安土市内で小学生誘拐事件が発生。幸い程なくして被害者の友貞稜太は無事に救出されるが、稜太は自分を助けに来た者たちの中に、同じクラスメイトの桐橋勇人の姿を目撃していた。稜太から相談を受けた親友の稲垣健斗は、勇人に直接問い質すべく森の中で彼と対峙する。勇人から話を聞いた健斗は、ブレイバーズ関係者の個人情報が外部に漏れていると確信。詳しく調べるため、その足でブレイバーズ本部セントリネル・ハブへと向かい、稜太の父・友貞利彦上席主任研究員にも会って話を聞くが、大した手掛かりは得られなかった。その翌日、健斗や稜太の通う小学校に勇人に続く新たな転校生が！？
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
忍の影、忍の娘
その日の午前中――体育館は妙な熱気に包まれていた。
マットの上を勢いよく駆け出した相模路香は、そのまま軽々と空中へ跳び上がる。
――前方二回宙返りひねり。
続けざまに――後方伸身二回宙返り。
床運動でそんな大技を連発する小学生など、本来あり得ない。
ドン、と着地した瞬間、体育館の時間が止まったように静まり返った。
教師も児童も目を丸くし、ぽかんと口を開けている。
次の瞬間――
パンッ。
誰か一人の拍手が場内に響く。
それを合図にしたかのように、子どもたちは一斉に歓声を上げた。
「すげぇ！！」
「なにアレ！！」
「体操選手みたい！！」
「オリンピック出ろ！」
拍手喝采の渦の中心で、路香は満足げに両手を上げて笑顔を振りまいている。
しかし――。
健斗は違う角度から彼女を見ていた。
（あの踏切り……空中姿勢の作り方……完全に“忍びの体術”だ）
素人が真似できるはずもない。
あれは鍛え上げられた者だけが扱える――忍者の技。
（お前……何者だ？）
疑問が胸を引きずったまま、授業は終わり、放課後を迎えた。
放課後
そして午後、夕暮れの通学路。
健斗が家へ向かって歩いていると、後ろから駆け足の音。
テキストプロンプトによるAI画像編集で加工しました。
「ねえ～～健斗くん！！ 黙って先に帰っちゃうなんてひどいじゃない！？ 一緒に帰ろ？」
路香が手を振りながら追いついてきた。
健斗は足を止め、半眼で振り返る。
「……お前、いったい何もんだ？
午前中の体育で見せた技――あれ、完全に忍びの体術だろ？」
路香は「あちゃー」と両手を広げ、悪びれず笑った。
「アハハ、バレた？」
「バレるも何も……最初から隠す気なかっただろうが」
「フフフッ……じゃあ、話してあげる」
路香は周囲を見渡し、声のトーンを少し落とした。
「うちはね、元アスカロン財団の特務エージェント “ライトシーカー”だった
風魔忍者――相模蒼焔の娘なの」
健斗の眉がぴくりと動く。
「蒼焔……って、あの“影疾風（かげはやて）”の異名を持つ……？」
「そう、その蒼焔パパ。今は現役引退して、財団で後進の育成やってるけどね。
で――そのパパからの密命で、あたしは安土市に派遣されて来たの」
路香の目つきが笑みと違う鋭さを帯びる。
「任務はブレイバーズの監視。
それから――あたしより数日前に先に転校して来た桐橋勇人。
アイツの正体を探るのも、重要な目的のひとつなんだ」
決して冗談ではない響き。
「そこで健斗くん、ここは一つ手を組まない？ 一緒に桐橋勇人の正体を暴きましょう！」
しかし健斗は、即答した。
「……悪いけど、今はそれどころじゃねえんだよ」
「知ってるよ。友貞稜太くんの誘拐事件のこと、でしょ？
真相を探るなら、あたしも手ェ貸してあげてもいいのに？」
路香はあざとく首を傾げる。
だが健斗は冷静だった。
「丁重に断っておくよ。調べたきゃそっちで勝手に一人でやれ。
