検非違使秘密任務禄　その一

※chatGPTで生成した文章に、一部編集を加えております。

休日の悲鳴

灼けつくような真夏の陽光が、京都・三条の商店街を照りつけていた。

「ほらほら先輩、遅いですよ！ こっちこっち！」
軽やかに前を歩く女子高生・椿姫絢那の声が、街の喧騒の中でもやけに耳についた。

「あーもー、何でワイがこんな真昼間から荷物持ちせなアカンのや……」
孝森祐宜は、両手いっぱいに紙袋とビニール袋を抱え、後ろからトボトボとついていく。

京都凰晟館大学文学部歴史学科1年。緑がかった髪に、きっちり締めた赤いネクタイが暑さを物語っている。
本日は完全オフ。朝廷からの任務もなく、珍しく静かな一日――のはずだった。

「文句言わないでください。せっかくの休日なんですから、私の買い物にもう少し付き合ってください」
「付き合わされとる、の間違いやろ……」
祐宜はため息混じりにぼやくが、絢那の機嫌を損ねるのも面倒なので、これ以上の文句は飲み込んだ。

そんな束の間の平穏を打ち破る、甲高い叫び声が響いた。
「キャアアッ！！」

二人は反射的に走り出した。悲鳴が聞こえたのは通りの角を曲がった先、人気のない小路だ。

そこには、紺碧色のサマーブラウスに白のショートパンツという、涼しげな装いの少女がいた。絢那と同じくらいの年齢だろうか。黒く長い髪が乱れている。
その少女を、中年の男が無理矢理ワゴン車の中へと押し込もうとしていた。

「おい、お前！　そんなところで何しとるんや！？」
祐宜の鋭い声が飛ぶ。

「……チッ」
舌打ちと同時に、男は少女を放り出し、自分だけが車に乗り込み急発進して逃げ去っていった。タイヤの焼けた臭いが鼻を突く。

「大丈夫ですか！？」
絢那が駆け寄って少女の身体を支える。

「どこにも怪我はないんか？」
祐宜も慎重に少女の様子を見守った。

少女はしばし放心したように二人を見つめた後、ようやく口を開いた。
「……は、はい。どうも、危ないところを助けてくださってありがとうございます……」

その時、黒い車両が音もなく数台、路地に滑り込んできた。
降りてきたのは、黒スーツに身を包み、サングラスをかけた数人の男たち。典型的な「それっぽい」護衛たちだった。

「お嬢様、勝手にお一人で出歩かれては困ります」
「ごめんなさい……」
少女はうなだれたまま答える。やはり、相当な家の出らしい。

「是非ともお礼をさせてください。お名前を、お聞きしても……？」
名乗ろうとする少女に、祐宜は無造作に手を振った。

「名乗るほどのもんやないわ。気にせんとき」
彼の言葉に、少女は一瞬だけ目を見開いたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべてぺこりと頭を下げた。

「本当に、ありがとうございました……」

そうして、ボディーガードたちに促されながら車へと乗り込んでいった。

残された祐宜と絢那は、ただその後ろ姿を見送る。

「いったい……どこの家のお嬢さんでしょう……？」
「さあな。けど、たぶん並の筋やないやろ」
祐宜は、手に持ったままの買い物袋を見てため息をついた。

せっかくの休暇だというのに、どうやら今日も「検非違使」としての血が騒がずにはいられないようだった――。

桔梗の茶室、夜の呼び出し

その夜、京都御所の奥深くにある数寄屋造りの茶室には、凛とした緊張感が満ちていた。

畳の上に正座する桔梗局は、黒髪を高く結い、藤色の小袖を軽やかに纏いながら、静かに茶を点てていた。見た目は二十代後半から三十代前半。涼やかな目元と楚々とした物腰には、ただ者ではない気配が漂っている。

「――なんや、お局様。せっかくのたまの休みやったのに～、最後までゆっくりさせてほしいわ～」

茶の香に包まれる中、祐宜は畳の上で腕を組み、ため息交じりにこぼした。

「お局様、急なお呼び出し……一体、何事でございますか？」
絢那は祐宜よりも一歩下がって座り、礼儀正しく問いかける。

茶を点て終えた桔梗局は、にこやかとも冷ややかともつかない薄い笑みを浮かべながら、二人に茶碗を差し出した。

「今日は、お二人に引き合わせたい者がおります。お入りなさい」

襖が静かに開き、二人の少女が茶室に足を踏み入れた。

一人は、長い黒髪を持つ和風美人。薄桃色のブラウスに黒いミニスカート、黒いニーソックスという可憐な装いで、上品で柔らかな微笑みをたたえている。
もう一人は、黒髪を団子頭にまとめた、どこか人形のように無表情な少女。緑のカンフー服に黒いショートパンツという異色の装いだ。

「アスカロン財団・ライトシーカーの三刀谷真玲です。こちらは、同じく周翠琳。よろしくお願いしますね♪」
真玲が優雅に頭を下げる。翠琳も一礼したが、その表情に変化はない。

「……へぇ～驚いたなそりゃ。アスカロン財団っちゅうたら、世界中の正義の味方の後ろ盾になっとる、あの大組織やんけ」
祐宜が眉を上げた。

「そういえば……以前、検非違使の研修の講義で名前を聞いたことがあります。ライトシーカーは、その中でも特殊任務を担う精鋭部隊と……」
絢那は記憶をたぐり寄せながら呟く。

「ええ、私たちは現在、極秘任務のために日本国内に派遣されているわ」
真玲の物腰は終始柔らかく、しかし言葉には芯がある。

翠琳が淡々と口を開く。「今日、昼間に拉致されそうになっていた少女……あれは、来島士門の娘・陽依」

「……来島士門っちゅうたら、将来の総理候補との呼び声も高い、今をときめく政界のエースやで」
祐宜が思わず身を乗り出した。

「その娘さんが……」
絢那もまた、驚きを隠せない。

真玲が、祐宜たちの驚きに頷くように続けた。
「あなたたちが今日助けたその少女は、政界でも非常に重要な人物の“鍵”となり得るわ。彼女と知り合いになったという点で、ぜひともお二人に協力をお願いしたくて♪」

「知り合った言うても、今日の昼間にほんのちょっと顔合わせただけやで。ろくに自己紹介もしとらんし……」

「……心配ない」
翠琳が静かに、だが断言するように言った。

「たぶん、明日になれば――また、向こうから接触して来る」

「は？」
「えっ……？」

祐宜と絢那が声を重ねて顔を見合わせる。

桔梗局がそこで茶碗を取り上げ、すっと視線を上げた。

「……陽依嬢は、貴方たちを“正義の味方”として強く印象づけられたはずです。後は、彼女の“心”が自然と動くでしょう」

「まさか……陽依嬢自身が？」
絢那が問う。

「ええ。来島士門の背後には、いくつもの黒い影がございます。今後の政界の安寧のためにも、早急にその“裏”を暴かねばなりません」
桔梗局の声音は穏やかだが、底に隠された鋭さが背筋を刺した。

「……ほんま、昼に助けたばっかりやのに、もうこないな話に巻き込まれるとはなぁ……」
祐宜は頭をかいた。

「頼りにしておりますよ、祐宜、絢那」
桔梗局は、微笑みを湛えたまま静かに告げた。

その言葉が、この夜の静寂に、新たな嵐の予感を落とす。

――こうして、孝森祐宜と椿姫絢那の「検非違使」としての新たな任務が、静かに幕を開けたのだった。

（つづく）

---