BRAVERS EDITION　episode.145

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

オメガ・タワーズにて ― アスカロン財団との再会 ―

　ニューヨーク摩天楼群の中心にそびえ立つ、ガラスとスチールの巨塔――アスカロン財団の本部、オメガ・タワーズ。
　その吹き抜けのエントランスホールは、まるで近未来都市の聖堂のようだった。陽光を反射する全面ガラスが、三人の姿を明るく照らす。

　錦織佳代は、白いジャケットの裾を翻しながら歩く。くノ一として鍛え抜かれた身のこなしは、ビジネス街の雑踏にあってもひときわ軽やかだ。
　隣を歩くのは、金髪碧眼の少年――クリストフォロ＝エヴァルド＝コルティノーヴィス三世。ピンクのシャツにワインレッドのネクタイ、そして半ズボン。場違いなほど眩しい笑顔を浮かべ、少年は天井のガラスドームを見上げた。
　少し離れた位置を歩くのは、紫の髪を無造作に束ねた青年――寺瀬詩郎。アーミーグリーンのシャツの袖を折り上げ、ポケットに手を突っ込みながら、周囲を落ち着かない様子で見回している。

　エスカレーターの横を通り過ぎるとき、詩郎がぽつりとつぶやいた。

「なぁ、姐さん……やっぱり俺は、ここに来ない方がよかったんじゃないか？」

　その声には、かすかな怯えが混じっていた。
　彼は今でこそブレイバーズの一員だが、かつては悪の組織「おかめ党」の元幹部――アスカロン財団にとって、“危険人物”としてブラックリスト入りしている人物だったのだ。

　佳代は足を止め、振り返る。黒髪のポニーテールが揺れた。
「そうやってまたアスカロン財団から逃げるの？」

「ち、違ぇって！　ただ……もし俺のせいで話がこじれたら、長官に顔向けできねぇだろ」

　詩郎の言葉に、佳代は軽くため息をつく。
「いい？ 詩郎。昔のことはともかく、今のアンタはあたしたちの仲間よ。堂々としてなさい。胸張って歩きなさい」

　その声は、どこか姉のように優しく、それでいて毅然としていた。
　詩郎は視線を逸らしつつも、小さく頷いた。

「……姐さんがそう言うなら」

　そのやり取りを見ていたクリスが、柔らかい笑みを浮かべる。
「大丈夫ですよ、詩郎さん。これから会うアルマさんは、きちんと説明すれば分かってくれる人です。彼女、理屈よりも“信念”を見てくれますから」

　「アルマ=ブラックバーン」――アスカロン財団の技術研究開発部主任研究員にして、ブレイバーズの科学技術顧問であるクリスとも知己のある天才少女。短い期間だったが、以前にセントリネル・ハブに研修名目で出向して来たこともある。
　詩郎はまだ少し不安げに眉をひそめつつも、「なら、いいんだけどな……」と小声で呟く。

　三人はエスカレーターに乗り、二階へと向かった。
　吹き抜けの天井から降り注ぐ光の中、佳代の白、クリスのピンク、詩郎のオリーブ――三つの色が交わりながら、ゆっくりと上昇していく。

　――いよいよ始まる、ブレイバーズとアスカロン財団の“再交渉”。
　理念の違いが、再び火花を散らす時が来るかもしれない。
　だが、彼らの歩みは止まらなかった。

　未来を、信じるために。

対面 ― アルマ=ブラックバーン

　エスカレーターが静かに停止音を鳴らす。
　二階ロビー――オメガ・タワーズの心臓部。透明なガラス越しにニューヨークの街並みが広がり、白く磨かれた床には、三人の姿が鮮明に映し出されていた。

　そして、その奥――手すりにもたれかかり、白衣を翻しながら、ひとりの少女が手を振っていた。

「お～い！　ここだぁ～！」

　声は明るく、だがどこか高慢な響きを帯びている。
　アルマ=ブラックバーン。アスカロン財団・技術研究開発部主任研究員――わずか十五歳の天才少女。
　腰下まで伸びた明るい茶髪が、照明を受けて金色にきらめき、風にそよぐたび、頭頂のアホ毛がぴょんと踊る。
　白衣の裾から覗くミニスカート、片足を軽く組む姿勢。まるで自分こそこのタワーの主であるかのような佇まいだった。

