重機装士ヴァルダーこと海防大学工学部1年生の皆上遼馬は、ブレイバーズ長官の牧村光平から若手女優・琴川玲奈の護衛を命じられる。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
玲奈の休日
休日の午後。
人通りの多い商店街を、キャップを深くかぶり、サングラスで顔を隠した少女が歩いていた。
そのすぐ半歩後ろ。

背筋をやけに伸ばし、周囲を過剰なほど警戒しながら歩く青年――皆上遼馬の姿があった。
視線は右、左、背後、ガラスに映る反射。
挙動は完璧に“護衛”なのだが、どうにもぎこちない。
(……近すぎないか?
いや、離れすぎか?
いやいや、逆に不自然じゃ――)
内心で自分にツッコミを入れ続ける遼馬の様子に、隣を歩く少女が、くすっと小さく笑った。
「そんなに緊張しなくてもいいですよ」
琴川玲奈の声は、変装の奥でも分かるほど柔らかかった。
「い、いや……その……すみません」
思わず頭を下げてしまう遼馬。
「謝らなくてもいいです」
玲奈は歩くペースを、ほんの少しだけ遼馬に合わせた。
「皆上さんは……光銃戦隊ライレンジャー、見ていてくださってたんですよね?」
「勿論です!」
反射的に声が弾む。
「毎週欠かさずリアルタイムで見てましたし!
もちろん、全話録画保存もしてます!」
「うふふ……ありがとうございます」
サングラスの奥で、玲奈の目が細くなる。
「皆上さんって、レンジャーシリーズに限らず、特撮ヒーロー全般がお好きなんですよね。
だからてっきり、ライレンジャーの撮影の裏話とか、いっぱい聞いてくるんじゃないかと思ってました」
遼馬は、はっとして言葉に詰まる。
「そ、それは……正直、聞きたいですけど……」
一拍、置いて。
「でも……琴川さんにとっては、ご迷惑かなって……」
今はあくまで任務中。
自分の趣味で距離を縮めるのは、プロとして違う――そう思っていた。
玲奈は少し驚いたように目を瞬かせてから、やわらかく微笑んだ。
「……“琴川さん”じゃなくて、玲奈でいいです」
「え?」
「私も、皆上さんのこと、下の名前で……遼馬さんって呼んでいいですか?」
「そ、それは……構いませんけど……」
動揺しながら頷く遼馬。
「い、いいんッスか……?」
「これから、しばらくご一緒することになるんですから」
玲奈は前を見ながら、さりげなく言った。
「もう少し、気楽にいきましょう?」
そして、通りの角に見える小さな喫茶店を指差す。
「ちょうど、あそこに喫茶店がありますよね。
少し休憩しませんか?」
一瞬、間を置いて。
「……よければ、そこでライレンジャーの撮影秘話、ちょっとだけお話しします」
「マジっすか!?」
遼馬の目が、一気に輝いた。
「ありがとうございます!」
まるで少年のような表情で、玲奈と並んで喫茶店の扉を押す。
チリン、と軽いベルの音が鳴り、二人は店内へと消えていった。
◆
その少し後ろ。
通りの反対側の電柱の陰から、二人の後ろ姿を見送る影があった。

一緒に歩く遼馬と玲奈の二人を見つめながら、早弥香は、無意識のうちに唇を噛みしめていた。
「…………」
言葉にならない沈黙。
その空気を、基樹が軽い調子で破る。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって」
早弥香の横顔をちらりと見て、肩をすくめる。
「“特撮ファンは紳士たれ!”っていうのが、アイツの常日頃の持論なのは、綾瀬さんも知ってるだろ?」
冗談めかした口調で続ける。
「玲奈ちゃんに手を出したりなんか、絶対しないよ」
「……そんなこと……分かってるったら……」
早弥香は、視線を逸らしたまま小さく答えた。
分かっている。
理屈では。
でも――。
「あ、ほら」
基樹が喫茶店の看板を指差す。
「二人とも、もう中に入ったみたいだ」
にっと笑って言った。
「俺たちも、入ろうぜ」
「……うん」
早弥香は小さく頷き、二人で並んで喫茶店の扉へ向かう。
チリン。
同じ音を鳴らしながら、
それぞれ違う想いを胸に、四人は同じ空間へと入っていった。
喫茶店にて
喫茶店の奥、窓際のテーブル。
キャップとサングラスを外した琴川玲奈が、ストロー付きのグラスを指先でくるくる回しながら、楽しそうに話していた。
「ライブルー役だった織市くんとか、画面ではクールなのに、現場だとすごく人懐っこくて……小道具の銃、毎回ちゃんと磨いてから本番に入るんですよ♪」
「へぇ~、そうなんだ!」
皆上遼馬は、身を乗り出す勢いで頷く。
テレビの中の“ヒーロー”しか知らなかった彼にとって、現場の裏話は宝箱のようだった。
「あと、レッド役の市塚さんは――」
玲奈が声をひそめ、ちょっといたずらっぽく笑う。
「本番前になると、必ず一人で小さく発声練習してるんです。
『いくぞ……よし……』って」
「うわ……それ、めちゃくちゃ想像できる……!」
遼馬は思わず吹き出しそうになりながら、両手で口元を押さえた。
楽しそうに頷き合う二人。
◆
その少し離れた席。
西沢基樹と綾瀬早弥香は、まったく別の温度の空気に包まれていた。

