BRAVERS EDITION　episode.64

　夜の買い出しの最中に、温泉街のコンビニ前で偶然にも百合鴉を発見して尾行を開始したリネア=フリーデン=ヴァイサーは逆に敵の手に落ち、加藤段十郎もまた黒百合ダークリリィの罠に嵌って闇深い奈落の底へ。

　一方、よもやそんな事態になっているとは露とも知らないブレイバーズはというと…？

※文章は、chatGPTで生成しております。

朝風呂でのガールズトーク

朝の山々に柔らかな陽光が差し込む頃、ホテルの露天風呂では、湯けむりが白く立ち上り、温泉成分でなめらかになった石の表面を、澄んだ湯が静かに流れていた。

「はぁ～～～っ、極楽極楽……♪」

湯船の縁に肘をかけながら、沢渡優香が気持ちよさそうに伸びをする。その隣で錦織佳代も同じように肩まで湯に浸かり、朝の冷たい空気と温泉の対比を楽しんでいた。

「やっぱり、ここの泉質最高だね。肌がしっとりする～」

「うん。夜もよかったけど、朝はまた違った風情があるよね、佳代」

「だよね、優香。夜の静けさも捨てがたいけど、朝の澄んだ空気の中で入るのも気持ちいいなあ～」

二人の会話に、すこし離れた場所で肩まで湯に浸かっていた稲垣千秋がちらりと笑みを浮かべた。

「朝風呂って、なんか特別ですよね。すっぴんでも肌がつるつるになる気がします」

「うんうん、千秋ちゃん、たしかに！」と優香が頷く。

「ほら、楓花ちゃんの肌なんて、つるっつるじゃない？ 思わず撫でたくなっちゃう♪」

「えっ！？ そんなことないですよ、優香さん……」

頬を赤らめながらも、まんざらでもない様子の獅場楓花。

「でも本当に、お湯に入るたびにお肌がもちもちになるのは実感します。さすが“美肌の湯”って言われるだけありますよね」

「そりゃ楓花ちゃんの肌は若さの賜物でもあるけどね～」と佳代がいたずらっぽく笑った。

「私はこれ以上お肌ケア頑張らないと……年齢が……」

まだ20代の年齢なのに、この中では比較的年長組ゆえに本気なのか、はたまた自虐的冗談なのか、自分の肌の心配をし始める佳代。

「そんなこと言って、佳代さん、肌めっちゃ綺麗ですよ」

楓花の真面目なフォローに、佳代は「ありがと♪」と軽くウィンク。

そこにふわっと立ち上る湯けむりの向こうから、やや大柄で気品を感じさせる姿が近づいてくる。透き通るような肌に、長い金髪を湯に濡らしながら、フィリス=ミラ=エクセリアが優雅に湯船へ入ってきた。

「……こういう湯は、王都の宮殿にもあまりなかったわ。温泉って本当に素晴らしいわね」

「フィリスさん、どうですか？　ここのお湯、気に入ってもらえました？」

優香が声をかけると、フィリスは静かに微笑んだ。

「ええ。温泉はこれまでも公用で来日した時に何度か入ったことはあるけれど、これが“日本の文化”というものなのよね。改めて気に入ったわ♪」

「前から思ってましたけど、フィリスさんってやっぱりモデル体型ですよね。足、ながっ……」

「佳代、失礼だよ」と苦笑する優香に、フィリスは涼しげに肩をすくめる。

「ふふ。異国での“称賛”は慣れてるけれど、佳代の言い方はちょっと面白いわ」

少し離れた位置では、瀬尾梨帆が湯の中でゆるりと髪をまとめながら、こっそりフィリスを観察していた。まるで雑誌から出てきたような美貌に、ほんの少しだけ圧倒された気分だ。

「……すごいなぁ、フィリスって。やっぱあのイケメンな光平さんの従姉さんおねえさんだけあるよね」

梨帆の呟きに、佳代がすかさず反応した。

「そうそう。フィリスさんと初めて会ったのは、あたしと優香がまだ高校生の時だったけど、あたしも最初に紹介されたときビックリしたよ。“えっ、こんな綺麗な人が光平の従姉!?”って。優香もそう思ったよね？」

