さかさまデー　中編

　首領であるおかめの御前を除くおかめ党全構成員の地位と上下関係が逆転するお祭りイベントである『さかさまデー』。最高幹部の寺瀬聖佳と詩郎の姉弟は、一転して部下の怪人や戦闘員たちから追われる身となった。

ミラージュＸ VS 戦闘員

　大宇宙の大いなる正義の使者であるミラージュＸが、突如おかめ党戦闘員たちのアジトにカチコミに現れた！

「キキ―ッ!! おのれ！現れたなミラージュＸ！」
「どうしてこのアジトの場所が分かった！？」
「フン、雑魚どもが俺の相手になるとでも思っているのか？ 食らえ！ ミラージュビームッ!!」
「ぐわぁぁぁッッ!!」
「…や、やられたぁ～！」

群がる戦闘員どもを瞬殺すると、ミラージュＸは奥の部屋に繋がるドアを開けた。そこには…！？

「んっ、んんーっ!!」

　部屋の中では、寺瀬聖佳が口に猿轡をつけられ、椅子にロープでぐるぐる巻きに縛り付けられていた！

　いきなり中に入って来たミラージュＸから蔑みの視線で見降ろされ、縛られている姿をヒーローに見られた屈辱と羞恥心で悶える聖佳だったが、意外にもミラージュＸはすぐに聖佳の縄の拘束を解き始めるのだった。

「ミラージュ星人が、どうして悪の組織の幹部である私を助けるの…？」
「ほんの気まぐれだ。気にするな」

　聖佳を自由にしたミラージュＸは、無言のままどこかへと飛び去って行ったのだった。

「お～い！ 寺瀬のお姉さぁぁ～～ん！！」
「…?? あっ！あなたは確か、詩郎のお友達の逢沢彩人くん！？」

ちょうどミラージュＸと入れ替わるように逢沢彩人が現れた。

「さっきはぶつかってしまってごめんなさい」
「一体どうしたんですか？ かなり慌ててる様子でしたけど。もし俺でよければ相談に乗りますよ」
「ありがとう。お気持ちだけ受け取っておきます。でも私に関わったら、きっとあなたたちにも迷惑が……」
「水臭いですよ。誰かに追われてるんですよね？ ここは危険だ。さあ行きましょう！」
「………」

綾塚邸へようこそ

　彩人は渋る聖佳を強引に説得し、何とか綾塚音祢の家に匿ってもらうことにした。心優しい音祢は少しも躊躇することなく聖佳を自宅に歓迎した。

「どうか自分の家だと思ってゆっくりしていってくださいね」(^^♪
「…あ、ありがとうございます」
「今お茶を持ってきます」(^^♪
「綾塚さん、俺も手伝うよ♪」

リビングに聖佳を一人残し、キッチンにお茶を入れに行った音祢に一緒について行く彩人だったが、そこで突然音祢がいつもの態度と口調を一変させた。

「Ｘ、なぜおかめ党の女幹部を連れて来たのだ？」

何と今の音祢は、ミラージュ兄弟の次男・ミラージュジャックと融合している状態だったのだ！

「だってしょーがないでしょう。知らないふりして見捨てるわけにもいかないし。それにどうも寺瀬の姉さんの話では、寺瀬……あ、これは弟の詩郎のことですけれど、その詩郎もあの戦闘員たちに捕まっているらしいんですよ。この機会に彼女からおかめ党の機密情報を聞き出せるかもしれないじゃないですか？」
「うむ、それはそうだな。一体今おかめ党の組織内部で何が起きているのか…」
「ところでジャック兄さん、いつまで綾塚さんの身体に融合してる気なんですか？ 早く彼女の身体から出てってくださいよ！」
「まあそのうちな…そのうち」
「………」

　ミラージュジャックの話では、一応事前に音祢本人から融合の同意は取り付けてあるとのことだったが、どうもミラージュジャックは音祢の身体が気に入り、予定よりも長く居座っているらしい。それを困った目で見ている彩人＝ミラージュXであった。

　一方その頃、寺瀬聖佳の所在を突き止めたおかめ党戦闘員たちは、すでに密かに綾塚邸を包囲しつつあった。

「キキ―ッ!! ちょうどいい。この際聖佳ちゃんのついでに綾塚音祢も捕まえて行くとするか」
「キキ―ッ!! それは賛成だ！ おかめの御前様もお喜びになる。このさかさまデーの機会に少しでも点数を稼いでおかねば！ 出でよダークイーグル男よ！！」

「ワァァ～シィィッッ!!!!」

　おかめ党の誇る空中スピード怪人ダークイーグル男、推参！

「このダークイーグル男をご指名とはお目が高い。必ずや邪魔者を片付け、ターゲットを捕獲して御覧に入れよう！」
「キキ―ッ!! ではゆけ！ダークイーグル男！」

　戦闘員の命令で大空へとはばたくダークイーグル男。本日はさかさまデーのため、怪人より戦闘員の方が偉いのだ！

詩郎、脱出！

「んむむーっ!! んぐむむううーっ!!」

　さっきよりも厳重に拘束されて猿轡まで噛まされている寺瀬詩郎。しかし見張りは携帯ゲーム機に夢中になって遊んでいる戦闘員が一人だけだ。

「何だよさっきからうるさいなー。今いいところなのにー！ 何か言いたいのか？」

戦闘員は詩郎の猿轡を口から外してやった。

「戦闘員様、おしっこが出たいです。トイレに行かせてください」
「お前サイボーグだよな？ 生理現象なんて起きるのかよ？」

「おかめの御前様が俺を改造した時にそういう設計にしたんだからしょーがないじゃないですか！ それともここに漏らしてもいいんですか？ もうこれ以上我慢できないんですけど…」
「…わ、分かった💦　今縄を解いて手錠も外してやるから、もうちょっと我慢してろ！💦」

　こうして手足を自由にしてもらった詩郎であったが、彼をトイレに案内しようとした戦闘員の背後にそっと素早く周り、たまたま傍に置いてあった金属製のパイプ椅子を両手で持ち上げるのであったww

つづく。