早弥香は、メロンソーダのストローを無言で吸いながら、視線だけを鋭く飛ばしている。
まっすぐに。
遼馬と玲奈のいる方向へ。
ぎゅ、とストローが歪む。
「……」
あまりに分かりやすい殺気に、基樹が小声で声をかける。
「あ、綾瀬さん……ちょっと落ち着こうか?💦」
「………」
返事はない。
分かっている。
これは任務だ。
遼馬は護衛として、きちんと仕事をしているだけだ。
頭では、ちゃんと理解している。
それでも――
楽しそうに笑う遼馬の横顔を見るたび、胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
(……どうして、私はこんなに……)
信じているはずなのに。
信じたいのに。
そんな自分自身にも、腹が立っていた。
◆
――その時だった。
店のドアが、乱暴に開いた。
「動くな、てめえら!!」
怒鳴り声と同時に、重たい足音が床を叩く。
振り向いた瞬間、遼馬の視界に飛び込んできたのは、拳銃を握った中年の男だった。
「全員、大人しくしろ!!」
ウェイトレスの悲鳴が、店内に響く。
「きゃああっ!」
客たちが一斉に凍りつく。
男は荒い息を吐きながら、銃を振り回した。
「お前ら全員、人質だ!
今すぐサツに連絡して、逃走用の車を用意させろ!!」
近くの金融機関で強盗を働き、逃げ込んできた――
状況は、誰の目にも明らかだった。
「やれやれ…」
遼馬は、そっと椅子から立ち上がった。
そして、玲奈の方を一度だけ振り返る。
「……玲奈さん。ここを、動かないで」
「えっ……あ、はい……」
不安そうに頷く玲奈を背に、遼馬は静かに一歩、前へ出る。
「おい、オッサン」
店内の空気が、ぴしりと張り詰める。
「……な、なんだてめえは!?」
男が銃口を遼馬に向ける。
「ガキが……死にてぇのか!?」
一瞬。
引き金にかかる指が動いた、その刹那――
遼馬の身体が、弾けたように前へ出た。
床を蹴る音。
踏み込み。
腕。
ひねり。
次の瞬間、銃を持っていた男の体は、テーブルの横で無様に崩れ落ちていた。
「ぐぁっ――!?」
乾いた衝撃音。
銃が床を滑って転がる。
遼馬は男の腕を極めたまま、体重を乗せて押さえ込む。

「ち、ちくしょー!!
放せー! 放しやがれー!!」
「いい歳した大人が、ジタバタすんなよ!」
遼馬の声は低く、しかし驚くほど冷静だった。
中学、高校と積み重ねてきた鍛錬が、迷いのない動きとしてそのまま表に出ていた。
数秒後。
店内は、信じられないほどの静寂に包まれていた。
◆
「……遼馬さん……すごい……」
呆然と立ち尽くしたまま、玲奈が小さく呟く。
ついさっきまで、特撮ヒーローの話で盛り上がっていた青年が、
今は、目の前で本物の“強さ”を見せている。
遼馬は、押さえ込んだまま、ふっと小さく息を吐いた。
(……やれやれ。
変身しなくても、守れるものはあるんだよな)
誰にも聞こえない心の声とともに、彼は強盗の腕を、さらに確実に締め上げていた。
(つづく)

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