BRAVERS EDITION　episode.129

安土市内で失踪した大学生の捜索・救出作戦を命じられた獅場俊一と寺瀬詩郎の二人は、地球連邦軍オメガ・ヴェール基地にあるディオドスシステムを使って、セレスティア=スパークル少尉（セリィ）と共に異世界タシェニュヴルアへと渡るのであった。

一方その頃、失踪した大学生の一人である草川律希は、どことも知れぬ異世界の暗黒の城に囚われていた…。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

闇の女王

錆びついた鎖が外され、鉄環が床に落ちる甲高い音が牢獄に響いた。
拘束から解き放たれた草川律希は、数日ぶりに自由を取り戻したかのように深く息を吸い込む。だが、兵士が口枷に手をかけた瞬間、彼の目がぎらりと光った。

次の刹那――。

「うわああッッ！！　誰かー！！　誰か助けてくれーー！！」

律希は肺の奥から声を絞り出し、全身で暴れ回った。牢の石壁に轟くその叫びは、静まり返っていた空気を粉々に砕いた。

「コラッ！　大人しくしろ！」
「騒いでも無駄だ！」

狼狽した兵士たちが慌てて彼を押さえつける。律希は必死に足を踏ん張り、肩を揺さぶり、逃げ出そうと抗ったが、分厚い鎧を纏った兵士たちの腕力には敵わない。

「ちくしょう！　放せーーッ！！」

もがけばもがくほど、手首に鋭い痛みが走る。兵士が無理やり鉄の手錠をはめ込み、再び自由は奪われた。荒い息を吐きながら、律希は引きずられるように牢獄を後にする。

そして辿り着いた先――。

天井高く吊るされた黒い燭台が揺れ、赤黒い絨毯が玉座へと続いていた。その先に座していたのは、一目で常人ならざると分かる女。長い漆黒のドレス、冷たい炎を宿すような瞳、頭上には不気味に輝く王冠。

兵士が声を張り上げる。
「控えろ！　こちらは闇の王国ヴェロルホアセアを治める女王、モルガナ＝ナグサリア陛下にあらせられる！」

律希は怯むことなく叫び返す。
「その闇の女王様が俺にいったい何の用があるんだ！　俺を早く解放しろ！」

「こ、コラッ！　無礼者！　口を慎まんか！」
兵士の怒声が響いた瞬間、女王の口元にかすかな笑みが浮かんだ。

「……よい。捨て置け」
低く響く声は、玉座の間を震わせるような威圧を帯びていた。
「なかなか活きのいい異世界人ではないか。妾は気に入ったぞ」

「ハ、ハハッ……」
兵士たちは慌てて頭を垂れる。

律希は噛みつくように声を張った。
「史奈先輩はどうした！？　彼女は無事なんだろうな！？」

その名にモルガナが瞼を細める。
「……フミナ？　ああ、お前と一緒にいたあの女か。よかろう、会わせてやる」

指先が軽やかに鳴らされた。パチン、と乾いた音が響くと同時に、玉座の横の重厚な石扉が重々しく開いた。

「んっ、んん～っ…!!」

鎖に繋がれ、冷たい牢獄の中で椅子に座らされている桐尾史奈の姿が現れる。彼女の口にも口枷が装着され、悲痛にくぐもった呻き声を発している。

「史奈先輩！？」
律希は絶叫し、兵士の拘束を振りほどこうともがく。
「やめろー！！　彼女がいったいお前らに何をしたっていうんだ！？」

モルガナは冷ややかに微笑む。
「この女を助けたいか？　ならばそれは、お前が妾に素直に協力するか否かにかかっている……」

律希は唇を強く噛みしめ、汗をにじませながら女王を睨みつけた。
「くっ……！」

玉座の間には、律希の怒りと恐怖と、抗いがたい重苦しい沈黙が満ちていった。

謎の石板

「……お前は〈チキュウ〉という異世界では、考古学を習う学生をしていたそうだな？」

玉座の上から、女王モルガナ＝ナグサリアの声が響く。律希は兵士に両脇を固められたまま、睨むように顔を上げた。
女王は指をひらりと動かすと、傍らの侍従が一枚の古びた石板を差し出す。

「ならば、これと同じものを見たことはないか？」

重々しい空気をまとった石板が、律希の目の前に掲げられた。風化しひび割れた表面には、奇妙な装飾を施した腕輪――儀式用ブレスレットの設計図が彫り込まれていた。中心を囲むように刻まれた不可解なルーン文字は、時を経てもなお消えきらず淡い光を帯びている。単なる文化的遺物ではなく、魔法的な特性を孕んだ代物であることが素人目にも分かる代物だった。

