生まれ変わったミラージュＸ　後編

交通事故で重傷を負った男子高校生・逢沢彩人に融合（という名の身体乗っ取りww）を試みる異星人ヒーローのミラージュＸ。しかしそれはおかめ党四天王の罠であった！

おかめ城にて

ここは世界征服を企む悪の組織おかめ党の拠点、おかめ城である！
おかめ党首領であるおかめの御前が、謁見の間で最高幹部の寺瀬聖佳と会話している。

「ではミラージュＸを更生させるために彩人くんを？」
「その通りッス。Damsel in Distressの理想形を追求する我がおかめ党としては、人質の安全を全く考慮しない奴のやり方は座視できないッス。この前も事件現場に大勢いたマスメディアの取材クルーを“普段偏向報道やゴリ押しステマばかりを繰り返すマスゴミどもを駆逐するにはいい機会”とかほざいて、敵の怪獣諸共攻撃を加えたとか…」
「………」

それでなくても全日本ヴィラン組合から「最近おかめ党は悪事らしい悪事を働いていない！」とクレームが届いていたので、やはり悪の組織として存在感を発揮するためには宿敵となるヒーローが固定の形で常に存在しているのが望ましい。しかしその相手がミラージュＸではどっちが悪者か分からず、おかめ党としても難色を示して困っていたところだったのだ。

「でもそれをよりにもよって、詩郎のお友達の彩人くんだなんて…」
「詩郎のクラスメートだからッスよ。余はあの逢沢彩人なる少年のことは結構買ってるッスよ。内なる恋心を秘めた年頃の少年は強いッス。詩郎には引き続き逢沢彩人の監視を続けさせるッス」
「畏まりました」

謎の声

その数日後、逢沢彩人は意識を取り戻して順調に回復し、無事に退院を果たすことができた。親友の柏葉章介からは「バカヤロウ！心配させやがって！」と嬉し泣きされながら学校生活復帰を喜ばれたが、その日以来、彼には聞き覚えのない少女の声が幻聴として度々聞こえるようになった。

（ちょっとォォッッ!!　定時連絡の日時はとっくに過ぎてるわよ!! さっさと報告を寄こしなさいよ!!💢）

「くっ…いったい誰なんだお前は！？」

最初は交通事故の後遺症かと思っていた彩人だったが、謎の幻聴に悩まされる日々が続き、ある日、彼はその幻聴の声に導かれるかのように、いつの間にか見知らぬ秘密基地の指令室に立っていた。

「まさかこんな場所にこんなハイテク設備の基地が存在していたなんて！？💦」

一人で驚き混乱している彩人の前に、やがて正面中央のモニター画面が自動的に開き、初めて見るツインテールの美少女の姿がスクリーン越しに映し出された！

「…ん？ アンタ誰よ！？」
「…いや、お前こそ誰だよ！ ……いや待てよ、その声聞き覚えがある。そうだ💡思い出したぞ！ いつも僕の脳裏に響いていた鬱陶しい声だ！」
「鬱陶しいとは失礼ね！(# ﾟДﾟ)　ちょっと待って…。アンタにあたしの催促の声が聞こえたってことは―――きゃははは！！ 何アイツ、地球人の身体を乗っ取ろうとして、逆に自分が乗っ取られたって訳？ マジ受けるんですけどーww」

モニター画面に映っているツインテ美少女は、腹を抱えて大笑いを始めた。

「何だよ急に笑い出して！ ちゃんと説明してくれ！」
「きゃははは！！ あーごめんごめん♪ 今説明すっから！あたしの名はツィズンルア=トンヤ=バレレナ=プニュロサ。ミラージュ星治安維持局隊長よ。とりあえずミラージュ上司とでも呼んでくれればいいわ」
「は、はぁ……💦」

ミラージュ上司は、とりあえず彩人に一通りの事情を説明した。

「…ツー訳で、アンタにはこれから地球を守る正義のヒーローとして働いてもらうから」
「そんな！ 勝手に決めないでくれ！ 早く俺の身体からそのなんとかＸとか言う奴を追い出してくれよ！」
「まーそーしてほしいならそーしてあげてもいーけどぉ、それやった瞬間、アンタ、〇ぬわよ？」
「ぐっ…💦💦」

ミラージュ上司の言うとおりだった。事故で瀕死の重傷を負った彩人は、今ミラージュＸと融合していることによって生命を繋ぎとめているのだ。もし今ミラージュＸと分離してしまったら、あの時点での重体の患者に戻ってしまうのは自明の理。もはや彩人に選択肢はなかった。

「…わ、分かったよ。それで俺は具体的に何をすればいいんだ？」

ミラージュ上司に指示を仰ごうとしたヒーロー初心者・ド新人の彩人だったが、その先突然基地内にサイレン音が響き、AIによる自動音声がスピーカーから響いてきた！

「鷺島市内のＡ地区にて誘拐事件が発生！　ミラージュＸよ、直ちに出動せよ！」

「ほら、早速仕事みたいよ。ぼさっと突っ立ってないでさっさと行って来なさいよ」
「うっ…わ、分かったよもう！」

こうして平凡な男子高校生だった逢沢彩人のスーパーヒーローとしての日々が始まったのである。

「あっ、言い忘れてたけどー、もしミラージュXの正体が一般人や敵にバレたら、ペナルティとして蛙の姿に変えるからww くれぐれもその点気をつけてねー♪」

誘拐事件発生

「お嬢さん、気の毒だけど我々おかめ党の極秘作戦行動を目撃してしまった以上は、このまま無事に返す訳にはいかないトカゲェェェ～!! 恨むなら自分の不運を恨むトカゲェェェ～!!」
「んんーっ！！んんむむぅーっっ！！」

目撃者の女子大生・白尾夕紀を口封じ目的で拉致監禁したおかめ党怪人のぽっちゃりトカゲ男。そこへ正義の異星人スーパーヒーロー、ミラージュＸが駆けつけた！

「待てぇ～い！！　私は大宇宙の大いなる正義の使者、ミラージュＸだ！ これ以上の悪事は許さん！！（あれっ？ よく分からないけど口から勝手に台詞が……💦）」
「現れたなミラージュＸ！ 返り討ちにしてやるトカゲェェェ～!! かかれ戦闘員!!」
「キキ―ッ!!」

正義のスーパーヒーローであるミラージュＸの新たなる戦いは続く！

完

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