言葉に、谷茂岡泰利は深々と頭を垂れ、冷や汗を拭いながら答える。

「誠に申し訳ございません、来島先生。娘の方はこちらで始末いたします。決して、先生にご迷惑をおかけするようなことには……」

「そうだな。君の不始末で、私の名が世に出るようなことがあれば……谷茂岡、君にはこの世を去ってもらう」

来島の声は、静かに、だが凍えるほどに冷酷だった。

「……はっ。ご指示の通りに」

谷茂岡はうなだれたまま応えた。モニターにはやがて通信終了の表示が現れ、黒く沈黙する。

部屋の空気がさらに冷たくなる。

だがその時、所長室のドアの向こう、わずかに開いた扉の隙間に一つの影があった。

扉越しにじっと聞き耳を立てていたのは、稲垣千秋だった。警備用パスカードを複製して廊下の監視をくぐり抜け、この部屋にたどり着いた彼女は、偶然にもその会話の全てを聞き逃さなかった。

（……来島士門……やっぱり、黒幕はあの男……！）

心の中で千秋が名を呟いた時、過去の記憶が一瞬、彼女の脳裏に甦った。

来島士門――ブレイバーズの長官・牧村光平の父、故・陽一郎の元盟友。そして光平本人とも家族ぐるみの付き合いがあったという男。千秋もその名は聞いたことがあった。
来島は表向きは牧村家とも親しく付き合いつつも、その本心では陽一郎・光平父子に対して激しい嫉妬と憎悪の炎を燃やしていたのだ。

その時だった。

「おいッ！　そこに誰かいるのか！？」

背後の廊下から、鋭い声が響いた。巡回中の警備員だった。

振り返ると、懐中電灯を構えた男がこちらに駆け寄ってきている。

「……ヤバッ！！💦」

千秋は一瞬の迷いもなく、走り出した。警備員の怒声が背後から飛ぶ。

「待てッ！　侵入者だ！　捕まえろ！！」

「逃がすなーッ！」

センター内にけたたましい警報が鳴り響く。千秋は急いで通路の角を曲がり、足音を殺しながら非常階段へと滑り込んだ。

（捕まるわけにはいかない……！ 来島士門の黒い野望を、光平長官に知らせなきゃ……！）

だが、足音は階下にも、上階にも回り込むように近づいている。

今、孤島の密室で交わされた国家的な闇が、一人の少女によって暴かれようとしている。だがその先に待ち受けているのは、かつてない陰謀と巨大な敵。

戦いの幕は、すでに静かに上がり始めていた――。

（つづく）

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