律希の背筋に冷たい汗が伝う。
（……これ、まさか……）

心臓が跳ねた。彼は確かにそのブレスレットを知っていた。半年前、大学の発掘調査で偶然出土し、今は教授の研究室に保管されているはずの現物だ。
だが、ここで正直に答えればどうなる――？　答えを知っている異世界人として、徹底的に利用されるのは目に見えている。

律希は喉を鳴らし、絞り出すように言った。
「……さ、さあ、知らないな。こんなもの、見たこともないぜ……」

玉座の女王はしばし律希を見下ろしていたが、やがて長い吐息を洩らす。
「そうか……」

落胆とも諦めともつかぬ声音。すぐさまモルガナは配下に視線を向けた。
「もうよい。連れていけ」

「なっ……！？　な、何すんだ！？　放せーー！！　約束が違うぞ！！　史奈先輩ーーッ！！」

必死の叫びも虚しく、律希は兵士たちに腕をねじ上げられ、玉座の間から引きずり出されていく。

残された黒鎧の騎士が女王にひざまずいた。
「女王様、あの異世界人はもう用済みと心得ますが、いかが致しますか？」

モルガナは紅の唇を歪め、くぐもった笑い声を洩らす。
「フフフ……まだ何かしらの利用価値はあろう。焦ることはない。もうしばらくは生かしておいてやれ」

――再び、鉄格子の冷たい牢獄。

律希は鎖に繋がれ、鉄製の口枷を再び嵌められた。全身に鈍い痛みが広がる。だがその瞳だけは、玉座の間で見た石板の像を焼き付けて離さなかった。

（……あのブレスレット。やっぱりそうだ……！　教授が保管してるあの現物と同じ……。ってことは、あの女王は地球に繋がる何かを探してるのか？）

心臓が高鳴る。自分が嘘を吐いたことが気づかれれば、命はない。だが逆に、この事実をどうにか活かせば――ここから脱出する糸口になるかもしれない。

鎖がきしむ。鉄格子の外には冷ややかな松明の灯り。
律希はその小さな炎を見つめながら、必死に頭を働かせた。

（そして俺は……必ずここから出る！　史奈先輩を連れて……！）

牢獄に満ちる沈黙の中、律希の決意だけが熱を帯びて燃えていた。

森の中で

――ざわめく森の奥。濃緑の木々に囲まれた獣道を三人の影が進んでいた。

先頭を歩くのは、桃色の髪を陽光に揺らす少女――地球連邦軍の通信士官、セレスティア＝スパークル少尉である。手にした軍用デバイスのコンパスを何度も確認しながら、眉を寄せた。

「おかしいなぁ……確かにこの辺りのはずなんですけど……」

その背に続く獅場俊一と寺瀬詩郎は、互いに目配せしつつ無言で歩を進める。イレイアナ＝メロディスの説明では、この森の外れでグランベルミア王国の迎えの兵士と合流する手筈だった。だが、鳥の囀り以外に人の気配はない。

――と、茂みの向こうで鎧の軋む音が響いた。

「……来たか」俊一が小さく呟いた次の瞬間、枝葉をかき分けて十数名の兵士が姿を現した。槍の穂先が陽光を反射し、三人の胸元を鋭く狙う。

「よかった！　あそこにいましたよ！　こっちで～す！」
セリィはぱっと顔を輝かせ、大きく手を振った。だが――。

「待て、セリィ……」
詩郎が低く囁く。
「様子がおかしいぞ」

兵士たちの目は険しく、迎えに来た者のものではなかった。次の瞬間、鋭い怒号が飛ぶ。

「怪しい奴め！　大人しく縛に就け！」

「えっ……！？　ちょ、ちょっと待ってください！　私たちは――」
セリィの弁明は最後まで聞かれなかった。兵士たちは素早く半円を描き、槍を構えて三人を囲い込む。

「どうする？　いっちょやるか？」
俊一が唇の端を吊り上げる。しかし詩郎は頭を振った。

「ここで異世界の国と揉め事を起こすのはマズいだろ。……まずは相手の腹を探るべきだ」

俊一は短く息を吐き、肩をすくめる。
「……チッ、分かったよ」

「よしっ！　全員に縄を打て！」

兵士長らしき男が顎をしゃくると、部下たちが縄を持ち出し、一行の手首を素早く縛り上げていった。

異世界に来て早々、捕虜としての扱い。連絡の行き違いか、それとも――意図的な罠か。

縄に縛られながら砦へと連行される俊一たち。森の小道を進む列の中、三人の胸に去来するのは、不安と疑念、そして抗いがたい冒険の匂いであった。

――彼らを待ち受ける運命は、光か闇か。

（つづく）

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