安土市内で小学生誘拐事件が発生。幸い程なくして被害者の友貞稜太は無事に救出されるが、稜太は自分を助けに来た者たちの中に、同じクラスメイトの桐橋勇人の姿を目撃していた。稜太から相談を受けた親友の稲垣健斗は、勇人に直接問い質すべく森の中で彼と対峙する。勇人から話を聞いた健斗は、ブレイバーズ関係者の個人情報が外部に漏れていると確信。詳しく調べるため、その足でブレイバーズ本部セントリネル・ハブへと向かい、稜太の父・友貞利彦上席主任研究員にも会って話を聞くが、大した手掛かりは得られなかった。その翌日、健斗や稜太の通う小学校に勇人に続く新たな転校生・相模路香が現れた。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
楓花、危機一髪!?
午後の柔らかな陽射しが、安土の街並みを黄金色に染めていた。
滋賀県立安土江星高校――私服通学制の校門から、放課後の生徒たちが三々五々に流れ出していく。
「ねえ楓花、今日の英語の小テスト、意外と簡単じゃなかった?」
ポニーテールを揺らし、Tシャツにジーンズ姿の由紀が、歩きながら振り返る。
「うん。最後の長文、ちょっと拍子抜けしたかも」
水色のワンピースを着た舞が、控えめに微笑んだ。
その二人の隣を歩くのは、黒髪のボブに白の半袖ブラウス、灰みの青紫色のプリーツショートパンツ姿の獅場楓花。
ブレイバーズ隊員・獅場俊一の義妹であることを、学校で知る者はほとんどいない。今の彼女は、ごく普通の高校一年生だった。
「楓花は? 今日のバドミントンの部活どうだった?」
由紀が聞く。
「今日は軽めだったよ。テスト前だしね」
楓花はそう答え、三人で何気ない笑い声を交わす。

やがて、通学路の途中にある分かれ道に差しかかる。
「じゃ、ここで分かれ道だね」
「バイバ~イ!」
「また明日ね♪」
由紀と舞は手を振り、別々の方向へと歩いていった。
一人になった楓花は、通学バッグを持ち直し、家へと続く道を歩き出す。
その背後――数十メートル離れた場所に、一台の黒い車が音もなく速度を落としていた。
車内。
ハンドルを握る黒服の男は、サングラス越しに楓花の背中を見据えている。
ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めていく。

楓花はふと、胸の奥にざわりとした違和感を覚えた。
振り返るほどではないが、誰かに見られているような、妙な気配。
その時――。
「楓花せんぱ~い♪」
明るい声が、空気を切り裂いた。
「……え?」
楓花が足を止めた瞬間、右手を大きく振りながら駆け寄ってくる少女の姿が目に飛び込んでくる。

「亜也花ちゃん!」
楓花の表情が、ぱっと和らいだ。
ツインテールの髪を揺らし、赤いネクタイに赤のチェック柄プリーツスカートの制服。
中学三年生の星愛亜也花――楓花の中学時代の後輩だ。
以前に事件に巻き込まれたところをブレイバーズに救われた女子大生・星愛怜美花の妹でもある。
「久しぶりですね、先輩!」
「うん、亜也花ちゃんも元気そうだね」
その光景を、車内から見ていた男は舌打ちした。
「チッ……!」
思わぬ邪魔者の出現。
これ以上近づけば、周囲の目につく。
男はハンドルを切り、何事もなかったかのように楓花の横を通り過ぎていった。
「……?」
一瞬、楓花はその車に視線を向けた。
どこか引っかかる感覚が胸をよぎる。
「どうしたんですか? 楓花先輩」
亜也花が不思議そうに顔を覗き込む。
「…ううん、何でもない」
楓花は小さく首を振った。
車はもう遠ざかっている。――きっと、気のせいだ。
「こっちも学校が終わったばっかりなんです。
せっかくですから、途中まで一緒に帰りませんか?」
「うん、いいよ」
「やったー♪ 楓花先輩大好き!」
二人は肩を並べ、夕暮れの道を歩き出す。
部活の話、先生の噂話、何気ない日常の会話が弾んでいく。

「そういえば……」
亜也花が少しだけ声を落とした。
「近頃、誘拐事件とかあったばかりで物騒ですよね。
楓花先輩も、気を付けてください」
「心配してくれてありがとう。
でも、亜也花ちゃんこそ気を付けなきゃダメよ」
「やだなー、私なら大丈夫ですよ♪
それより、今度の日曜、バドミントンの試合があるんです。
よかったら応援に来てくださいね!」
「うん、必ず行く」
楓花はそう約束し、優しく微笑んだ。
――その頃。
街外れの路地で、先ほどの黒い車は停車していた。
運転席の男は無線機を取り出し、短く報告する。
「ターゲットの捕獲に失敗した。
思わぬ邪魔が入ってな」
無線の向こうから、低く冷たい声が返ってくる。
『ターゲットを変更する。直ちにA地点に向かえ』
「了解」
男はエンジンを吹かし、再び夜の街へと溶け込んでいった。
何も知らず、笑い合いながら帰路を進む楓花と亜也花。
だがその背後では、静かに、確実に――新たな影が動き始めていた。
夕刻の稲垣家
夕刻の稲垣家には、台所から漂ってくる出汁の香りが満ちていた。
フライパンの上で野菜を炒める音と、換気扇の低い唸りが、穏やかな日常を形作っている。

