「平瀬倫生、出ろ!」
マダム配下の数人の戦闘員たちが、平瀬倫生が幽閉されている部屋の中へと踏み込む。しかしドアを開けて中へと入った途端、物陰に隠れて待ち構えていた倫生が戦闘員めがけて突進して体当たり。戦闘員が怯んだすきに部屋の外へと逃げ出そうとするが、外の廊下にいた別の戦闘員に足を引っかけられて転んでしまう。
「うわっ!?」
「コイツめ、また性懲りもなくッ!!」
「縛り上げろッ!!」
「やめろッ! 放せッ! あぐっ…むんんんッッ!!」
戦闘員に2人がかりで両手を後ろ手に縛り上げられ、口に無理やり猿轡を噛まされた倫生は、無理やり立たされて階下へと引っ立てられていく。
「んっ……ぅむぐうぅうぅっ!!」
「ええい、大人しくしろ!!」
「フフッ、相変わらず元気な奴だ。マダムも可愛がりがいがあるとお喜びになるだろうぜ!」
抵抗空しくリビングで待っていたマダムの御前に引き出された倫生は、猿轡を外された。
「今日も私の配下の戦闘員たちの手を焼かせてくれたみたいですね、平瀬倫生君。他のお友達はもうすっかり私に対して従順に尽くしているというのに」
「嘘だ! 理人たちがお前なんかの言いなりになるもんか! 仮にそうだとしても、きっと何か考えがあるんだ! 俺はみんなを信じてる。それに俺は絶対に仲間たちとここから逃げ出すのを諦めないからな!」
「相も変わらず威勢のいい子。ですがあまりに貴方が私に逆らうものだから、私もこのような強硬手段を使わざるを得なくなりました」
そう言うとマダムは手にリモコンを取り、モニターのスイッチを入れた。するとモニター画面に冷たい金属製の鎖で雁字搦めにされた藤永沙織と、甲冑で全身を覆った巨漢の人物が映し出された。
「さ、沙織!?」
突然モニターに映し出された藤永沙織の姿に、倫生は激しく動揺する。彼女のすぐ隣に立っている甲冑の大男の手に持ついかにも鋭そうな刃の大剣が、彼に言いようのない嫌な予感をさせるのだ。
「フゥッ…フグゥ!ウグググう…!!」
モニター画面の中の沙織は、ひどく何かに怯える様子で、小刻みに震えながら悲痛な呻き声を上げている。
「やめろ! 沙織に何をする気だ!?」
「貴方の私に対する態度が反抗的だから、その責任を貴方のガールフレンドに取ってもらうだけですよ。(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
冷たく言い放つマダムの言葉を聞き、倫生の脳裏に「処刑」という不吉な2文字が浮かぶのにそれほど時間は掛からなかった。
「頼む! やめてくれ! 俺はどうなってもいい! 何でもするから、どうか沙織だけは!!」
倫生のその言葉を待ってましたとばかりに、マダムは本命の用件を切り出した。
「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪言いましたね? では私のために働いてもらいましょう。そうしたら今回は特別に沙織さんは助けてあげます」
「俺は何をすればいいんだ!?」
「なぁに、簡単なお仕事です。貴方は今さっき言いましたよね? 勢川理人たちが一応は私に従順な態度を取っているのは、彼らに何か考えがあるからだと。実は私も彼らの私に対する忠誠は、本当は私の油断を誘うためのお芝居ではないかと疑っています。ですから君はこれから勢川理人と岸本愛実に接触し、あの子たちの本心を探り出して私に報告するのです」
「俺にスパイをやれって言うのか!? 断る! 友達を裏切るなんて出来ない!」
「あらそう、では仕方ありませんね。ではやはり藤永沙織には――」
「ま、待ってくれ! せめて少し考える時間をくれ!」
「いいでしょう。でもそんなに長くは待てませんよ」
それだけ言うと、マダムは戦闘員に倫生を部屋に戻すよう命じた。一人部屋の中へと戻った倫生は苦悩する。
「このままだと、沙織の身に危険が…! 理人、岸本さん、許してくれッ…! お、俺は…!!」
一方、リビングで寛ぐマダムはというと?
