ブレイバーズの錦織佳代、クリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィス3世(クリス)、寺瀬詩郎の3人は、アスカロン財団との定期会合のために、財団本部オメガ=タワーズを訪れる。佳代たちを出迎えるアルマ=ブラックバーンだったが、そのアルマが脱獄した黒百合によって拉致され、あろうことか詩郎にアルマ誘拐の容疑がかかってしまう。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
光平とレイチェル
セントリネル・ハブ――鋼鉄とガラスが交錯する巨大要塞都市の上層階。
その中央に位置する長官室で、クリスから連絡を受けて一連の事情を聞いたブレイバーズ長官・牧村光平は深々と背凭れにもたれ、天井の蛍光灯を見つめていた。
机の上では、通信端末の赤いホットラインランプが静かに点滅している。
「……こうしている暇はないな」
低く呟くと同時に、光平はスイッチを押し込んだ。
即座に接続音が鳴り、数秒後、スクリーンの向こうに映し出されたのは、一人のロングヘアの若い女性――アスカロン財団本部長、レイチェル=アスカロンだった。
背後には、財団本部の荘厳な紋章が見える。

「久しぶりね光平……あなたからホットラインなんて、珍しいわね」
「状況が状況だからな。――単刀直入に言う。寺瀬詩郎を、釈放してほしい」
その一言に、レイチェルの表情が僅かに動いた。
しかし、すぐに冷徹な官僚の顔へと戻る。
「……それはできないわね」
短く、決然とした声だった。
「どうしてもか?」
「どうしてもよ。彼はアルマが襲撃された現場に居合わせた唯一の目撃者。
ブレイバーズ所属の戦闘員である以上、内部関与の可能性も否定できない。調査が終わるまでは、こちらの拘束下に置くわ」
「詩郎はそんなことをする奴じゃない。俺が保障する」
「それは普段の彼――”白い詩郎”くんの話でしょう? もしまた”黒い詩郎”の人格が目覚めたのだとしたら、それでもあなたは彼を庇いきれる?」
光平は静かに息を吸い、しばし沈黙した。
やがて、重く口を開く。
「……そうか。なら、仕方がない」
「分かってくれたなら助かるわ」
レイチェルが安堵の息を漏らしかけたその時――光平の声色が低く、鋭く変わった。
「だけどな、レイチェル――詩郎は俺たちの仲間だ。今の彼は、誰よりも命を賭けて人を救う男だ。
もし、そんな男が身に覚えのない罪で追い詰められているなら……俺たちは、全力で仲間を救い出す。
たとえ、そのために――手段を選ばなくても、だ」
「アスカロン財団全体を敵に回すことになっても…?」
「そう受け取ってもらって構わない」
スクリーン越しに、レイチェルの瞳が揺れた。
数秒の沈黙。
その後、彼女は微かに笑い、肩を落とす。
「あなたには、いつも勝てないわね……光平」
「じゃあ、詩郎を――」
「待って。今すぐというわけにはいかないの。
でも……もう少し時間をちょうだい。寺瀬詩郎については、決して悪いようにはしない。約束する」
「何か、考えがあるのか?」
「詳しいことはまだ言えない。けれど――私を信じてほしい」
光平は、目を閉じた。
短い沈黙のあと、ゆっくりと息を吐き出す。
「……分かった。レイチェルを信じるよ」
「ありがとう、光平」
通信が切れ、長官室に静寂が戻る。
光平はデスクに両肘をつき、深く思考の海へ沈む。
外では嵐のような夜風が窓を叩いていた。
佳代と詩郎
――アスカロン財団本部、オメガ・タワーズ。
深夜の研究棟を包むのは、ひたすらな静寂と冷たい空調の唸りだけだった。
だがその静けさの奥、壁の中を這う金属音が微かに響いていた。
その音の主は、――錦織佳代。
彼女は換気ダクトの狭い通路を這っていた。
冷たい金属の匂い、息が反響するほど狭い空間。汗が頬を伝って落ちる。
(……詩郎、どこなの?)
佳代は心の中で名を呼ぶ。
“フックス副本部長の研究区画で詩郎が拘束されている可能性”。
その一点を頼りに、彼女は禁制エリアへの潜入を決行したのだ。

ダクトを進むうち、かすかな呻き声が耳に届いた。
佳代は動きを止め、息を潜めて音の方向に耳を澄ます。
「……ん、んんーっ! んんんーっ!!」
――間違いない、詩郎の声だ。
彼女は音のする方向へと這い進み、やがて目の前に金網で塞がれた通気口が現れる。
そこから覗いた室内は、書庫のように書類と研究データの山が積まれた小部屋。
中央の椅子に寺瀬詩郎が鎖で縛り付けられ、口をガムテープで塞がれていた。

通気口を塞いでいる前面の金網は、ニコニ・コモンズのフリー素材あそび様のフリー素材より拝借しました。
「詩郎!?」
思わず声を漏らす佳代。
詩郎は目を見開き、呻き声を上げて振り向いた。
「んーっ、んんーっ!!」
佳代は腰のツールナイフを抜き、金網の固定ボルトを音を立てないように外す。
そして身をひねってダクトから飛び降りた。
軽い着地音。素早く詩郎のもとに駆け寄り、ガムテープを剥がす。
「ぷはっ……助かったよ、姐さん!」
「ひどく痛めつけられたみたいね。あのフックスって男の仕業でしょ!?」
「なぁに、この程度、なんでもないよ」
強がって笑う詩郎の頬には、青痣がいくつも浮かんでいた。
佳代は鎖を外しながら、焦りを滲ませて尋ねる。
「詩郎、あの時に一体何があったの?」
詩郎は短く息を整え、低い声で語り始めた。
――黒百合と百合鴉の奇襲。
――アルマが連れ去られた瞬間。
――そして自分に濡れ衣が着せられた経緯。
「俺はあの時、ずっとアルマと二人きりで研究室にいたんだ。黒百合の脱獄を手引きなんて、できるはずがない。信じてくれよ、姐さん!」
佳代は真っすぐに詩郎を見つめ、頷いた。
「もちろん信じてるわ。でも、詩郎のアリバイを証明できるのは――現状でアルマさん一人だけってことね……」
その瞬間、廊下の奥から靴音が響いた。
――カツ、カツ、カツ。
近づいてくる複数の足音。保安要員か、それともフックス本人か。
詩郎の表情が引き締まる。
「姐さん、行ってくれ!」
「でも――!」
「俺まで一緒に逃げたら、姐さんたちが困るだろ? さ、俺には構わず早く!」
佳代は一瞬だけ躊躇したが、すぐに決意の眼差しで頷いた。
「……ごめん、詩郎。必ずアルマさんを助け出して、アンタの潔白を証明するから!」
詩郎の鎖を最後まで外し、彼の肩を軽く叩いてから、再び金網の向こうへと身を滑らせる。
「頼んだぜ……姐さん!」
詩郎が小さく呟く。
その直後、部屋の外のドアノブがガチャリと回る音がした。
佳代の姿はすでにダクトの奥。
残された詩郎は、わずかに笑って目を細めた。
――信じてる。姐さんなら、きっとやってくれる。
冷たい空調が唸る研究棟に、再び静寂が戻った。
(つづく)

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