サバゲ―サークル「DRYADES」の新規加入メンバーである上江洲紗樹は、夜に自宅近くで変質者に襲われたところを星彩のルミナに救われた。それ以来、紗樹はルミナの熱烈なファンとなる。
しかしその後、女子大生を狙った新たな拉致監禁事件が発生。アスカロン財団の加藤段十郎も喫茶店Lilyに姿を現し、事態は俄かに動き出す…。
※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。
忌まわしい記憶

夏の陽射しが、公園の芝生をやわらかく照らしていた。
木立の間を抜ける風が心地よく、鳥のさえずりが遠くで揺れている。
その一角で、鶴牧菜花はフルートを構えていた。
唇にそっと当て、息を流すと、澄んだ音色が空気に溶けていく。
――少し不安定で、それでも真っ直ぐな旋律。
ベンチに腰掛けていた鳳凰院優は、目を細めてその音に耳を傾けていた。
やがて演奏が終わると、菜花はフルートを下ろし、少し照れたように振り返る。
「ごめんね、練習に付き合わせちゃって。どうだったかな? 私の演奏……」
「うん、普段と変わらずとってもよかったよ」
優は微笑んで、はっきりと言った。
「私、菜花のフルートの演奏、好きだな」
「うふふ……ありがとう、優♪」
その笑顔を見て、優は内心で胸を撫で下ろした。
――数日前、あの事件から救出された直後の菜花は、音を聞くだけでも震えていた。
それが今は、こうして自分から音楽を奏でている。
(少しずつ、戻ってきてる……)
そう思った、その時だった。
背後から、足音が近づいてくる。
優が振り向いた瞬間、目を見開いた。
「あっ、あなたたちは……!?」
スーツを着崩した中年の男。
そして、その隣に立つ、銀髪のロングヘアを風になびかせた外国人女性。
「……ん?」
男が目を細める。
「誰かと思えば、霧深温泉の時の女子大生か?」
「お久しぶりです」
銀髪の女性が、穏やかに微笑んだ。
「確か……鳳凰院優さん、でしたよね? 奇遇ですね」
「加藤段十郎…さん…」
優は息を呑む。
――アスカロン財団。
特務エージェント《ライトシーカー》。
かつて、報道部の取材で巻き込まれた事件で、命を救ってくれた人物たちだった。
「優、その人たちは……お知り合い?」
不安そうに、菜花が尋ねる。
「ええ。以前に霧深温泉に報道部で取材に行った時にね――」
そう優が言いかけたその時、段十郎は早速本題に入った。
「鶴牧菜花さんだな?」
鋭い視線を向ける。
「アスカロン財団の者として、数日前の事件について聞きたいことがある」
「加藤さん!」
優が一歩前に出る。
「菜花は、その…まだ事件で受けた心の傷が――」
「それは分かっています」
銀髪の女性――リネア=フリーデン=ヴァイサーが、静かに遮った。
「……あの事件のことなら、警察に全部話しました」
菜花の声は、わずかに硬かった。
「誰だか知りませんけど、帰ってください」
「それでも聞かなきゃいけないことが、こちらにもあるんでな」
段十郎は譲らない。
優は一瞬迷い、それから菜花の手をそっと取った。
「菜花……この人たちなら、信用できるわ。
思い出せることだけでいい。無理なら、すぐ止めるから」
「……まあ、優がそう言うなら」
菜花は小さく頷いた。
「リネア」
「はい」
リネアは一歩前に出て、菜花の前に立つ。
その銀の瞳が、優しく細められた。
「菜花さん。気持ちを楽にして……私の両目を、よく見てください」
その声には、不思議な温度があった。
瞳の奥に、淡い光が宿る。
――魅了(チャーム)。
生まれながらに宿す、心を解きほぐす魔力。
菜花の視界が、ゆっくりと霞んでいく。
だが――
「……っ!」
次の瞬間。
菜花の表情が、一気に凍りついた。
「……い、いやァァッッ!!」
「菜花!?」
優が駆け寄る。
「菜花さん、落ち着いて!」
リネアの声が震える。

だが、菜花は耳を塞ぎ、しゃがみ込んだ。
「どうして……どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないの!?」
「暗い……寒い……誰か……誰か助けて!!」
引きずり込まれる感覚。
鎖の音。
息が詰まる恐怖。
――封じていた記憶が、一気に噴き出していた。
「もういいです!」
優が叫ぶ。
「加藤さん、リネアさん! これ以上は無理です!!」
「……チッ」
段十郎は舌打ちした。
「ここまでか。リネア」
「はい……」
リネアは静かに魅了を解いた。
菜花の呼吸は、少しずつ落ち着いていく。
それでも、肩を震わせ、しくしくと泣き続けていた。

「菜花……今日はもう帰ろ?」
優が抱き寄せる。
「……うん……」
二人は寄り添いながら、公園を後にした。
それを、段十郎とリネアは黙って見送る。
「……正直に言わせてもらいます」
リネアがぽつりと呟く。
「私は、菜花さんに魅了の力を使うのは反対でした。
被害者の傷口に、塩を塗るような真似をするなんて……」
「分かってる」
段十郎は空を仰いだ。
「だが、グズグズしてりゃ第二、第三の被害者が出る。
俺たちは……出来ることをやるしかねぇんだよ…」
「……それは、分かっていますが……」
その時。
「路香。そこら辺に隠れてるんだろ?」
段十郎が、突然叫んだ。
「もうそろそろ、出て来い」
次の瞬間。
――バサッ。

