BRAVERS EDITION　episode.153

ブレイバーズの錦織佳代、クリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィス3世（クリス）、寺瀬詩郎の3人は、アスカロン財団との定期会合のために、財団本部オメガ=タワーズを訪れる。佳代たちを出迎えるアルマ=ブラックバーンだったが、そのアルマが脱獄した黒百合ダークリリィによって拉致され、あろうことか詩郎にアルマ誘拐の容疑がかかってしまう。

黒百合のアジトに監禁されていたアルマは、ライトシーカーの三刀谷真玲と周翠琳のコンビによって無事に救出されたのだが、今度は行き違いで佳代が黒百合に捕らえられてしまう。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

佳代の捜索

　ニューヨークのスラム街。
　割れたガラス片が転がり、建物の影では浮浪者が焚き火代わりのドラム缶を囲んでいる。
　風が吹くたび、遠くでパトカーのサイレンが短く鳴り響いた。
　強襲型獣形態ロボ「スコル」が、錦織佳代の姿を捜して裏路地を走り回っている。

　同じくその雑踏の中を、寺瀬詩郎は走っていた。
　汗が額を伝う。息はもうとっくに切れていたが、足は止まらない。

詩郎「……くっ、どこにいるんだ姐さん！ どこだよ……！」

　スラムの一角で、警察官が「アジア系の若い女性を見た」と証言してくれた。
　だがそこから先に痕跡はなく、まるで空気に溶けるように行方は途絶えていた。

アルマ〈通信〉『焦るな、寺瀬詩郎！』

　耳元のイヤホンから、凛とした高貴な少女――アルマ＝ブラックバーンの声が響く。

アルマ〈通信〉『お前がどれだけ静かにしていても、心拍数が異常に上がるとはこちらにも分かる。落ち着け』

詩郎「……でもッ！　姐さんは俺のせいで黒百合に捕まったんだ……！
　　　俺があの時、姐さんに余計なことを頼まなければ……」

アルマ〈通信〉『違う。それは敵が狡猾だっただけだ。
　　　　　　　第一、私が翠琳たちに救出されたように、錦織佳代も必ず見つかる。』

　ちょうどその時――詩郎のスマホが震えた。

　画面に浮かぶ着信名を見て、詩郎の心臓が跳ねる。

　――錦織佳代。

　しかしそれは、佳代ではないことを詩郎は理解していた。
　呼吸を一度整え、通話ボタンを押す。

詩郎「……もしもし」

黒百合「ハァ～イ♡　紫髪の坊や、元気してた？」

　妖艶で甘く、ねっとりとした声。
　聞いた瞬間に、詩郎は奥歯を強く噛み締める。

詩郎「てめぇ……黒百合ダークリリィ。佳代姐さんに何をした！？」

黒百合「ふふっ、心配するほどのことはしてないわよ？
　　　　ちょ～っと縄で飾り付けしてあげただけ。似合ってたわよ、すっごく♡」

詩郎「……！」

黒百合「さあ、本題に入りましょうか。
　　　　ようやく“歓迎の準備”が整ったから来てもらえる？ もちろん、あなた一人でね」

詩郎「どこに向かえばいい？」

黒百合「座標と地図データ、送っておくわ。
　　　　３時間以内にいらっしゃい。
　　　　来なかったら――“愛しの姐さん”の身に何が起きても知らないわよ…」

　ブツッ。

　通話が突然切れる。

　直後に、スマホの画面に座標情報と地図が送信されてきた。
　指先が震える。
　表示された赤いマークの位置を確認すると――

詩郎「……ニューヨーク郊外の……廃工場……」

アルマ〈通信〉『行くつもりか？ 詩郎。間違いなく罠だ』

詩郎「分かってる……そんなこと分かりきってる……」

　詩郎は息を吸い込み、拳を握り締めた。

詩郎「でもな、アルマ。
　　　“虎穴に入らずんば虎子を得ず”だ。
　　　罠だろうとなんだろうと……姐さんは必ず助け出す！」

　それは恋情ではない。
　もっと原始的で、強い絆だった。

　佳代は自分を弟のように扱ってくれた。
　自分の過去を知っても、軽蔑しなかった。
　あの日、自分が道を見失いそうになった時――光平たちと共に誰より先に手を伸ばしてくれた。

