検非違使秘密任務禄　その六

来島陽依の誕生日パーティーを翌日に控え、その陽依と仲良くテニスを楽しんでいた孝森祐宜と椿姫絢那。だが、絢那が陽依と間違えられて何者かにテニスコートから誘拐された！
身代金の運搬役を任された祐宜は廃工場で誘拐犯と対峙するが、その場に関係者全員を口封じしようとする来島士門の放った私兵が迫っていた。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

偽報告

深夜の来島家・別荘。煌々と照らされた書斎では、豪奢な調度の中で、来島士門が深々と肘掛け椅子にもたれかかり、バーボンのグラスをくるくると回していた。扉の前に立つのは、全身黒の戦闘服に身を包んだ男――廃工場へと送り込まれた私兵部隊の隊長である。

「で？」士門はグラスを傾けながら、まるで退屈な小噺でも聞くような口調で言った。「報告を聞こうか」

「はい。誘拐犯の野田武志、並びに検非違使の椿姫絢那と孝森祐宜、三名全員を始末しました」

「ふむ。バカな誘拐犯共々、検非違使の二人もきちんと始末したのだな？」

「はい」隊長は胸を張って答える。「死体はすでに重りをつけ、大阪湾の底に沈めました。発見される可能性は極めて低いかと」

「……なるほど」士門はグラスを口に運び、くいと飲み干すと、ふっと笑った。「ご苦労だった。下がっていい」

「ハッ！」隊長は敬礼すると、無言で部屋を後にした。

廊下を静かに歩き、来島邸の広大な敷地を抜け、外の植え込みの影まで来ると、彼は立ち止まった。辺りに人気がないことを念入りに確かめると、目を閉じ、深く息を吸う。

その瞬間、彼の体がふわりと霞んだ。黒い戦闘服の肉体が霧散するようにほどけ、代わりに現れたのは、狐耳をピンと立てた小柄な少女の姿。鮮やかな赤と青のオッドアイが夜に浮かび、腰まで届くもふもふの尻尾がゆらりと揺れた。

「ふふっ、上手く行ったコン♪」

傭兵隊長に化けていたのは、椿姫絢那の式神にして忠実なしもべ――楓子。

その小さな胸を誇らしげに張り、ケモ耳をぴこぴこと動かす楓子は、くるりと身を翻すと、ぱたぱたと足音を響かせながら茂みの中を駆けていく。

「絢那～！祐宜～！作戦成功コンよ～っ！」

その姿は、瞬く間に雌の子狐へと変じた。ふさふさとした尻尾を揺らし、足取りは軽快。自らの化け術で見事に来島士門を欺き、敵のど真ん中から無傷で帰還を果たした楓子は、今まさに主たちの元へと凱旋しようとしていた。

その小さな体のどこに、これほどの知略と忠誠心が詰まっているのか――それを知る者は、まだごくわずかだった。

新たな魔の手

翌朝、来島家の別荘の奥まった部屋。高級な家具に囲まれた静謐な空間で、来島陽依はドレッサーの前に座ったまま、窓の外に視線を向けていた。

「お嬢様、会場への出発のお時間も近づいております。そろそろ衣服をお召し変え頂きませんと…」

背後から柔らかく声をかけたのは、来島家のメイド――いや、正体を隠して潜入中のアスカロン財団エージェント、三刀谷真玲である。

陽依は鏡越しに彼女を見つめ、首を横に振った。

「ごめんなさい。もうしばらく一人にしておいて…」

真玲は一言も返さず、静かに陽依の背中に向けて一礼すると、音もなく部屋を後にした。

絢那の消息はいまだ不明。そして父・士門からも何の説明もないまま、予定通り誕生日パーティーは強行される。陽依にとって、いまは華やかなドレスを身にまとう気分ではなかったのだ。

静寂。重く沈んだ時間が流れていた。

だが――。

「カチャリ」とドアの開く微かな音がした。

「しつこいわね！しばらく一人にしておいてって言ってるでしょ！」

イライラとした声をあげて振り返る。だが、そこに立っていたのは真玲ではなかった。

「……って、あ、あなたは誰！？」

見知らぬ若い男が無言で近づいてきた。次の瞬間、彼は懐から取り出したハンカチを陽依の口元に押し当てる。クロロホルム――。

「んッ！？んんーっ！！💦」

陽依の体から力が抜け、彼女は床に崩れ落ちた。

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同じ頃、別荘内の書斎。重厚な机の向こうで、来島士門は煙草をくゆらせながら満足げに笑っていた。目の前には忠実な秘書が控えている。

「例の投資詐欺に関わった者の口は、これで全て封じた。過去のスキャンダルが表沙汰になることはない。フハハハハ！」

不敵な笑いが響く部屋。その時、秘書がふと眉をひそめた。

「先生、しばらくお待ちを……」

鋭敏な嗅覚で、ドアの向こうに人の気配を察知した秘書は、無言で音もなくドアへと歩み寄り、一気に開け放った。

そこにいたのは――メイドの三刀谷真玲だった。

秘書は即座に彼女の腕を捉え、腰に差していた銃を引き抜いて彼女に突きつける。

「とうとう尻尾を見せたな。アスカロン財団の密偵！」

士門は椅子に座ったまま薄笑いを浮かべる。

「馬鹿な奴だ。お前の正体に気づいていないとでも思っていたのか？」

「……っ！」

彼女は何も言い返さず、歯を食いしばって黙っていた。詰めの甘さを自ら認めるように。

「しばらく大人しくしていてもらおうか！」

銃口を近づけられ、万策尽きたかに見える真玲。しかし、その目はまだあきらめていなかった。

（翠琳、あとは頼んだわよ…！）

――そして、その頃。

陽依の意識を失った身体は、別荘の裏口から外へと運び出されていた。謎の男は車の後部座席に陽依を押し込み、静かにドアを閉める。そして運転席に乗り込み、エンジンをかけると同時に車を急発進させた。

だが――その光景を、森の陰からじっと見つめる一人の女性エージェントがいた。

「……やっぱり。祐宜と絢那が睨んだ通り」

風に靡く黒髪、冷静な眼差し。三刀谷真玲の相棒、周翠琳だった。

携帯端末を片手に、彼女は一言だけ呟く。

「陽依さん、必ず助け出す――。」

そして、足音も立てずにその車を追い、森の中へと駆け出した。

（つづく）

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