ハント星人の逆襲 第3話

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※この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※掲載されている画像の無断転載を禁じます!
※アフィリエイト広告を利用しています。

 「タイタン=テックスクワッド(Titan Tech Squad)」のチームリーダー・カイル=ヤマグチは、「Sky Strider(スカイ・ストライダー)」の飛行テスト中にハント星人のUFOに捕らえられてしまう。

 一方その頃、ハント星人の残党を掃討すべく、スパルトイのS級傭兵部隊・「竜牙(ドラゴントゥース)」がパシフィックゲートウェイ島に上陸していた。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

テラ・ランナー、地を駆けて友情に応える

灼けつくような日差しの下、パシフィックゲートウェイ島・ブライトバレー市の広大な砂浜に、エンジンの重低音が鳴り響いていた。
粉塵を巻き上げて疾走するのは、7メートル級のインダストリアルメック――「Terra Runner(テラ・ランナー)」
その鋼鉄の脚は波打ち際を軽やかに蹴り、四肢のアクティブサスペンションが起伏を飲み込むように滑らかに動く。

テラ・ランナーは、Leonardo.AiのモデルLeonardo Anime XL(Character sheet)で生成しました。

「加速状態、良好! 高速走行モード、オールグリーン!」

コックピットで操縦桿を握る橘拓斗は、満足げに笑みを浮かべた。
テラ・ランナーは飛べない。けれど、地を這い、突き進む速さなら、誰にも負けない。

砂浜の先、パイロンで構成されたスラロームゾーンを華麗に駆け抜ける機体を見上げながら、仲間の滝沢俊彦が腕を組んでうなずいた。

「悪くない。スカイ・ストライダーに飛行距離で敵わなくても、地上の走破性能なら互角以上かもな」

その隣では、レイラ=ジェーン=ウィルソンがタブレットを操作しながら記録を取っていた。

「制御AIも安定してるし、砂浜でこれなら舗装路や瓦礫地でも期待できるわね。拓斗、やっぱりあなたの判断は正しかった――“飛ばない道”も正解だったのよ」

拓斗の顔に安堵の色が差しかけた、まさにそのとき――。

拓斗ッ! 大変よ――!!

砂浜の入り口から、炎天下の中を息を切らせて走ってくる少女の姿があった。
胸元のエンブレムが示す通り、タイタン・テックスクワッドの一員。サブリーダーのミナ・カラニだ。

彼女の顔には、汗だけでない焦燥が滲んでいた。

「スカイ・ストライダーが……カイルが行方不明になったの! 飛行テスト中に突然通信が途絶えて、そのまま機影も確認できなくなって……!」

「――なんだって?💦」

拓斗の顔から、一瞬で笑みが消えた。
操縦席から跳び降りた彼は、靴の底で砂を巻き上げながらミナに詰め寄る。

「まさか……墜落したのか? でも、あのカイルが!? あいつが操縦ミスなんかするわけない!」

「私だって信じたくないわ! でも実際に、今も連絡がつかないの……。頼れる人が必要なの。お願い、手を貸して!」

ミナの声は切実だった。

拓斗は、僅かに目を伏せ、拳を握った。
脳裏に蘇るのは、あの気のいい笑顔でメックの話を熱弁していたカイルの姿。
たとえライバルであっても、その情熱と技術には敬意を抱かずにいられなかった。

「……やるしかないか。あいつを放っておけるわけがない」

言葉と同時に、拓斗はテラ・ランナーのハッチを跳ね上げ、再び乗り込む。

「俊彦、レイラ。こいつのセンサー類、災害救助モードに切り替えてくれ。ミナ、カイルの最後の通信座標は?」

「ここから北西、3キロちょっと。海岸の崖沿いよ!」

「よし、全力で向かう!」

ブォンッ! と低音の咆哮とともに、テラ・ランナーが再起動。
大地を蹴り、砂を噴き上げ、疾風のように駆け出す。

カイル――待ってろよ! 絶対に、助けに行くからな!!

