疑似誘拐体験
「誘拐ごっこサービス?」
その日、鷺島国際大学報道部の部室で、漆崎亜沙美は取材班リーダーである桜庭陽平から一日体験レポの話を持ち掛けられた。陽平の話によると、欧州某国で流行っていた「誘拐サービス」がついに満を持して日本にも進出したのだという。勿論本当に誘拐するのではない。バンジージャンプやスカイダイビングに飽き、更なるスリリングな体験を求める上流セレブ階級を主な顧客層として、アクション映画の展開のような誘拐された人質ごっこを体験できるというのだ。
「へぇ~、何だか面白そう♪」
好奇心旺盛な亜沙美は、二つ返事で体験レポを引き受けるのだった。
取材当日
そして取材当日、誘拐サービス業者に事前にアポを取って直接取材に向かった亜沙美とカメラマンの小寺洸介は、その業者が入っているオフィスビルの前に来ていた。
「皆さぁ~ん!こんにちわ! こちらは鷺島国際大学報道部レポーターの漆崎亜沙美です♪ 本日はついに日本にも進出したという巷で話題の誘拐ごっこサービスを突撃取材して来たいと思います。誘拐と言われるとちょっと怖いですが、今日は皆さんに最新のトレンド情報をお知らせするため、身体を張って囚われのヒロインを体験してきますのでお楽しみに!」
ここで一旦カットし、冒頭のニュース映像の撮影が終わった洸介と亜沙美。ここから先は亜沙美一人で隠しカメラ(と言っても、事前に業者から了承は取り付けてあるのだが…)を持ち込んで、事務所の中で単身で取材に挑むことになる。
「大丈夫?漆崎さん。もし心配なら俺も一緒について行こうか?」
「ううん、大丈夫大丈夫♪ 全然不安になるようなことなんてないから。でも、あたしのこと心配してくれてるんだよね? ありがとう洸くん💓」
亜沙美の身を案じる洸介を外に残し、彼女は誘拐サービス業者の事務所の中へと恐る恐る足を踏み入れた。しかしそこは思ったよりも清潔で真っ当に見える普通の会社のオフィスだった。そこで亜沙美は、親切丁寧な対応をしてくれる担当者と誘拐ごっこの内容について綿密に打ち合わせる。
最も基本的なコースは、猿ぐつわや手足を縛られたりなどして拘束され、4時間監禁されるコースで、料金は約〇万円。オプションで監禁場所からの脱出、ヘリコプターでの追跡などもあり、オーダーメイドで自分好みの誘拐劇を創りあげることができるという。最大監禁時間は11時間。
最大限のスリルを味わうため、業者と依頼人との間で一旦シナリオが決定すれば、誘拐犯がいつ襲ってくるのか、依頼人には全くわからないという風にすることもできるのだが、それだと学業や日常生活その他にいろいろと支障が生じるので、亜沙美は自分が誘拐される日時は予め指定しておくことにした。最後に彼女は「この誘拐は自由意思に基づいた遊びであり、本当の拉致監禁ではありません」という旨の誓約書にサインする。そして決行の日は、次の日曜日と決まった。
決行の日
その日の早朝、亜沙美を含めた報道部4人のメンバーは、決行予定場所近くの遊歩道入口に集合していた。
「あぁ~、ごっことはいえ、いざとなると何かドキドキするなぁ…!」
「亜沙美ちゃんが段取り通り車に乗せられたら、僕たちもミニバンに乗ってすぐに追いかけるから安心してくれ」
「うん、わかった♪ みんなもサポートしっかりお願いするね♪」
こうして亜沙美は、一人で遊歩道を奥の方へと歩いて行った。まだ早朝なので他に歩いている人は少ない。もし万一亜沙美が連れ去られる瞬間を誰かに目撃され、本物の誘拐だと勘違いされでもしたら事態が面倒になるので、まだ外を出歩く人が少ないのは好都合である。そして洸介、陽平、優の3人もすぐに近くの駐車場に向かい、報道部のミニバンに乗車していつでも亜沙美を追尾できるようにスタンバイする。
「動くな!」
「――!?💦」
しばらくの間、遊歩道を適当に歩いて散歩していた亜沙美は、突然背後から男の声がして、何者かに拳銃のようなもの(勿論玩具である)を突きつけられた。
「…だ、誰ッ!?」
「騒ぐな。命が惜しかったら、そのまま駐車場に向かって歩け。いいな?」
「分かったわ。言うとおりにするから…どうか、ひどいことだけはしないで……」
事前の打ち合わせ通り駐車場に連れて行かれた亜沙美は、ワゴン車に乗せられてそのまま出発した。それを見ていた報道部の車も後をついて行くように出発する。
「んっ、んんーっ!! んんんーっ!!」
車内で縛られて猿轡を口に噛まされた亜沙美は、後部座席で横に寝かされてそれっぽく必死にもがいている。果たして彼女はこれからどこへ連れて行かれようとしているのであろうか?
