霧深温泉郷でのホテル人質占拠事件は無事に解決し、黒百合と百合鴉は捕縛されて身柄はアスカロン財団へと引き渡された。しかしその時ライトシーカーの加藤段十郎に神向寺冴佳から緊急連絡が入り、事件はまだ終わっていないことを告げられるのだった。
アトリエにて

縛られている鳳凰院優イラストは、KazuHanabi様。
背景は、【Moon☆Wind – 音×絵の創作素材サイト】様のフリー素材より拝借しました。
「おらっ、お前はここでお友達と大人しくしていろ!」
「んっ!んんんっっ!!」
ピラニアレギウスのデッサン作業が一時中断したので、手下の深田(コックローチレギウス)によって一時的に拘束を外された漆崎亜沙美は、鳳凰院優が閉じ込められている同じ地下牢へと連れて来られ、そこで改めて縄で縛られて口に猿轡を噛まされた。
一方アトリエの1階では、一見静寂な空間の中で静かな睨み合いが続いていた。先程からずっとアトリエ前に停まっている不審車の様子を窓のカーテン越しから窺っているピラニアレギウス。ここでビオベミラが一つの疑問を問いかける。
「お前の纏っているその装甲服、見たところブレイバーズが使っているレギウス用のパワードモードスーツのようだが、何故ヴィランのお前がそんな物を持っている?」
「ブレイバーズだって? フフフッ…そんな人道的なもんじゃないよ。ある天才博士殿が見様見真似で造った紛い物さ。ところがあのジジイ、ボクの身体に皮膚として直接移植しやがったもんだから、一生脱げなくてこの姿さ。まあ、これもこれで結構気に入ってはいるけどね♪」
「お前の手下の男、確かお前のことを”小西”と呼んでいたな。その名に聞き覚えがある。以前に魔人銃士団ゼルバベルがブレイバーズによって壊滅させられた時、行方不明になった幹部の中に小西李苑という男がいたはず。もしやお前が…?」
「さぁて、昔のことなんか忘れたねぇ~」
ビオベミラに問い詰められても、飄々とした態度を崩さないピラニアレギウスであった。
潜入作戦
神向寺冴佳の運転する車は、人気のない山中にぽつんと立つ一軒家の近くに停まっていた。
車内の空気は、緊張で張り詰めている。
冴佳はハンドルを握ったまま、険しい表情で目の前の建物を睨んでいた。
助手席の柏葉美佳も、じっと一軒家を見つめている。
後部座席には、思わぬ成り行きで連れてきてしまった民間人――小寺洸介と桜庭陽平が座っていた。二人とも、鷺島国際大学の報道部に所属している大学生たちだ。
「……あそこに、優ちゃんたちがいるんですよね?」
陽平が小声で訊ねた。
冴佳は短くうなずいた。
「可能性は高いわ。ただ、相手は……普通じゃないかもしれない」
そう言ったきり、冴佳は口を閉ざした。
彼女は情報のすべてを明かすことができなかった。何より、この二人には美佳が魔法少女「星彩のルミナ」であることを絶対に知られてはならない。
洸介は苛立ったように身を乗り出し、声を荒げた。
「だったら、なおさら警察を呼ぶべきじゃないですか!? 俺たち素人なんですよ!?」
正論だった。
だが、正論だけでは救えないものもある。
冴佳は、できる限り穏やかに言葉を選んだ。
「小寺君、落ち着いて。……警察が動くには、まだ確証が足りないの。今は慎重に動くしかないわ」
「でも……!」
「大丈夫、すぐに応援が来るから。それまで待ってほしいの」
冴佳はそう言いながら、心の中では叫んでいた。
(あぁ~加藤さん、早く来てぇぇぇぇ!!)
一方の洸介も陽平も、まだ納得しきれない様子だったが、ギリギリのところで引き下がった。
その時だった。
「えっと……すみません。ちょっと、トイレ行きたくなっちゃって……」
美佳が遠慮がちに声を上げた。
「近くにないか探してきてもいいですか?」
「えっ、こんな山の中で? 危ないよ、美佳ちゃん!」
洸介が焦ったように言った。陽平も同調する。
「そうだよ! 一人で行かせるなんて無理だって!」
「でも……さすがに、男の人がついてくるのは……」
困った顔をする美佳に、洸介と陽平は顔を見合わせ、歯がゆそうに唸った。
結局、二人とも強くは言えず、しぶしぶ美佳が一人で外に出ることを認めた。
「……絶対、遠くには行かないでね、美佳ちゃん!」
「はい、大丈夫です!」
ぱたん、と軽い音を立ててドアが閉まる。
美佳はにっこり微笑みながら、車から離れると、すぐに顔を引き締めた。
彼女の目的は、トイレではない。
――救出作戦のために、単独で動くこと。
山道の小石を踏みしめながら、美佳は一軒家の裏手へと慎重に回り込んだ。
木立に身を隠しながら、視線を這わせる。
捕らえられているかもしれない優と亜沙美を助けるために――そして、魔法少女「星彩のルミナ」として戦うために。
(待っててください、優さん、亜沙美さん……!)
美佳の目が、静かに、しかし確かな決意に燃えた。
つづく。
コメント
なにがし西さんことピラニアレギウスのDIDデッサンも一時中断、G深田に連行され牢屋に戻される亜沙美ちゃん、そこには縛られ猿轡をされた優ちゃんも、とりあえず無事でなによりです。
そしてここでビオベミラさんからピラニアレギウスさんに質問、
Q.何でブレイバーズ製のパワードモードスーツをヴィランのあなたが着ているのですか?
A.これは暗黒大博士ってマッドサイエンティストが見様見真似で造ったバッタモンで、オリジナルじゃないです
しかも皮膚として直接移植してやがるから一生脱げやしねぇ…あのジジイ本当に仕事が雑ですね、ちなみにゴキの方は変身出来たようですが、あれもパワーモードスーツっぽいのですが、あっちの方はどうゆう仕組みでしょうか?
さてこちらは学生報道部野郎&美佳ちゃんチーム、ゴキを追いかけてポツンと一軒家に来たものの…どうしよう…
今回に限って、報道部の野郎2人が頗る邪魔だった、迂闊に変身出来やしねぇ…
しかもいつも無謀に色んなところに突撃かましてるくせに、今回はやけに慎重だし…
心の中では既にかなりテンパってる冴佳姉さん、そりゃこの人ノーマル人ですからね…
ここで恥を忍んで美佳ちゃんがトイレに行きたいと言い出すが、ついて来ようとする2人、オイ!
とりあえず2人を納得させて1人車から抜け出す美佳ちゃん、いよいよ星彩のルミナへと変身だ、だが今回はゴキだけでなくサイコピラニア野郎もいる…あ、忘れてたビオベミラ様もいる!
1対1でもそこそこ強敵な相手を3体相手するのは…さすがに補助武器を召喚したとしてもかなりハードモードですね、しかもまだ2戦目、これはキツいかもですね、魔力が持たないかも…
これは霧深温泉チームの救援が待たれるところではありますが、ここで1人で頑張って見せて、ヴィランサイドに「何コイツ!?」って印象つけさせられるかもですね。