キッチンでは、エプロン姿の姉・千秋が手際よく夕飯の支度を進めていた。
一方その頃、リビングのソファには弟・健斗がだらりと腰を沈め、スマートフォンを指先で流し見している。画面に映る内容は頭に入っていないらしく、どこか考え込んだ表情だった。
「ねえ、姉ちゃん」
ふいに健斗が口を開く。
「なぁに、健斗」
千秋は振り返らず、包丁を動かしたまま応じる。
「稜太の親父さんってさ、職場での評判はどうなの?」
千秋の手が、一瞬だけ止まった。
だがすぐに動きを再開し、少し考えるような間を置いてから答える。
「稜太くんのお父さん……友貞上席主任のこと?
どうって言われても……そうだなぁ~」
フライパンに具材を移しながら、千秋は続ける。
「部署が違うから、数回顔を合わせた程度だけどね。
研究熱心な人だって話はよく聞くし、同僚や部下からも慕われてるみたいよ。少なくとも、悪い噂は一度も聞いたことがないな」
「ふーん……」
健斗は短く相槌を打ち、画面を消したスマートフォンを膝の上に置く。
「どうしたのよ? いきなりそんなこと聞いてくるなんて」
千秋は横目で弟を見る。
「いやさ……稜太の誘拐事件のことでさ」
健斗は視線を天井に向けた。
「捕まった犯人、まだ警察の取り調べでも黙秘してるんだろ?
もしかして、稜太の親父さんが仕事絡みで誰かから恨みを買ってたんじゃないかって……」
「それはないんじゃないかな」
千秋は即座に首を振った。
「友貞主任は、人から恨みを買うようなタイプには見えないし」
「……そっか」
健斗は小さく息を吐いた。
だが、その胸の奥には、どうしても消えない違和感が残っている。
――セントリネル・ハブで見た光景。
研究予算を巡り、声を荒げていた友貞利彦と小金井総一郎。
あの時、小金井の目に宿っていた冷たい光が、脳裏から離れなかった。
「じゃあさ」
健斗は、探るように言葉を選ぶ。
「財務・管理部の小金井って人について、何か知らないか?」
千秋は少し考え込むように眉を寄せた。
「財務・管理部の小金井?……小金井副部長のこと?
名前は知ってるけど、直接会ったことはないのよね。だから、どんな人かは分からないなぁ」
「そっか……」
その瞬間だった。
千秋のスマートフォンが、甲高い着信メロディを響かせた。
画面に表示された発信元を見た千秋の表情が、すっと引き締まる。
「……司令室だ」
千秋はすぐに通話に出る。
「もしもし、千秋です。はい……はい……」
次の瞬間、彼女の声が一段高く跳ね上がった。
「えっ!? それは本当ですか!?」
健斗は思わずソファから身を乗り出す。
千秋の顔色は明らかに変わっていた。
「……了解しました。すぐに向かいます!」
通話を終えるや否や、千秋は火を止め、エプロンを乱暴に外す。
その動きには、迷いが一切なかった。
「ちょ、ちょっと! どうしたんだよ、姉ちゃん!?」
健斗の声に、千秋は振り返る。
その表情は、緊迫そのものだった。
「大変よ……」
一瞬言葉を切り、はっきりと告げる。
「天岸アンジェリカ愛優美さん……健斗も知ってるでしょ?」
健斗の目が見開かれる。
「確か姉ちゃんや詩郎兄ちゃんの知り合いの……?」
「そう。天岸明彦博士の一人娘よ」
千秋は唇を噛みしめる。
「――彼女が、誘拐されたわ」
「……何だって!?」
穏やかだった夕刻の空気は、一気に張り詰めた。
稜太の事件が終わらぬうちに、再び起きた新たな誘拐。
それも被害者は、またもブレイバーズ中枢に連なる人物の子供。
健斗の胸に、嫌な予感が広がっていく。
これは偶然ではない。
何かが、確実に――動いている。

安土から離れた大阪湾岸の港湾地区の外れに立ち並んでいる、長年放置された廃墟の倉庫街。この中の一つ、無人のはずの倉庫の地下室に、天岸アンジェリカ愛優美は監禁されていた。

「んっ…んんんっ……」
四方を固く冷たいコンクリートで囲まれた、部屋とは名ばかりの狭い空間に閉じ込められている愛優美。すぐ傍で彼女を見張っている竜門会の工作員は、昼間に下校中の楓花を車で拉致しようと狙った運転手と同じ男だ。
「フフフッ…お嬢ちゃん、無事におうちに帰りたかったら、しばらくそこで大人しくしているんだなww」
果たして、拉致し損なった楓花の代わりに、改めて愛優美を人質に取った竜門会の目的とは?
そして囚われの身となった愛優美の運命は!?
(つづく)

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