ここは名探偵・武智恭介が新宿の一等地にオフィスを構える武智探偵事務所。ここでは相馬晴彦、雨宮梨奈、イサム=ルワン=ラーティラマート、不破詩織の4人の武智探偵が見込んだ優秀な大学生が探偵助手としてアルバイトをしている。
前回、詩織と一緒に事務所の留守番をしていた梨奈は、黒曜館大学陸上部マネージャー・小嶋結衣からの依頼を受け、武智探偵はもとより晴彦やイサムも不在なのをいいことに意気揚々と単独捜査に乗り出したのだが……。
超人兵士計画
「んっ、んんっ…んんーっ!!」
黒曜館大学の中央スポーツセンターに潜入し、小嶋結衣の彼氏である失踪した有馬俊介の監禁場所を首尾よく発見したのも束の間、何故か助け出したはずのその俊介や他に捕まっていた男子アスリートたちに襲われて気絶させられてしまい、気がついたらご覧の通り。梨奈は研究所の一室に監禁されてしまっていた。
しかし幸いなことに、両足も縛られてはいるものの、身体は椅子に括りつけられてはいない。そして他に見張りらしい人影の気配もない。梨奈は縛られたまま椅子から立ち上がり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながらデスクの上のパソコンに近づき、後ろ手で縛られたままの不自由な手で何とか電源を入れてパソコンを開いてみた。その中身は衝撃的な事実が収められていた!
「………(薬物注射……人体強化……洗脳? これって一体どういうことなのかしら!?)」
つまりこういうことである。このスポーツセンターの所長を務める教授が主導する形で、優秀な若い男性アスリートたちに薬物により人体強化と洗脳を施し、紛争国に兵士として輸出するという恐るべき人身売買の計画だ。恐らく捕まっていた有馬俊介以下男子アスリートたちも、すでに薬物注射と催眠術を併用した洗脳処置を施されていたに違いない。
「おい貴様!? そこで何をしている!!」
「んんっ…!?(しまった! 見つかった!?)」
「ほんの少し目を離していれば、このアマッ!! こっちへ来い!!💢」
「んんーっ!! んぐむむううーっ!!(イヤッ!! 誰か…誰か助けてッ!!)」
パソコンの中身を開いて覗いていたところをセンター員に見つかってしまった梨奈は、別の部屋へと強引に連れて行かれてしまった!
詩織にも迫る魔手
先程からスポーツセンターの外でずっと梨奈の無事な帰りを待ち続けている詩織。しかし梨奈は一向に現れない。
「遅すぎるのです。きっと梨奈の身に何かあったのです…」
梨奈の危機を確信した詩織は、警察に連絡しようと自身のスマホを手に取るが……
「おっと、こんなところで何をしているのかな?お嬢さん!」
「騒ぐな!! 怪我をしたくなかったら大人しくしろ!!」
「…い、いやっ!! 放してなのです!! だ、誰かァァッッ!!」
詩織はスマホを取り上げられて、人相の悪いセンター員の男たちに捕まってしまった!
尋問の時間
拘束された両手を天井から吊るされて、口にはガムテープを貼られている梨奈。
「霧崎、センターの秘密施設の中に忍び込んだ可愛い子猫ちゃんとは彼女かね?」
「はい、何やらセンターの秘密をいろいろと探っていたようです。まさかこんな小娘が公安の犬とも思われませんが…」
蝶ネクタイをした白髪の男。霧崎と呼ばれた男との会話内容からどうやら他のセンター員たちよりも目上の立場らしい。梨奈は目の前にいる男について冷静に記憶の糸を手繰った。……思い出した! この男こそこの忌まわしいスポーツセンターの責任者である黒曜館大学体育学部教授・黒沢津啓介その人だ!
……ということは、目の前のこの白衣の老人こそが今回の事件の黒幕か!?