今、空を飛べないメックが、地を駆けて友情のために走り出す。

闇の気配と、戻った友の謎

テラ・ランナーのエンジン音が静かにフェードアウトする頃、
水平線の向こうからひときわ大きな音を立てて、空から一機のメックが戻ってきた。

「――スカイ・ストライダー!?」

拓斗が叫ぶ。そのシルエットは間違いない。青と白の装甲が陽光を跳ね返しながら、滑らかに砂浜へと降下する。
操縦席のキャノピーが開き、中から現れたのは――

「カイル!」

砂浜に足を着くや否や、真っ先に駆け寄ったのは拓斗だった。仲間たちも続く。
心配していたその姿は、外傷ひとつない。息も整っている。だが、表情はどこかぼんやりとしていた。

「カイル、お前……無事だったのか!? いったい何があったんだよ!? 飛行中に通信が途絶えて――」

「……すまない、拓斗……俺、自分に何が起こったのか……思い出そうとすると……」

突然頭痛に襲われたカイルが頭を押さえ、膝をつく。その額に汗が滲み、表情が苦痛に歪む。

「うっ……!」

「おい、カイル!?」

すぐに駆け寄ったのは俊彦だった。彼の肩を支えながら、落ち着いた声で言う。

「……きっと連日の飛行テストと機体調整で相当疲れてるんだ。カイル、今日は無理せず休んだ方がいい」

「……ああ……。そうさせてもらうよ……すまない、みんな……」

レイラが軽く頷き、ミナがカイルをスカイ・ストライダーごとサポートカーに乗せて去っていく。
だが、彼が去った後、砂浜に残された三人の空気には、どこか張り詰めた違和感が残っていた。

「……なあ、拓斗。カイルは、本当に“無事”だったのか?」

「……ああ。でも、変だ。あのカイルが、自分の操縦中に何が起きたか思い出せないなんて……ありえない」

拓斗は唇を噛みしめる。彼の勘が、何か“おかしい”と告げていた。


その夜、トロピカル・ギアーズの工房。
テラ・ランナーを格納した整備ドックのモニターに、突如、光の粒子が瞬き始める。

〈通信接続:旗艦ノヴァリス――〉

画面に浮かび上がったのは、長い銀髪を持つ異星人の女性――コスモスの民のオペレーター・セレナだった。穏やかな声が工房内に響く。

セレナは、Dreaminaで生成しました。

「こんばんは、拓斗さん、俊彦さん、レイラさん。突然のご連絡、失礼します」

「セレナ! どうしたんだ?」

画面の中で、セレナは静かに頷いた。

「……重要な情報が入りました。ご報告しますね。
本日、パシフィックゲートウェイ島の上空にて――ハント星人のUFOが低空飛行していたのを、我々ノヴァリスの観測部隊が確認しました」

「ハント星人だって…? この間の奴らか!」

「まだこの島に隠れていたのね…!」

俊彦とレイラが息を呑む。

「そしてハント星人の宇宙船が確認されたその場所は……本日、皆さんがメックの試験を行っていた海岸一帯と一致します」

セレナの言葉が落ちると同時に、拓斗の脳裏にカイルの異常な様子がフラッシュバックする。
突然の行方不明、記憶喪失、謎の頭痛――

「……間違いない。カイルはあの時、ハント星人に捕まってたんだ。奴ら、カイルの体に何か“細工”をして――何食わぬ顔で返してきやがった!」

拳を強く握りしめる拓斗。その怒りは、仲間が何かに利用されていることに対する、怒りと恐怖だった。

「ちくしょう……カイルを利用しようってのか!? ふざけんな、絶対に許さない……!」

「拓斗……落ち着け。まだ、ハント星人が何の目的でそんなことをしたのかも分かってない」

俊彦の言葉に、拓斗は一度深く息を吐く。

「……ああ、分かってる。けど、このままじゃまた誰かが巻き込まれる」

「……セレナさん、何か目的の手がかりは掴めてないんですか?」

レイラが尋ねると、セレナは申し訳なさそうに首を振る。

「現時点では、彼らがカイルさんに施した処置や意図は特定できておりません。ただ、我々の記録によれば、ハント星人は過去にも“人間を操って侵入工作を行う”という行動パターンを取ったことがあります」

「やっぱり、そうか……」

拓斗は目を細め、再び拳を握りしめた。

「なら、もう動くしかない。カイルの中に何が起きてるのか、俺たちで突き止める。ハント星人の目的も、絶対に暴いてやる……!」

悪意の影、動き出す歯車

冷たい金属の艦内に、ねっとりとした笑い声がこだまする。
そこは、空を裂き、大気を欺いて飛行する異星の侵略者――ハント星人のUFOの中。

「フフフッ……上手ク、イッタヨウダナ……

薄闇の司令室に立つ、司令官と思しきハント星人が、無機質な仮面の奥で笑った。
長い指が操作パネルを撫でると、船内の壁面に映し出されたのは、つい先ほど地球に戻っていった高校生――カイル・ヤマグチの姿だった。

そして、場面は過去へと遡る。

 

