五月の空は澄み渡り、新緑が鮮やかな山々が広がる紅葉谷温泉。ここに、一軒の鄙びた旅館「桃源館」がある。琴川玲奈と椎穂亜弥、二人の仲良し女子高生は、その旅館に観光旅行で宿泊していたのだが、ふとしたことから亜弥が旅館荒らしに巻き込まれている隙に、玲奈が何者かに誘拐された。
桃源館の女将から「幽霊ヶ峰に祀られている戦国武将・風間景虎の霊廟へ向かえ」とアドバイスされた亜弥は、単身幽霊ヶ峰へと向かったのだが、そこで謎の忍者集団に捕らえられてしまった。風間党の崇める守護神への生贄に捧げられそうになった玲奈を救うため、自ら身代わりとなった亜弥の運命は!?
鷹松優姫刑事と笹南侑衣梨婦警も駆けつけ、いよいよ湯けむり誘拐紀行もクライマックス!
風間党の最期
鷹松優姫刑事率いる警官隊によってブラックマフィアの一味は逮捕され、椎穂亜弥は無事に救出された。
「大丈夫? すぐに救急車を!」
「…いえ、大丈夫です。刑事さんに温かい飲み物をもらって暖房にも当たっていたら、すぐに元気になりました♪」
「でも無理をしてはいけないわ。念の為、病院で診てもらいましょう」
「それよりも刑事さん、玲奈は? 玲奈は無事なんですか!?」
「キヒヒヒッ…お前の大事なお友達とマヌケな婦警ならここにおるぞよ!」
「――!?」
「――!!」
声のした方向に優姫と亜弥が振り返ると、そこには忍者軍団に捕らえられてしまった侑衣梨と玲奈の姿が!
「んんーっ!!んむぐぐーっ!!(すみません先輩! 不覚を取りました!)」
「んっ、んんっ…んむむーっ!!(亜弥、私に構わず逃げて!)」
「玲奈!?」
「くっ…侑衣梨、しくじったのね!」
「さあ、この二人の命が惜しかったら、そのショートカットの髪型の小娘をこちらに寄越してもらおうか!」
「分かったわ! 今からそちらに行きます! だから玲奈と婦警さんを助けてあげて!」
「ダメよ亜弥ちゃん! 要求に従ったところで、奴らが玲奈ちゃんと侑衣梨を無事に解放する保証はないわ!」
「でもこのままだと玲奈が!」
緊迫した両陣営睨み合いの膠着状態に陥ったが、ここで優姫が風間忍者たちにこう呼びかけたことで事態は動いた。
「風間党の忍者たち! よく聞きなさい! 守護神様への生贄を捧げるだなんて真っ赤な嘘! 貴女たちの頭領は捕まえた人間を密かに犯罪組織に売り飛ばして、人身売買で得られた利益を独り占めしていたのよ!」
おばばとそのごく一握りの側近以外にブラックマフィアとの繋がりを知らされていなかった末端の忍者たちは、生贄を捧げるのは一族の繁栄を祈祷する掟の為だと幼い頃から純粋に信じ込んでいたので、ここで幾人かが動揺を見せる。
「…な、何だと!?」
「おばば様、それは本当なのか!?」
「け、警察の戯言じゃ! あの女刑事の嘘に惑わされるでない!」
「証拠ならあるわ! ここに捕まえてあるブラックマフィアの連中が証人よ!」
「チッ、その女刑事の言うとおりだよッ! クソがッ…」
「ブラックマフィアの奴らめ、余計な事を言いおって!!💢💦」
おばばの目的が風間家の再興など微塵も考えておらず私利私欲によるものだったと判明し、ここに風間党忍者たちの士気は崩壊した。
風間景虎の怨霊
「くそっ、こんなところで捕まってたまるかい!」
往生際が悪く、部下たちを見捨てて自分一人だけで逃げようとする風間党のおばば。しかしその時、幽霊ヶ峰一帯に激しく突風が吹き、雷雨が降り注いだと思うと、この世の物とも思えぬ世にもおぞましい声が辺りに響いた。
「私利私欲ノタメニ、我ノ名ヲ貶メル不埒者メ、ココニ天誅ヲ下ス!!」
「ひぇぇぇッッ!! まさかあれは…景虎さまの怨霊!? あんなものはただの作り話の筈!!」
幽霊ヶ峰の夜空に浮かび上がる風間景虎の怨霊の幻影は、右手から怪光線を放つと大地震が起こり、おばばや風間党忍者たちは残らず地割れの中に呑み込まれてしまった。
「ウギャアアッ!!…お、おのれぇ~! このままで終わる風間党のおばばではないぞォォッッ!!」
負け惜しみと断末魔の悲鳴と共に地割れの中へと消えていく風間党のおばば。
「こっちまで地割れが来るわ!」
「私たちも脱出よ!」
侑衣梨と玲奈を助け出した優姫と亜弥たちは、一緒にいた警官隊と共に全員、間一髪でその場から脱出した。
エピローグ
後日、日を改めて幽霊ヶ峰に登山し、風間景虎の霊廟を参拝する玲奈、亜弥、優姫、侑衣梨の4人。結局あの後、地割れの呑まれた風間党のおばばの消息は知れないままである。
「あの時は怖かったけど、結果的に一応は私たちを助けてくれたんだもんね。きちんと御礼を言わなきゃ」
「最近の歴史学の研究では、風間景虎は必ずしも残虐な暴君とは限らなかったみたいよ。武力で領民の平和な暮らしを守った英雄だったのでは?という見方もあるそうよ。戦国時代に風間家を滅ぼした勝者側の大名が自分たちの支配の正当性を主張するために、景虎暴君説を捏造して後世に伝えたことが、現代に伝わる景虎像のイメージに影響を与えてしまったんでしょうね」
「ふ~ん、歴史って奥が深いんですねぇ先輩」
「じゃあそろそろ帰りましょうか…」
霊廟を後にする4人。そして誰もいなくなった後、霊廟の扉の奥が妖しく光っていたことは誰も知らない…。
完
コメント
優姫さんに助けられ磔地獄から解放された亜弥ちゃんだったが…ほっとしたのもつかの間、人質となった侑衣梨ちゃんと玲奈ちゃんを連れて新たな忍者軍団登場!