つづく。
コメント
https://media.yucasee.jp/2783/
これですね、最初このサービスがあるって聞いた時驚きましたけど、意外に誘拐されたいって願望持ってる人って意外といるみたいですね。
今回それを亜沙美ちゃんが体験したみたいですが(金持ってんな~)、はたしてこれ…誘拐サービスなのか、それとも…嘘が真にならなきゃいいですが…
> これですね、最初このサービスがあるって聞いた時驚きましたけど、意外に誘拐されたいって願望持ってる人って意外といるみたいですね。
管理人も「あと〇歳若くて〇kg痩せていたら、有り金を叩いて申し込んだのに!」と何度思ったことでしょうか…。
どうにも、途中から本物の誘拐になりそうな悪寒(期待感)がしてたまらんのです🥶
管理人もストーリーの最後はどうしようかと迷っていたのですが、やはりご覧の皆様は揃ってそのような結末をお望みなのですね?
分かりました! それではシナリオはその方向で進めようと思います。
次回のエピソードでいろいろとフラグ(縄が思ったよりきつく縛られていたり、監禁中の様子を録画している筈のカメラが見当たらなかったりと…)を仕込んでおきました。
亜沙美ちゃんが「これは実は本当の誘拐だった!?」と気づくのは、果たしていつ頃のタイミングになるのかご期待ください。
なかなか面白そうなサービスですね。業者としては合法的にかわいい女の子を縛って愛でることができて眼福?まあおっさんが申し込んでくる可能性も当然ありますが(汗。ところで他の方々も述べておられますが、このまま最後までサービスで終わるでしょうか?
> まあおっさんが申し込んでくる可能性も当然ありますが(汗。
実際のフランスでの誘拐サービスでは、主なメイン対象は会社経営者とかのオッサンだそうです。
https://media.yucasee.jp/2783/
2010年頃のニュースですので、今もあるんですかねぇ…。
誘拐サービスについては、先代ブログで書いた2012年当時はまだサイトが健在でした。
トップページで、口にガムテープ貼られた金髪のお姉さんがアップで映ってる画像があったと記憶しているのですが、あとは外国語なのでちんぷんかんぷんでしたね。
さすがに記事を書いてから12年も経っているので、もう消滅してるようですが。
12年……ひええ、月日が流れるのは早いものです。
http://bouhachimon.blog90.fc2.com/blog-entry-67.html
別にいらないでしょうけど、その記事のURLです。
まあ、コロナ禍とかありましたから、こういうのはできなくなったのでしょうね。
絵里香さんの元になった絵は、この記事でアップしたんでしたっけ。
聞いたところによると、サービスで誘拐されて捕縛、監禁されて拷問にかけられて追いつめられたあげく、命からがら脱出するまでの過程を動画で撮影し、ドキュメンタリー風の映像作品に仕立ててくれるというサービスもあったとかなんとか。
……自分で自分のピンチシーンを見てハアハアするとか、えげつねえ性癖してんなオイ!
と、アレな要素満載だったので、ネタとして扱うのが難しいなあという感じでしたね。
> 12年……ひええ、月日が流れるのは早いものです。
もうあのニュースから12年も経つのですね。
年月が経つのは本当に早い物でございます(*´ノ旦`*)ズズー
あのニュースを目にした時は「もし自分が顧客だったら、こんなストーリーで進めるのに♪」といろいろ自由に妄想して楽しんだものでございます。