黒沢津は梨奈の口に貼られていたガムテープを強引に引き剥がした。
「…痛いッ!!」
「おやおや、これは失礼したねお嬢さん。ところで君は何者かね? 素直に話してもらえないかな?」
「誰があなたたちになんか言うもんですか! それよりも監禁している男子アスリートたちを速やかに解放しなさいよ!」
「そうはいかないよ。彼らは試作品とはいえ大事な商品だからね」
「なんて人なの!? スポーツ選手の夢と日々の努力を踏みにじるこの金の亡者!」
「何とでも言いたまえ。君は見たところ若いからまだ分からないのだろうが、所詮この世は金と力なのだよ、お嬢さん」
「くっ…!!」
梨奈は精一杯、黒沢津を睨みつけた。
「そんな怖い顔をしていられるのも今の内だ。あれを見ろ!」
黒沢津の部下の霧崎が指し示した方向に視線を向ける梨奈。なんとそこには捕まって拘束された詩織の姿があった!
「詩織ッ!?」
「ごめんなさい梨奈、わたしも捕まってしまったのです…」( ノД`)シクシク…
「君があくまで強情を張るのなら、君のお友達らしいあの眼鏡のお嬢さんに少し痛い目に遭ってもらう必要がありそうだねぇ…。おい、少し可愛がってやれッ!!」
「承知しました。フフフッ…」( ̄ー ̄)ニヤリ
「やめて! 詩織に何をする気なの!?💦💦」
「…い、いやっ、やめてほしいのです…」((((;゚Д゚))))ガクガク
赤色の鞭を握ったサングラスをかけたセンター員が、不気味に笑いながら詩織に迫る!
「イヤァァァッ!!!!!!」
もはやこれまでと覚悟を決めて目を瞑った梨奈と詩織だったが……。
「ぐわぁぁぁ!!!」
「…な、何故だァァッッ!? ウギャアアッ!!」
なんと鞭を握ったセンター員は、詩織相手ではなく周りにいた他のセンター員たちをまとめて鞭一振りで片付けたのである。
「えっ…?💦」
「…お、おい貴様ッ!! どういうつもりだ!?」
何が何だか分からず目が点になる梨奈と詩織。それは黒沢津も同様で、いったいどういうことなのか!?と鞭を持ったセンター員に詰め寄る。
「フッ、こういうことさッ♪」
「…そ、その声はもしかして!?」
鞭を持ったセンター員は被っていたカツラとつけ髭を外し、サングラスを取り、着ていた白衣と衣服を脱ぎ捨てて一瞬で変化…いや、正確には今までしていた変装を取り払ったのだ。その真の姿は――
「晴彦!」
「武智探偵事務所所長代行、相馬晴彦! 遅ればせながら参上したぜ! 待たせたな梨奈♪」
鞭を持ったセンター員の正体は、梨奈たちの仲間である相馬晴彦だった。
「くそっ! 何をしている霧崎! 早くあの若造を片付けろ!」
「………」
「何を黙ってぼさっと突っ立っとるんだ貴様は!?💢 早くこの状況を何とかせんか!!💢」
「この期に及んで往生際が悪いですよ、黒沢津教授」
「お前霧崎じゃないな!? いったい誰だ!?💦」
「フフフッ」
霧崎助手は顔からマスクをベリベリッと剥がし、白衣を脱ぎ捨てて一瞬でネクタイをビシッと決めたスーツ姿に早着替えした。その正体は言うまでもなく、名探偵・武智恭介その人である!
「た、武智!?…貴様いつの間に!?💦」
黒沢津教授が動揺して立ち尽くしているところへ、イサムが先導して咲間警視と警察の公安機動隊を連れて来た!