「フフッ、おバカな子ね。私がそう簡単に沙織ちゃんを殺すわけがないでしょうが。私は藤永沙織をどうこうするだなんて、ただの一言も言ってはいない。ただ甲冑の騎士と一緒にいる彼女の映像を見せただけで、向こうの方で勝手にいろいろとネガティブな想像をして慌てふためいてくれるのだから、あういう類の男の子を我が掌の上で踊らせるのは妖術よりも簡単だわ。オホホホホッ!!」
マダムの高笑いがリビング一面に木霊するのであった。
コメント
映像ひとつで抵抗を続けていた倫生君を意のままに操ってしまう人外マダム恐るべしです。遂に残るは岸本愛実ちゃん唯一人となりましたが、そこは人外マダム、更に手の込んだ仕掛けを用意していることでしょうね。
四人の様子を一通り見せた後でからくり監禁城の本領発揮といったところでしょうか。
岸本愛実ちゃん、第5話でピンチに陥ります。
果たして彼女の運命や如何に!?
必死の思いで危機を脱したor逆転劇!!・・・と思いきやですね。
やはり、捕らわれてしまう少年少女は、スーパーヒーロー&ヒロインにとって無双相手でしかない戦闘員クラスにも簡単に捕らわれるくらいがベストですかね?百歩譲って某蘭姉ちゃんくらいの戦闘力で、敵の幹部クラスには成す術なく・・・くらいでしょうかw
鎖で捕らわれた沙織ちゃんの被虐感がたまらないところ。こうした点からも前手縛りは、嫌いではないです。
> 百歩譲って某蘭姉ちゃんくらいの戦闘力で、敵の幹部クラスには成す術なく・・・くらいでしょうかw
そんな化け物じみた空手家美少女ランネー=チャンを拉致捕獲できる魔法のような夢の道具!?がスタンガンなのですが、当ブログでスタンガンを出しちゃうと(例え文章だけでも)まだアドセンスポリシーに引っ掛かってしまいそうで怖いです。
> 鎖で捕らわれた沙織ちゃんの被虐感がたまらないところ。こうした点からも前手縛りは、嫌いではないです。
おおーっ!!前手縛りの良さを理解してくれる同志がここにいてくれたァァッッ!!。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
ありがとうございます。とても嬉しいです!
戦闘員の隙をつき脱出を試みる倫生くん、しか~し、やぱり訓練をされているであろう戦闘員を出し抜ける筈もなくあっさり再捕獲
反抗的な虜囚には首輪が必要とばかりに…汚い、やはり魔女は汚い!ガールフレンドの沙織ちゃんを人質に、反抗的な倫生くんにはスパイを強要、なんという屈辱…
この人外マダムのゲスっぷりが良いですね~、どうすんだこの強キャラって感じですね、
このままマダムのスパイとなってしまうのか…それとも起死回生の案を思いつき魔女を出し抜けるのか…でも今のところはTEAM FRIENDSサイドが圧倒的に不利ですね、ここからどうやって逆転展開にもっていくのかが気になるところです。
> 戦闘員の隙をつき脱出を試みる倫生くん、しか~し、やぱり訓練をされているであろう戦闘員を出し抜ける筈もなくあっさり再捕獲
戦闘員はアンドロイドやサイボーグなどではなく、マダムが金で雇って制服を支給したチンピラや犯罪者崩れだったりしますので、大の男(理人や倫生)なら不意打ちで倒せないことはないと思います。
> でも今のところはTEAM FRIENDSサイドが圧倒的に不利ですね、ここからどうやって逆転展開にもっていくのかが気になるところです。
第5話辺りからそろそろ静かなる反撃開始といったところでしょうか。逆転の鍵を握っているのは、やはりマダムのスパイにされてしまった?と思しき倫生でしょう。倫生を完全に支配したと思い込んでいる自信家のマダムに隙が生じるかもとれません。