――回想:数時間前、同艦UFO内

「ぐっ……この、化け物どもが……!」

メックスーツの一部が破損した状態で、なおも抵抗を続けていたカイル。
狭い隔離室内を駆け回り、ハント星人たちに渾身の一撃を見舞うが、多勢に無勢。やがて、その身体は複数の触腕と拘束具によって封じられる。

カイル=ヤマグチ(拘束ベルト除く)は、Dreaminaで生成しました。
背景は、leonardo.aiのモデルDreamShaper v7で生成しました。

「ク……クソッ……放せっ……!」

「ムダナコトヲ……ニンゲンヨ。キミハ、我々ノ“鍵”トナッテモラウ」

「な、何をするんだ……!? や、やめろォォッッ!!」

巨大なレンズ装置が天井から降り、カイルの頭部にピタリと照準を合わせる。
装置が光り始めた瞬間、脳へと直接侵入するような異様な音波が発せられた。電子音の奔流、精神の境界を破壊する洗脳の奔流。

「ウゥ……が……アアアアァァァッ……!!!」

断末魔にも似た叫びが室内に響いた。
そして、彼の瞳からゆっくりと光が消え……カイル・ヤマグチは、静かに項垂れた。

「完了シタ……」

「ヨシ。プログラムヲ実行サセルノハ、“優勝ノ瞬間”ダ」

端末モニターに、新たな映像が表示される。
そこには、巨大な大会――**「メックジェネシス」**のフィナーレ、表彰台の様子がシミュレートされていた。

ヤマグチ=カイル、表彰台ノ頂点ニ立ツ。
表彰式デ、市長カラ渡サレル金色ノトロフィー。
ソノ内部ニ、我々ガ用意シタ“仕掛ケ”ガ発動スル。
彼ノ手ニ、白イ小箱ヲ持タセ、ソレヲ市長ニ手渡セ……」

映像の中では、白い金属の箱が小さな閃光を放ち――辺り一帯が閃光と共に消し飛ぶ

「ハッハッハッ……実ニ、美シイ終幕ダ!」

 

――回想、終わる。
現実の司令室。ハント星人たちは再び醜悪な笑い声を上げた。

「シカシ……ホントウニ、カイル=ヤマグチハ優勝スルノカ?」

「ソレハ分カラナイ。予測デハ高確率ダガ、“万一”トイウコトモアル……」

司令官が端末の別ウィンドウを開く。そこに表示されたのは、トロピカル・ギアーズ――カイルが属するチームのライバルチームであり、特に高い技術力と戦略性を持つメックチームだった。

橘拓斗、滝沢俊彦、レイラ=ジェーン=ウィルソン――

彼らの顔写真、プロフィール、戦闘記録、機体性能までもが緻密に収集され、分析されていた。

「……ライバルニナリソウナ他ノ参加チームヲ、今ノ内ニ“潰シテ”オクカ……?」

「キョウレツナ兵器ヲ積ンダドローン部隊ヲ、アス出撃サセル準備ハ完了シテイル……」

「良イダロウ。ソノ3人ヲ狙エ。トロピカル・ギアーズヲ排除セヨ」

「了解……侵攻作戦、開始スル」

司令室の照明が緑から赤に変わる。
冷たい無音の中で、闇の意志を宿した侵略者の艦は静かに浮上し、次なる破壊のために姿を消していった。

運命の歯車は、確実に狂い始めている。
その中心には、何も知らぬまま日常へ戻ったカイルがいた――

(つづく)

雑記 2025/06/01

ここで管理人より皆様にご報告がございます。本日から一週間ほど、仕事の関係で自宅を離れ千葉へ参ります。その間、ブログの更新やコメント欄への返信は出来ませんので、どうかご了承ください🙇


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コメント

  1. 旅鴉 より:

    カイルくんが飛行テスト中に消息を絶つ、それを聞き捜索に向かう拓斗くん…だが、親方!空からロボットが、なんと向こうから帰ってきた。

    何だか意識が朦朧としながら帰ってきたカイルくん、ここで勘のいいガキ代表の拓斗くんは何か違和感を感じる、
    そしてその夜にコスモスの民のオペレーター・セレナさんから連絡が、どうやらハント星人が動き出しているようで、それに巻き込まれたカイルくんが何かいじられて帰されたという結論に至った拓斗くん、怒り心頭である…って、どんだけ勘が良すぎるんだこのガキは…
    まあセレナさん曰く、ハント星人は捕まえた人間を洗脳して放り出すといった前例があると説明はしてくれましたが…
    どうやら、あの状況から逃げ出せたわけじゃなかったカイルくん、とりあえず催眠光線だけで良かった、頭に爆弾仕込まれてたらどうしようかと、そうなったらハント星人のUFOに落とさなきゃいけなくなりましたからね。