「咲間警視、こっちです!」
「警察庁公安部の咲間だ! 霧崎助手以下一味はすでに逮捕した! この場にいる全員も無駄な抵抗はせず大人しくしろ!」
こうして男子大学生のアスリートを拉致監禁して超人兵士に改造しようという悪党の一味は全員御用となったのである。
エピローグ
「儂には大臣クラスの政治家の友人が何人もおるんだぞ。後で吠え面かくなよww」
反省の色はゼロの黒沢津教授は、悪態をつきながらパトカーに乗せられて最寄りの警察署へと連行されて行った。その一方で、地下に監禁されていた男子学生たちは全員無事に救出され、順次救急車へと乗せられていく。
「俊介!俊介!」
「……あぁ…結衣なのか? 長い間悪い夢を見ていた気分だよ」
今回の依頼人である小嶋結衣も、梨奈から連絡を受けて現場に駆けつけて来て、無事に再会を果たした有馬俊介が乗せられた救急車に同乗して一緒に病院へと向かうようだ。
「でもどうしてみんなこの場所が分かったんですか?」
梨奈と詩織が抱いた尤もな疑問を皆にぶつけてみる。最初にその問いに答えたのは咲間だった。
「実はこのスポーツセンターは以前から公安の方でマークはしていたんだよ。そしたら監視中に梨奈ちゃんと詩織ちゃんが現れた時は正直驚いたよ💦」
「それで咲間さんから連絡をもらった先生と俺とイサムが、ちょうど綾小路邸での一件も片付いたところだったから、大急ぎで東京まで戻って来たのさ」
「そうだったんだ。危ないところだったわ。助けてくれてありがとう晴彦♪」
さて、ここからがお説教タイムの始まりである。
「梨奈、言わなくても分かっているね?」
「はい、伯父様。今日のことは本当に反省しています。どんな罰でも受けるつもりです…」
「では梨奈と詩織君には勝手な行動をとって危険に首を突っ込んだことへのペナルティとして、今後30日間の事務所の掃除当番を命じる!」
「ちょっと待って伯父様! 詩織は関係ないの! 悪いのは全部アタシなの! 詩織はアタシを止めようとしてくれたの!!」
懸命に詩織を庇い、自分一人で責任を引き受けようとする梨奈だったが、そんな彼女の肩を詩織は穏やかな笑顔で優しく叩く。
「水臭いのですよ梨奈。あの時梨奈を止められなかった時点でわたしも同罪なのです。こうなったら一蓮托生。自分一人だけカッコつけようったってそうはいかないのですよ」(^^♪
「詩織…ごめん…本当にごめんね!」( ノД`)シクシク…
詩織の申し出に嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいで泣きじゃくる梨奈と、それを優しく抱擁する詩織。それを横から見ていた晴彦&イサムのボーイズ二人組はと言うと……?
「やれやれしょーがねーなぁ。俺たちも掃除当番30日間手伝ってやるよ。なぁイサム?」
「そうだね。レディたちに3K仕事を押し付けてるようじゃ、それこそ男が廃るからね♪」
その会話を聞いていて困惑する武智探偵。
「おいおい、君たちまで手伝ったら普段通りでペナルティにならないじゃないか!?💦」
「いいじゃないですか先輩! いやぁ青春だなぁ! 若い時の友情というものは大事にしないと♪」
咲間警視の助言に、武智探偵も苦笑いするのであった。
END
コメント
さて、やっとDID成分が補給出来そうですね!
>梨奈は縛られたまま椅子から立ち上がり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながらデスクの上のパソコンに近づき、後ろ手で縛られたままの不自由な手で何とか電源を入れてパソコンを開いてみた。その中身は衝撃的な事実が収められていた!
これ好き!でも縛られた状態でパソコン操作とは、梨奈ちゃんなかなか器用ですね!
そこから所員に見つかり再捕獲までのながれも素晴らしいですね!
そして梨奈ちゃんの帰りが遅いことに心配していた詩織ちゃんにも魔の手が、戦闘力の後方支援担当が表に出ちゃうとやっぱり捕まっちゃいますよね~
そして今度は吊るされ尋問される梨奈ちゃん、本当に今回は色々と見せてくれますね~
無理矢理ガムテープを剥がされるところはすごく良いですね!
