星本有理紗誘拐事件　第1話

誘拐事件発生！

　ここは市立スポーツ公園の公営テニスコート。その日は休日で、星本有理紗は憧れの先輩勢川理人と二人きりでテニスを楽しんでいた。一応、義理堅い有理紗は岸本愛実も事前に誘ってはみたのだが……

「でもこうして理人さんを独り占めしてしまってるみたいで、何だか愛実さんに申し訳ないです」
「愛実は今日は特別な用事で手が離せないって言ってたからなぁ…。せっかくなんだから来れなかった愛実の分まで二人で楽しもうぜ！」
「はい♪」

楽しそうにテニスをプレイし続けている理人と有理紗の二人。

「ひと汗かいたから、そろそろお互いシャワーでも浴びようか？」
「そうですね」
「ジュース奢るよ。何が飲みたい？」

――などと暢気に二人が話していたところへ、スーツを着てネクタイを締めたサラリーマン風の男が二人、ワンボックスカーに乗って有理紗に近づいてきた。

「星本有理紗さんだね？」
「実は君のお父さんの会社から来た者なんだが、君のお父さんが勤務中に倒れて救急車で病院に運ばれた！」
「何ですって!? お父さんが!?💦」
「今すぐ病院へ連れてってあげよう。さあこの車に乗りなさい！」

「ちょっと待ったァァッッ!!」

強引に有理紗を車に乗せようとする男たちに、すかさず理人が割って入った！

「何だ君は？ 邪魔をするな！」
「邪魔をするなじゃないよ！ アンタたち一体何者？ 本当に有理紗ちゃんのお父さんの会社の関係者なのか？ もしそうなら会社で所属する部署と役職をそれぞれ言ってみろよ！」

こう理人に詰め寄られた男たちは、突如態度を豹変させる。

「チッ、しょーがねーなぁー！面倒臭せぇ！ こうなったらこの大学生の坊主も一緒に連れて行くか！」
「な、何をするんだ！？💦」
「キャアアッ！！ 助けて―！！」
「大人しくしろ！ ジタバタするんじゃねぇー！！」

「んんーっ！！んん、んむむーっ！！」
「んんんーっ！！ んぐんんーっ！！」

二人とも瞬く間に縛り上げられ、ワンボックスカーの中へと放り込まれてしまった理人と有理紗。中には黒いサングラスをかけたマフィア風の男が席に座って二人を待ち受けていた！

山野に放置

「さて、そろそろこの辺でいいだろう…」

理人と有理紗を乗せたワンボックスカーの停車した先は、獣道の先にあった山奥だった。そこで理人は縛られたまま山野に放り出されてしまう！

「んむぐぐぅぅー!?」
「悪く思うなよ兄ちゃん。俺たちが用があるのはお嬢ちゃんの方だけなんでな。お前はここに捨てて行けとのボスからの命令だ。きっと明日には冷たくなってるだろうさ。あの時、見て見ぬふりをしていればこんな目には遭わなかったものをww」

理人は有理紗と引き離され、暗い山林の奥地に放置されてしまった！

「んむぐんんむむぅぅ―ッッ!!!!!（有理紗ちゃァァッッん!!）」

「んんむむぅぅーッッ!!!!!!（理人さぁぁ～んッ!!!!!!）」

古びたアパート

廃墟の古アパートに一人寂しく監禁されている有理紗の運命は！？

そしていくら愛娘を誘拐されたとはいえ、平均的な中流家庭である星本家から多額の身代金を脅し取れるとは考えにくい。犯人側もそのことはよく承知している筈である。果たして犯人一味の真の目的とは…!?

つづく。

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