「うんうん、初めて会ったとき“どこのハリウッド女優さん？”って思っちゃったもん」

フィリスと初めて会った時の思い出話を語る二人のやり取りに、彼女はほんのり微笑を浮かべる。

「それは少し褒めすぎじゃないかしら。でも、ありがとう」

「ま、とりあえずは――せっかくの温泉旅行だし、朝ごはん食べたらまたみんなで観光に行きましょう！」

「賛成～！」と佳代が笑い、続いて他の女子たちも頷いた。

朝日が湯面に反射し、6人の少女たちの時間が穏やかに流れていく。その背後で、まだ誰も知らない闇が、静かに渦を巻いていることも知らずに――。

異変の始まり

朝食を終えたばかりのホテルのフロント・ロビーは、普段の穏やかな温泉宿の雰囲気とはまるで別物だった。

「えっ！？　崖崩れですって！？」 「道路が！？　じゃあ……ここから出られないってことですか！？」 「救急車も来られないって、そんな……！」

騒然とした空気の中、宿泊客たちの声が飛び交い、受付スタッフも対応に追われていた。館内放送では繰り返し「現在、県道〇〇号線は通行不能となっております。二次災害の恐れもあるため、ロビーでの集合をお願いいたします」と告げられている。

その情報をいち早く確認した牧村光平は、仲間たちを引き連れてロビーへと現れた。事態を重く見た彼は旅行の日程を中断、即座に行動を決意する。

「……県道〇〇号線が完全に寸断された。ここは一時的に孤立状態になったようだ。だけど、被害がこれ以上広がる前に手を打つ」

周囲にいた仲間たちが、その言葉に緊張を走らせる。だが、誰も慌てず、光平の指示を待った。

「まずは、飛行能力を持つ俺と千秋が空から現場を偵察する。俊一と詩郎も、地上から応援に向かってくれ」

「了解！」と即座に応じる獅場俊一と寺瀬詩郎。

「光平くん、私たちはどうすれば？」と優香が訊ねる。

光平は振り返りながら、残る仲間たちに力強く告げた。

「フィリス、優香、佳代ちゃん、みんなはここを頼む！ パニックになってるお客さんたちを落ち着かせてくれ！」

「分かったわ。任せて！」とフィリスが毅然と頷く。

「光平くんも気をつけてね」と優香が声をかけると、光平は小さく笑って返した。

次の瞬間、彼の声が響き渡った。

「翔着――!!（シグ・トランス!!）」

まばゆい光と共に、彼の身体が紅蓮の輝きを纏って変化していく。天凰輝シグフェルの姿が現れ、背中の翼が燦然と展開される。

続いて――

「ブレイブシフト!!」

稲垣千秋、獅場俊一、寺瀬詩郎の三人も、それぞれが変身コードを叫び、光に包まれてレギウススーツを纏っていく。

千秋はスワローレギウス・パワードモード、俊一はライオンレギウス・パワードモード、詩郎はサーベルタイガーレギウス・パワードモードへとそれぞれ姿を変え、すぐさま出動していった。

その変身と飛翔を見送る者たちの中に、心を焦がす少年が一人――

「くっ……俺たちだってハイテクオリハルコンスーツさえ手元にあれば……！」

紫城心翔が歯噛みしながら拳を握りしめる。

「落ち着け、心翔」と隣で美濃本敦が冷静に言う。「装備一式を置いて来てるんだからしょうがない。俺たちは俺たちの出来ることをするしかない」

「でも、こんな時に動けないなんて……！」

「なら、せめてこの場の混乱を最小限に抑えるんだ。お前の“言葉の力”も、十分な戦力になる」

敦の言葉に、心翔は無言で頷き、視線をロビーへ向けた。

宿泊客たちは、まるで逃げ場のない船の上にいるかのように、不安と恐怖にかられていた。だが、そんな中で、優香、佳代、フィリス、楓花、心翔、敦、梨帆、そしてクリスと稲垣健斗も迅速に動き始める。

