BRAVERS EDITION　episode.85

アスカロン財団の技術研究開発部主任研究員アルマ=ブラックバーンが、ブレイバーズの技術革新部に研修のため出向して来た。共通の話題でたちまち打ち解け、すっかりアルマと意気投合するクリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィス3世（クリス）。一方、兄の俊一からその話を聞いていた獅場楓花は、複雑な心境を抱いていた…。

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

すれ違いと涙

午後の陽が緩やかに差し込む、ブレイバーズ本部「セントリネル・ハブ」。そのガラス張りのモダンな建物のエントランスに、一人の少女の姿があった。

緊張で指先をぎゅっと握りしめながら、受付の女性に声をかける。

「す、すみません。あの、クリスくん……いえ、クリストフォロ=エヴァルド=コルティノーヴィスさんに、ちょっとお会いしたくて……」

受付の女性は、にこやかに頷いた。

「あら、獅場楓花さんですね？　本日もご訪問ありがとうございます。技術革新部のフロアにご案内いたしますね」

何度か来たことがあるため、顔パス同然だ。ブレイバーズ主幹隊員である兄・俊一の妹であり、他の中核メンバーの面々とも面識がある。だが、今日の楓花の胸の中は、いつもと違う波立ちに満ちていた。

（お兄ちゃんが言ってた……“アルマ”って人。クリスくんと仲がいいって……どんな人だろう？）

緊張と不安がない交ぜになりながら、エレベーターで上のフロアへと向かう。

そして、技術革新部の研究室前で立ち止まると、扉の向こうから、ひょいと現れたのは――

「お前が、獅場楓花か？」

現れたのは、少女だった。

明るい茶色の髪を無造作に伸ばし、腰にまで届く長さ。特徴的なアホ毛がぴょんと立っていて、金と緑のオッドアイ。まるで西洋の人形のような、白い肌に整った顔立ち。そして、白衣の下にTシャツとミニスカートというアンバランスな格好。

「……どうも、はじめまして。獅場楓花と言います」

ぎこちなく一礼すると、相手も軽く頷いた。

「アルマ=ブラックバーンだ。こちらこそ、よろしく。お前の話なら、よくクリストフォロから聞いてるぞ」

（この子が……アルマさん……）

クリスと仲が良い、と兄が言っていた少女。その姿を、楓花はじっと見つめてしまっていた。

「……ん？　私の顔に何かついてるか？」

はっとして、楓花はぶんぶんと首を横に振る。

「い、いえ、別にっ……！💦」

アルマは一瞬きょとんとした顔を見せたが、すぐに肩をすくめて言った。

「クリストフォロは今ちょっと手が離せないんだ。悪いな」

「どうかお構いなく。私も別の用事のついでに、ちょっと様子を見に立ち寄ってみただけなので……」

言い訳のような言葉が、自然と口をついた。本当は、クリスに会いたくて来た。それだけなのに。

だが、ここで楓花は、どうしても聞きたかったことを口にする。

「……あの、アルマさん。失礼かもしれませんけど……クリスくんのこと、どう思ってるんですか？」

アルマは一瞬、目をぱちくりとさせたが、すぐににっこりと笑った。

「どうって、あいつは最高だろ？」

「……え？」

「天才肌なのに努力も惜しまないし、理論に筋が通ってる。資料の整理も完璧、口調も丁寧。なのに時々抜けてて、変なとこで天然だったりする。ああいう奴って、あまりいない。私みたいなのにも真剣に向き合ってくれるしな。ま、あいつがいなかったら私、ここまでここブレイバーズに馴染めなかったと思う」