街路樹の高い枝から、影が飛び降りる。
軽やかに着地したのは、小学校高学年ほどの少女だった。
「わざわざ安土から呼び出されたと思ったら」
少女は肩をすくめる。
「やっと、私の出番?」
少女の名は、相模路香。アスカロン財団の息がかかった風魔の少女忍者だ。
段十郎は言った。
「それとなく鶴牧菜花をガードしてやってくれ。
また狙われないとも限らん」
「オッケー!」
路香はにっと笑う。
「任せて、ダンおじさん♪」
公園の空気は、再び穏やかさを取り戻していた。
だがその裏で、静かに――
次の闇が、蠢き始めていた。
自警団結成
翌日、鷺島国際大学のキャンパスは、昼下がりの柔らかな陽射しに包まれていた。中庭の芝生では学生たちが思い思いに腰を下ろし、談笑したり、レポートに目を通したりしている。その一角を、報道部の鳳凰院優と漆崎亜沙美が並んで歩いていた。
「それにしても、今日は人が多いねぇ。なんか平和〜って感じ」
亜沙美が伸びをしながら言うと、優は小さく頷いた。
「……そうね。こういう日常が、当たり前であってほしいわ」
そのとき、背後からはつらつとした声が飛んできた。
「優、亜沙美ちゃん!」
振り返ると、そこに立っていたのはDRYADESの羽鳥瑠璃華だった。長いポニーテールの髪を揺らし、快活な笑顔を浮かべている。
「瑠璃華?」
「羽鳥さん、こんにちは!」
挨拶もそこそこに、瑠璃華は二人の前に立ち、少し声のトーンを落とした。

「実はね、相談があるんだ。最近、鷺島市で起きてる事件あるでしょ。若い女の人ばっかり狙われてるやつ」
優の表情が、わずかに強張る。
「……ええ。嫌でも耳に入ってくるわ」
「だからさ、夜間巡回のパトロールを学生主体でやろうって話が出てるんだ。自警団みたいな感じで。少しでも自分たちの身は自分たちで守ろうって」
一瞬の沈黙のあと、亜沙美がぱっと顔を輝かせた。
「何それ面白そう!あたし賛成!」
「亜沙美ちゃん、即決だね」
瑠璃華が苦笑すると、優は腕を組んでしばらく考え込んだ。昨日の菜花の泣き顔、震える声、あのときの公園の光景が脳裏をよぎる。
「……私も賛成だわ」
その言葉に、瑠璃華は満足そうに頷いた。
「よし。じゃあ、洸介くんや陽平くんにも話、伝えといて」
「うん、分かったわ」
それからほどなくして、優と亜沙美は報道部の部室へ戻った。古びたドアを開けると、すでに小寺洸介と桜庭陽平が机を挟んで話し込んでいた。
「お疲れさま」
優の声に、二人が顔を上げる。
「ちょうどよかった。実はね――」
亜沙美が勢いよく切り出し、瑠璃華から聞いた夜間巡回パトロールの話を説明する。話を聞き終えた洸介は、腕を組んで低く唸った。
「確かに近頃、何かと物騒だからな。俺たち学生も、街の治安のために何かしないとな」
「市民に防犯を啓発することもメディアの務めだ。パトロール活動の取材も兼ねるなら、僕も賛成だな」
陽平の冷静な意見に、洸介も頷く。
「じゃあ、副部長の白鳥先輩にも声をかけておくか」
「DRYADESからは、たぶん彩人くんと章介くん辺りが参加するんだろうな」
その流れを、亜沙美が遮った。
「……ちょっとちょっとぉー!あたしたちは?」
洸介と陽平が顔を見合わせる。
「あたしたちは?って……まさか、亜沙美ちゃんたちも直接パトロールに参加するつもりじゃないだろうな?」
「いくらパトロールだからって、女の子が夜遅くに外を出歩くなんて危険だ!」
「でも!」
食い下がる優を、陽平が強い口調で制した。
「特に優ちゃん!心配なのは君だ!」
「えっ……?」
「優、お前、友達の鶴牧さんがあんな事件に巻き込まれたから、犯人を捕まえて仇を取ろうとか考えてるだろ?」
その洸介の言葉が、優の胸を刺した。抑えていた感情が、一気に噴き出す。
「当然じゃない!菜花は今でも必死に、事件の忌まわしい記憶と戦ってるのよ!大会を目指して毎日フルートの練習を頑張ってたのに、それも全部、犯人のせいでめちゃくちゃにされた!私は……私は、菜花の人生を踏みにじった犯人を絶対に許さない!」
震える声で叫ぶ優に、洸介は一歩前に出た。
「だからこそだ。今のお前は冷静さを失っている。自警団のことは俺と桜庭に任せろ。お前は夜は家でじっとしているんだ」
「何よ!小寺くんの意地悪!もう知らない!!」
涙があふれ、優は踵を返すと、そのまま部室を飛び出していった。
「お、おい優!💦」
洸介が慌てて立ち上がるが、亜沙美がその腕を掴んで止めた。
「待って、洸くん。ここはあたしが行く」
そう言い残し、亜沙美は廊下へと駆け出していく。扉の向こうに消えた二人の気配だけが、重苦しい沈黙となって部室に残された。
(つづく)

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