「アルマさん、お久しぶりです」

　クリスが礼儀正しく頭を下げる。
　それに対し、アルマは口角を上げて腕を組んだ。

「元気そうだな、コルティノーヴィス。相変わらず背だけは伸びてないみたいだけどな」

「え、えぇ……まぁ、成長期は終わりましたので……」

　少年科学者が苦笑いを浮かべる。その様子を見て、佳代は内心で「なるほど、これが例のアルマちゃんね」と納得した。
　一見無礼、だが悪意はなく――その傲慢さには、確固たる自負があった。

「貴女がアルマさん？　はじめまして。ブレイバーズ長官秘書兼防諜統括担当の錦織佳代です」

　佳代が手を差し出す。
　アルマは一瞬、その整った顔立ちを見つめ、ふっと鼻で笑った。

「直接会うのは初めてだったな、錦織佳代。お前の話はコルティノーヴィスや牧村長官から聞いてるぞ。私がアルマ=ブラックバーンだ。ヨロシクなっ♪」

　握手を交わす二人。アルマの手は小さいが、握力は意外なほど強い。
　そのまま佳代の背後へと視線を滑らせ――ぴたり、と止まる。

　寺瀬詩郎。

　アルマは彼の前までつかつかと歩み寄り、上から下まで値踏みするように眺めた。
　無遠慮なその視線に、詩郎は思わず身を引く。

「……な、なんだよ？　俺の顔に何かついてんのかよ？」

「お前が寺瀬詩郎か。――ほう、ここまでのこのこ来るとは、いい度胸じゃないか。お前、サイボーグなんだってな？」

　その言葉に、ロビーの空気が一瞬だけ張り詰めた。
　クリスが慌てて口を開く。

「アルマさん、彼は――！」

「分かってる、コルティノーヴィス」
　アルマは遮り、指先で自分のこめかみを軽く叩いた。
「私だって、“自分の意思に反して改造された被害者”と、“嬉々として健康な体に人殺しのための機械を埋め込んだ阿呆”の区別くらいはつける。……で、寺瀬詩郎。お前は前者と後者、どっちだ？」

　詩郎の喉が小さく鳴った。
　言葉が、出てこない。

「俺は……」

　だが、声は途中で掠れ、沈黙に飲まれる。
　アルマの瞳――左右で色の異なるオッドアイが、まるでスキャナーのように彼を見透かしていた。
　その奥にあるのは冷たさではなく、怒りにも似た悲しみ。
　おそらく、彼女自身の過去がそこに影を落としているのだろう。

　やがてアルマはふっと息を吐き、踵を返した。

「まあいい。今日のところは追及しないでおいてやる。今日は加藤もここにはいないしな。運が良かったな、お前」

　その名を聞き、佳代とクリスは同時に胸をなでおろした。
　――加藤段十郎。アスカロン財団の特務部隊「ライトシーカー」に所属するエージェント。
　財団内でも特に詩郎に対する敵意が強い男だ。

　詩郎は俯いたまま、無言で拳を握る。
　佳代はそっとその肩に手を置き、クリスは苦笑いで場を和ませた。

「アルマさん……変わってませんね」

「褒め言葉として受け取っておく」
　アルマは鼻を鳴らし、白衣のポケットからカードキーを取り出した。
「さ、立ち話は終わりだ。会議室はこっちだ。余計な時間は食いたくないんでな」

　そう言って歩き出す彼女の背中を追い、三人も無言でついていく。
　彼女の白衣が、まるで道標のようにひらめいた。

　――傲岸不遜で、毒舌に満ちていて。
　だが、その奥にあるのは、確かな信念と天才の輝き。
　ブレイバーズとアスカロン財団――二つの「正義」の狭間に、また新たな火花が散ろうとしていた。

（つづく）

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