（そんなに……クリスくんのことを……）

楓花の胸が、ぎゅっと締めつけられた。

アルマの瞳は真っ直ぐで、飾り気も嘘もない。だからこそ、余計に、まっすぐ突き刺さった。

（やっぱり……この人、クリスくんのこと……好きなんだ……）

「……っ！」

涙が溢れるのを止められなかった。

アルマが驚いて「おい？」と声をかけるのも聞かず、楓花はくるりと背を向けて走り出した。

「ま、待て！💦　おい、何だアイツ！？」

ポカンとしながらその場に立ち尽くすアルマ。意味が分からず、ただ呆然とするしかなかった。

やがて彼女は小さく溜息をつき、手持ち無沙汰な様子で研究室へと戻る。

「……クリストフォロ、お前の友達が来てたぞ」

クリスはコンソールの前で集中していた。だがその名が耳に入った瞬間、ぴくりと反応した。

「すみません。今大事なところで取り込み中なんです。少しだけ待っててもらってください」

「いいのか？　お前が前に言ってた、獅場楓花っていう女の子だったんだが」

「えっ！　楓花さんが来てたんですか！？」

クリスの青い瞳が見開かれる。

「それがおかしな奴でな。話の途中で急に泣き出して、走って帰っていったんだ……」

その言葉に、クリスはハッと息を呑んだ。

――泣いた？　どうして……！

何か、大きな誤解が起きた。胸騒ぎが走る。今すぐにでも、追いかけなければ。

「すみません、アルマさん！　ここ、お願いします！」

「お、おい！？　今手が離せないんじゃなかったのか！？💦」

研究室の扉が勢いよく開き、クリスの脱ぎ捨てた白衣が宙を舞う。彼の姿はそのまま廊下の奥へと消えていった。

アルマは呆れたようにため息をつき、頭をかく。

「……やれやれ、しょうがないな。あいつ、分かりやすすぎる……」

少し笑って、彼女は静かに扉を閉めた。

――風のように駆け出した少年が向かう先には、少女の涙が落ちた場所がある。

彼の心が、今まさに、答えを出そうとしていた。

カフェテリアにて

セントリネル・ハブの南棟にあるブレイバーズ隊員専用カフェテリア。昼食時とあって、数多くの隊員たちがそれぞれのテーブルに腰を下ろし、仲間たちとの会話に花を咲かせていた。

そんな喧騒の一角、窓際のテーブルに並んで座る二人の男女がいた。獅場俊一と稲垣千秋。共に戦場を駆ける隊員同士であり、プライベートでは恋人同士でもある。

俊一はプレートの上のカツカレーをスプーンで口に運びながら、ため息交じりにつぶやいた。

「なんかさ、昨日から楓花の様子がちょっと変なんだよな」

千秋がサラダをつつく手を止め、俊一の方へ視線を向ける。

「変って、どう変なの？」

「妙に元気がないっていうか、ぼーっとしてるっていうかさ。いつもはもっと口うるさいのに、昨日の晩なんか、夕飯も半分も食べずに部屋に引っ込んじまったんだ」

「ふーん……で、俊一。何か心当たりはないの？」

「心当たり？　あー……いや、強いて言うなら、昨日の夕飯のときに、クリスが最近技術部にやって来た、あのアルマって娘こと仲良くしてるってことを話したくらいかな？」

俊一が何気なくそう言った瞬間だった。千秋の表情がピクリと変わる。

「……え？」

「ん？」

「それよ！！」

「えっ！？　な、何が？💦」

千秋は思わず手に持っていたフォークをテーブルに置き、額に手を当てて大きくため息をついた。

「はぁ〜……俊一、アンタって本当にデリカシーないわね！」

「な、なんだよ急に！？　俺が何か悪いこと言ったか！？」

「言ったじゃないの！　それが原因よ！　楓花ちゃんが元気なくなった理由！」

俊一は目を瞬かせ、ポカンとした表情を浮かべたまま千秋を見つめる。

「……え？　いや、だってあれはただの情報共有っていうか、何ていうか――」

「いい！？　楓花ちゃんはね、クリスくんのことが好きなの！　それは俊一だって知ってるでしょ！　そんな楓花ちゃんに向かって、兄であるアンタが無神経に“クリスくんが他の女の子と仲良くしてる”なんて話したらどうなるか、ちょっとは想像できないの！？」

