鳳凰院優が姿を消した!
敵対する隣国サファガの工作員が王都に潜入しているとの情報を得たシャイン王子は、直ちに王都を囲む城壁の全ての門を封鎖し、何人といえども王都の外へ出してはならぬと兵士たちに厳命した。しかし一足遅く、すでに怪しげな行商人のキャラバン隊が王都から外へ出た後であった。
「おそらくユウさんもその怪しいキャラバン隊と一緒にいるに違いない。すでにユウさんは王都の中にはいないと考えてよいでしょう」
「奴らの正体がサファガの工作員だとすると、考えられるルートはナハル街道を通って国境沿いの関所であるセバロス砦へと向かうはず」
「国境を越えられたらおしまいだ! 馬を引け! ついて来る供は少数でよい! 一気に駆けるぞッ!!」
敵国スパイに連れ去られた優を救出するための追跡隊を組織して、自ら率いて出ようとするシャイン王子。洸介もまた同行を申し出るのだが……。
「待ってくれ! 優のピンチなんだ! 俺も一緒に連れてってくれ!!」
「コウスケさん、貴方は馬には乗れますか?」
「…えっ!? あ、いや…馬なんて一度も乗ったことはないけど……」
「ではこの城でユウさんの無事な帰りを待っていてください。今、貴方について来られても足手まといだ!」
「くっ…!!」
シャインに一喝され、無念の表情を浮かべる洸介。心を鬼にして洸介を王城の中に留め置き、シャインは直ちに信頼できる少数の精鋭と共に出撃して行った。
「導きの洞窟がユウさんたちの世界に時空を超えて繋がるまで、あと6日。その機会を逃せば次に異世界と繋がるのは10年後だ。時間がない! 何としてもそれまでにユウさんを救出せねば!」
一方すっかり夜も更けった頃、こちらナハル街道沿いの途中にある荒野では、キャラバン隊に扮したサファガ帝国工作員部隊がテントを張って野営していた。
「どうだ、あの娘の様子は?」
「フフフッ…あれからすっかり大人しいものよ」
「帝都に着けば、我が国の異端審問官による厳しい尋問が待っているとも知らずにな」
「ちと手荒に責め上げて、シェヴューツァンド王国が異世界と通じて周辺諸国に侵攻しようとしているという嘘の証言をでっち上げる。あの異世界から来た小娘は、そのための大事な生き証人となる訳さ」
「これでシェヴューツァンドは終わりだな。ケケケ…」
工作員たちが薄ら笑いを浮かべて立ち話をしている中、肝心の優はテントの中に縛られて閉じ込められていた。
「んんーッ!んむむぅっ!!(私、怖いッ! 小寺くん! シャイン王子! 早く助けに来て!!)」
薄暗いテントの中で悲痛な呻き声を上げている優。こうしている間にも、洸介と優が地球へ帰還するためのタイムリミットは刻一刻と迫っていた。
第5話へ続く。
コメント
キャラバン隊(に偽装した工作員)のテントに監禁された美女、奴隷狩りをしている悪徳商人とかにも使えたりする絵ですね、まさにファンタジーDID感が出てますね~
>ちと手荒に責め上げて、シェヴューツァンド王国が異世界と通じて周辺諸国に侵攻しようとしているという嘘の証言をでっち上げる。
どこの世界でもそうやって戦争を起こしたがる輩はいるものですね…
さて…このままでは異端審問官による厳しい尋問…所謂魔女狩り拷〇的なものに遭ってしまいかねない…その話を聞き恐怖に震える優ちゃんもそそられます…ただ痛い痛いなのは勘弁なのでその前に助け出されることを切に願ってます!
ちなみに馬に乗れず、戦力外通告を受けてしまう洸介くんがちょっとかわいそうですね(まあ普通に生活してて乗馬クラブにでも入会してないと早々馬に乗る機会なんてないですから…
ただ、このまま黙ってお留守番させておくなんておかめ御前様は考えてないでしょうから、彼の活躍の場もまだまだありそうですね。
> ただ、このまま黙ってお留守番させておくなんておかめ御前様は考えてないでしょうから、彼の活躍の場もまだまだありそうですね。
承知しました。次回で異世界編は最終回にする予定ですが、洸介くんにも活躍の場を作っておきましょう。