遥か遠い未来、核戦争で人類の文明が崩壊した地球では、人間に取って代わった猿族、狼族、蜥蜴族の3つの種族が世界の覇権を巡って争っていた。そんな時代にひょんなことからタイムスリップして迷い込んでしまった平凡な普通の高校生、夏幹時生と広田真衣の二人は、猿族や蜥蜴族から追われていたところを狼族に助けられた。そして狼族から人間の生き残りがいるという『死の谷』について教えられた時生と真衣は、元の時代に帰る手掛かりを求めて死の谷へと向かったのだが、そこで二人は核ミサイルを神と崇める謎の集団に捕らえられてしまった。
時生よ、真衣を救え!
監視の隙を突いて自力で牢屋から抜け出した時生は、礼拝所のような場所を見つけ、そこでご神体として祀られている核弾頭ロケットに祈りを捧げている謎の巫女を発見する!
「…お前、もしかして真衣?……真衣なのか!?」
「誰じゃお前は? わらわはお前など知らぬ! 今は大事な祈りの最中じゃ。邪魔をするでない」
「真衣、しっかりしろ! 俺のことを忘れちまったのかよ!」
時生は真衣にかけられた催眠術を解こうと、自分の感情を激しくぶつけて説得を始める。獣人の里での狼族との交流の思い出を繰り返し聞かせ、彼女の感情を揺さぶる。最初は無反応だった真衣も、次第に時生の言葉に反応し始め、洗脳の影響が薄れていった。
「…時生…時生なの!? 何か悪い夢を見てたみたい」
「よかった。正気に戻ったんだな?」
「そうだ!! 大変よ!! あの人たち、今にも核ミサイルを発射させて獣人の里を焼け野原にするつもりよ!」
「それは本当か!?」
さらば、獣人たちの地球!
一方その頃、勇者シブードに率いられた狼族の少数精鋭部隊は、死の谷の神殿を制圧していた。しかし人類の残党は最後の悪足搔きで、核ミサイルの発射システムを作動させてしまった。
「キヒヒヒッ…これでもう発射のカウントダウンは誰にも止められない! 神聖なる地球をケダモノどもに渡すくらいなら、いっそ死の星にしてくれるわ! ギャハハハww ……ぐぶっ」
狂気の笑いを上げながら息を引き取る人類残党のリーダー。このままではあと数分で地球上の大半は放射能で汚染され、生き物の棲めない星になってしまう。
「時生、真衣、奥に奴らが使っていたタイムマシンがある。今のうちにこの時代から逃げろ。そして元いたお前たちの世界に帰るんだ」
「そんな! 狼族のみんなを見捨てて行くなんてできないわ!」
「同感だぜ。俺たちを見損なわないでくれ」
「いいかよく聞け。我々狼族は母なる大地と運命を共にする覚悟は常に出来ている。だがお前たちには元の世界に戻れば愛する家族や友人たちが待っているだろう。迷っている暇はないぞ! すぐに元の時代に帰るんだ!」
シブードに説得され、タイムマシンで元の世界へと帰ることにした時生と真衣――と見せかけて、核弾頭ロケットの操縦席へと乗り込んだ二人は手動運転でロケットを安全な大気圏外へ誘導することに。真衣が人類残党に洗脳された時に、ロケットの操縦方法も催眠学習で理解させられていたのだ。
「ごめんな真衣、本来ならこの仕事は俺一人でやるべきだけど、お前がいないと操縦方法がさっぱり分からないからな」
「いいのよ別に、気にしないで♪ 狼族のみんなを守るためだもん。むしろ私一人を置いて行ったりしたら、それこそ怒るわよ! それに人類の不始末の責任は、私たち人間がしっかり取らないとね」
こうして大気圏外へと誘導された核弾頭を積んだロケットは、時生と真衣と一緒に木っ端みじんに爆発した。こうして地球は救われた。夏幹時生と広田真衣の二人の人間の名は、狼族によって地球を守った勇者として永遠ら語り継がれることであろう。
現代に帰還
「コラッ! 夏幹! 起きんか!」
「……あれっ? ここはどこだ? 核ミサイルは? 狼族のみんなは!?」
「まだ寝ぼけているのか。やれやれ……しかし居眠り常習犯の夏幹だけでなく、成績優秀な広田まで居眠りとは珍しいな。まあいい、二人とも廊下に立ってなさい!」
気がつくと、時生と真衣は学校の教室にいた。担任の教師から居眠りの罰として廊下に立っているように言い渡された二人は、まだ頭の中が混乱しているようだ。果たして未来へのタイムスリップの出来事は全て夢だったのか? それとも現実であり人類への警告だったのか? それは皆さんのご想像にお任せします。
END
コメント
洗脳されてなんだか不気味な感じになった真衣ちゃん、喋り方もババアになり髪の色も変わってもはや別人…未来の洗脳こええ…
時生くんの真摯な説得により、洗脳が解けた真衣ちゃん、自分としては洗脳された真衣ちゃんにボコボコにされボロボロになりながら最後に口づけで真衣ちゃんの洗脳を解く時生くんってのも見てみたかった気がしますね。
そしてとうとう追い詰められた未来人が最後っ屁で核ミサイルを発射…もうダメだ…おしまいだぁ…
時生くんと真衣ちゃんは未来人達が残したタイムマシーンで何とか過去に戻る事が出来そうで、2人は無事に…って、なんと、核弾頭ロケットの操縦席へと乗り込み、手動運転でロケットを安全な大気圏外へ…
そして2人はお星さまに…2人の尊い犠牲の元母なる地球は守られたのであった…って、目覚めるとそこは学校の教室…まあここは綺麗に夢オチでまとめた方が良いかもですね…
でも、今時廊下に立たせるのは…下手すると訴えられるよ先生…
> 洗脳されてなんだか不気味な感じになった真衣ちゃん、喋り方もババアになり髪の色も変わってもはや別人…未来の洗脳こええ…
以前の鉢嶺百合子の占い師変装バージョンのボツ絵をそのまま流用しました。髪の毛の色が違っていたのはカツラを被らされていたのか? それとも旅鴉様も仰る通り洗脳の影響によるものか? それらはご想像にお任せします。
> 時生くんの真摯な説得により、洗脳が解けた真衣ちゃん、自分としては洗脳された真衣ちゃんにボコボコにされボロボロになりながら最後に口づけで真衣ちゃんの洗脳を解く時生くんってのも見てみたかった気がしますね。
「キスをしてヒロインの洗脳を解く」はまさに王道中の王道展開ですが、少なくともこのストーリー中での時生と真衣はまだそこまで仲が進展している訳でもなさそうだったので、今回はお預けとしました。
> でも、今時廊下に立たせるのは…下手すると訴えられるよ先生…
このシーンを書いた管理人の年齢がバレてしまいそうです(;^_^A アセアセ・・・