さて、いくら脅されても強気な態度を崩さない梨奈ちゃん、そんな彼女に黒沢津はある方向へ向くように言った、そこには梨奈ちゃんと同じく捕らわれの身となった詩織ちゃんが…!
鎖で繋がれた詩織ちゃんを鞭打つように部下に命じる黒沢津、自分の痛みは耐えれても果たして友達の痛みには耐えれるのか…うん、やっぱり悪党ですね~、これは梨奈ちゃんも観念するしか…
だがその鞭は他の部下のセンター員へと振るわれた、そしてセンター員と思われていたその人物はなんと変装した相馬晴彦くん!
そして、黒沢津の助手と思われていた男は、なんと名探偵武智恭介、登場の仕方がどこぞの謀反人と同じ苗字の名探偵みたいですね。
そしてタイミングを見計らったように乗り込んでくる公安機動隊、そりゃあんなに大っぴらに動いてれば公安も目をつけるっての、このまま続けててもいずれ捕まってたっぽいですねこいつら…
なにはともあれ一件落着、これに懲りずに梨奈ちゃんにはどんどん動いて貰って、DIDファンのために頑張って貰いたいものですね。
黒沢津教授、なんか最近のブラックな刑事ドラマのごとく、上の鶴の一声でお咎めなしで出てきてまた暗躍するってことないですよね…?
ちなみに名前の元ネタはどこぞの怪人開発部の方でしょうか?
> なにはともあれ一件落着、これに懲りずに梨奈ちゃんにはどんどん動いて貰って、DIDファンのために頑張って貰いたいものですね。
もし梨奈ちゃん(勿論他のヒロインでもOK)に「こんなピンチに遭ってもらいたい!」みたいな構想やプロットがあったら、ご遠慮なくコメント欄にお書きくださいませ。出来る限り前向きにSS化を検討させていただきたいかと存じます。
> 黒沢津教授、なんか最近のブラックな刑事ドラマのごとく、上の鶴の一声でお咎めなしで出てきてまた暗躍するってことないですよね…?
再登場はないと思いますが、黒沢津教授の背後にいた黒幕(政治家?)が新たに動き出す可能性はありますねぇ…( ̄ー ̄)ニヤリ
> ちなみに名前の元ネタはどこぞの怪人開発部の方でしょうか?
管理人が声優の前田佳織里さんのファンになったきっかけのアニメキャラが他ならぬ黒井津さんなのですが、勿論元ネタとは違います。下記URL先のツール(名前生成ジェネレーター)を利用しまして、姓に「黒」の一字が入ってる男性の名前を生成し、その中からいかにも悪党のボスらしい苗字を選んだというのが真相です。
https://namegen.jp/
前田佳織里さん…新しく始まった「魔法少女にあこがれて」って色々とアウトなアニメで今度は魔法少女側になって、悪の組織の幹部に虐められてましたね…観てなかったらスイマセン…
梨奈ちゃんは、色々とこれからの活躍を見てみたいですが、他の枠のヒロイン同士が絡むストーリーとかも見てみたいですね~
最近この娘達も見てないから、ちょっと久々に会いたくなってきました。
https://okamenogozen.com/character-3/
この2人と、音祢ちゃん、七香ちゃん、愛優美ちゃんの他の17歳と絡んでるストーリーとかも見たいところですが、ちょっと地区が離れすぎてますかね…?
ほぼ突貫工事ですが玲奈ちゃん、亜弥ちゃん、音祢ちゃん、七香ちゃん、愛優美ちゃんが捕まったストーリー書いてみました。
ただ台詞が少ないので、あまりご希望に添える出来にはなっていないかもです(;^_^A アセアセ・・・
https://okamenogozen.com/jinjyajack/