検非違使秘密任務禄　その三

何者かに誘拐されそうだった来島陽依を危機から偶然救った孝森祐宜と椿姫絢那。アスカロン財団の三刀谷真玲と周翠琳は、陽依の父で政治家の来島士門につきまとう黒い疑惑の証拠を掴むべく、検非違使に協力を要請して来る。陽依とお友達になった祐宜と絢那は、彼女の誕生日パーティーに招待されることになったが…。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

テニスコートにて

　翌日に誕生日パーティーを控えた来島陽依だったが、その日も彼女は祐宜と絢那と共に、京都市内のスポーツ公園にあるテニスコートへと足を運んでいた。

「さぁ、いきますよ〜、陽依さん！」

　コートに立つ絢那が笑顔でボールをトスし、軽やかにサーブを打ち込む。

「は、はいっ！」

　それを必死に追う陽依。短めのスコートが翻り、汗ばむ額をぬぐいながらも、楽しそうな笑顔は終始絶えなかった。

　――審判台の上では祐宜が審判役を務めており、二人の動きを目で追いながら時折、点数を告げていた。

「ナイスサーブ、絢那。現在、40-15や」

「ふふ、じゃあ次で決めちゃいますよ〜」

　そんな他愛ないひととき。競技が一段落すると、三人はコート脇のベンチに並んで腰を下ろした。喉が乾いたのか、絢那が自ら立ち上がる。

「ちょっと飲み物、買ってきますね」

「あ、悪いな。頼むわ」

　祐宜がそう声をかけると、絢那はタオルで首筋の汗をぬぐいながら自販機の並ぶコーナーへと歩いて行った。

「さてと、どれにしようかな…」

絢那がどの冷たい飲み物を買おうか選んでいると、その背後にゆっくりと近づく何者かの気配が…。

陽依の抱く父への思い

　ベンチに残された祐宜と陽依は、しばし沈黙のあと、何気ない会話を交わし始めた。

「なあ陽依ちゃん、明日の誕生日パーティー、緊張してへんのか？」

「うーん、ちょっとだけ。でも……お父様もとても楽しみにしてるから」

「そっか。……お父さんのこと、どう思ってる？」

　ほんの少しだけ、会話のトーンが変わる。だが陽依は、疑問の裏にある意図に気づく様子もなく、無邪気に微笑んだ。

「とても尊敬してます。厳しいけど、優しくて……私にとっては世界一立派なお父さんです」

　その言葉に、祐宜は短く頷くだけだった。背筋を伸ばし、視線を空へと向ける。

（やっぱり、何も知らんのやろな……）

　彼女の目は純粋だった。父の影に潜む黒い噂や、裏社会との関係など、陽依は何一つ知らされていないのだろう。もちろん、それを暴き立てるような真似を今ここでするつもりもなかった。

「ま、ええことやと思うで。それに……」

　と、祐宜が言いかけたところで、ふと横を見やる。

　――絢那が、まだ戻ってこない。

「……？」

　祐宜はポケットからスマホを取り出し、絢那の番号を呼び出して発信する。

　だが。

「……繋がらん、か」

　再度、リダイヤル。しかし、結果は同じ。

　陽依が不安げに眉を寄せる。

「どうしたんですか？」

「いや、絢那が戻ってけぇへんから、電話してみたんやけど……」

　彼女を探しに、自販機のある方向へと移動する祐宜と陽依。しかし、そこに彼女の姿はなかった。

　祐宜の胸中に、不吉な何かがひたひたと忍び寄ってくる。

「……くそっ、やっぱり繋がらへん！ 絢那のやつ、いったいどこに行ったんや……？」

　ロッカールーム前の廊下で再度携帯電話をかける祐宜。その隣で、陽依が心配そうに彼を見上げていた。

絢那、わざと捕まる。

　――数分前、自販機の影。

　絢那はその背中に、冷たい“何か”を突きつけられていた。

「騒ぐな。大人しくしていれば、傷つけたりはしない。……俺と一緒に来てもらおうか」

　背後からの低い声。表面上、絢那は驚いた様子を見せるが、その瞳は鋭く静かに犯人を分析していた。

（――間違いない。この声、あの姿勢。数日前、陽依さんを襲った男ね）

　粗雑な動作、不自然な立ち位置、プロの動きではない――明らかに素人の犯行。

（……どうやら、今回も“分かりやすい”展開みたい）

　絢那は小さく微笑んだ。

　自らの意志で、彼女は男の言う通りに歩き出した。男を返り討ちにして制圧することは容易かったが、ここは男の正体と目的、背後関係を掴むことが先決。

（いいわ。目的が何か、正体が誰なのか。今度こそ、全部引きずり出してあげます――）

　静かに、だが確実に、絢那の「潜入」が始まっていた。

（つづく）

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