誘拐ゲーム再開　その一

女子バドミントン選手の失踪

鷺島国際大学女子バドミントン部のエースで、現在琉那市に遠征合宿中の女子大生・星愛怜美花が、昨夜、練習中だった市内の体育館から忽然と姿を消し行方不明となった。事件の匂いを察知したシブルリックオーダーは、直ちにユニット部隊員の紫城心翔、美濃本敦、瀬尾梨帆の3名を招集した。事件の概要をチーフオペレーターの磯崎詩歩が説明する。

「星愛怜美花さんは昨日の夕刻に市内の宿泊先のホテルで他の部員たちと一緒に食事を取った後、一人で先に隣接する体育館へと夜間練習のために向かったそうよ」
「でも、後から体育館に向かった部員たちがついた頃には、いるはずの彼女の姿がいなかったって訳か…」
「例えば家出とか…彼女が自発的に失踪した可能性は？」
「それほど世間に注目されてるスポーツ選手なら、プレッシャーに押しつぶされてとかありそうな話だもんな」
「いいえ、周囲の証言では、最近の怜美花さんにそのような兆候は見受けられなかったそうよ。それに微かに外部からの侵入者の形跡と、女子更衣室が何者かによって荒らされた痕跡が発見されたわ。怜美花さんが何らかの事件に巻き込まれたのは間違いないと思われます」
「ザイザムの仕業なのか？」
「それはまだ分からないけど、琉那市スポーツ委員会から内々に捜査するよう要請が来ています」
「了解！ じゃあ詩歩さん、俺たちはまず最初に現場から当たってみるよ」
「お願いね」

美少女バドミントン選手の失踪事件の極秘捜査を開始するシブルリックオーダー。しかしこれは琉那市全体を震撼させる誘拐ゲームの始まりとなろうとは、この時はまだ誰も気づいていなかった…。

動き出す猟犬たち

「助けて―！ 誰か助けて―！！」
「気の済むまで好きなだけ騒いでいいぜ、お嬢さん」
「別に取って食おうって訳じゃないんだ。悪いけどもうしばらくその状態で我慢してもらうぜ」

両手両足を鎖付きの鉄枷で拘束されている星愛怜美花。そしてそれを見張っている、一人は赤髪にメッシュを入れた右耳に牙のピアスを付けた陽気な男、そしてもう一人は黒髪にメッシュを入れた左耳に牙のピアスを付けた物腰の柔らかそうな男。ちなみにこの二人は兄弟だ。兄は毬雄（まりお）、弟は累児（るいじ）という源氏名で呼ばれている。言うまでもなく、彼らこそが怜美花を誘拐した犯人である。拉致現場の体育館に事件の痕跡を残してきたのも、無論彼らがうっかりドジを踏んだわけではない。ゲームを盛り上げるために、クライアントの指示でわざと残してきたのだった。そんな彼らも、さすがにまだシブルリックオーダーが動き出したことまでは察知していないが、星愛怜美花の誘拐をきっかけとして、ここ琉那市で未曾有の大混戦の火ぶたがいよいよ切って落とされようとしていた。

ボンド星人主催の誘拐ゲーム、
クリア条件達成まで、あと9人。