「皆さん、落ち着いてください！」
優香が、通る声でロビーに呼びかけた。

「ここは安全です。外の状況は私たちの仲間が確認に向かっています！ 必ず、道は開けます！」

「不安なのは分かりますが、今は冷静になることが最も大切です」と佳代が、宿泊客の一人一人に目を合わせながら語りかける。

バイリンガルであるフィリスもまた、その気品ある佇まいで、海外からの観光客に英語をはじめ数か国語を自在に操って丁寧に説明を加えていく。

「Please remain calm. Rescue teams are already on their way. We’ll ensure your safety.（どうか落ち着いてください。救助チームはすでに向かっています。安全を確保します。）」

楓花は、高齢の宿泊者の手を取りながら、「こっちのロビーソファが温かいですよ。落ち着いて座ってくださいね」と優しく誘導。

梨帆もクリスや健斗、そしてホテルの受付スタッフとも協力して、必要な情報の整理と掲示を進めていた。

心翔と敦も、ホテルスタッフに混じって動きながら、パニックを起こしそうな客を個別に落ち着かせる声掛けをしていた。

「大丈夫ですよ。いざとなったら僕らもいます。安心してください」

一人、また一人と、宿泊客たちの表情に落ち着きが戻り始める。

こうして――
温泉郷に迫る自然災害に立ち向かう者たちと、ホテルに残って支える者たち、それぞれの役割が動き出していた。

まだ、嵐の幕は上がったばかりである。

突如の反転

県道の脇を抜け、崖崩れの現場へと急行する二つの影――

ライオンレギウスとサーベルタイガーレギウスが、斜面を駆け上がりながら跳躍し、岩を飛び越え、森の中を縫うように進んでいた。

「急げば、あと十五分ってとこか……」
ライオンレギウスが前方の地形を読みながら呟いたそのときだった。

――《よぉ……》
サーベルタイガーレギウスの内面に、ざわりと風のような声が響く。

「……またお前か。今取り込み中だ。後にしてくれ！」

周囲にライオンレギウスの姿しかないはずなのに、脳裏には明確な声が響き続けていた。まるで鏡の奥から語りかけてくるようなその声――

それは詩郎の深層心理の奥底に普段は眠っている、もう一人の寺瀬詩郎だった。

「おい、引き返した方がいいんじゃないのか？」

「……どういう意味だ？」

足を止めるわけにもいかず、サーベルタイガーレギウス――詩郎は心の中で対話を続ける。

「おかしいとは思わないか？　ここ数週間、霧深温泉はずっと快晴が続いていた。降雨量は平均以下だ。なのにどうして、こんな突然の崖崩れが起きる？」

「……まさか、お前……」

「そうさ。これは自然災害なんかじゃない。何者かが“意図的に”起こした事件だ。お前たちはまんまとおびき出されたんだよ」

詩郎の背中を冷たい汗が伝う。

「考えてもみろ。今、ホテルには“変身して戦える者”が一人も残ってない。俺が悪党なら、この好機を逃したりはしないぜ？」

「くそっ……！」

サーベルタイガーレギウスは立ち止まる。足元で枯れ葉が舞い、緊急出動中のはずのその足が、突如その場で回れ右した。

「……待て！ どこ行くんだよ！？」

ライオンレギウスが驚き、駆け寄ろうとする。

「すまん、俊一！　ホテルが狙われてるかもしれない！」

「は……！？　何の話だよ、詩郎！？」

「説明してる時間がない！ 光平さんと千秋には……よろしく言っといてくれ！！」

叫ぶように言い残し、サーベルタイガーレギウスは猛スピードで森を引き返していく。木々の間を風のように駆け、跳ね、土を蹴り、彼の背中には焦燥と決意が燃えていた。

「頼むぞ……どうか、みんな――！」

喉の奥から絞り出される祈りのような言葉。

「どうか無事でいてくれ！！」

そう叫ぶ詩郎の視界には、遠ざかっていたホテルの屋根が、再びその輪郭を現しつつあった。

――彼の予感が、ただの杞憂であればいい。
だがその頃、ホテルでは――
確かに“何か”が動き始めていた。

つづく。

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