新メンバー加入編　前編

依頼

鷺島国際大学の報道部に、珍しく同じ大学の学生から調査依頼が待ちこまれた。依頼主は同大芸能音楽学部ダンス＆ヴォーカル学科１年生の漆崎亜沙美。彼女の話によると、怪しい芸能事務所のうまい話に乗せられた友達を助けてほしいのだという。

「友達の悠里が”必ずデビューさせてやる”って約束で芸能事務所にスカウトされたんだけど、高額なレッスン料を毎月請求されて困ってるみたいなんだ…。気になってネットで調べてみたら、その芸能事務所ってブラック企業って他にもいろいろと黒い噂があるみたいで…」
「はは～ん、これは典型的なスカウト詐欺だな」
「高額なレッスン料だけ巻き上げて、デビューさせてもらうはずだった時期にはその事務所はオフィス事どろんして消えているって寸法さ」
「お願い！ アタシがその事務所から離れるように説得しても、悠里は全く聞く耳を持たなくて…！ どうか動かぬ証拠を押さえて悠里の目を覚まさせて！」

悪徳芸能事務所のカモにされているという亜沙美の友達・熊川悠里を救うため、報道部の小寺洸介と桜庭陽平は24時間交代でその芸能事務所を張ることにした。

亜沙美の危機

「はい、差し入れよ♪」
「おー、サンキュー！」

悪徳芸能事務所の入っているビルの向かいの雑居ビルの屋上を借りて、小さいテントを張って監視を続けている小寺洸介。そこに鳳凰院優がアンパンと牛乳の差し入れにやって来た。

「どう？ 対象の尻尾は掴めそう？」
「いや、まだだ。さすが詐欺集団だけあって、そう簡単に隙は見せてくれそうにないぜ」
「漆崎さんのお友達、必ず助けてあげてね」
「ああ、任せとけって！ ……うん？」
「どうしたの？」
「あれは漆崎さんだ！ どうしてこんなところに！？」
「何ですって！？」

報道部に悪徳芸能事務所の調査を依頼したものの、自分もじっとしていられなかった亜沙美も悪事の証拠をつかむべく単独捜査に乗り出していたのだ。しかし案の定捕まってしまう！

「おやおやお嬢さん、こんなところで何してるのかな？」
「アンタたち、あたしの友達の悠里や他の被害者から巻き上げたお金をどうしたの！？」
「チッ、今夜の内には事務所を畳んで雲隠れするつもりだったが、こうなったらしょーがないな。少しの間だけ大人しくしててもらおう」
「キャッ！ 何すんのよ！ やめてよ……んぐ、ムムムーッ！！」

亜沙美が男にクロロホルムの染みた布を口と鼻に押し当てられ、扉の中に強引に連れ込まれる様子を望遠カメラのレンズ越しに目撃していた洸介と優。

「大変！ このままじゃ漆崎さんが！」
「チッ、危険だからあれほど俺たちに任せておけって言っておいたのに！ 行くぞ優！ このままだと彼女が危ない！」
「分かったわ！」

急いで屋上から階段を駆け下りる洸介と優。

「もしもし、桜庭か！？ わりぃ、緊急事態だ！ 急いでこっちに来てくれ！」
「漆崎さん、どうか無事でいて！」

果たして亜沙美の危機に、洸介たちの救いの手は間に合うのか！？

つづく。