囚われのテニスガール

※一部、原文より改変しております。

作：旅鴉様

とある都内の名門大学の女子大生、岸本愛実は、サークルのテニスを楽しんだ後、更衣室に戻る途中にそのまま姿を消した、
そしてその数時間後、東都銀行の重役でもある彼女の父親に、見知らぬ男から娘を誘拐したという旨の連絡が入る。
そして、岸本愛実は･･･

「んん…んむぅ…ッ!!」

薄暗い部屋の中、１人のキュロットタイプのスコートのテニスウェアを着たショートカットの娘が、手足を縛られ口には布で猿轡を噛まされた状態で、呻き声を上げながらもがいていた、誘拐された岸本愛実である。

（なんとかしてここから逃げ出さないと、このままではわたし…）

不自由な身体を懸命に動かし、部屋の隅々に目を向ける愛実

（あれは…）

部屋の奥に無造作に置かれた見慣れた物、愛実のテニスバッグだった。
誘拐された時に一緒に持って来られたようだ、中のスマホは誘拐犯に没収されているであろうが…

（もしかしたら…裁縫道具はそのままかも）

ウェアが破れた時用に愛実はテニスバックに裁縫道具を入れていた、あの中にはハサミも入っている。

（ハサミを使えば、この縄も解けるはず…）

愛実は芋虫のように床を這いながらなんとかテニスバックに辿り着くと、その中から裁縫道具の入ったポーチを引っ張り出し、中からハサミを取り出す。
そして自分の手首に巻きつく縄に何度もハサミの刃を立てていく、縄が切れる前に誰か来てしまったらそこで一巻の終わりだ、そうならないことを祈りながら必死に縄抜け試みる愛実。

ブチ!

（やった!!）

縄が切れる音を聞き、心の中で喜びの声を上げる愛実、必死に身を捩りながら二の腕に巻きつく縄も解き、自由になった手で足首の縄も解く。
ようやく縛めから解放された愛実は休む間もなく立ち上がり、すぐさま部屋の入り口の扉へと向かう。

ガチャガチャ…

いくらノブを回しても扉は開かない、やはり部屋には鍵が掛けられているようだ。

（本当はやりたくなかったのだけど…仕方がないか…）

「大人しくしてるか？」

部屋の鍵を開け男が中に入ると、転がっているはずの娘の姿はなく、切れた縄だけが転がっていた･･･

「まさか逃げ…いや、部屋には鍵を掛けているから外には…!!」

男が気づくよりも先に、扉の影からテニスのラケットが男の頭上目掛けて振り下ろされる、バキという激しい音を立ててラケットは砕け、その一撃に男は気を失う。

「ごめんなさい…」

男に小さく謝りながら部屋を飛び出す愛実、無我夢中で走りながら建物の出口を目指す愛実、そして目指す先に外への光が見えた。

（やった、これで助かる…）

愛実がそう思ったその時…

「んぐぅッ!?」

突然後ろから何者かの手が、愛実の身体を羽交い絞めにし、そのまま口も塞いだ。

「惜しかったね～、もう少しだったんだけど…な～んってね、この建物内にも屋外にもセンサーやカメラが沢山ついているんだ、どの道逃げられなかったよ、でも縄抜けした上に私の部下も殴って逃げ出すなんてね、大人しい顔して結構やるじゃないか」

そう言いながら楽しげに笑みを浮かべる男、愛実を誘拐した組織のボスだ。

「でも僕は言ったよね、逃げだそうなどと下手なことを考えなければ危害は加えないと、それなの君は逃げようとした、悪い子だね君は、少しオシオキが必要かな…」

再びボスの言うＶＩＰルームに連れ戻された愛実、再び手足は縛り直され、今度は動けないようにしっかりと椅子に縛りつけられていた、勿論猿轡も再び噛まされていた。
その横でボスはどこかへと電話を掛けていた。

「ええ、19歳の女子大生です、小麦色の肌のテニスウェアを着た健康的なお嬢様です、逃走を試みようとするなど中々元気な娘ですよ、呻き声も可愛くて苛めがいがありますよ」

自分のことを言っているのであろう、その話の内容の不吉さに思わず身を震わせる愛実。
会話を終えたボスは、下卑た笑みを浮かべ愛実を見下ろしながら言った。

「今から若い身体に飢えたイヤらしいオジサンが君をオシオキしにきてくれるそうだ、な～に、そのオジサンは一応紳士だから君の貞操までは奪う気はないだろうけど、お父さんとの取引には役に立ちそうだし、苦しみもがく姿もしっかりと撮影させてもらうからね、そういえば警察に駆け込むみたいなこと言ってたけど、そんな恥ずかしい姿が証拠に残ったとしてもまだそんなことを考えられるかね、まあそこで自分の置かれた立場をもう一度ゆっくり考えながら大人しくしておくことだね」

「んん～っ!!んんぐーッ!!」

目に涙を浮かべながら許しを請う娘に背を向け、ボスは部屋を後にする、そして無情にも再び部屋の扉には鍵を掛けられる、次に扉が開く時には愛実にとっては地獄のような時間が始まる。

（お願い…誰か助けて…）

もはや自力で逃げ出すことも叶わない愛実には、奇跡を願うことしか出来なかった。

完