俺は俺で、好きなようにやらせてもらう」
それだけ言い残し、健斗は歩き出す。
路香はぽかんとしたままその背中を見送り――
「な、何よ！！ せっかくフレンドリーに接してあげてるってのに！
だったらこっちも、好きなよーにやらせてもらいますよ！！
イーーッだッ！！💢」
夕暮れの道に、幼さの残る強がりが響いた。
しかしその瞳の奥には、忍者らしい鋭い光が宿っていた。
――彼女もまた“何か”を追っている。
健斗の周囲で、確実に波紋が広がり始めていた。
竜門会の暗躍
東京・永田町と霞が関を望む高層ビル群の一角。
その最上階に位置する「長城集団公司・日本支社」の支社長室は、夜の帳に包まれていた。
重厚な紫檀のデスク、その奥に座る男――李玄道（リー＝シュアンタオ）。
年の頃は五十前後。燕尾服を思わせる仕立ての良いチャイナスーツに身を包み、袖口には白銀のカフスが鈍く光っている。
整えられた黒髪に、無駄のない立ち居振る舞い。
そして何より、その瞳――深い墨を溶かしたような黒の奥で、氷のように冷たい知性が静かに煌めいていた。
玄道は受話器を耳に当て、無言で相手の言葉を聞いている。
『今まで公金着服がバレないように、上手く帳簿の帳尻を合わせて来たっていうのに……！
友貞の奴が、いきなり新規研究開発プロジェクトなんかを立ち上げて予備費を要求して来たせいで、こっちの今までの苦労が台無しだ』
苛立ちを隠そうともしない声が、電話越しに響く。
玄道は口元に薄い笑みを浮かべ、低く言った。
「自業自得だろう。
君はこれまで、ブレイバーズの公金を自分のオンラインカジノの賭け金に注ぎ込んで来た。違うか？」
一瞬の沈黙。
次いで、苦々しい反論が返ってくる。
『そのオンラインカジノを経営していたのは、どこの誰だ？
損失を穴埋めしてもらう代わりに、こちらだってブレイバーズの機密情報を相当そちらに流してきたはずだぞ。
そっちだって、かなり美味しい思いはしてきただろう？』
玄道はゆっくりと椅子の背にもたれ、天井を見上げた。
「取引というのは等価であるべきだ。
君は金を得た。こちらは情報を得た。
ただそれだけの話だよ」
その声音には、感情の揺らぎは一切ない。
しばし間を置き、玄道は話題を変えるように言った。
「しかし……今回の件。
友貞稜太少年を救出した手際の良さ――あれは警察の仕事ではないな。
明らかに、もっと“卓越したプロ”の手口だ」
『だが、今回の誘拐でブレイバーズが動いた形跡はない。
もしかして……アスカロン財団のライトシーカーか！？』
玄道の眉が、わずかに動いた。
「いや……その可能性も低い。
もしかすると、ブレイバーズでもアスカロン財団でもない
“第3の組織”が動き出しているのかもしれんな」
彼の瞳に、かすかな警戒の色が浮かぶ。
「そいつらは、以前――与党の新幹事長選出の際にも、
裏で動いていた形跡がある……」
電話の向こうで、息を呑む気配が伝わってきた。
『そんな……そんな面倒な連中がいるのか！？
とにかく何とかしてくれ！ 頼んだぞ！』
一方的にそう言い残し、通話は切れた。
静寂が支社長室を満たす。
玄道は受話器をゆっくりと置き、窓の外――ネオンに彩られた東京の夜景を見下ろした。
「フン……」
低く、吐き捨てるような声。
「手駒の分際で、何でも面倒事をこちらに押し付けおって……」
白銀のカフスが月光を受け、冷たく光る。
李玄道の瞳には、次なる一手を思案する冷酷な計算が、静かに宿っていた。
――この盤上で、駒として使われるのは誰か。
それを決めるのは、常に自分だ。
（つづく）
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