    で…捕らぬ狸の皮算用のハント星人、本当にカイル君が優勝するのか…いや…今更そこ…自分もずっと気になってたのですが…
    ここでハント星人はライバルを潰すことを考える、そしてその標的は…

    >「トロピカル・ギアーズヲ排除セヨ」

    結局狙われるトロピカル・ギアーズ、いや排除って随分物騒なこと言いますね…ちゃんとレイラちゃんだけでも生け捕りにしろよ、でないと茹でるぞ蟹野郎ども!
    さて、ここでどうやってスパルトイが絡んでくるのか?

    一週間も出張とは大変ですね…本当にお疲れ様です。
    暫く寂しくなりますが、管理人様が留守の間自分も色々と考えてみますね。

  2. JUDO より:

    前回の展開にて、カイル君のGIDシーンを期待していましたが・・・回想シーンがサプライズですね(^▽^)/
    ハント星人という異星人らしい地球にはないような特殊な金属ベルト(テープ)もザ〇ブ星人を思わせ・・・(* ̄▽ ̄)フフフッ♪

  3. S-A より:

    お久しぶりのハント星人、カイル君を洗脳してのテロ計画を確実なものにするためトロピカルギアーズを標的に…試合なんかで悪役チームが主人公チームを妨害するために手段を択ばず策を弄する、というのは割とある展開のように思いますが、これは三人そろっての連縛も期待できそうな流れですね。あと応援に来るであろうサラちゃんやシャンリンちゃん、取材で来そうな友美さんなども巻き込まれるかも?
    一方ハント星人のほうも失態続きで後がない状態なんですよね。思い通りにいかない状況に焦ってあらぬ方向へ暴走する可能性も?スパルトイも狩りに来てますし(こいつらはこいつらで何かやらかしそうな気がしますが)。

  4. bakubond より:

    脱出を図るも抵抗空しく…、というこのブログの定番、今回はカイル君でしたが、司〇遼〇郎風の「話はさかのぼる」的な運び方というのは結構珍しい気がします。
     
     そしてカイル君はマインドコントロールを施され…。コスモスの民からの連絡があったからとはいえ、即座に気付いた拓斗君流石です。
     トロピカルギアーズを攻撃対象に定めたハント星人遂に脱ポンコツに成功か!?と言いたいところですが、しくじって藪蛇状態ということになるんでしょうね。

     管理人様が登場の可能性に言及されているカイル君用のアストラルロイド、完全新型というのも悪くないですが、スカイ・ストライダーとテラ・ランナーをベースに強化改造というのもジャンボーグAとジャンボーグ9でよさそうです。」

     