　だから。

詩郎「俺が助ける。それ以外ないんだよ」

アルマ〈通信〉『……ならば、せめて一つだけ守れ』

詩郎「？」

アルマ〈通信〉『“死ぬな”。それは許さない』

　その声は、いつになく静かで強かった。

詩郎「……ああ、分かった」

　詩郎は廃工場の方向へ歩き出した。
　スラム街の闇が、彼の背中を長く伸ばしていた。

黒乃巣流変装術

　錦織佳代は、両手首を後ろで固く縄で縛られ、金属製のパイプ椅子へと乱暴に座らされていた。足首も縛られ、さらに口には幅広いガムテープ。身じろぎをするたび、縄が擦れて皮膚に食い込み、冷たい痛みが走る。

　薄暗い廃工場の一室。天井から吊るされた裸電球が、一秒ごとにパチッと瞬きを繰り返し、その度にコンクリートの壁へ、縛られた佳代の影が歪んで映し出された。

　そして――その影の前に、佳代自身の姿が重なる。

　いいや、それは佳代ではない。

　目の前に立つ「佳代」は、彼女自身と寸分違わぬ姿だった。髪型も、肌の質感も、瞳の揺れ方すら――。

　偽佳代（黒百合）が、ゆっくりと微笑む。

「フフフ……驚いたかしら？ 錦織佳代」

「んんっ…！？」

　ガムテープの下で佳代の喉が震える。“なぜ自分と全く同じ姿がそこにいるのか”。恐怖と混乱が胸を刺す。

　後ろに控えていた百合鴉が、恭しく頭を下げる。

「さすがは黒百合様。黒乃巣流――至高の変装術。今回もまさに芸術です」

　偽佳代――いいや、黒百合は、唇に妖しい笑みを浮かべながら、佳代の頬にそっと指先を這わせた。

「当然よ。私にかかれば、この程度の変装……朝飯前だわ」

　佳代は震える。口が塞がれていなければ、今すぐにも詩郎へ警告を叫んでいた。だが声は出せない。縄は頑丈。身体も動かない。

　黒百合は佳代の正面にしゃがみ込み、本物の佳代の顔をじっと覗き込んだ。

「ねえ、どう思う？ あなたの“弟分くん”は、私のこの姿を見て、どんな顔をするかしら？ まさか本物が別の場所で縛られてるなんて、気づくはずもないわよね」

　百合鴉がケラケラと笑う。

「詩郎って子も、あなたと同じ顔を見せられたら油断するでしょうねえ。あははっ、想像しただけで愉快だ！」

　佳代の胸を焦燥が焼いた。

（詩郎……来ちゃダメ……！）

　心の中で叫んでも、黒百合と百合鴉の笑い声にかき消されるだけ。

　黒百合はゆっくりと立ち上がり、偽佳代の姿のまま、滑らかな動作で髪をかき上げた。その仕草さえ本物そっくりで、佳代自身ですら一瞬錯覚するほどだった。

「さあ、歓迎の準備は整ったわ。寺瀬詩郎が来たら――ここの“佳代”が優しく迎えてあげないとね」

　百合鴉が続ける。

「本物の佳代さんは、そこでゆっくり観賞しててくださいね。詩郎がだまされる瞬間を」

　黒百合と百合鴉の高らかな笑いが工場に反響する。

　佳代は縄をきつく引きちぎらんとばかりに身体をよじる。だが縄はびくともしない。

　暗い室内、ただひとり、無力なまま。

　――詩郎が罠にかかるその瞬間を、見届けるしかないのだった。

（つづく）

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