おかめマン追跡編ノ巻　その一

日本財界の雄と呼ばれる銀行業界トップ、東都銀行名誉会長の一ノ瀬泰三氏（85）が誘拐され、日本政府に身代金10億円を要求する脅迫状が届いた事件は、謎のスーパーヒーロー『おかめマン』の活躍によって今まさに解決しようとしていた！

今日も活躍、おかめマン！

アジトを急襲し、一ノ瀬氏を誘拐・監禁していたテロリスト一味をフルボッコにして全員を正座させ、お説教をしているおかめマン。

「いいッスか！？ 人質は可憐な美少女か、あるいは白馬に乗るような美少年に限るッス！ こんな年寄りのジジイなんか誘拐しても、ちっともいい絵は撮れないッスよ！」
「チッ、そんなことと我々の崇高な革命思想とどんな関係が……」
「おかめビームッッ!!」
「ギャアアッ!!」

おかめマンに口答えしたテロリストの一人が、お仕置きとして哀れなるかな、おかめビームによって黒焦げにされてしまった。

「お前らのくだらんイデオロギーなんかどーでもいいッス！ 他にコイツのように黒焦げになりたい者はいるッスか？」
「や、やめろ…やめてくれッ！ 俺たちは全員武器を捨てて降伏したじゃないか！？」(((( ；ﾟДﾟ)))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
「お前たちはこれから清く正しい誘拐犯に生まれ変わるべく、某所にて再教育の刑を受けるッス。覚悟しておくがいい！」

おかめマンからの非情の宣告を聞き、恐怖で震え上がるテロリストたち。そこへさっきから話が終わるのをずっと待っていた一ノ瀬氏がおかめマンに近寄って来る。

「あのー、もう儂は帰っていいのかね？」
「まだいたッスか？ 貴方には特に用はないので、もうお引き取り頂いて結構ッスよ。つーかさっさと帰れよ。さようなら」
「ちょっと待ちたまえ。まさか儂にここから徒歩で帰ろとでも言うのか！？ 儂を誰だと思っている！？ 日本の政財界にその人ありと言われた一ノ瀬泰三だぞ！」
「めんどくさいジジイッスね～。じゃあはいコレ」

おかめマンは自分のお財布から一万円札を一枚取り出した。どうやらタクシー代として使えと言っているらしい。

「何だねこれは？」
「タクシー代ッスよ。それだけあれば足りるっしょ。…えっ、まさか普段カードしか使ってないから現金の使い方が分からないとか、そんな漫画みたいなオチじゃないッスよね？」(￣ｍ￣〃)ぷぷっ!
「くっ…バ、バカにしおって！ 一度は君に感謝した儂が馬鹿だった！」
「ジジイ、せいぜい長生きするッスよ！」
「うるさいッ！！ 全く今どきの若いもんはﾌﾞﾂﾌﾞﾂ…」

憤慨した一ノ瀬氏は、プンスカ怒りながら一人で自宅へ帰って行きましたとさww

学生報道部、動く！

おかめマンの正体を突き止めようと取材に動き出した鷺島国際大学報道部の取材班クルー、小寺洸介、桜庭陽平、鳳凰院優の3人は、なんと大胆不敵にも世界征服を企む悪の秘密結社『おかめ党』の本拠地であるおかめ城に突撃取材を試みていた。

「き、君たちは何者ッスか！？ 一介の学生の分際で、いったいどうやって我がおかめ城の位置を突き止めたッスか！？」
「それよりもおかめの御前さん、今巷で話題のヒーロー、おかめマンとは貴方のことなんですか？」
「つーかアレってどう考えてもお前だろ！？ 他に考えられん」
「失敬な！ あんな紛い物と余を一緒にしないでほしいッス！ そもそもこっちも勝手に顔と名前を使われて迷惑しているッスよ！」
「ちなみにご兄弟とかは？」
「こちらにはプライベートなことにまでお答えする義務はないッス！」

優のインタビューに、おかめの御前はおかめマンとの関りを明確に否定した。これ以上追及しても特に得られるネタはなさそうだと判断して帰ろうとしたその時、

「ちょっと待つッス！ 一般人がのこのこおかめ城に踏み込んでおいて、まさかこのまま無事に帰れるとでも思ってるッスか？」(￣ー￣)ﾆﾔﾘ

おかめの御前が不穏な言葉を口にすると、二人組の戦闘員が現れて、たちまちカメラマンの洸介を捕らえてしまった！

「な、何をするんだ！？ 放せッ！放せーっ！！」
「ちょっと、小寺くんをどうするつもり！？」
「ジャーナリストの身分は国際的にも保障されているんだぞ！ すぐに小寺を解放しろ！」
「フフフッ…そうはいかないッス。小寺洸介君はおかめ党が人質として預かるッス。無事に仲間を返してほしかったら、おかめマンの正体を一刻も早く突き止めることッスね。そうしないと洸介君がどうなっても知らないッスよ♪」
「くっ、なんて卑怯な…!!」

洸介を人質に取られた陽平と優は、おかめ城の外へと叩き出されてしまった。

「やっぱりおかめマンはおかめの御前とは別人なのかなぁ～？」
「まだそう判断するのは早計ではないかしら？ あくまで惚けて別人のふりをしているだけなのかも…」
「とにかく今は小寺が抜けた穴を埋めないとな」
「それなら私に心当たりがあるわ」

DRYADESと共闘へ

「なるほどね。それなかなか面白そうね♪」

優は、同じ大学に通う友人である羽鳥瑠璃華に相談を持ち掛けた。ちょうど瑠璃華率いるサバゲ―チーム『DRYADES（ドリュアデス）』も、普段ゲームに使っている場所が諸事情によりしばらく使えない理由で暇を持て余していたところだった。ほとんど興味本位ながら報道部への加勢を快諾した瑠璃華は、おかめマンをおびき出すために囮捜査を提案。その囮役に推薦されたのが、案の定というか綾塚音祢だった。

「えっ、で…でもぉ……」

最初はあまり乗り気ではなかった音祢だったが、おかめ党に捕まっている洸介を助け出すためと説得され、「人助けになるならば」と渋々承諾した。果たして学生報道部とDRYADES合同による囮捜査は上手くいくのであろうか？

つづく。