  5. S-A より:

    私も皆様に倣ってSSをひとつ作ってみました。グラビティ・ブレイカーズ編の竜門会サイドの後日談です。旅鴉様のコメントをヒントにしました。

    「んで?その女にボコボコのボコにされてあわや海の藻屑?劉兄、アンタ普段イキり散らしてるくせに肝心の時にそれですかぁ?鍛え方足りないんじゃない?」
    香港、竜門会本部の談話室で、饒舌に喋っている少女は竜生九子第七位・曹金蘭である。日頃反りの合わない劉鉄嶺の失態にここぞとばかり煽っている。
    「裏切り者の周翠蘭にも手こずって?変身前にはよくわからんその辺のガキにも負けかけてたぁ?無様っすねえ、プークスクスクスwww」
    劉鉄嶺の額に何本も青筋が立った。
    「こらクソガキ、さっきから聞いてりゃ調子こきやがって。いっぺん礼節ってもんを教育してやろうか?」
    「へえ、アンタ礼節なんてもの知ってたんだ?キャハハハwwww」
    「んだとぉテメエ勝負すっかコラァ!」
    「二人ともやめんか」
    低く切りつけるような声が飛び、二人は口を閉じた。声の主はソファに座っている美女――
    竜生九子副リーダー武永照である。
    「金蘭、口を慎め。仮にも年長者だぞ」
    「はい。どうもすいませんっした、劉兄」
    武永照にたしなめられ、曹金蘭は劉鉄嶺に心のこもらない謝罪をした。劉鉄嶺はそっぽを向いている。
    「だけど大兄、どうして寺瀬聖佳が厄ネタだとわかったんですか?」
    窓際に立って外を眺めていた竜生九子リーダー・アンソニー=チャンに尋ねたのは第八位の相銀蘭――曹金蘭の双子の妹である。アンソニーは振り向いて答えた。
    「匿名の通報があった。『寺瀬聖佳に用心しろ』とな。意味が分からなかったが一応希理子に調べさせたらとんでもなく厄介な案件だった。折から鉄嶺がよこした報告の中に寺瀬聖佳の名前があったのを思い出してな、急いで永照を日本にやったんだが」
    「一足違いで事は終わっていたな」
    武永照が話を引き取る。
    「まあ鉄嶺は回収できたし、損害も全体としては軽微だった。寺瀬聖佳がアスカロン財団に確保されていたら面倒だったが連中も足取りはつかめていない」
    「そういうことだ」
    アンソニーが話を続ける。
    「鉄嶺、雪辱の機会は作ってやる。その時に備えて鍛えておけ」
    「…うっす」
    「金蘭もだ。他人を笑っておいて自分が不覚を取らんようにな」
    「はい」
    「よし、行ってよし」
    劉鉄嶺と曹姉妹が退出した後、アンソニーは武永照と向かい合ってソファに座った。
    「大兄、寺瀬聖佳の件、裏で小細工した者がいるのではないか?」
    「俺もそう思う。心当たりも無くはないが…下手につつくと藪蛇になりそうでな。まあ当面は静観するが、あまりおいたが過ぎるようならわからせてやらねばならんな。それと周翠琳の居所が確定したのは収穫だった」
    「うむ。まあ逃げ込み先はアスカロン財団以外あるまいとは思っていたが」
    武永照は滅多に声を荒げず、怒る時は声が低くなる。今も裏切った元弟子の話題が出る時、静かで沈んだ口調のなかに怒りが含まれているのをアンソニーは感じていた。
    「奴め、素人の小僧を助けながら饕餮と五分以上に渡り合っていたとか。腕は全く衰えていないようだ」
    「当然だ、破門したとはいえ私の弟子だぞ。ヤワな鍛え方はしていない」
    「面子や感情を抜きにすれば評価は高いか」
    「ああ、あいつの実力は本物だ。侮る気はない。だがそれはそれ、これはこれだ。周翠琳は私が始末する。翠琳がライトシーカーなら会う機会はいくらでもあろう」
    「まあ周翠琳のことはお前に一任している。思うようにすればいい」
    「話は変わるが大兄、アスカロン財団とブレイバーズへの工作の進捗は?」
    「今のところ問題はない。成果が見えてくるまでにはまだ時間がかかるが」
    「それは結構」
    「連中には今は調子に乗らせておくさ。その間にこっちは少しづつ足元を掘り崩していくだけだ」
    一方、曹姉妹は廊下を歩きながら会話していた。
    「やっと翠琳が見つかったね、姉さん」
    「ああ、今じゃライトシーカー様だってね、クソッタレ」
    曹金蘭は歯ぎしりしながら毒を吐く。
    「あのクソアマ、あんなに可愛がってくれてた武大姐の顔に泥塗りやがって、今じゃ正義のヒロイン気取りでご活躍だぁ?ふざけんじゃねぇぞド畜生が」
    「姉さん、今は抑えて。私も思いは同じ。必成も、蛟竜館の仲間達も、武大姐の生徒だった者はみんな…忘恩不義の輩には鉄槌を下さなければ」
    「その時が待ち遠しいねえ」
    曹金蘭は愛用の峨嵋刺を指にはめると、ブンと腕を振り回した。

    • 旅鴉 より:

      SS拝読させて頂きました、
      いや~、劉鉄嶺の舐められっぷりが…
      曹金蘭ちゃんのメスガキっぷりがまた良いですね~、ただ最後の方でお翠琳ちゃんにキレてるところを見ると怒ると劉鉄嶺よりも更に狂暴な感じが見えますね、峨嵋刺という武器が彼女の内にある狂気を物語ってる感じがします。

      そして劉鉄嶺を助けたのは武永照姉さんですか、これで劉は更に彼女に頭が上がらなくなりそうですね。

      そしてアンソニー氏はブレイバーズとアスカロン財団に工作を仕掛けているようで、何やらとても恐いですね、成果が見えてくるまでにはまだ時間がかかるとのことですが、気になるところですね、管理人様が仰っていた詩郎くんの冤罪事件もそれに入るのかな?

      そして…武永照姉さん…翠琳ちゃんに随分と目をかけていたようで、本気でキレていらっしゃる、再会した時は翠琳ちゃん半殺しじゃ済まないかもですね、今のうちに鍛えておかないとですね…

      その前に曹姉妹の双子連携コンビが最初でしょうから、そちらの方も厄介そうですね。

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