序章
勢川理人、岸本愛実、平瀬倫生、藤永沙織ら4人の大学生は、テニスサークルの合宿で某観光地の高原にあるテニスコートへと来ていた。しかし楽しかったはずのテニスの最中で、天気予報にはなかったまさかの大雨に見舞われる。激しい土砂降りの中、堪らず4人は雨宿りの為に近くにあった古びた大きな洋館の中に駆け込んだ。
「ふぅ~~、こんなところに建物があって助かったぜ」
「あのままじゃ俺たち全員ビショビショだったよな」
「勝手に入っちゃってよかったのかなぁ……」
「すみませ~~ん!! どなたかいらっしゃいませんかぁ~~!!」
邸の玄関内側で愛実が奥に向かって大声で叫んでみると、中からドレスを着た高貴な雰囲気の歳は中年の年頃らしいご婦人(マダム)が出て来た。
「まあ、これは皆さんどうなさいました?」
「勝手に御屋敷の中に入ってしまって申し訳ありません。僕たちは近くでテニスをしていた者でして、この大雨に降られて慌ててここまで避難して来たんです」
「雨が止むまでの間だけで構わないので、しばらくここで雨宿りしていても構いませんでしょうか?」
「それはご災難でしたね。遠慮なくお上がりになってくださいな」
「あ、どうかお気遣いなく」
優しそうなマダムに応接間へと案内された理人たち4人は、そこで温かいコーヒーを振る舞われる。雨に濡れて体が冷えていた4人は大喜びでコーヒーを口にするが、その中には睡眠薬が仕込まれていた!
徐々に深い眠りへと落ち、意識を失っていく理人たち。彼(彼女)ら4人は知らなかった。今自分たちがいるこの洋館が、からくり監禁城という名の異名で呼ばれていることを。そして自分たちに一見親切にしてくれたマダムが、実は若い年頃の男女を捕らえることを趣味とする誘拐監禁犯であることを。
地下室にて
「助けて! 僕をどうするつもりだ!?」
目を覚ました勢川理人は、窓のない薄暗い地下室のような区画で左右両手首を鉄枷で拘束され鎖に繋がれて吊るされる形で動きの自由を封じられていた。そこへ先程の慈愛の女神のような風貌とは打って変わり冷酷で凶悪な顔つきに変貌したマダムが、囚われた理人の様子を見にやって来た。
「よくも騙したな!? 愛実は!? それに倫生や藤永さんは!? みんなをどうしたんだ!?」
「心配しなくてもお友達ならこの屋敷の中で快適な環境で過ごしてもらっています」
「僕たちをすぐに解放しろ!」
「そうはいきません。貴方と貴方のお友達はこれから私のコレクションとして、若い期間をこの屋敷の中で暮らすのです」
「コレクションだって!?」
「そう、貴方たちは私のコレクションに加えられた大事な美術品。だから光栄に思いなさい。いずれ貴方たちが歳を取って老いたら解放してあげます」
「………(何を言っているんだ、この女は!?)」
マダムの発言に理人は困惑する。しかし青春を謳歌すべき貴重な時期を、こんな得体のしれない屋敷の中でずっと閉じ込められて暮らすだなんて冗談じゃない。
「僕たちは物じゃない! 人間だ! ここから出してくれ!!」
「囚われの身となりながらも決して相手に屈しないその気概、ますます気に入りました。ですが私にあまり逆らわない方が身のためですよ。別室に幽閉してあるお友達の身の安全にも関わることですし」
「くっ…!!」
そうだ…。自分の他にも愛実たちがこの女に捕まっていて人質になっているのだ。ふと我に返って冷静になった理人は、悔しい気持ちを押さえつつも仲間たちの無事を確保できるまでマダムに言うとおりに従うことにした。
「貴方にはもう逆らいません。でも仲間の無事を確認したい。今も愛実や倫生たちが生きているなら僕に会わせてくれ。そうすれば僕は貴方の言いなりになるよ。約束します」
「オホホホホ…いいでしょう」( ̄ー ̄)ニヤリ
マダムは部下の男たちを呼んで理人の両手の拘束を外すと、改めて彼をロープで縛り上げて地下室から上の階へと連れて行った。
コメント
年老いたら解放、なんてある意味若さを吸い取られる、若さを保ったままのオブジェにされるなんてことよりも怖いかもしれません。命こそ奪わなくても人生を奪ってしまうわけですからねえ。
このマダム、人外なのでは、という匂いががプンプン漂ってきます。もしかしたら大雨も4人をおびき寄せるためにマダムが降られたものであり、それだけの力を持っているのでは、と想像したくなります。
仲間の無事を確かめるためにとりあえずマダムの言うとおりにした理人君、マダムに縄尻を持たれてれんこうされていくんでしょうねえ~。
> このマダム、人外なのでは、という匂いががプンプン漂ってきます。もしかしたら大雨も4人をおびき寄せるためにマダムが降られたものであり、それだけの力を持っているのでは、と想像したくなります。
さすがはbakubond様です。ご推察の通り、この恐るべきマダムは魔術・妖術の類の心得があり、天気予報が外れた大雨もマダムの仕業によるものです。理人たち4人の素性も全て事前に調べ上げた上で、彼(彼女)らを近くまで巧妙におびき寄せたのでしょうね。これからマダムの魔手から逃れるための理人たちの奮闘が始まります。お楽しみに!
やはり人外マダムでしたか、歳を取って老いたら解放してあげますって言ってる時点で、自分は歳をとらないってことですからね、
魔女の屋敷に入ってしまい、まんまと捕まってしまう展開、なにやらヘンゼルとグレーテル的なものを感じますね~
これから4人がどうやってこの魔女を出し抜き、からくり監禁城から脱出するか見ものですね。
魔女に働かされたグレーテルみたいに、愛実と沙織がマダムの身の回りの世話をするように命令されたりするかもしれませんね。理人と倫生を人質に取られているため、女の子たちは渋々従いながらキッチンでマダムのための食事を作るとか(あるいはその逆パターンで、女の子たちを人質にされて脅された男の子たちが何かのために働かされるとか)。そういえば昔、ド〇ーム出版の浜〇〇郎先生の動画で「女の子が縛られたまま部屋の掃除をしている」シーンとかあったのを思い出しました。