両者手を出せず膠着状態なところで、優姫さんの一言が事態を一転させる、
>「風間党の忍者たち! よく聞きなさい! 守護神様への生贄を捧げるだなんて真っ赤な嘘! 貴女たちの頭領は捕まえた人間を密かに犯罪組織に売り飛ばして、人身売買で得られた利益を独り占めしていたのよ!」
どうやらババアとその側近以外はその事を知らされていなかった、所謂悪い詐欺宗教団体に騙された哀れな信者どもだったその他大勢の風間党の皆さん、
そしてあっさりと自白するブラックマフィアの構成員、お前は遠山の金さんに出てくる仲間だった武士を裏切る下座の悪党か…
立場が悪くなり逃走を図るババア…だがその行く手を阻んだのは…嘘が真に…風間景虎の亡霊ご本人登場、天変地異引き連れ大暴れ!
う~んこれは本当に風間景虎の亡霊なのか…はたまたとあるお方の超科学なのか…まあここはオカルトの方が面白いかもですね!
>「ウギャアアッ!!…お、おのれぇ~! このままで終わる風間党のおばばではないぞォォッッ!!」
往生際が悪いのは良いが、もはや信用度0状態のただのババアと化したアンタが復活してどうするって言うねんって思いますが、なんかリアルで妖術とか使えそうですし、どこぞの組織の尖兵として現れそうですね。
さて事件は無事解決、風間景虎の真の人物像も知ることが出来、風間景虎の霊廟を参拝に祈りを捧げ、霊廟を後にする4人…だが…霊廟の扉が怪しく光…
これ、ホラー映画にある、思わせぶりな終わり方って奴ですね、果たしてこの後どんなことが起こるのか、色々想像してしまいますね~
風間景虎伝説…続編があるのか、そのまま綺麗にこのまま終わらせた方が良いのか、この先は管理人様次第ってことですね!
> 往生際が悪いのは良いが、もはや信用度0状態のただのババアと化したアンタが復活してどうするって言うねんって思いますが、なんかリアルで妖術とか使えそうですし、どこぞの組織の尖兵として現れそうですね。
風間党のおばばが再登場することは、多分ないでしょう(;^_^A アセアセ・・・
このまま綺麗にこのまま終わらせた方が良いというのが、管理人の意見です。
何となくおばばの御声を曽我町子大御大の御声で脳内再生しておりました・・・おばばというから、ちょっと魔〇キバのイメージもあったり( ̄ー ̄)
風間景虎公に限らず、時代と共に評価やイメージが変わるお方も増えてきたように思えます。
> 風間景虎公に限らず、時代と共に評価やイメージが変わるお方も増えてきたように思えます。
特に織田さんとか坂本さんとか……💦
結局風間党のオババ私利私欲のろくでなしだったわけで、それをアッサリ認めてしまったブラックマフィアもポンコツの極みですね。そしてそこへ風間景虎の本物の怨霊が…。その正体につきましては旅鴉様に同意させていただこうかと思います。
>何となくおばばの御声を曽我町子大御大の御声で脳内再生しておりました・・・
崩れ落ちた地下には地底人の帝国があってオババはその配下にと…、なるとまんまブラックマグマの傘下に入ったへドリアン女王様ですね。
>風間景虎公に限らず、時代と共に評価やイメージが変わるお方も増えてきたように思えます。
昨今の大河ドラマではそれに即した描写をされる方が結構いらっしゃいまして今川義元公はその典型と言えるでしょうね。
> 昨今の大河ドラマではそれに即した描写をされる方が結構いらっしゃいまして今川義元公はその典型と言えるでしょうね。
ドラマで描かれる歴史上人物のイメージと歴史学で明らかになった史実がかけ離れているのは、大抵は司〇遼太郎氏のせい(;^_^A アセアセ・・・