医学部の友人に誘われて、付き合いで著名なイラストレーター・小西李苑のサイン会が開かれている都内の大手書店にやって来た沢渡優香。友人の話によれば、普段は安土市で暮らしている小西が東京まで公の場に出向くのは非常に珍しいという。それまで特に小西の作品に興味がなかった優香であったが、ミーハーな友人から「保存用の他に見せびらかし用も欲しいから!」と頼まれ、渋々自分も小西の画集を購入してサイン会の列に並ぶ。そして優香の番がやって来た。
「き、君は僕の女神だ…!!」
「……えっ!?」
「――いや、失礼。なんでもない。はいどうぞ」
一瞬、小西が自分に見とれて何かとんでもない一言を口にしたような気がしたが、即座に小西がこれを否定したので、とりあえず優香も「きっと聞き間違いだったのだろう…」と気にしないことにしてすぐに忘れることにした。しかしこの時以来、優香は身辺に常に何者かから監視されているような気配を感じ取るようになったのである。
「彼女は僕の女神だ!最高のモデルだよ!!」
東京近郊に構えている別邸兼アトリエで、狂喜するように絶叫する小西李苑。実は彼のもう一つの顔は、超人的な力を持った怪人群レギウスによる世界征服を狙う悪の組織・魔人銃士団ゼルバベルの幹部・ピラニアレギウスである。小西には若い年齢の人間を男女問わず捕らえて、身体の自由を拘束された状態を鑑賞して楽しみ且つイラストに描くという秘密の趣味があり、次のターゲットに優香が選ばれたのだった。
すぐに配下に命じて優香のプロフィールや住所を調べ上げた小西は、早速優香の誘拐計画を練るのであった。
一方、身辺に何者かのストーキングの気配を悟った優香は、親友の錦織佳代に相談する。
「一応、光平にも話した方が…」
「それはダメ! 光平くんに余計な心配をかけたくないの」
優香は佳代にストーカーの調査と身辺警護を依頼しつつも、ボーイフレンドである牧村光平には内緒にするように口止めするのであった。
そしてそれから数日後のある日、優香は突然道端で不審な男に襲われ、車の中へと強引に連れ込まれそうになる!!
「さあ、俺と一緒に来るんだ!!」
「ムぅグっ、グムムぅっ!!」
危機に陥る優香だったが、常に彼女を陰ながら見守っていた佳代がすぐに飛び出て躍りかかる。
「ちょっとそこのアンタ!! 何やってるの!?」
佳代は周囲にも聞こえるよう大声で叫びながら、男に飛び膝蹴りをお見舞いする。男が昏倒した隙に逃げ出した優香を、すかさず佳代が庇って守るように男の前に立ちふさがる。頭がくらくらしながらも体勢を立て直して立ち上がった男は――
「畜生ッ、舐めやがってぇッッ!!!!」
逆上した男はカラス型のクロウレギウスへと変身した!
くノ一として武術の心得がある佳代でも、人外のレギウス相手に自分一人だけでは分が悪い。
「レギウスだったのね!? 優香、コイツはあたしが引き付けるから、その隙に出来るだけ遠くに逃げて!」
「でも、それじゃあ佳代が!」
「くっくっく、どうしたお嬢ちゃん、さっきまでの威勢はよォ?」
だがそこへ騒ぎを聞きつけた天凰輝シグフェルがマシンガルーダに乗って駆けつけ、難なくクロウレギウスを立ち合いの末撃退するのであった。シグフェルの攻撃に堪らず遠方へと飛び去り退散するクロウレギウス。
「どうしてそんな大事なことを俺に話さなかったんだ!」
「ごめん。やっぱり光平には伝えておくべきだった…」
「佳代を責めないで! 悪いのは無理に口止めした私なの! 光平くんに余計な心配かけたくなかったから…」
シグフェルの姿から変身解除して人間体へと戻った牧村光平は、事情を聴き案の定自分に内緒にしていたことを怒ったが、しかし怒ってばかりいても仕方がないので、すぐに優香のための安全策を練ることにした。
「それで優香、一体いつから誰かに見張られているような気配を感じるようになったんだ?」
「2週間くらい前からかな…? でも何がきっかけだったのか、全く見当もつかないの…」
「ともかく、これからは佳代ちゃんだけじゃなく俺も一緒になってガードする。お前にもしものことがあったら…俺は」
「うん、ありがと…。ごめんね、光平くん」
一方、その頃…。
小西李苑の元へと逃げ帰ったクロウレギウスは――
「申し訳ありません、小西さん! 何卒今一度のチャンスを!」
「まあ待ちなって。随分と都合よく正義の味方のシグフェルが現れたもんだねぇ。どうやらもう少し愛しの優香ちゃんの周辺を洗ってみる必要があるみたいだね…」( ̄ー ̄)ニヤリ
優香の誘拐をまだ諦めていない小西。果たして次はいかなる策を弄するつもりか?
そして光平は優香を守り切ることが出来るのか!?
つづく。
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