「うっ……」

ようやく事の重大さに気づいたのか、俊一は俯いてスプーンを皿の上に置いた。

「……マジか、俺……そんなつもりじゃなかったんだけどな」

「つもりじゃないって言っても、女の子は傷つくの！　特に楓花ちゃんみたいなタイプはね」

その時だった。廊下の向こうから、どこか焦った様子の金髪碧眼の少年が走り抜けていく姿が目に入った。

「――ん？　あれ、クリス？」

俊一が眉をひそめて立ち上がると、ちょうどカフェテリア前の廊下を通り過ぎようとするクリスに声をかけた。

「どうしたんだクリス！？　そんなに急いで！」

振り返ったクリスの表情は切迫していた。

「俊一さん！　楓花さんが、ここに来ていたみたいなんです！」

「な、何だって！？」

「でも、僕が応対できなかったせいで……急に泣き出して、走って帰ってしまったって……！」

「……ッ！」

「楓花ちゃん……！」千秋の顔も青ざめた。

「俺が……俺のせいで……！」

俊一は小さくつぶやいたかと思うと、すぐにクリスと並ぶように駆け出す。

「クリス！　行くぞ！」

「はい！」

千秋もすぐに追いつき、二人の背中を追って走り出した。

「みんなで楓花ちゃんを探しましょう！」

こうして、ブレイバーズ本部のカフェテリアから飛び出した三人の姿は、廊下を駆け抜け、まっすぐに出口の方へと向かっていった。

探さなければならない。今すぐに。
あの涙の理由を知るために――。

不穏の気配

セントリネル・ハブ――正面エントランスの自動ドアが音もなく開き、ひとりの少女がその中から飛び出してきた。獅場楓花の目元には、こらえきれなかった感情の跡がはっきりと刻まれていた。

彼女は俯きがちに歩き出し、足早に敷地の外へと向かう。誰の視線も気にせず、誰にも会いたくないというように。

その様子を、少し離れた路上に停められた黒塗りの高級セダンの車内から、ふたりの男が静かに見つめていた。

「ヨウツァイ様」と運転席の男が小声で声をかける。

「……あの娘を、つけろ」
後部座席に座る男は、低く命じた。

ワン＝ヨウツァイ。香港最大の裏社会組織「竜門会ロンメンフイ」の精鋭部隊――竜生九子ロンサーンガウジー。その第三席。冷酷な頭脳と緻密な計画力で組織を支える策略家。細身の体に高級なスーツをまとい、眼鏡越しにじっと獲物を観察するその様は、まるで蛇のように冷たく鋭い。

車はゆっくりと、しかし楓花に悟られぬように距離を保ちつつ、彼女の後を追った。

やがて楓花は、河川敷へと歩を進めた。春を迎えた草原の中、吹き抜ける風がやさしくも、彼女の心を癒すには弱すぎた。周囲に人の姿はない。河のせせらぎと風の音だけが、静かにその場を包んでいた。

「ここだな」

ヨウツァイが呟き、車のドアが静かに開いた。彼はゆっくりと車を降りると、手をポケットに入れたまま、無防備に歩いている楓花の背中に近づいていく。

「やあ、はじめまして。獅場楓花さんですね？」

その声に、楓花はハッと立ち止まり、振り返る。

「……あなたは……？」

目の前に現れたのは、見たこともない男。整った顔立ちに不気味なほど落ち着いた笑みを浮かべ、何かを探るような眼差しで彼女を見つめていた。

楓花は涙の跡が残る頬をぬぐいながら、警戒したように一歩後ずさる。

だが、ヨウツァイの表情は微動だにせず、あくまで穏やかに、そして冷たく、楓花を見つめていた――。

（つづく）

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