鉄面卿の挑戦　第5話

　神出鬼没の大怪盗・鉄面卿が、会社社長・川上雄太郎氏（60）の邸宅に予告状を送り付けて来た！

　川上社長が所蔵する時価十数億円もするアマゾンの秘宝『ナイルターザの腕輪』を今夜頂戴するという。武智探偵が出張中で不在の中、咲間警視から出動要請を受けた相馬晴彦たち武智探偵事務所の学生探偵たちも警察と共に警備に当たるが、腕輪を奪われるのを阻止した代わりに、イサム=ルワン=ラーティラマートが鉄面卿に誘拐された！　さらにはイサムを救出にアジトへと乗り込んだ晴彦と雨宮梨奈も囚われの身に！

　人質となった梨奈と考古学者・広田博士の娘・真衣と共に、再度川上邸へと乗り込む鉄面卿。いよいよクライマックスへ！

事件の真相

「梨奈、どこにも怪我はないのですか？」
「大丈夫よ詩織、ありがと」

　不破詩織に縄を解いてもらう梨奈と真衣。

　晴彦は鉄面卿に監禁されている間も、耳に仕込んでいた高性能通信機で密かに探偵事務所で待機していた詩織と連絡を取り続け、独自の推理によって事件の真相に辿り着いたのである！

　事の真相はこうである。半月ほど前に古代アマゾン文明の調査のためアマゾンへと向かっていた川上社長と広田博士だったが、川上社長は文明の秘宝の独り占めを画策。良心の呵責からそれに反対した広田博士をアマゾン川に突き落とし、地元の少数民族であるナイルターザ族から『ナイルターザの腕輪』を言葉巧みに騙して奪い去り、一週間前に日本に帰国したのだ。

「私のアジトで長期間拘束されていた状態で、よくぞそこまで真相に辿り着いたものだ。さすがは武智君の一番弟子だな…」

鉄面卿も晴彦の披露した推理に感服している様子だ。

「咲間警視に頼んで現地警察に調査を依頼して判明したのです。ナイルターザ族の長老や部族の他数名から目撃証言も取れています。もう言い逃れは出来ないのです！」
「くっ…あと少しで古代アマゾン文明の隠された財宝を全て独占できるところだったのに…」

　観念した川上社長は駆けつけた警察に連行されて行った。

「お父さん……んっ、ううっ……」( ﾉД`)ｼｸｼｸ…

父が〇んだと聞かされた真衣は、その場に泣き崩れるが……。

「大丈夫だぜ真衣さん。お父さんは生きてるよ」
「えっ…!?」

　晴彦は促された真衣は顔を上げると、部屋の中に入って来た広田博士の姿が目に入った。思わず父親に駆け寄り抱きしめて再会を喜ぶ真衣。

「あぁ…お父さん！ 無事だったのね！」
「真衣、心配をかけてすまなかった…」

　アマゾン川に突き落とされたと思われていた広田博士は、偶然現場を目撃していた部族の若者たちに救助されていたのだった。その後、川上にバレないように極秘帰国した広田博士は、ナイルターザの腕輪を狙っていた鉄面卿に捕まっていたのだが、広田博士から一部始終の事情を聴いた鉄面卿に義侠心が働いたのか、腕輪の奪取よりも悪徳社長である川上に一泡吹かせることに目的のシフトを重く置くという方針転換が行われたようだ。

「俺の推理は以上だ。どこか間違ってるかい？ 鉄面卿さんよ！……ってあれ??　鉄面卿は！？」
「そういえばいつの間にか鉄面卿の姿が見えない！」
「大変よ！ ナイルターザの腕輪も金庫室から無くなってるわ！」
「…や、やられたァァッッ!!」

晴彦たちが地団太を踏んで悔しがる一方で、望みの腕輪を手にして闇夜に一人舞う鉄面卿。

「フハハハハハ！！ 学生探偵の諸君、やはりまだまだ青いようだな。私は一度狙った獲物は必ず手に入れる。武智くんにはよろしく伝えてくれたまえ。それではまた会おう！」

エピローグ

　その後、ナイルターザの腕輪はいつの間にかアマゾン現地のナイルターザ族の手元に戻されたとマスコミに報道された。おそらく鉄面卿が腕輪の本来の持ち主に返還したのだ。テレビも新聞も義賊・鉄面卿の活躍の話題で持ちきりだ。

「奴はそんな単純な善人じゃない。おそらくナイルターザの腕輪から必要な情報が取れたんで、もう腕輪自体に用がなくなったのさ」
「必要な情報って……古代アマゾン文明の隠された財宝のこと？」
「ああ、だからまだ勝負は終わっちゃいない。必ず鉄面卿にリベンジできる機会は来るさ」
「コーヒーが出来たのです」

　詩織が4人分のコーヒーを入れて来てテーブルに運んできたので、晴彦たちはそれぞれコーヒーカップを手に取り会話を続ける。

「そういえばイサムくんの貿易協定調印式の出席の件はどうなったの？」
「その件なら大丈夫さ。あまり大きな声では言えないけれど、詩織ちゃんにちょっと各方面にハッキングしてもらって、日程を少しズラしてもらったから」
「マジかよ…」(;^_^A アセアセ・・・

END